名刺管理サービス「Eight」は日本版LinkedInを目指す——まずはニュースフィード機能から

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Sansanが提供する名刺管理サービス「Eight」がビジネスSNSの領域に進出する。第1弾の取り組みとして、7月22日から提供される最新版のアプリにニュースフィード機能を導入する。

Eightはスマートフォンのカメラやスキャナで撮影した名刺をアップロードすると、クラウドソーシングや専任のオペレーターがデータ化。スマートフォンアプリやウェブサイトからアクセスして閲覧できる名刺管理サービスだ。ユーザーが名刺情報をアップデートすると、名刺交換した相手にもその情報が反映されるため、常に最新の名刺を閲覧できる。Facebookとの連携も可能。

今回導入したニュースフィードでは、プロフィールの変更などのアップデート情報が配信される。各アップデート情報に対しては、Facebookのようにコメントや「いいね!」を付けられる。今秋をめどに、広告や独自コンテンツ、ニュースなども配信する予定だという。

名刺管理サービスでなくSNSとして使って欲しい

Sansan取締役でEight事業部長の塩見賢治氏

Sansan取締役でEight事業部長の塩見賢治氏によると、Eightのユーザー数は現在約100万人。50万人を超えた頃からユーザー数の伸びは加速しているそうで、2016年中には200万人を達成すると語る。

また現在は月800万枚、年間で1億枚の名刺を処理しているそうだ。塩見氏いわく1年で行われる名刺交換は約10億回。もちろん“かぶり”もあるが、すでに日本の5%(1回の名刺交換で2人が名刺を交換すると仮定して、「10億回の名刺交換×2人=20億枚」で計算)の名刺を処理している計算になるという。

そんな規模に成長してきたこともあって、Sansanとしては「単なる名刺管理でなく、ビジネス版のSNSとして使って欲しい」(塩見氏)となったそう。そこでまずニュースフィードを導入することになった。「そもそも(ビジネスSNSという)構想はあったが、ヤフーでも成功していないように、一朝一夕にはいかない。とは言え日本にもLinkedinのようなサービスは欲しいと思っていた」(塩見氏)。

SNS化以外のアップデートの予定もある。Bluetooth Low Energy(BLE)を利用して、紙の名刺を持つことなく名刺データを交換する仕組みを準備するほか、メッセージ機能の強化、独自IDの導入なども検討する。「名刺交換をするのは広くて浅い関係。Facebookではカバーできないところもあり、そこに価値があると思っている」(塩見氏)

顕在化していないニーズにチャレンジする

少し気になったのは、そもそもユーザーはEightにSNSとしての機能を求めているのかということだ。

EightではFacebookおよびGmailのアドレス帳と連携できる。ITリテラシーの高いユーザーであればすでにFacebookを利用しており、Eightと連携しているはずだ。そうなるとFacebookとEightの2つのタイムラインを見るのだろうか。これに対して塩見氏は「顕在化していないニーズに対するチャレンジ。例えば新入社員がEightで名刺を管理していれば、フィードでビジネスログを持つことができる。これはFacebookでは作ることができない」と説明する。

塩見氏は、フィードに「あなたの会った○○氏の会社の株価が上がっている」という情報を配信する、「こういうジャンルの人に会っているようなので、他にこういう人に合った方がいい」という提案を行うといった例を挙げ、タイムラインを通じてビジネスSNSとしての価値を提供できるのではないかと語る。

知らない人間からの名刺交換をどう考えるか

また、ここ最近、僕の周囲で何度か話題になったEightの機能についても聞いてみた。

Eightは今春のアップデート以降、Eightに登録するユーザーを氏名や所属企業で検索できる「Eightネットワーク」という機能を実装している。仕事上面識はあるけれどもFacebookでも繋がっていないなんてビジネス上の知人を探すのであれば、この機能は非常に便利なものだ。

だがこの機能に否定的な声もあるようだ。それはこの検索機能が、Eightユーザーであれば、名刺交換をしていない人物、すなわち全く知らない人間であっても氏名や企業名、部署名で検索し、名刺交換リクエストできるからだ。

もともとビジネスSNSとしてスタートしていたならば名前や所属で検索をするなんて当然の機能だろう。だがユーザーから見ればEightは名刺管理サービスとしてスタートしている。そのためか利用規約に書かれた利用方法であっても、「知らない人からの名刺交換リクエストが気持ち悪い」と思うユーザーもいるようだ。この機能については、「特定の会社、特定の部署の人間をピックアップできる。名簿屋は喜ぶのではないか」なんて語る人材ビジネスの関係者もいた。もちろん名刺交換リクエストを受け入れない限り連絡先は共有されない設計だが、部署と名前は表示されるため、利用価値のあるリストが作れるのではないかということだ。

これに対して塩見氏は、「Eightの使い方としては知り合いを探す、会いたい人にリクエストをする、という使い方を徹底して欲しいと思っている」と強調。また監視チームを立ち上げ、無差別な名刺交換リクエストを行うユーザーを排除するなど、運営体制を強化を図っているとした。

そんなわけで一部のユーザーには不安な点もあるようだが、フィードによってEightは広告ビジネスも始めることになる。2月にスタートした有料オプション(実数は非公開だが比較的悪くない数字、とのこと)とあわせて本格的なマネタイズの道が見えてきた状況だ。具体的なスケジュールに関しては非公開だったが、「できるだけ早い時期に黒字化を目指す」(塩見氏)としている。

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TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。