ドローンだらけの未来の空に備えよう

このところの数カ月間に起こったいくつかの度重なる事件によって、一般の人にはドローンの危険性が強く印象付けられることとなった。昨年4月には、サウジアラビアの首都の、許可されていない領域に迷い込んだおもちゃのドローンが撃墜される事件が起き、政変が起こったのではないかと噂されるに至った。また8月には、ベネズエラの大統領に対するドローンによる攻撃事件も発生した。さらに12月の下旬には、英国のガトウィック空港に複数のドローンが侵入したとの情報により、36時間に渡って滑走路が閉鎖され、約1000便がキャンセルされて計14万人の乗客が影響を受けた。それ以降も、数カ月の間に、ダブリンドバイなど、いくつかの空港で、ドローンが原因となって旅客機の運行の遅れが発生している。ガトウィック空港の事件だけでも、航空業界に9000万ドル(約99億円)もの損害を与えたと推定されている。

今挙げたのは特に目立った事件だが、そうした事件を通しても、ドローンが世界中いたるところに広まっていることがわかる。そういう意味で、もっと影響力が大きかったのは、当局がスーパーボウルのために取った航空の保安措置だった。スタジアムの周辺一体が飛行禁止にされたにもかかわらず、スーパーボール当日が近づくにつれて、「洪水」のような勢いでドローンが押し寄せてきていると、PBS(米国公共放送サービス)はレポートしていた。

こうした事件は、空の地図を作り、空の治安を維持することが、単なる理屈ではなく現実的な課題であるという結論を突きつけるものだ。ちょうどGoogleが、初期のインターネットに散らばるノイズのような情報を取り上げ、整備して理解可能なものとし、さらにナビゲート可能なものとしたように、これだけドローンが一般に普及した今、われわれは空を把握して理解する必要があるだろう。

上に挙げた例のほとんどは、いわば「悪いドローン」の問題だ。つまり、敵対的とみなすことができるドローンに関した問題である。しかし、どのような機体が上空を飛んでいるのかを理解することは、「良いドローン」の問題にとっても不可欠なこと。ドローンは、主に威嚇的な存在として注目されるようになってきたが、やがてもっと良性なコンテキストでも話題の中心となるはずだ。たとえば農業、天気予報、配達、それに都市計画といった分野での活躍が期待される。その転換点はすぐにやってくるだろう。2018年のはじめ、FAA(米連邦航空局)は、登録されたドローンの数が、初めて100万台を突破したと発表した。それらのほとんどは、愛好家が所有するものだが、当局は商用のドローンも、2022年までに4倍に増えると予想している。今後ある時点で、「良いドローン」同士が衝突しないようにするためのシステムが不可欠なものとなるだろう。

空を把握し理解する必要がある

数の比較で考えてみよう。FAAによれば、米国内には約500の航空管制塔があって、1日あたり4万3000の飛行機のフライトを調停している。また、常に5000の航空機が上空を飛行していることになる。約2万人の航路輸送システムの専門家や航空管制官の働きによって、それら5000の航空機が互いに衝突せずに運行されている。そこから考えて、潜在的には何十万、あるいは何百万台も、同時に飛行しているドローンがぶつからないようにするため、どれだけの設備と労力が必要となるのだろう。これは大きな火急の問題なのだ。

このようなエコシステムの秩序の確保という課題に取り組むため、近年、非常に多くの企業が出現してきた。すでにかなりの額の投資家の資本が、ドローンでいっぱいになった空を把握するためのさまざまなアプローチに投資されてきた。例えば、ポイントセンサーによるソリューションを提供するEchodyneIris Automation、あるいはドローン管理システムを開発するKittyhawkAirMapUniflyといった会社だ。「悪いドローン」に対するソリューションとしては、レーザーや、地上から発射するバズーカ砲、といったものから、マルウェアを利用するもの、巨大な網によるシールドまで、さまざまなソリューションが編み出されている。

その中で、最も興味深いアプローチは、「良いドローン」と「悪いドローン」の両方の課題に対処できる統一的なもの。善意のドローンを識別して、非道なドローンから守るものだ。この場合、認識することが理解への第一歩であり、それによってこそ適切な対処が可能となる。実のところ、これは確実なデータレイヤーを確保するところから始めなければならないことを意味している。通常はレーダー探知システムから収集できるデータだ。そのデータレイヤーによって、どんな機体が、どこを飛んでいるのかを把握できる。

そうしたデータを入手することで、各機体の性質を理解することが可能となる。具体的には、良性のものか、悪意を持ったものか、ということだ。その識別によって、最後のステップ、行動することができるようになる。良性のドローンであれば、正しい目的地に導き、他のドローンと衝突しないようにする。悪意のあるドローンに対する「行動」とは、上に挙げた刺激的なソリューションの1つを動員することだ。つまり、マルウェアやレーザー、あるいは防御用のドローンを使って潜在的な脅威を無力化することも考えられる。

フル装備のアプローチは、シームレスな対応を定常化するのに役立つが、なんと言っても重要なのはデータレイヤーだ。ドローンが社会の主流となるのは、もう少し先のことになるだろうが、インフラやセキュリティのフレームワークの作成を、実際に必要となる前に、一歩先んじで開始しておくことには大きな意義がある。今のうちからデータを収集しておくことで、将来のドローンを見据えた確かな基準を築くことができる。そしてその基盤の上に、新たなソリューションを提供する参入者が現れる可能性も生まれる。さらに言えば、これは客観的に見ても正しいことのように思われる。25年前の携帯電話ネットワークを思い出してみればわかるだろう。早期に導入した人たちが、検知と防御のシステムを採用するという決定を下したことが、導入をためらっていた人たちにも利益をもたらすことになった。つまりガトウィック空港がインフラを整備すると、ヒースロー空港も、その恩恵を受けるということだ。

結論を言えば、ドローンだらけの空の問題の解決に必死になって取り組まなければなければならない理由は山ほどある。放っておけば、良くない結果を招くであろうと考えられる理由が山積みだからだ。ゴールドマンサックスが1000億ドル(約11兆円)規模になると予想する市場に向けて道を整備することは、途方もない機会に違いない。ドローンの持つ潜在的な悪だけでなく、ポジティブな可能性に向けて計画するのは、できるだけ早い方がいい。

画像クレジット:Alexandr Junek Imaging sroShutterstock

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

投稿者:

TechCrunch Japan

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