エネルギー消費を抑制する電動モーター開発企業にロバート・ダウニー・Jr氏、ビル・ゲイツ氏が支援する企業が投資

とても小さなイノベーションが、グローバル気候変動を食い止めようとする世界の取り組みにかなり大きな影響を及ぼすことがある。間違いなく、これまでの気候変動対策における最大の貢献の1つがLEDライトへの転換だ。LEDライトはビル内のエネルギー消費を減らすことで数億トンもの二酸化炭素排出を減らした。

そしていま、Robert Downey Jr(ロバート・ダウニー・Jr)氏とBill Gates(ビル・ゲイツ)氏が支援する企業が、Amazon(アマゾン)やiPod発明者のTony Fadell(トニー・ファデル)氏のような投資家の仲間入りをしようとしている。グローバル気候変動を減速させるという世界の取り組みにおいて次のすばらしいイノベーションを持っていると確信している、Turntide Technologies(ターンタイド・テクノロジーズ)という会社に資金を注ぐためだ。そのイノベーションとは改良された電動モーターだ。

アーク反応器ほどに派手なものではないが、電球同様にモーターはユビキタスで、19世紀以来、基本的に同じように作動してきた完全に地味なテクノロジーだ。そして電球同様、アップグレードしようとしている。

「我々の地球を元の状態に戻すためのTurntideのテクノロジーとアプローチは、エネルギー消費を直接減らします」とFootPrint Coalitionの共同創業者Steve Levin(スティーブ・レビン)氏は述べた。

ビルのオペレーションは世界の二酸化炭素排出量の40%を占めている、とTurntideは声明に記した。また米エネルギー省によると、商業ビルで使用されるエネルギーの3分の1は無駄遣いだ。スマートビルディングテクノロジーはライトやエアコン、暖房、換気、他の重要なシステムを自動で効率的にコントロールすることでこうした無駄を省くインテリジェントなレイヤーを加えていて、Turntideの電動モーターではさらに節約できる。

だからこそ、投資家らは過去わずか6カ月でTurntideに1億ドル(約107億円)超を投資した。

iPod発明者でNestの創業者かつ元CEOのTony Fadell氏、2017年6月16日、フランス・パリ(画像クレジット:Christophe Morin/IP3/Getty Images)

CEOそして会長としてRyan Morris(ライアン・モリス)氏が率いるTurntideはイリノイ工科大学で最初に開発されたテクノロジーを商業化しようとしている。

Turntideの基本的なイノベーションはソフトウェアでコントロールするモーター、あるいスイッチリラクタンスモーターだ。これはコンスタントな電気の流れの代わりにエネルギーの正確なパルスを使っている。「従来のモーターでは、あなたが望むスピードで絶え間なくモーターに電流を流します」とモリス氏は話した。「我々はあなたがトルクを必要とするときだけ正確な電流量を流します。ソフトウェアで特徴づけられているハードウェアなのです」。

このテクノロジーの開発には11年かかった。モリス氏によると、システムを動かすための処理能力が存在しなかったためだ。

モリス氏は当初、2013年にテクノロジーを買収したMeson Capitalという投資会社に属していた。そしてモーターが実際にパイロット試験で機能できるようになるまでにさらに4年開発にかかった、と同氏はいう。同社は最後の3年を商業化戦略の検討と最初の市場での価値の提供に費やした。その価値とは、世界の気候変動につながっている二酸化炭素の排出の28%を占めている、ビルの暖房換気とクーリングシステムの改良だ。

「我々のミッションは世界中のモーターを取り替えることです」とモリス氏は述べた。

電動モーターが今日使われているところの95%にこのテクノロジーを応用できると同氏は推定しているが、まずはスマートビルディングに注力する。というのも、簡単に始めることができ、エネルギー使用量に対してすぐさま大きな影響を与えるところだからだ。

「我々が行っているカーボンインパクトはかなり巨大なものです」とモリス氏は2020年筆者に語った。「エネルギー削減量は平均で64%になります。もし米国のビルのすべてのモーターを取り替えることができたら、毎年3億トンの二酸化炭素隔離に相当します」。

だからこそロバード・ダウニー・Jr氏のFootprint Coalition、ゲイツ氏のBreakthrough Energy Ventures、そして不動産と建設を専門とするベンチャーファームFifth Wall VenturesはTurntideを支援すべく、 Amazon Climate Fund、ファデル氏のFuture Shape、BMWのiVenturesファンド、他の投資家に加わった。

