互いの顔がパズルで隠されたところから始まるデートアプリを開発したJigsawが、約4億円の資金を調達

「反表面的」なデーティング(出会い系)アプリのJigsaw(ジグソー)が、270万ポンド(約4億円)のシード資金を調達し、米国での事業拡大に向け一歩先んじた。今回のラウンドは、オンライン・デーティング企業の潜在需要発掘を行うRelationship Corp(リレーションシップ・コープ)という会社が先導し、米国と英国の「主に」テクノロジー部門に投資するエンジェル投資家からの支援を受けている。

社名が示すように、Jigsawは出会いの化学変化を求めて他の独身者の写真をスワイプするという業務処理に、「表面的な要素を抑えた」体験を提供することで、少々謎めいた楽しみを追加する。

彼らの(特許を取得した)反表面的な仕掛けは、最初は策略じみているように見え、赤面してしまうかもしれない。これは文字通り、ユーザーの顔の上にデジタルジグソーパズルを重ね合わせ、対話を重ねるごとに徐々にピースが取り除かれていき、アプリ内であらかじめ設定された量のエンゲージメントを達成すると初めて顔が現れるというものだ。

アプリのFAQによると、写真にデジタルフィルターの類を使用することは禁止されており、「本当の」自撮り写真のみとなっている。そのため、可愛い猫耳などを追加したりすることはできない。

同社はまだいくつかのトリックを袖の下に隠しているが、将来の計画はその時が来るまで公開したくないようだ(そのアプリに例えて言うならば、今のところ同社の製品のロードマップは半分完成したジグソーパズルというところか)。

Jigsawは英国のスタートアップ企業で、最高経営責任者を務めるAlex Durrant(アレックス・デュラント)氏と、最高個人情報責任者のMax Adamski(マックス・アダムスキー)氏が、2016年に共同で創設した。彼らは当時、大学生の友人同士だった。数多くのデーティングアプリがあまりにも表面的であるため、人々が不満を抱いていることを発見した彼らは、2018年に仕事を辞めてプロジェクトに専念。2019年にパズルで顔を覆ったデーティングアプリを発表し、昨年11月には米国に進出した。

Jigsawは現時点で、これら2つの市場で約15万人以上の登録ユーザーを抱えており、米国では5万人が登録している。新しい資金が潤沢にある今、彼らは大西洋を越えて本格的な事業展開に乗り出そうとしている。

デュラント氏によると、チームは今後の6カ月間に米国で50万人のユーザーを獲得することを目標にしているとのこと。米国のデーティングアプリでは、表面的なスワイプが少ない傾向にあるため、Jigsawにとって参入の勝算があると彼らは考えている。

「私たちは頭がおかしいわけではないので、人の顔にパズルを重ねたほうがよく見えると思っているわけではありません。パズルは表面的なデーティング業界に向けて私たちが立てた中指です」と、デュラント氏は言う。「パズルはあなたが仰るように、ユーザーが外見を超えてお互いを見られるように、そして、より有意義で持続的な相互作用を推進するために存在しています」。

現在のところ、Jigsawの顔を覆う仕掛けは、16個のピースで構成されたパズルによるものだ。全ての写真は、まず「こっそり覗かれるように」1つのピースが取り外されるところから始まる。そして誰かがその写真を気に入ると(マッチングが成り立つと)もう1個のピースが取り除かれるので、2つのピースが開いた状態でチャットが始まることになる。

さらにお互いがメッセージを交換するごとにパズルのピースが取り除かれていき、最終的には全てのピースが消えて顔が完全に明らかになる。うまくいけば、その時点で会話が途切れることもないだろう。

「お互いに6つ以上のメッセージ(合計12個)をかわすことが、有意義な会話には最低限必要であると我々は考えています」と、デュラント氏は言う。「そのため、現在のジグソーパズルは、7回のメッセージが交換されると(合計14個のピースが取り除かれると)、その下にある顔が完全に見えるようになっています。この数字はテストによって決められたもので、今のところユーザーにとってのスイートスポットとなっています」。

デーティングアプリのユーザーが、心ないスワイプをせず、より多くのチャットをかわすように、顔のビジュアルを覆うというコンセプトは、Jigsaw独自のものではない。「デーティングアプリ疲れ」を軽減するために「公開を遅らせる」仕掛けを施したアプリはたくさんある。別のアプリであるINYNは、プロフィールが表示される速さを制限している。

また、チャットをするまでユーザーの写真をぼかしてしまうアプリには「Taffy(タフィ)」がある。イスラム教のマッチングアプリ「Veil(ベール)」では、「デジタルベール」機能(不透明フィルター)が用意されており、相互にマッチするまで男女ともすべてのプロフィール写真に適用される。

Willow(ウィロー)」のような他の「反表面的」なデーティングアプリは、Q&A形式のアプローチを試みており、互いの質問に答えていくと、さらに多くの写真が見られるようになっている。このように、全てが明らかになるまで時間が掛かるように作られたアプリは数多い。

しかし、Jigsawはこのような「ゆっくりと明らかにする」形式に、おそらく最も視覚的にわかりやすい(そしてゲーム的な)仕掛けを採用した。それは直ぐに明らかになるものの、しかし「恋は盲目」になりがちな他のデーティングアプリの平均に比べれば、ゆっくりと明らかになることは確かだ。

我々が確認したところによると、そのシード投資はユーザーを買うためでもないようだ。

Relationship Corp. は、デーティングアプリにユーザー獲得/トラフィック生成サービスを提供しており、投資先にもそれらのアプリが含まれる。だが、デュラント氏によれば、Jigsawの場合はストレートなエクイティ投資であるという。つまり、その成長する能力に自信を持っているようだ。

「彼らは非常に地味だが、業界ではよく知られています」と、デュラント氏はシード投資を先導した投資家について語る。「同社のCEOであるSteve Happas(スティーブ・ハパス)氏は、以前ProfessionalMatchを起ち上げた人物で、(投資の一環として)当社の諮問委員会のメンバーでもあります。私たちには彼らと協力してユーザーを獲得する選択肢もありましたが、そうではなく、彼らは私たちの内部チームを顧問としてサポートしてくれています」。

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画像クレジット:Jigsaw
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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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