有名アスリートと一緒にトレーニングできるアプリ「Masters」

Mastersアプリのアスリートたち(画像クレジット:Masters)

2022年の現在は、スマートフォンのアプリの中でレッスンを受けて有酸素運動をしたり、筋肉を鍛えたりするアプリが実にたくさんある。(IPOした)Peloton(ペロトン)のようなプラットフォームの成功はよく知られているが、もちろん、900万ポンド(約14億円)を調達したFiiT(フィット)や、990万ドル(約11億3000万円)を調達したFitplan(フィットプラン)などの新興企業もある。加えて、コーチが自分でコースを作成するMoxie(モクシー)もある。しかし、いまだにあまり開拓が進んでいないのが、セレブリティフィットネスのクラスだ。MasterClass(マスタークラス)は、ハイアートの分野ではほぼ市場を掌握しているが、セレブリティフィットネスは相対的に未踏の分野である。もちろん、有名人が自分のフィットネスアプリを作ることはあるが、その魅力は限られており、有名人にとっては副業に過ぎない。

しかし今、2021年にベータ版を公開した新しいスタートアップ企業が、エリートアスリートから筆者のような凡人がトレーニングを受けられるプラットフォームになることを目指している。

Masters(マスターズ)」は、ユーザーが世界で最も有名なアスリートたちと一緒にトレーニングを行い、4週間のガイド付きオンデマンド・トレーニング・プログラムを通じて、彼らの仕事の秘訣を学ぶことができるアプリだ。

このスタートアップ企業は先日、シードラウンドで270万ドル(約3億900万円)の資金を調達した。このラウンドはKing.com(キング・ドットコム)創業者のファンドであるSweet Capital(スイート・キャピタル)が主導し、Mucker Capital(ムッカー・キャピタル)、Goodwater Capital(グッドウォーター・キャピタル)、Luxor Capital(ラクサー・キャピタル)が参加した他、Shaun White(ショーン・ホワイト)選手、Bam Adebayo(バム・アデバヨ)選手、Kai Lenny(カイ・レニー)選手、A’ja Wilson(エイジャ・ウィルソン)選手などのアスリートや、Anton Gauffin(アントン・ガウフィン)氏、Jakob Joenck(ヤコブ・ヨーンク)氏、Henrik Kraft(ヘンリク・クラフト)氏、Greg Tseng(グレッグ・ツェン)氏、Prerna Gupta(プレーナ・グプタ)氏、Hank Vigil(ハンク・ヴィジル)氏、Janis Zech(ジャニス・ツェッヒ)氏、Andreas Mihalovits(アンドレアス・ミハロビッツ)氏などのプロフェッショナル技術系エンジェル投資家もエンジェルキャッシュを投じた。

同社はすでに何人もの世界的に有名なアスリートと契約を結んでいる。例えば、X GAMES(エックスゲームズ)と3度のオリンピックに出場したスノーボードチャンピオンのショーン・ホワイト選手、3000メートル障害の世界チャンピオンで9度の全米チャンピオンであるEmma Coburn(エマ・コバーン)選手、サーフィンの世界チャンピオンであるカイ・レニー選手、サッカー界のスーパースターでゴールデンボールを獲得したAda Hegerberg(エイダ・ヘガーバーグ)選手、ウィンブルドンで2度の優勝を果たしたテニスチャンピオンのPetra Kvitova(ペトラ・クビトバ)選手などだ。

MastersのCEO兼共同設立者であるGreg Drach(グレッグ・ドラック)氏は次のように述べている。「学習の将来性とは『最高の人から学ぶ』ことであり、同じようにトレーニングの将来性は『最高の人と一緒にトレーニングする』ことです。優秀なトレーナーが指導する対面式のグループエクササイズクラスに10人が参加できるなら、オリンピックメダリストやNBAレジェンドが指導するバーチャルクラスには1000人、1万人が参加できるはずです。私たちの目標は、そんな勝利の方法を、誰もが取り入れることができる実践的なプログラムに変換することです」。

Mastersアプリ 画像クレジット:Masters

Mastersは現在、iOSアプリとして配信されている。各コースはコホートベースで、同じ道のりを歩む同輩と一緒に参加することになる。レッスンは高品質の動画で提供される。

このスタートアップ企業は、都市型ランニングコミュニティ「Midnight Runners(ミッドナイト・ランナーズ)」創業者のグレッグ・ドラック氏とChristian Dorffer(クリスチャン・ドーファー)氏、そして2020年にReddit(レディット)に買収されて2021年廃止された動画共有アプリ「Dubsmash(ダブスマッシュ)」の元CTO / 共同創業者だったDaniel Taschik(ダニエル・タシク)によって2021年に設立された。

