12月開催のSight Tech Globalでメガネに取り付ける視覚障がい者支援デバイスのOrCam開発者が講演

テクノロジーの進化をデバイスの小型化と性能で測るなら、イスラエルのOrCam Technologiesは好調だ。同社のOrCam MyEyeはメガネのつるにフィットし、これまでの同種の製品よりずっとパワフルで小さい。2020年7月にAIベースの新しいスマートリーディング(PR Newswire)ソフトウェアがリリースされて、このデバイスはテキストやラベルを「読む」だけでなく、名前で人を特定したり周囲の重要なものごとを説明したりできるようになった。AIベースのスマート音声アシスタントで、主に視覚障がい者であるユーザーとやりとりをすることもできる。

バーチャルイベントのSight Tech Globalで、OrCamの共同創業者で共同CEOのAmnon Shashua(アムノン・シャシュア)教授が講演をする。2020年12月2~3日にバーチャルで開催されるこのイベントは、AI関連テクノロジーが障がい者支援技術やアクセシビリティに今後どのような影響を与えるかをテーマとする。参加は無料で、現在事前登録を受け付けている

シャシュア氏はテクノロジーの世界では傑出した存在だ。OrCamの共同創業者であることに加え、自動車の安全性向上や自律運転ナビゲーションのためのコンピュータビジョンのセンサーとシステムを提供するMobileyeの創業者でもある。Mobileyeは2017年に、Intelに153億ドル(約1兆6300億円)で買収された。これはイスラエル企業の単一の買収としては史上最大規模だ。

シャシュア氏はおばの勧めでOrCamを始めた。視力を失いつつあったおばは、甥のシャシュア氏に科学者、そしてAIの専門家としての並はずれた才能を生かして助けて欲しいと願っていた。シャシュア氏はその目標を胸に、共同創業者のZiv Aviram(ジブ・アビラム)氏とともに2010年にOrCamを始めた。同社はIntelなどの投資家から1億3040万ドル(約138億3500万円)を調達し(Reuters記事)、OrCam MyEyeデバイスを50カ国以上、数万人のユーザーに販売している。OrCam MyEyeの米国での価格は3900ドル(約41万円)で手頃な価格ではないが、同社は生産が増えればデバイスの価格は今後下がっていくとしている。

障がい者支援技術の新時代を迎え、オフラインで動作する軽量のOrCam MyEyeのアプローチは挑戦的なものだ。このデバイスはTIMEのBest Invention of 2019に選出されている(TIME記事)。高度なセンサーと電子機器の小型化は、支援技術の基盤となるこじんまりとしたセンサーアレイにつながるだろうか?AIベースの自然言語処理は必要に応じて連携して動作する、多目的でカスタマイズ可能なパーソナルアシスタントにつながるだろうか?

「OrCamの計画では、究極の支援技術はコンピュータビジョンと自然言語処理のバランスをうまくとったものでなくてはならない。例えば最近公開した『スマートリーディング』機能は、どのテキスト情報を抽出してユーザーに伝えるかをデバイスに教えるためにNLP(自然言語処理)を利用している。ユーザーはNLPを利用して、自分が何を知りたいかを正確に指定できる。その例として、最近搭載した『オリエンテーション』機能を使うとユーザーはデバイスに対して、シーンの中にあるオブジェクトを説明しそのオブジェクトに向かって音声でガイドするようにと指示することができる。『オリエンテーション』機能は語彙の面でも、『トイレの看板が見えたら教えて』というような探索の面でも、見えている範囲の中で空いている場所はどこかという障害物回避の面でも向上している。こうした要求を実現するための技術的な課題は、コンピューティングとアルゴリズムの進歩にまさに大きく依存している」とシャシュア氏は語る。

さらにシャシュア氏は語る。「私のいう『コンピューティング』とは、処理性能を小型化する傾向がますます強くなり、小さなバッテリー駆動のフットプリント上で高度なアルゴリズムを動かせるようになるということだ。私のいう『アルゴリズム』とは、人間の知性を模倣するディープテックがますます高度になるということだ。この2つが組み合わされて、視覚障がい者支援技術の将来に強い影響力がもたらされる」。

シャシュア氏は1985年にテルアビブ大学で数学とコンピュータサイエンスの学士を取得し、1989年にワイツマン科学研究所でコンピュータサイエンスの修士号を取得した。1993年にはマサチューセッツ工科大学(MIT)の人工知能研究所に勤務しながら脳・認知科学の博士号を取得した。

Sight Tech Globalは12月2〜3日に開催されるバーチャルイベントで、参加は無料だ。現在、事前登録を受け付けている

Sight Tech Globalではスポンサーを募集している。現在はVerizon Media、Google、Waymo、Mojo Vision、Wells Fargoがスポンサーとなっている。イベントはボランティアによって運営され、イベントの収益はすべてシリコンバレーにあるNPOのVista Center for the Blind and Visually Impairedの収入となる。

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タグ:アクセシビリティ OrCam

画像クレジット:Jonathan Hepner

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(翻訳:Kaori Koyama)

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TechCrunch Japan

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