個人の違法解雇につながる?雇用主は従業員に新型コロナテストを実施できるのか

Amazon(アマゾン)のJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏が先週株主に送った毎年恒例のレターでは、当然のことながら新型コロナウイルス(COVID-19)について多く割かれていた。同氏はパンデミックを克服するためのさまざまなレベルでの取り組みを示した。その中には、従業員向けテストラボの設置が含まれていて「症状がない人を含め、全Amazon従業員を定期的に検査する」と書かれていた。

Amazonが、熱やその他の新型コロナ特有の症状がある従業員にテストを行うというのは既知の事実だ。結局のところ、同社は米国やその他の多くの国にとって小売を支える主要企業の1つだ。ウイルスが小包経由でうつされるとは考えられない、と世界保健機関(WHO)は述べたが、その一方でウイルスが倉庫内でかなり早く広まる可能性がある。

しかし症状のない従業員をテストするというのは、テストキットが限られているため、緊急性は低い。しかし、WHOやCDC(米疾病予防管理予防センター)、他の機関がそろって指摘しているように、症状がなくてもウイルスを運ぶことは大いにあり得る。この事実が新型コロナをより恐ろしいものにしている。

テストが広く利用できるようになったら、実際のところ、症状があるかないかにもかかわらず雇用主が従業員にテストを行えるのかをはっきりさせることが重要になる。公共の安全と個人の権利を考慮しなければならない大事な問題だ。

米雇用機会均等(EEO)委員会は、障害を持つアメリカ人法(ADA)のもとに雇用主向けのガイドラインを積極的にアップデートしている。

ADAとリハビリの法律を含むEEO法は新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミック時でも適用される。しかし、CDCや州・地方の公衆衛生機関が雇用主向けに出している新型コロナウイルスに関するガイドラインや提案を雇用主が守ることを妨げない。雇用主は、新型コロナウイルスパンデミックが広がるにつれ、公衆衛生当局が出すガイダンスが変わり得ることを考慮すべきだ。ゆえに、雇用主は職場の安全性維持に関する最新情報を引き続きフォローする必要がある。

パンデミックに対応するためにアップデートされたものの1つが、体温チェックを含むスクリーニングだ。「パンデミックの間は、ADAが適用される雇用主は従業員にパンデミックを起こしているウイルスによる症状があるかどうかを尋ねることができる」と米雇用機会均等委員会は続ける。「新型コロナウイルス感染症に関しては、症状として発熱や悪寒、咳、息切れ、喉の痛みなどが挙げられる。雇用主はADAに従って従業員の病気についての全情報を機密の医療記録として扱わなければならない」。

我々は、雇用と商事の訴訟を専門とするDebevoise & Plimptonの弁護士、Tricia Bozyk Sherno(トリシア・ボジック・シェルノ)氏に質問をぶつけた。

「既存従業員の場合、健康調査や検査は、特定の従業員がその健康状態によって『直接的な脅威』になると雇用主が合理的確信を持つ場合のみ許される」とシェルノ氏は説明する。「新規従業員に関しては、仮雇用契約のあとで雇用主が健康調査を実施することをADAは認めている。しかし個人が働き始める前に受ける検査は、同じ部門の従業員に提供されているものと同一のものでなければならない。既存のEEOCガイダンスが想定している主な『健康調査』は体温測定だ。参考ガイダンスでは新型コロナウイルス感染症テストについてまだ言及されていない」。

テストに関する現在のルールは、直近のガイドラインのもとでは完全に明確ではない。ただ、テストが広く受けられるようになり、また州政府が外出規制を緩和し始めているため、今後ルールがはっきりすると思われる。パンデミックがもはや脅威でなくなれば、ガイダンスは適用されないことが予想される。その後、ADAガイドラインのもとに残るものはといえば、新型コロナウイルス感染症のような症状をめぐっての個人の違法解雇だ。

「ADAは障害を持つ個人に対する差別を禁じていて、雇用主にはそうした個人に合理的配慮を提供することを義務付けている。地方自治体の法律が、影響を受けている従業員に追加の保護策を提供するかもしれない」とシェルノ氏は話している。

画像クレジット:zhangshuang / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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