Sweet CapitalのRiccardo Zacconi(リカルド・ザッコーニ)氏は次のようにコメントしている。「私はいつも、最高のプロスポーツ選手がトップに立つためにどんなことをやっているのかを知りたいと思っていました。例えば、彼らは実際にジムに行って何をしているのか?Mastersは、彼らのルーティンを、誰にでもできる具体的なプログラムに落とし込むことに成功し、多くの人の心に強く訴えたのです」。

Mastersが今回のラウンドで調達した資金は、新たなアスリートとの契約、Androidアプリの立ち上げ、製品の改良のために使われる予定だ。

ドーファー氏は筆者にこう語った。「人々は、テレビやソーシャルメディア、印刷物、オーディオブックなどで、スポーツ界のアイドルを追いかけるのが好きです。Mastersはまったく新しい出版フォーマットであり、私たちはこれを『インタラクティブ・トレーニング・ドキュメンタリー』と呼んでいます。私たちは、このプレミアムな教育フォーマットこそが未来であり、従来の悠長に構えたビデオフォーマットは競争に苦戦することになると信じています」。

 

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

パラリンピック公式ゲーム「The Pegasus Dream Tour」登場、ファンの増加、多様性への理解を進める

日本のゲーム開発スタジオJP GAMESは、世界初のパラリンピック公式ゲームとなるスマートフォン用タイトル「The Pegasus Dream Tour(ザ ペガサス ドリーム ツアー)」の配信(iOSAndroid)を開始した。

本ゲームはアバターRPGだ。オンライン仮想都市ペガサスシティを舞台に、プレイヤーが心を持ったキャラクター「Mine」をサポートし、他のプレイヤーと交流しつつ、実在のパラスポーツを楽しみながら、パラアスリートとして成長させることを目的とする。プレイヤーはアバターを操作し、ゲーム内キャラクターであるMineをサポートする。自律的に動くMineに、「他のプレイヤーと話した方がいい」「今日のコンディションを改善するためにこれをやった方がいい」といったアドバイスを行う。

舞台となるペガサスシティには、アスリートカフェ、アスリートジムなど、さまざまな施設があり、プレイヤーのアドバイスでMineがどこに行くか、何をするのかが決まる。

本ゲームでは、パラスポーツで遊ぶことができる。リリース段階で遊べるのは陸上とボッチャ(ジャックボールという白いボールに、赤青各6球を投げたりすることで、どれだけ近づけるか競うスポーツ)の2種目だ。2021年8月には車いすバスケ、車いすレース、ブラインドサッカーが追加予定。以降、順次追加される予定だ。ゲームには実在のパラアスリート9名がペガサスシティで活躍する選⼿として登場する。パラアスリートとの会話や対戦ができるクエストも順次配信予定となっている。

また、ゲームには、ペガサスシティ市長代理としてドラえもんも登場する。オリジナルの秘密道具も登場し、リリース時点ではプレイヤーの写真を撮影し、ペガサスシティ上のMineを⽣み出すアバターカメラと、PEG(Personal Ecosystem Guide)という多忙な市⻑代理であるドラえもんに代わり、Mine1人ひとりにつくパーソナルガイドの2つ。リリース後、他のものも登場する予定だという。さらに、フィギュアスケート選手の羽生結弦選手が本ゲームのアンバサダーに就任している。

ゲームを通してパラリンピックの認知を広めたい

「The Pegasus Dream Tour」の配信に際し、発表会も行われた。JP GAMES COプロデューサー⾨⽥瑛⾥氏、アートディレクターの⽯崎晴美氏、同代表取締役CEOの⽥畑端氏、国際パラリンピック委員会理事⼭脇康氏、ブリヂストンオリンピック・パラリンピック推進部鳥山聡子氏がゲームに対する思いを語っている。

国際パラリンピック委員会理事の山脇氏は「パラリンピックのファンを増やす方法に課題を抱えていました。パラリンピックに興味のない層にリーチすることは非常に難しいことです」と語る。

しかし、ゲームであれば、パラリンピック自体にあまり興味がない層にリーチできる可能性がある。

「このゲームであれば、パラスポーツで楽しんでもらうだけでなく、違いや多様性を認めて共生するというパラリンピックのビジョンにも触れてもらえると思います。ワクワクしながら、楽しみながら、共生社会、ダイバーシティ&インクルージョンを理解を深めて欲しいです」と山脇氏は期待を語った。

