パラリンピック公式ゲーム「The Pegasus Dream Tour」登場、ファンの増加、多様性への理解を進める

日本のゲーム開発スタジオJP GAMESは、世界初のパラリンピック公式ゲームとなるスマートフォン用タイトル「The Pegasus Dream Tour(ザ ペガサス ドリーム ツアー)」の配信(iOSAndroid)を開始した。

本ゲームはアバターRPGだ。オンライン仮想都市ペガサスシティを舞台に、プレイヤーが心を持ったキャラクター「Mine」をサポートし、他のプレイヤーと交流しつつ、実在のパラスポーツを楽しみながら、パラアスリートとして成長させることを目的とする。プレイヤーはアバターを操作し、ゲーム内キャラクターであるMineをサポートする。自律的に動くMineに、「他のプレイヤーと話した方がいい」「今日のコンディションを改善するためにこれをやった方がいい」といったアドバイスを行う。

舞台となるペガサスシティには、アスリートカフェ、アスリートジムなど、さまざまな施設があり、プレイヤーのアドバイスでMineがどこに行くか、何をするのかが決まる。

本ゲームでは、パラスポーツで遊ぶことができる。リリース段階で遊べるのは陸上とボッチャ(ジャックボールという白いボールに、赤青各6球を投げたりすることで、どれだけ近づけるか競うスポーツ)の2種目だ。2021年8月には車いすバスケ、車いすレース、ブラインドサッカーが追加予定。以降、順次追加される予定だ。ゲームには実在のパラアスリート9名がペガサスシティで活躍する選⼿として登場する。パラアスリートとの会話や対戦ができるクエストも順次配信予定となっている。

また、ゲームには、ペガサスシティ市長代理としてドラえもんも登場する。オリジナルの秘密道具も登場し、リリース時点ではプレイヤーの写真を撮影し、ペガサスシティ上のMineを⽣み出すアバターカメラと、PEG(Personal Ecosystem Guide)という多忙な市⻑代理であるドラえもんに代わり、Mine1人ひとりにつくパーソナルガイドの2つ。リリース後、他のものも登場する予定だという。さらに、フィギュアスケート選手の羽生結弦選手が本ゲームのアンバサダーに就任している。

ゲームを通してパラリンピックの認知を広めたい

「The Pegasus Dream Tour」の配信に際し、発表会も行われた。JP GAMES COプロデューサー⾨⽥瑛⾥氏、アートディレクターの⽯崎晴美氏、同代表取締役CEOの⽥畑端氏、国際パラリンピック委員会理事⼭脇康氏、ブリヂストンオリンピック・パラリンピック推進部鳥山聡子氏がゲームに対する思いを語っている。

国際パラリンピック委員会理事の山脇氏は「パラリンピックのファンを増やす方法に課題を抱えていました。パラリンピックに興味のない層にリーチすることは非常に難しいことです」と語る。

しかし、ゲームであれば、パラリンピック自体にあまり興味がない層にリーチできる可能性がある。

「このゲームであれば、パラスポーツで楽しんでもらうだけでなく、違いや多様性を認めて共生するというパラリンピックのビジョンにも触れてもらえると思います。ワクワクしながら、楽しみながら、共生社会、ダイバーシティ&インクルージョンを理解を深めて欲しいです」と山脇氏は期待を語った。

本ゲームのファーストスポンサーであるブリヂストンの鳥山氏は「なぜブリヂストンがゲームのスポンサーになったのか、ピンとこない方もいるかもしれません。当社はオリンピック、パラリンピックのワールドワイドパートナーです。ゲームを通してパラリンピックが目指す共生社会を目指す姿勢に共感しました。このゲームでダイバーシティ&インクルージョンを直感的に感じてもらいたいと考えています。ゲームにはブリヂストン・アスリート・アンバサダーが5人参加しています。ゲーム、エンターテインメント、パラリンピックが協力すると何ができるのかを見て欲しいですね」と協力の背景を話した。

また、アートディレクターの⽯崎氏は「パラアスリートからのフィードバックもゲームの中で生かされています。例えば、ギア(義足や義手)のデザインをアスリートに見てもらったところ、「この形はパラアスリート用ではない」「このデザインは古い」といった意見が出てきました。ここからデザインを改善しています。また、ギアの動きにもこだわりました」とゲーム制作に関する話もしてくれた。

ビジネスとしてのパラリンピックゲーム

JP GAMESの田畑氏は「本ゲームを制作するきっかけは前国際パラリンピック委員会のCEOであるハビエル・ゴンザレス氏の言葉でした」と振り返る。

スクウェア・エニックス・グループを離れた後、田畑氏ゴンザレス氏から「パラリンピックのゲームを作らないか」と声をかけられた。だが同時に、ゴンザレス氏は「私自身はあまりゲームに対してポジティブなイメージはない。パラリンピックをゲームにするのはどうなのか、とも思う」と打ち明けられたという。

しかし、この言葉で田畑氏はパラリンピックのゲーム化にチャレンジすることを決めた。

とはいえ、ゲームをビジネスとして考えた時、田畑氏は楽観的な考えはなかったという。

「国際パラリンピック委員会のYouTubeチャンネルの動画の再生数を過去にチェックしたところ、大体200ほどでした。ロンドンパラリンピックなどの注目度の高い動画でも数千程度でした。この状態でパラリンピックのゲームを出しても遊んでくれる人はそんなにいないでしょうし、収益は見込みづらいと考えました」と田畑氏。

そこで本ゲームを「ゲーム」と「ビジネス」という2つの側面で回すことにした。

田畑氏は「ゲームはゲームとして世に出すのですが、本ゲームで培った技術基盤を企業向けのサービスとしてリリースすることで、長期的なビジネスとして回すことにしました。こちらは2020年ベータ版をリリース済みです」と語る。

カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:JP GAMESパラリンピックオリンピックモバイルゲーム多様性インクルージョン日本

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TechCrunch Japan

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