ロバート・ダウニー・Jr氏が持続可能性スタートアップを支援するローリングベンチャーファンド設立

2年足らず前、俳優でプロデューサー、投資家のRobert Downey Jr(ロバート・ダウニー・Jr)氏が持続可能性に特化したプロジェクトFootPrint Coalition(フットプリント・コーリション)をAmazon(アマゾン)のre:MARSカンファレンスで発表したとき、それは統計情報ウェブサイトと購読申し込み程度だった。

ときは変わり、現在、同組織は5つの投資先企業と非営利プロジェクトを有し、Footprint Coalition Venturesと名づけたローリングベンチャーファンドを国際経済フォーラムのDigital Davos event(デジタル・ダボス・イベント)でスタートする。

AngelListが管理するこの新たなローリングファンドを擁して、ダウニー・Jr.氏のプロジェクトは世界経済を作り変える2大アイデアの交差点に位置を構える。資金利用と投資手段の民主化、および世界の産業を脱炭素化する10兆ドル(約1043兆円)のチャンスだ。

これは、物語と投資と非営利活動の組み合わせで世界の気候危機と戦おうとしている同プロジェクトの新たな秘策だ。

ローリングファンドと金融革命

まさに今、金融界に革命が起きている。Redditユーザーたちは空売り人や大物機関投資家のBlockbuster(ブロックバスター)、Nokia(ノキア)、GameStop(ゲームストップ)、AMCなどへの投資を巡って起きている不正行為に対する報復を試み、新しいクラウドファンディングとローリングファンドが、一般投資家によるアーリーステージ企業への融資を可能にするなど、ウォール街の状況は明らかに変化している。

そして、公開市場のギャンブルが何人かの新たな億万長者を生んでいる一方で、興味深いスタートアップへの投資機会を開くことは、デイトレードギャンブルに対する不信感とは著しく対照的だ。

どちらも投資家をマイナスで終わらせる可能性があるが、ローリングファンドやクラウドファンディングには、何かを作り出す真のチャンスがあり、単に権力に反旗を翻すこととは違っている。

伝統的ベンチャーファンドと異なり、ローリングファンドは四半期ごとに新たな資金を約束し、順次投資していくため、「ローリング」と呼ばれる。投資家は最低1年の約束で四半期単位で投資を行う。ダウニー・Jr.氏のファンドでは、約束は四半期当たり5000ドル(約52万円)で最大2000名の適格投資家(少数の認定投資家を含む)が参加できる、と同団体の計画に詳しい人物は話している。

「浮世離れした大物機関投資家ではなく、リアルな人々にファンドを開放するというアイデアは、サンダンス映画祭よりスラムダンス映画祭に近いもので、私は気に入っています」。

FootPrint Coalition Venturesを知るためのガイド

FootPrint Coalition Venturesは、アーリーステージとレイトステージ投資に分かれていて、アーリーステージ企業には年間6回、レイトステージ企業には4回投資する。

ダウニー・Jr.氏が経営を支援するのは、Jonathan Schulhof(ジョナサン・シュルホフ)氏らの投資家で、シュルホフ氏は以前LOOM Mediaを設立して広告のスマート都市インフラストラクチャーを構築、Motivate Internationlを設立して米国各都市で自転車シェアサービスを運営し、Global Technology Investmentsではマネージングパートナーを務めた。他には、ダウニー・Jr.氏のメディア制作会社 Team Downeyとメディアテクノロジー企業に投資するDowney Venturesの共同ファウンダーであるSteve Levin(スティーブ・レビン)氏もいる。

同社のポートフォリオには、ファウンダーら自身の資産を使って投資を行った企業がすでに4社ある。これらの投資はいずれも100万ドル(約1億400万円)以下だが、資金が集まるつれて約束する金額は増やしていく予定だという。Footprint Coalitionは、プロラタ投資の権利も持っており、将来出資額を増やすことができる。また、これまでに行った投資は、将来もっと高い評価額で追加出資する可能性を見越した規模になっている。

