巨大テック企業を規制する米国の新たな独占禁止法案の方針

民主党は議会両院の支配を固め、党の立法の優先順位が明らかになってきた。これまでのところ、テック規制状況再考への議員の関心は未だ健在のようだ。

Amy Kobuchar(エイミー・クロブシャー)上院議員(民主党・ミネソタ)は反トラスト法改革の新たな提案として、大型合併の障壁を増やし、国の反トラスト法執行要員を強化することを謳っている。クロブシャー氏の法案、Antitrust Law Enforcement Reform Act(反トラスト法執行改革法)は、さまざまな業界にわたる統合を対象とし、特に「支配的デジタルプラットフォーム」に重点を置いている。

「かつて米国は世界有数の反トラスト法を有していましたが、現在我が国の経済は深刻な競争問題に直面しています」とクロブシャー氏はいう。「もうこれ以上この問題を見ないふりをして既存の法律が適切であると願うことはできません」。

現在、クロブシャー氏は上院の反トラスト・競争政策および消費者の権利小委員会の長を務めている。これまでにも巨大テック企業に影響を与える改革に関心を示している議会の一角である。

新法案は、1914年に制定され競争に関わる法律の枠組みを作り現在も適用されているクレイトン反トラスト法を強化するものだ。具体的には、反競争的合併の評価基準を標準化し、「競争を大きく損なう重大なリスクを生む」契約を防ぐよう現在の文言を変更する。

目的は反トラスト行為の可能性を早期に発見することで、これは政府が現在、抱えている難問であり、現在国の規制当局は、合併後何年も経ってから独占状態に発展した案件の再評価を行っている。

また同法案は、競争を減少させる危険が生じないことの証明を、合併する企業に義務付けることによって政府の負担を軽減する。これらの規則が適用されるのは、時価総額50億ドル(約5269億4000万円)以上で50%以上の市場シェアを持ち、現在あるいは将来の競合相手を買収しようとしている会社だ。

さらにクロブシャー氏の提案は、クレイトン法を修正して、競合相手を不利に陥れる行為を禁止する条項も加えようとしている。直接的合併、買収のみならず、一部曖昧な領域のトラスト行為についても対象とする。

執行予算の欠如を掲げる同法案は、3億ドル(約316億2000万円)の追加予算を司法省反トラスト部門およびFTC(連邦取引委員会)につぎ込む。FTCでは、委員会内に市場と合併を調査する部門を設置するためのその資金を使用する。

法案は、全員が民主党上院議員で反トラスト小委員会のメンバーでもあるCory Booker(コリー・ブッカー)氏、Richard Blumenthal(リチャード・ブルーメンソール)氏、Brian Schatz(ブライアン・シャーツ)氏、およびEd Markey(エド・マーキィー)氏が共同発起人となる。また現在は一党による取り組みだが、反トラスト改革は共和党ミズーリ州選出のJosh Hawley(ジョシュ・ホーリー)上院議員の支持も得られる可能性がある。同議員は巨大テック企業を標的にした反トラスト改革に今週になって関心を示した。ホーリー氏も上院の反トラスト小委員会のメンバーである。

クロブシャー氏は、Facebook(フェイスブック)、Google(グーグル)といった大型テック企業の解体までは求めていないが、それはここ数年Elizabeth Warren(エリザベス・ウォーレン)上院議員とBernie Sanders(バーニー・サンダース)上院議員の支持を得ている行動だ。大型テック企業をターゲットにした複数州による訴訟の最中、FTCはFacebookに対する独自の訴訟を2020年末に提起し、同社の分割を要求している。

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カテゴリー:ネットサービス
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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nob Takahashi / facebook

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