不動産テックのHomeLightが収益急増に伴い110億円のシリーズDをクローズ

不動産テックプラットフォームを運営するHomeLight(ホームライト)は9月2日、シリーズDラウンドで1億ドル(約110億円)の資金を確保し、2億6300万ドル(約289億円)を負債で調達したと発表した。

今回のエクイティラウンドでは、リターンを提供したZeev Venturesがリードし、Group 11、Stereo Capital、Menlo Ventures、SoftBank Vision Fund(ソフトバンク・ビジョン・ファンド)のLydia Jett(リディア・ジェット)氏が参加した。今回の資金調達により、サンフランシスコを拠点とするHomeLightは、2012年の創業以来の累計調達額が5億3000万ドル(約583億円)に達した。今回のエクイティファイナンスにより、HomeLightのバリュエーションは16億ドル(約1760億円)となり、2019年11月に発表したシリーズCで、負債と株式で1億900万ドル(約120億円)を調達した際の約3倍となった。

今回の資金調達を担当したZeev Venturesは、2015年のシリーズAもリードした。

HomeLightの創業者でCEOのDrew Uher(ドリュー・ウーヘル)氏によると、今回の資本は、前年比「3倍」成長を待たずにやってきた。同氏は、2021年に同社の年間収益が3倍の3億ドル(約330億円)以上になると予測している。簡単な計算をしてみれば、同社は2020年に約1億ドル(約110億円)の収益を上げたと推測できる。

他の多くの不動産テックプラットフォームと同様、HomeLightは長年にわたりモデルを進化させてきた。同社の初期の製品は、人工知能を使って消費者や不動産投資家をエージェントとマッチングさせることに重きを置いていた。以降、同社はエージェントや住宅販売者へのタイトル・アンド・エスクローサービス(不動産の権利関係の調査や名義書換などを行うサービス)の提供や、販売者とiBuyersのマッチングにまで進出した。2019年7月、同社はEaveを買収し、ますます混み合う住宅ローン融資の分野に参入した。

「私たちの目標は、家を売買するプロセスからできる限りの摩擦を取り除くことです」とウーヘル氏は述べた。

HomeLightは2020年1月、同社の旗艦金融商品となるHomeLight Trade-InとHomeLight Cash Offerを提供し始めた。以降、パンデミックによる後押しもあり、いずれの商品も700%以上成長したとウーヘル氏は話す。

HomeLight Trade-Inは、顧客が引っ越しのスケジュールや取引に関する能力をより自由にコントロールできるようにする。HomeLight Cash Offerは「住宅ローンが必要な場合でも、すべて現金で住宅を購入できる」方法を提供する。

「パンデミックは、当社が創業以来解決しようと力を入れてきた不動産取引プロセスにおける多くの問題点を浮き彫りにしました」とウーヘル氏はTechCrunchに語った。「不動産業界で伝統的な情報の非対称性、時代遅れのプロセス、不合理なコスト、そして足元の記録的な在庫の少なさと史上最高の入札競争は言うまでもなく、世界的なパンデミックによる課題を抜きにしても、家の売買というものは信じられないほど困難を伴うプロセスです」

画像クレジット:HomeLight

そして2020年8月にDisclosures.ioを買収し、HomeLight Listing Managementを立ち上げた。エージェントが物件情報を共有し、買い手の関心をモニターし、オファーの一元管理を容易にすることを目指す。

同社は2021年6月、Lyft(リフト)の会長でTruliaのCFOだったSean Aggarwal(ショーン・アガワル)氏を取締役に任命した。

ウーヘル氏がHomeLightを創業したのは、同氏と妻が、競争の激しいベイエリアの市場で家を買うときに感じた苦痛がきっかけだった。

「サンフランシスコで家を買うプロセスは、壁に頭をぶつけたくなるほどイライラするものでした」とウーヘル氏はHomeLightのシリーズCの際、筆者に話した。「私は、不動産業界には多くの問題があることに気づきました。自分に合った不動産業者を見つけるまでに、何社もの不動産業者を渡り歩きました。だからこそ、見つけたときには、他の買い手と競争して勝ち取る力が湧いてきたのです」

同氏はたった1つの製品でHomeLightを始めた。それはエージェントマッチングプラットフォームだった。「独自の機械学習アルゴリズム」を用いて、何百万もの不動産取引とエージェントのプロファイルを分析するものだ。数百万件の不動産取引とエージェントのプロファイルを分析し、平均で「90秒ごと」に顧客と不動産エージェントを結びつけるという。

ウーヘル氏によると、これまでに何十万ものエージェントがHomeLight社のエージェントネットワークに応募し、米国で100万人以上の住宅購入者および販売者と取引してきた。HomeLightは、不動産業者に取って代わるのではなく、不動産業者と協力して仕事を進めることを目指している。

ウーヘル氏によると、今回の資本は、Trade-In事業およびCash Offer事業を新たな市場に拡大するために使用される予定だ。同社の2つのサービスは、現在、カリフォルニア州、テキサス州、そして最近ではコロラド州でも提供されている。

「できるだけ早く全米に拡大する計画です」とウーヘル氏は語る。「2021年以降も積極的な採用を予定しています」

同社の従業員数は、昨年末の約350人から現在は500人を超えている。現在、アリゾナ州スコッツデール、サンフランシスコ、ニューヨーク、シアトル、タンパにオフィスを構えており、今後数カ月のうちに全米各地に新たな拠点を開設する予定だ。

Zeev Venturesの創業パートナーであるOren Zeev(オレン・ジーブ)氏は、HomeLIghtが他のどの不動産テック企業よりも、エージェントとその顧客の「取引体験を刷新する」という点で優れていると述べた。

「iBuyersの登場や過去10年間に導入されたその他のテクノロジーにより、多くの不動産テック企業はエージェントを取引プロセスから完全に切り離すための製品を開発しています」とジーブ氏はメールで書いた。「HomeLightが競合他社と根本的に異なるのはこの点であり、また優れている点でもあります。彼らは業界に革命を起こすのに最適な位置にいます」。

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画像クレジットIndysystem / Getty Images

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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