組織内のベンチャーファンド

ダウニー Jr.氏が作りたい組織は、単なる投資部門ではない。同氏も共同ファウンダーたちも、投資についてダウニー・Jr.氏が築きあげた膨大な支持層と彼らが映画ビジネスで過ごした何十年の間に培った話術を活かす幅広いプラットフォームのごく一部だと考えている。

チームには、CAA Foundationの前の責任者だったRachel Kropa(レイチェル・クロパ)氏も加わり、科学的・慈善的活動を指揮し、ファンドのインパクトアドバイザー兼科学・研究コミュニティ窓口を務めると声明には書かれている。

「私たちが作った、コンテンツを個人に結びつけることができるというアイデアは非常に強力です」とクロパ氏はいう。「この問題は実に頑強で世界中が関係しています。自分の食べる魚が持続可能な餌で育てられていることは重要です」。

クロパ氏は、FootPrint Coalitionが持続可能な水産養殖に関連して発表した記事を引き合いに出している。この記事は、コオロギのタンパク質を飼料や人間の食料に利用するために製造している企業であるŸnsect(インセクト)にFootPrint Coalitionが最近出資したというものだ。

「私たちの細胞農業に関するコンテンツは、特定の産業を深く掘り下げる過程で作ることができるコンテンツの典型例です。この分野への投資はまだ行っていませんが、伝えるべき興味深い物語がそこにはあると信じています」と同社で働く人物が語った。

そのメディアはグループの視聴者を活性化させる付加要素で、お金をとるものではなく、投資価値の一部と考えるものでもない。「私たちはビデオクリップにロバート(ダウニー・Jr.氏)の声をかぶせ、アニメーションを重ねた編集作品を制作し、すべてソーシャルメディアに投稿してきました。企業とは自由な関係で、お金をとったり何らかのリターンを要求することはありません」とその人物は述べた。

奇妙な科学と持続可能性

ŸnsectはFootPrint Coalitionが支援する会社の中でも、ダウニー・Jr.氏の支持者の大部分が描くものとは少々異なることを行っている一例たが、竹由来のトイレットペーパーを作るCloud Paperや持続可能性に焦点を当てた金融サービス会社のAspirationへの投資は、消費者と明確な結びつきがある。

このバランスこそ、会社の目的は環境と持続可能性のリターンだけではなく、具体的な利益である、というシュルホフ氏のいう目標の1つだ。

「私たちの目標は意味のある影響力のあるもの、だから私は純粋な資本主義者になります。良い機会であるかどうかという問題は利益率、規模、リスク特性、関わる人々、そして根源的には、投資家に価値を提供できると思うかどうかで決まります」とシュルホフ氏は語った。「私たちはリターンを求めているのです」。

リターンのチャンスは膨大だ。彼らが言うように、ESGセクター(環境、ソーシャル、政治問題に特化したファンド)は急速に成長を続けている。「利害関係者資本主義」への動きの影響もあり、投資ファンド全体は2500億ドル(約26兆1000億円)を超え、持続可能性資産の価値は過去3年間で2倍になった。

「環境を支援する強力なトレンドが2つあります。1つは、魅力的コンテンツとメディア配信によって、1億人ものロバート支持者の中から熱烈なコミュニティが生まれ、その人たちを使ってすばらしい投資を利用できるようにすること。もう1つは、ターンキーテクノロジープラットフォームによって、さまざまな分野の個人投資家を管理できるようになったことてす」とシュルホフ氏が声明で語った。「ベンチャーファンドは伝統的に最低金額が高く、富裕層や寄付や基金団体以外を排除しています。ずっと低い最低金額と短い投資期間を設定することで、私たちは同じ会社群への投資をずっと大きなグループに開放できるようになりました。投資家たちが多くの熱烈な支持者たちにさらに火をつけたとき、正のフィードバックが始まって環境テクノロジーが究極の受益者になることを私たちは望んでいます」。

関連記事:ロバート・ダウニーJrやグウィネス・パルトロウ、マーク・ベニオフはトイレットペーパーに投資している

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:ロバート・ダウニー・JrFootPrint Coalition持続可能性

画像クレジット:Chris Unger/Zuffa LLC / Getty Images

原文へ

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。