Turntideは2020年10月にクローズし、米国時間3月3日に明らかになった8000万ドル(約85億6000万円)を含め、これまでに約1億8000万ドル(約192億7000万円)を調達した。

明らかにビルはTurntideが最も注力するところだ。同社は3月2日、カリフォルニア州サンタバーバラ拠点のRiptide IOという小さなビル管理ソフトウェアデベロッパーの買収を発表した。しかし他の大きな産業への応用がある。電気自動車だ。

「2年後、我々のテクノロジーは必ず電気自動車に使われています」とモリス氏は話した。

「我々のテクノロジーは電気自動車産業で大きなアドバンテージがあります。どのEVも電動モーターのパフォーマンスを高めるためにレアアースを使っています。レアアースは高価で、鉱山を破壊し、中国が世界のサプライチェーンの95%を握っています。当社は外国産の材料、レアアース、マグネットは一切使っていません。我々はそれをかなり高度なソフトウェアと計算で取り替えます。ムーアの法則がモーターに適用されるのは初めてです」とモリス氏は語った。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Turntide気候変動投資電動モーターロバート・ダウニー・Jrビル・ゲイツ

画像クレジット:Chris Unger/Zuffa LLC / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

ロバート・ダウニー・Jr氏が持続可能性スタートアップを支援するローリングベンチャーファンド設立

2年足らず前、俳優でプロデューサー、投資家のRobert Downey Jr(ロバート・ダウニー・Jr)氏が持続可能性に特化したプロジェクトFootPrint Coalition(フットプリント・コーリション)をAmazon(アマゾン)のre:MARSカンファレンスで発表したとき、それは統計情報ウェブサイトと購読申し込み程度だった。

ときは変わり、現在、同組織は5つの投資先企業と非営利プロジェクトを有し、Footprint Coalition Venturesと名づけたローリングベンチャーファンドを国際経済フォーラムのDigital Davos event(デジタル・ダボス・イベント)でスタートする。

AngelListが管理するこの新たなローリングファンドを擁して、ダウニー・Jr.氏のプロジェクトは世界経済を作り変える2大アイデアの交差点に位置を構える。資金利用と投資手段の民主化、および世界の産業を脱炭素化する10兆ドル(約1043兆円)のチャンスだ。

これは、物語と投資と非営利活動の組み合わせで世界の気候危機と戦おうとしている同プロジェクトの新たな秘策だ。

ローリングファンドと金融革命

まさに今、金融界に革命が起きている。Redditユーザーたちは空売り人や大物機関投資家のBlockbuster(ブロックバスター)、Nokia(ノキア)、GameStop(ゲームストップ)、AMCなどへの投資を巡って起きている不正行為に対する報復を試み、新しいクラウドファンディングとローリングファンドが、一般投資家によるアーリーステージ企業への融資を可能にするなど、ウォール街の状況は明らかに変化している。

そして、公開市場のギャンブルが何人かの新たな億万長者を生んでいる一方で、興味深いスタートアップへの投資機会を開くことは、デイトレードギャンブルに対する不信感とは著しく対照的だ。

どちらも投資家をマイナスで終わらせる可能性があるが、ローリングファンドやクラウドファンディングには、何かを作り出す真のチャンスがあり、単に権力に反旗を翻すこととは違っている。

伝統的ベンチャーファンドと異なり、ローリングファンドは四半期ごとに新たな資金を約束し、順次投資していくため、「ローリング」と呼ばれる。投資家は最低1年の約束で四半期単位で投資を行う。ダウニー・Jr.氏のファンドでは、約束は四半期当たり5000ドル(約52万円)で最大2000名の適格投資家(少数の認定投資家を含む)が参加できる、と同団体の計画に詳しい人物は話している。

「浮世離れした大物機関投資家ではなく、リアルな人々にファンドを開放するというアイデアは、サンダンス映画祭よりスラムダンス映画祭に近いもので、私は気に入っています」。

FootPrint Coalition Venturesを知るためのガイド

FootPrint Coalition Venturesは、アーリーステージとレイトステージ投資に分かれていて、アーリーステージ企業には年間6回、レイトステージ企業には4回投資する。

ダウニー・Jr.氏が経営を支援するのは、Jonathan Schulhof(ジョナサン・シュルホフ)氏らの投資家で、シュルホフ氏は以前LOOM Mediaを設立して広告のスマート都市インフラストラクチャーを構築、Motivate Internationlを設立して米国各都市で自転車シェアサービスを運営し、Global Technology Investmentsではマネージングパートナーを務めた。他には、ダウニー・Jr.氏のメディア制作会社 Team Downeyとメディアテクノロジー企業に投資するDowney Venturesの共同ファウンダーであるSteve Levin(スティーブ・レビン)氏もいる。

