Appleの新モバイルオペレーティングシステム、iOS 9の公開からわずか1日で、数多くのアドブロッカーアプリがApp Storeのランキング上位を占めた。アドブロッカーの一つでInstapaperのファウンダー、Marco Armentが作ったPeaceは、デビュー直後にiTunes App Store全体で最も人気のある有償アプリになった。
しかし、アドブロッカーの利用に関する議論が沸騰する中、ArmentはPeaceをApp Storeから取り下げることを決め、「いい気分ではないから」と語った。
その決定は驚くべきものだ。
PeaceはGhosteryの強固なブロックリストを使っていることから、優れたアドブロッカーの一つとしてすでに知られていた。実際Armentは、自身の紹介記事の中で、このリストを利用するための収益分配契約まで説明している。そこで彼は、ほとんどのアドブロッカーは公開されたファイルを使用しているため満足に維持されておらず、また目に見える広告に注意を向けすぎていて、見えない追跡ツールに対応していないと言った。
Ghosteryのデータベースの統合とシンプルでよくデザインされたアプリそのものの特徴に、それを支える開発者の力量が加わり、2.99ドルのPeaceアプリはたちまちトップセラーになった。
しかし公開後ほどなくして、Armentはある矛盾に直面しけいることを認めた。Peaceは自身のサイトの広告パブリッシャーであるThe Deckの広告もブロックしており、そこにはウェブ周辺のクリエイティブやデザイン関連の専門家が集まるネットワークがいくつも含まれていた ー 例えばArmentのMarco.orgブログや彼のiPhoneアプリInstapaper(2013年にBetaworksに売却 )や、Apple評論家のJohn Dribbleが設立したKottke.org、The Loop、McSweeney’s、MetaFilter、SixColors、Subtraction、Waxy.orgなど数多い。
事実Armentは、Gruberが標準でThe Deckをブロックするアドブロッカーに不快感を覚えるとツイートしたことを指摘した。これはThe Deckの広告は小さく、邪魔にならず、アニメーションもないためであり、Armentは自身のブログで、PeachがThe Deckのブロックを標準オンにしておく決断の難しさを説明した。
要するに問題は、Armentは例外を作って自身や友達サイトの広告をブロックするのをやめるか、そのままにして自分のサイトの広告主(および自分の友達)を怒らせるかのどちらかしかなかった。
彼はそのままにすることを選び、その決定を「いい気分ではない」と表現した。
the Peace app is gone
どうやらそれは、いい気分では「なさすぎた」ようだ。翌日、Peaceアプリは消えた。
Armentは、今でもアドブロッカーは必要だと信じているが現在の1かゼロかの方法は不必要に人を傷つける、と言った。
「アドブロッキングは一種の戦争だ ー 第一世界の、賭け金の小さな、両者ともこの種の問題を持っていることが幸運な戦争だが、戦争には違いなく双方が傷つく」と彼は書く。「たとえ自分が勝っても何も嬉しくない。それが市場を撤退する理由だ」。
すでにアプリをダウンロードした人はそのまま使い続けられる。Armentは本誌に、アプリは永久に動作するが、ある時点で追跡データベースのアップデートを受けられなくなると話した。
Peaceを購入した人は、返金を要求できることも彼は強調した。もちろんわざわざ返金手続きをする人ばかりではないだろう。ランキング1位になるためには大量のダウンロード ー 少なくとも数千回 ー が必要なことから、Armentは自分の努力に見合ったかなりの収入をポケットにいれる可能性が高い。
市場調査会社のApptopiaによると、最近36時間にPeaceのアドブロッカーは世界中で11万3521ドルを稼いだ。これは約3万8000ダウンロードに相当するとApptopiaのファウンダー、Jonathan Kayは言っている。
Armentはこうした数字に反論し、今日の販売レポートはまた見ていないが、推測は「まず間違いなく高すぎる」と言っている。さらに彼は、「売上の有意な部分をApple、Ghostery、税金、デザイナー、弁護士、会計士など他の人々に支払う必要があることも指摘した。
つまり、売上がどれだけあるにせよ、実入りは一見したほどではないということだ。
Peaceの脱落によって、他の人気アドブロッカーが代わりに順位を上げた。今日、0.99ドルの簡易ブロッカー、Crystalがトップ有償アプリとなり、4位のPurifyと20位のBlockrが続いている。