フランスが12.5兆円の経済刺激策を発表、デジタル分野に8790億円注入

フランス政府は現地時間9月3日、経済回復を促す1000億ユーロ(約12兆5500億円)の景気刺激策を発表した。この額はフランスのGDPの4%に相当する。刺激策の一環として、政府はかなりの額をスタートアップ投資、インフラ投資、デジタルトランスフォーメーションといったデジタル関係に注ぐ。

筆者は詳細を求めてフランスのデジタル大臣であるCédric O(セドリック・オ)氏にインタビューした。結論からいうと、フランスはデジタル投資に70億ユーロ(約8790億円)を充てる。これは今後2年間の新規投資計画だ。

2020年初めに展開された経済救済計画とは異なるものとなる。経済救済は、経済危機初期の急場しのぎのものだった。

「70億ユーロという額で、デジタル部門は環境部門を除く全部門の中で最も大きな投資を受けるということだ」とセドリック・オ氏は述べた。

フランスのデジタル相であるセドリック・オ氏。画像クレジット:Ludovic Marin / AFP / Getty Images

テックスタートアップへの投資

10年前、フランス政府は科学的研究からR&D支出に至るまで、イノベーションに焦点を当てた投資プログラムを立ち上げた。政府は4回目のプログラムを実施する。

これは110億ユーロ(約1兆4000億円)の投資計画で、多くの事業をカバーする。しかし8億ユーロ(約1000億円)近くは今後数年間のスタートアップへの国庫補助に充てられる。

「かなりの増加だ」とセドリック・オ氏は話した。「(公的投資銀行の)Bpifranceが管理するイノベーション補助をみると、60%増加している。スタートアップはすでにそうしたスキームが本当にいいものだと知っている。すぐさまインパクトが出てくるだろう」。

加えて、イノベーションプログラムの一環として、フランスは今後5年間で25億ユーロ(約3140億円)スタートアップに投資する。Bpifranceが従来のVCファームとして介在する。

直接投資戦略についての詳細は今後明らかになるが、サイバーセキュリティや量子コンピューティング、環境技術などへの垂直的な投資が予想される。

ファンド投資戦略の資金に関しては、最終目標は2つある。シードラウンドやシリーズAラウンドにフォーカスした小規模のVCファンドへの投資の維持と、レートステージファンドでのギャップの解消だ。

「危機はより多くの起業家が絡み、整理統合があり、そして機会がある移行期だ。フランスの企業が、外国企業に買収されるのではなく合併するようにしたい」とセドリック・オ氏は話した。

テックエコシステムへの現金の注入は、フランスのテック大企業がさらに多くの資金を得て中小企業を買収できることを意味する。政府によると、公共投資を通じての比較的大きなスタートアップのサポートは広範に渡ってテックエコシステムに恩恵をもたらしえる。そうでなければ、Google(グーグル)やFacebook(フェイスブック)といったテック大企業が将来性のあるフランスのスタートアップを買収するだろう。

テック部門と経済全般のギャップを橋渡し

過去3年間、寛大な政策でフランスのスタートアップをサポートし、その一方で市民の大半が恩恵を受けられていないと多くの人がEmmanuel Macron(エマニュエル・マクロン)大統領を批判した。だからこそ、今回の刺激策はテックスタートアップだけに焦点を当てたものではない。

「将来のためにかなりの投資をし続けなければならない。しかしそうした投資からみんなが恩恵を受けるものにしなくてはならない」とセドリック・オ氏は述べた。

スタートアップは他の企業よりも多く雇用するが、往々にして探しているのはエンジニアやデータサイエンティスト、顧客サクセスマネジャーだ。多くの人が失業に直面することを考慮し、政府はテック部門の教育に3億ユーロ(約380億円)を充てる。

また、大半のフランス企業がテック企業ではないため、政府は中小企業のデジタルトランスフォーメーションに3億8500万ユーロ(約480億円)を注ぐ計画だ。

デジタルトランスフォーメーションというのは極めて広汎だ。デジタルインボイスの導入から、eコマース店の立ち上げ、工業生産のための最新設備の購入などまで広くカバーする。かなり細分化されたマーケットであり、刺激策で最も困難な部分となりそうだ。

「この計画の運用は我々が体験する大きな課題の1つとなるだろう。フランスには300万もの企業があり、うち半分の150万は中小企業だ。そうした企業にアクセスすることはこれまでは困難だった」とセドリック・オ氏は話した。

中小企業に加え、自動車メーカーと航空業界にはデジタルトランスフォーメーションで2億ユーロ(約250億円)が注がれる。

政府はまた、高齢者のサポートを行う公的機関のデジタルインクルージョンと、管理事務の簡素化に2億5000万ユーロ(約310億円)を充てる。フランスは過去にもデジタルインクルージョンに予算を組んだが、前回の規模はわずか1500万ユーロ(約19億円)だった。

他にインフラへの公的支出がある。ファイバーネットワークへの2億4000万ユーロ(約300億円)、広報システムの近代化に17億ユーロ(約2130億円)などだ。

全体的に刺激策は野心的な内容だ。スタートアップは何かしら新たな国庫補助や投資機会を利用する方法を見つけるだろう。従来の企業も同様に恩恵を受けることを望む。

関連記事:フランスが新型コロナで打撃を受けるスタートアップ救済に約4780億円注入

カテゴリー:ニュース

タグ:フランス

画像クレジット: Ludovic Marin / AFP / Getty Images

原文へ
(翻訳:Mizoguchi