同社のポートフォリオには、ファウンダーら自身の資産を使って投資を行った企業がすでに4社ある。これらの投資はいずれも100万ドル(約1億400万円)以下だが、資金が集まるつれて約束する金額は増やしていく予定だという。Footprint Coalitionは、プロラタ投資の権利も持っており、将来出資額を増やすことができる。また、これまでに行った投資は、将来もっと高い評価額で追加出資する可能性を見越した規模になっている。

組織内のベンチャーファンド

ダウニー Jr.氏が作りたい組織は、単なる投資部門ではない。同氏も共同ファウンダーたちも、投資についてダウニー・Jr.氏が築きあげた膨大な支持層と彼らが映画ビジネスで過ごした何十年の間に培った話術を活かす幅広いプラットフォームのごく一部だと考えている。

チームには、CAA Foundationの前の責任者だったRachel Kropa(レイチェル・クロパ)氏も加わり、科学的・慈善的活動を指揮し、ファンドのインパクトアドバイザー兼科学・研究コミュニティ窓口を務めると声明には書かれている。

「私たちが作った、コンテンツを個人に結びつけることができるというアイデアは非常に強力です」とクロパ氏はいう。「この問題は実に頑強で世界中が関係しています。自分の食べる魚が持続可能な餌で育てられていることは重要です」。

クロパ氏は、FootPrint Coalitionが持続可能な水産養殖に関連して発表した記事を引き合いに出している。この記事は、コオロギのタンパク質を飼料や人間の食料に利用するために製造している企業であるŸnsect(インセクト)にFootPrint Coalitionが最近出資したというものだ。

「私たちの細胞農業に関するコンテンツは、特定の産業を深く掘り下げる過程で作ることができるコンテンツの典型例です。この分野への投資はまだ行っていませんが、伝えるべき興味深い物語がそこにはあると信じています」と同社で働く人物が語った。

そのメディアはグループの視聴者を活性化させる付加要素で、お金をとるものではなく、投資価値の一部と考えるものでもない。「私たちはビデオクリップにロバート(ダウニー・Jr.氏)の声をかぶせ、アニメーションを重ねた編集作品を制作し、すべてソーシャルメディアに投稿してきました。企業とは自由な関係で、お金をとったり何らかのリターンを要求することはありません」とその人物は述べた。

奇妙な科学と持続可能性

ŸnsectはFootPrint Coalitionが支援する会社の中でも、ダウニー・Jr.氏の支持者の大部分が描くものとは少々異なることを行っている一例たが、竹由来のトイレットペーパーを作るCloud Paperや持続可能性に焦点を当てた金融サービス会社のAspirationへの投資は、消費者と明確な結びつきがある。

このバランスこそ、会社の目的は環境と持続可能性のリターンだけではなく、具体的な利益である、というシュルホフ氏のいう目標の1つだ。

「私たちの目標は意味のある影響力のあるもの、だから私は純粋な資本主義者になります。良い機会であるかどうかという問題は利益率、規模、リスク特性、関わる人々、そして根源的には、投資家に価値を提供できると思うかどうかで決まります」とシュルホフ氏は語った。「私たちはリターンを求めているのです」。

リターンのチャンスは膨大だ。彼らが言うように、ESGセクター(環境、ソーシャル、政治問題に特化したファンド)は急速に成長を続けている。「利害関係者資本主義」への動きの影響もあり、投資ファンド全体は2500億ドル(約26兆1000億円)を超え、持続可能性資産の価値は過去3年間で2倍になった。

「環境を支援する強力なトレンドが2つあります。1つは、魅力的コンテンツとメディア配信によって、1億人ものロバート支持者の中から熱烈なコミュニティが生まれ、その人たちを使ってすばらしい投資を利用できるようにすること。もう1つは、ターンキーテクノロジープラットフォームによって、さまざまな分野の個人投資家を管理できるようになったことてす」とシュルホフ氏が声明で語った。「ベンチャーファンドは伝統的に最低金額が高く、富裕層や寄付や基金団体以外を排除しています。ずっと低い最低金額と短い投資期間を設定することで、私たちは同じ会社群への投資をずっと大きなグループに開放できるようになりました。投資家たちが多くの熱烈な支持者たちにさらに火をつけたとき、正のフィードバックが始まって環境テクノロジーが究極の受益者になることを私たちは望んでいます」。

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カテゴリー:VC / エンジェル
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画像クレジット:Chris Unger/Zuffa LLC / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook