完全リモートワークの「Automattic」は異なる地域で暮らす社員の給料をどう決めているのか

ますます多くのテック企業が、パンデミックの後も、どこで仕事をしてもよいと社員に伝えている。しかし、大きな問題は、どうやってそれを実施するかだ。

先週、Facebook(フェイスブック)のCEOであるMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)は、サンフランシスコ湾岸地域を離れ、物価の安い地域に移動すれば給与を上げると社員に伝えた。しかし、独自のリモートワーク戦略を探っている会社は、Automattic( オートマティック)にも注目したほうがいいかもしれない。豊富なベンチャー資金を持つこの会社は、ブログプラットフォームのWordPress(ワードプレス)や長文コンテンツのプラットフォームであるLongread(ロングリード)、コメントフィルターサービスであるAkismentなどの親会社であり、2019年からはかつてのソーシャルメディア巨人のTumblr(タンブラー)も傘下に置いている。

Automatticは現在1000名を超える従業員を抱え、設立当時からほぼ分散化していたが、2017年にサンフランシスコ事務所を閉鎖して、社員に好きなところで働いてよいと伝えて、完全分散化を達成した。ファウンダーでCEOのMatt Mullenweg(マット・マレンウェッグ)氏はQuartzに、ほとんどの社員は同社が用意したコワーキングスペースを使っていなかったので、お金は別のところで使うことにした、と語った。

Automatticは自社のリモートワーク戦略について、社員にホームオフィス構築の費用や旅費を支払っていることなど、常に誇りを持って話しているため、どのように給与を決めているのかが気になって仕方がなく、現在分散化を進めている会社にとっても学ぶべきことかあるのではないかと考えた。週末にマレンウェッグ氏がTechCrunchの質問にメールで答えてくれた内容を以下に記す。

もちろん最大の疑問は、Automatticが社員の地域や物価に基づいて給与を支払っているかどうかだ。マレンウェッグ氏は、明確なイエス・ノーは答えず、Automatticでは「同じ仕事に対しては、地域によらず同じ報酬を支払うことを目指している。現在、Automatticの社員は75カ国以上に散らばっている。ときには、その地域の相場より高いことも低いこともある」と語った。

実際問題、簡単なことではないと同氏はいう。中でも給与を一致させる上で最大の障害は現地通貨で支払うことであり、為替レートの「振れ幅が大きく不均衡か生じる」とのこと。またAutomatticでは、「通常、給料は上げることしかないので、為替が有利に働けば世界標準より高い状態が1~2年続くこともある」という。

多くの企業が「どこででも勤務」を推奨し、少なくとも認めるようになると「直ちに給与を標準化」することは困難だろうと彼はいう。Automatticがその方向に進み始めたとき「人々のギャップを埋めるのに数年かかった」とのことで、現在でも「完全ではない、常に目指しているにもかかわらず」という。

我々は地域に応じた報酬を支払っている会社について、世界中の労働規則を学んだマレンウェッグ氏がどう考えているかにも興味があった。テック企業が同じ仕事に対して異なる支払いをすることが、法的あるいはその他の問題になるのかどうか知りたかった。

「長期的には市場の力と人材の移動力が、地域によらない仕事に対して雇用者が地域差別することをやめさせるだろうと思う」とマレンウェッグ氏はいう。さらに、少なくとも米国では、給与差別に関して免除が認められている地域を知らないが、「道徳的、競争性の理由から、企業は世界的にどこででもできる仕事に対して公正な報酬を与える方向に向かっていく」と同氏は考えている。

実際マレンウェッグ氏は、これまで地元の市場原理に基づいて給与を払ってきた会社は、いつまでもそれを続けていられない、例え「今すぐ変えることか難しくても」、そして「世界市場標準以下の社員については、何年かのうちにもっと頻繁な、あるいは大幅な賃上げをして」調整が必要になるだろう、という(一方、同氏は「もし標準よりずっと給料の高い社員がいたとき、それは会社の犯した間違いなので減給するのはフェアではない。かといって全員をその高い水準に引き上げるのも維持できるやり方ではない」と付け加えた)。

事実、この新しい未来に向けて進んでいる会社が知っておくべきなのは、まず時間がかかることを認識し、社員が地理的に均質な場合には起こり得ない要因が数多くのしかかると理解することだ。「通貨の問題、地政学、保護主義、機密問題、さらには友だちや家族の5倍も10倍もの給与を得ている人の与える影響まで」考えなくてはならないとマレンウェッグ氏は語った。

やる価値はある、とマレンウェッグ氏はいう。ザッカーバーグ氏が先週社員に対して発言したように、労働力の分散化は「国全体、さらには世界中の経済機会を増やす可能性がある」。そして「その機会が広く行き渡れば、社会的政治的にもっと安定した状況が得られるかもしれない」。マレンウェッグ氏は、リモートワークを増やすことを均衡化の一手段と考えているようだ。

同氏が我々に伝えたように、分散化によって「大きな富や世界の人材を入手する機会が得られるだけでなく、経済機会をこれまで以上に広めることで、世界にプラスの影響を与えることができる」。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

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