ロサンゼルスが気候変動対策でカーボンアカウンティングを導入

ロサンゼルス市は2021年3月初め、同市のカーボンフットプリント(二酸化炭素排出量)を把握する新たなソフトウェアとモニタリングのテクノロジーを展開するために、実行可能性調査の準備をさまざまな部門に課した最新の都市となった。

議員Paul Koretz(ポール・コレッツ)氏が主導したロサンゼルスの市議会イニシアチブは、カリフォルニア州の動きに続くものだ。同州は州内で事業展開する年間売上高が10億ドル(約1089億円)を超える全事業所に温室効果ガスの排出量を公開し、排出を減らすための科学ベースの目標を設定することを義務付けた。

カリフォルニア州はグローバル気候変動の破壊的な影響を実感している唯一の州ではないが、原因に取り組もうという試みにおいては最も積極的だ。その試みが電力供給から化石燃料を排除するかなりの努力なのか、気候変動への影響に対して事業所に責任を持たせる提案なのかはさておき、カリフォルニア州は気候変動の影響を和らげ、温室効果ガスの生産を反転させることができる新たなテクノロジーやサービスの受け入れを促進しているという点でリーダーだ。

ロサンゼルスは今回の取り組みで、そうした勢いに乗りたいと考えており、積極的にカーボンアカウンティング(事業活動における二酸化炭素の排出量や削減量を計算すること)でサポートを得られるテック企業を探している。

これは、CarbonChainPersefoniClimateViewSINAI Technologiesといった企業にとってはいい取り組みだ。これらの企業はカーボンアカウンティングとマネジメントをサポートするプロダクトを展開している。

これは、10億ドル規模の予算を持つ一部の大都市が、市民を脅かす気候変動にどれくらい関与しているかをこれまで以上にコントロールするのに必要なツールにその対価を支払うことを示している。

ロサンゼルスでは市議会が、同市のカーボンフットプリントの正確な把握を提供するテクノロジーの開発または購入の実行可能性を報告するよう、ロサンゼルス衛生局と主任立法分析官にタスクを課した。

「ロサンゼルス市は照明から市庁舎、施設、街灯の維持、道路の舗装、輸送車両の展開、送水、再生処理施設の運営に至るまで数多くのサービスを提供しています。これらはすべて環境負荷をともないます」と議員のコレッツ氏は2021年3月初めの声明で述べている。「もし我々が二酸化炭素削減の目標に真剣に取り組み、ロサンゼルス国際空港やロサンゼルス港の周辺の問題に直面しているコミュニティの暮らしに真の違いをもたらしたいのなら、より良い、そしてより一貫性があり、さらに透明性のある二酸化炭素排出のアカウンティングが必要です」。

ロサンゼルスは気候変動と気候に優しい政策を政治的な議論の中心に持ってこようと着実に取り組んできた。約2年前の2019年7月にロサンゼルスは気候非常事態の部署を設け、Eric Garcetti(エリック・ガーセッティ)市長は市民団体の指導者と市長室、市議会の活動を調整するために気候非常事態動員事務所を立ち上げた

説明責任の計画に予算は配分されなかったが、市議会の計画に詳しい人は2021〜2022年の予算から配分が始まると予想している。

ロサンゼルスは過去にカーボンフットプリントの解決を試みたが、それは成功しなかった。過去の排出量データを使って調査が行われ「スコープ3」排出量は含まなかった。スコープ3は市の事業向けのサービスプロバイダーが出している温室効果ガスに関連している。

ロサンゼルス市は気候変動への助長についての説明責任とメトリクスを提供する能力の改善に目を向けていて、ニューヨーク市が設定した基準を参考にするのも悪くない。ブルームバーグ政権下では、カーボンアカウンティングと復元性のある対策が最優先事項になった。ニューヨーク市が気候や天候関連の災害にかなりさらされていることをハリケーン「サンディ」が明白にした前のことだ。

2012年のハリケーン「サンディ」ではカリブ諸国からカナダにいたるまでの8カ国で700億ドル(約7兆6248億円)の被害をもたらし、233人が亡くなった。

この大災害によってニューヨーク市は気候変動対策に一段と積極的に取り組むと固く決心した。同市は市の事業から出る排出量のしっかりとしたアカウンティングプログラムを持っており、既存の環境、輸送、産業から排出される温室効果ガスを削減するために市全域に政策を適用して前に進めている。

「データは決定の原動力となり、データなしではゼロエミッションの未来に向けた道を描くことはできません」と議員のJoe Buscaino(ジョー・ブスカイノ)氏は述べた。「今日の世代のリーダーたちは引き続き緊急性を持って気候変動に取り組み、ロサンゼルスのために設定した目標に対して責任を持たなければなりません。そしてこの動きはそうした取り組みへと導きます」。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:ロサンゼルス気候変動カーボンフットプリント

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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