本ゲームのファーストスポンサーであるブリヂストンの鳥山氏は「なぜブリヂストンがゲームのスポンサーになったのか、ピンとこない方もいるかもしれません。当社はオリンピック、パラリンピックのワールドワイドパートナーです。ゲームを通してパラリンピックが目指す共生社会を目指す姿勢に共感しました。このゲームでダイバーシティ&インクルージョンを直感的に感じてもらいたいと考えています。ゲームにはブリヂストン・アスリート・アンバサダーが5人参加しています。ゲーム、エンターテインメント、パラリンピックが協力すると何ができるのかを見て欲しいですね」と協力の背景を話した。

また、アートディレクターの⽯崎氏は「パラアスリートからのフィードバックもゲームの中で生かされています。例えば、ギア(義足や義手)のデザインをアスリートに見てもらったところ、「この形はパラアスリート用ではない」「このデザインは古い」といった意見が出てきました。ここからデザインを改善しています。また、ギアの動きにもこだわりました」とゲーム制作に関する話もしてくれた。

ビジネスとしてのパラリンピックゲーム

JP GAMESの田畑氏は「本ゲームを制作するきっかけは前国際パラリンピック委員会のCEOであるハビエル・ゴンザレス氏の言葉でした」と振り返る。

スクウェア・エニックス・グループを離れた後、田畑氏ゴンザレス氏から「パラリンピックのゲームを作らないか」と声をかけられた。だが同時に、ゴンザレス氏は「私自身はあまりゲームに対してポジティブなイメージはない。パラリンピックをゲームにするのはどうなのか、とも思う」と打ち明けられたという。

しかし、この言葉で田畑氏はパラリンピックのゲーム化にチャレンジすることを決めた。

とはいえ、ゲームをビジネスとして考えた時、田畑氏は楽観的な考えはなかったという。

「国際パラリンピック委員会のYouTubeチャンネルの動画の再生数を過去にチェックしたところ、大体200ほどでした。ロンドンパラリンピックなどの注目度の高い動画でも数千程度でした。この状態でパラリンピックのゲームを出しても遊んでくれる人はそんなにいないでしょうし、収益は見込みづらいと考えました」と田畑氏。

そこで本ゲームを「ゲーム」と「ビジネス」という2つの側面で回すことにした。

田畑氏は「ゲームはゲームとして世に出すのですが、本ゲームで培った技術基盤を企業向けのサービスとしてリリースすることで、長期的なビジネスとして回すことにしました。こちらは2020年ベータ版をリリース済みです」と語る。

カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:JP GAMESパラリンピックオリンピックモバイルゲーム多様性インクルージョン日本

TikTokの好敵手Kuaishouが全世界でMAU10億人突破、東京オリンピックの放映権獲得

TikTok(ティックトック)の中国での最大のライバルであるKuaishou(クアイショウ、快手)にとって、現地時間6月23日は特別な日となった。海外では動画アプリ「Kwai」で知られる中国のショートビデオ企業は、月間アクティブユーザー数(MAU)が10億人を突破したと発表した。

それはどのくらいの規模なのか?FacebookのMAUは2021年3月時点で28.5億人だった。TikTokは2021年中に12億MAUを超えると予測されており、その中国版Douyin(抖音)は2020年9月にすでに6億人のデイリーユーザー(DAU)を獲得したと発表している。つまり、Kuaishouにはまだ追いつく余地があるということだ。

中国はKuaishouの主要な市場であり続ける。同社の海外のMAUは第1四半期に1億人を突破し、その間に「南米や東南アジアでの戦略を進めた」ことで、2021年4月には1億5000万人にまで急増したと、同社は決算説明会で述べている。

香港に上場しているKuaishouの株価は、6月23日に6%以上も上昇して1株あたり200香港ドル(約2860円)近くになり、時価総額は約8300億香港ドル(約11兆8640億円)に達したが、それでも2021年2月のピーク時の415香港ドル(約5930円)を大きく下回っている。

Kuaishouの世界進出は、海外市場で躍進している中国のインターネット企業はByteDance(バイトダンス)だけではないことを思い出させてくれる。中国のJoyy(ジョイ)が所有するBigoはインドで非常に人気のあるライブビデオアプリだったが、現地政府によって禁止されてしまった

Kuaishouの創業者兼CEOのSu Hua(宿华)氏は23日の記者会見で「Kuaishouは2011年からパイオニアとして、世界中のインターネットユーザーに自分のライフストーリーを記録し、共有する機会を提供してきました」と述べるとともに、同アプリが東京2020オリンピックの公式放映権を獲得したことを発表した。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Kuaishou中国SNSオリンピックアプリ東京オリンピック

画像クレジット:Kuaishou’s Kwai app

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)