人の創造性を定量化するイノベーションテックのVISITS Technologiesが5億円を調達

独自のアルゴリズムによって創造性を可視化する「ideagram」やOBOG訪問サービス「VISITS OB」を提供するVISITS Technologies。同社は7月9日、CAC CAPITAL、未来創生ファンド、FFGベンチャービジネスパートナーズ、みずほキャピタル、個人投資家を引受先とする第三者割当増資により、総額約5億円を調達したことを明らかにした。

VISITS Technologiesは2014年の設立。2017年7月にパーソルホールディングス、ベクトル、三菱UFJキャピタル、グローブアドバイザーズなどから5.7億円を調達しているほか、それ以前にも代々木ゼミナールグループ、ウィルグループインキュベートファンドなどから資金調達を実施。

これまでの累計調達額は今回も含めて約14億円になるという。

共感を軸に人のつながりを生みだすOB・OG訪問プラットフォーム

VISITS Technologiesでは現在大きく2つのサービスを展開している。そのひとつが前回調達時にも紹介したVISITS OBだ。

VISITS OBは「ビジョンに共感し合える人のつながり」を生み出すことを特徴とした採用サービス。よくありがちな同種のサービスとは違い、OB・OGは会社の紹介などではなく、自分がこれまでどんなことをしてきたのか、これからどんな挑戦をしていきたいのかといった個人的なエピソードをプロフィールとして記入する。

社会人と学生双方のプロフィールをディープラーニングにかけることで「人が何に興味を持つのか、どんなことに共感するのか」を抽出。共感をベースにしたマッチングの実現や、企業のブランディング最適化のサポートを行う。

サービス開始から2年半でユーザー数は約10万人。掲載企業数も約2000社に上り、マッチング数は100万件を越えた。昨年からはユーザー専用のコミュニティスペース「HELLO,VISITS」を複数のエリアで設立するなど、新しい取り組みも始めている。

クリエイティビティを科学しイノベーションを創出する新サービス

VISITS Technologiesが展開するもうひとつのプラットフォームが、2017年10月に発表した「ideagram」だ。

このサービスはこれまで定義することが難しかった人の創造性や目利き力、アイデアの価値を定量化することで企業内の人材発掘や育成、イノベーションの創出を支援するというもの。具体的には「アイデア創造」と「アイデア評価」という2つの試験をオンラインで実施。参加者のデータを独自のアルゴリズムで分析する。

おもしろいのは単なる多数決などではないということだ。ideagramではアイデア創造の結果によって各メンバーの目利き力を予測し、アイデア評価の際に各々の目利き力を考慮する(ウエイトを加重する)。これによって「多くのメンバーがイマイチだと言っていたとしても、目利き力が高いとされるメンバーがおもしろいと言ったアイデア」が評価されるようになる。

つまり従来は多くのメンバーに理解されずに埋もれしてしまっていたような「破壊的イノベーションに繋がるようなアイデア」に、個々のクリエイティビティやアイデアの価値を可視化することで気づけるようになるかもしれないということだ。

もちろん社内で誰がクリエイティブか定量的にわかるようになれば、人員配置を考える際にも役に立つし、研修用のツールとしてクリエイティビティをトレーニングすることもできるという。

少し説明をはしょってしまったけど、厳密には上述したプロセスを経て「参加者全体として『どのような創造性と目利き力の確率分布に従っていれば、全体として最も納得性の高い合意形成が成立するか』という『説明力最大化問題』を数学で解き明かしている」とのこと。

この独自の合意形成アルゴリズムがideagramの特徴となっている。

AI時代に必要なクリエイティビティを数式で可視化する

VISITS Technologiesで代表取締役を務める松本勝氏は元ゴールドマンサックスのトレーダーであり、その後人工知能を用いた投資ファンドの設立にも携わってきた人物。AIに関わってきた歴も長いからこそ「AIは決して万能ではない」と話す。

基本的にAIは過去のデータから学習して判断を行うもの。つまり「教師データ」がある場合に、一層そのパワーを発揮する。

一方で破壊的イノベーションと呼ばれる類のものは、そのほとんどが前例のないアイデア。AIが生み出したり、見つけたりするのが苦手だけれど価値があるものだと言える。

「AIが進化することで、人に求められる能力や人がフォーカスする領域も変わる。そこで重要なのが(AIには難しい)クリエイティビティであり、その源泉となる共感。これこそが1番のフォーカスポイントだと以前から言われているのに、これまではそのスキルが定義されることもなく、育て方もわからないままだった。ideagramではこのクリエイティビティを科学する」(松本氏)

共感を科学するという点では、以前から運営してきたVISITS OBから一貫するテーマだ。

VISITS OBは共感という軸で、共に新しい社会価値を創造する仲間を見つけるためのサービス。ideagramは、社会価値に繋がるアイデアを見つけたり、必要なスキルを磨くためのサービスという位置付けだという。

松本氏によるとideagramはすでに大手企業を中心に約20社に導入が決まっていて(運用を開始している企業も含め)、今後も引き続き展開を加速させていく予定だ。

また企業向けのプロダクトだけでなく、同社のエンジンとブロックチェーンを組み合わせたオープンな社会課題解決プラットフォームを開発しているそう。登録された社会課題とさまざまな企業が持つ技術などのシーズの組み合わせから最適なものを自動抽出することで、社会課題の解決と同時に、新たなイノベーションの種を発掘するエコシステムの構築を目指しているようだ。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。