授業料は就職してからの出世払い、バーチャルコーディングスクールのLambda Schoolが約78億円を調達

テクノロジーの世界では、オンライン学習は過去数カ月の中で最もその特性を享受したものの1つだ。新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックのためで、人びとは家にいて、通常のルーチンから離れ、得た時間を使って知識を拡大してきた。よりシリアスな場合だと、キャリアを変えたい場合に次に何をすべきかを考えたり、失業してしまった自分に気がついた人もいる。

現在、そうした在宅で求職している人たちに対して、バーチャルなコンピュータサイエンス教育を行うビジネスを展開するスタートアップの1つが、その需要を活かすための大規模な資金調達ラウンドを発表した。

現在、データサイエンスならびにフルスタックウェブ開発を教えているLambda School(ラムダ・スクール)は、バーチャルに開催される9カ月(フルタイム)もしくは18カ月(パートタイム)のコンピューターサイエンスコースを3万ドル(約317万円)で提供しているが、受講者は最低年収5万ドル(約529万円)の職に就いてから収入に比例して受講料を支払えば良い仕組みだ。そのLambda SchoolがシリーズCで7400万ドル(約78億3000万円)を調達した。

投資資金は主にGigafundから投じられ、Tandem FundとLambda SchoolのインキュベーターであるY Combinatorもそれに加わった。Gigafundは元Founders Fundのパートナーたちによって、2017年(未訳記事)に設立されたVCで、当初はより多くの資金をSpaceX(スペースX)に提供していた。他の支援者にはGV、GGV、およびStripeも名を連ねている。Lambdaの事業開発責任者であるTommy Collison(トミー・コリソン)氏は、Stripeを共同創業したコリソン兄弟の2人の弟の方だ。

Lambda Schoolはその評価額を開示していないが、Ben Nelson(ベン・ネルソン)氏とLambdaを共同創業したCEOのAusten Allred(オースティン・オールレッド)氏によれば、2019年1月に3000万ドル(約31億7000万円)を調達したシリーズB(The New York Times記事)の際に、Lambdaが達成した1億5000万ドル(約158億7000万円)の評価額よりは高いことを認めた。また、IPOを計画しているからではなく、利益を上げられるようになることを目的としているために、これがLambdaにとって最後の資金調達になることを望んでいるとも述べた。オールレッド氏はまだ利益が出ていないことを認めた。

オールレッド氏は、スタートアップは急増するそのコースへの需要に対応するために、調達資金を使用する計画を立てると付け加えた。

「資金調達は行いましたが、現在私たち自身が処理できる以上の需要があるのです」と彼はいう。「それが良いことなのか、悪いことなのかはわかりません」。現在、約3000人の学生が在籍していて、全員が異なるタイムゾーン用にプログラムされたタイムテーブルに従ってライブ(オンデマンドではない)クラスを受講している。

今回の資金は、Lambda Schoolが提供するコンテンツの範囲を拡大するために、コンテンツそのものにも、またおそらくビジネスモデルの開発にも使用される。

良い動きの1つとして、米国時間8月20にLambda Schoolは、カリフォルニア州のBureau for Private Postsecondary Education(カリフォルニア州私立高等教育局、BPPE)から承認を受けた(Lambda Schoolリリース)ばかりだ。同社は、州内での教育を止めさせて(Business Insider記事)罰金を課そうとする当局との間で、長期にわたって揉めていた。

しかし、承認のための取り決めの一環として、少なくとも現時点では、Lambdaはもはやカリフォルニア州の受講生に対して所得分配契約(ISA)を提供していない。ISAは同社が遅延支払モデルを提供するための基礎であるため、オールレッド氏はLambdaはまだISAを利用できるようにするための取り組みを続けているが、暫定版としての「学生にやさしい代替手段」も検討していると語った(Twitter投稿)。

正確にいえば、教育局理事会による承認は学校としての認定と同じものではない。Lambda Schoolは学生がコースを修了した際に、公式な学位は提供しないが、修了証明書を提供する。現在、学位を授与できるようにするために認定を受ける計画はないと、オールレッド氏は述べている。

「規制の観点から見れば、認定を受けて学位を授与することもできますが、(理事会は)1年前にカリキュラムの変更を提出することを要求しているため、受講生にはそれを受け入れる余裕がありません。認定機関が要件を変更するまで、そのことは役に立ちません」と彼は述べ、さらに認定を受けている学校が常に自分たちより優れているとは限らないと付け加えた。

「完全に認定されていて、卒業率20%の学校が何千校もあります」と彼はいう。「そんな学校では良い成果を得ることはできません。私たちは別の方法で、受講生たちに自分の価値を証明する必要がありますが、通常それは成果を通して行われます」。

Lambda Schoolの資金はコースへの需要が急増している最中に得られたものかもしれないが、だからといって今がスタートアップにとって困難な時期ではないという意味ではない。

Lambda Schoolは2020年4月に、新型コロナウイルスの流行による市場の不確実さの中で、19名のスタッフを解雇し(未訳記事)役員報酬を15%削減した(また、通常スタートアップが資金調達を行う過程でしばしば発生する経理上の引き締めも、おそらく行われたことだろう)。現在の同社のチームは約150人体制で、その中に運営スタッフたサポートスタッフ、コースの教師、チームリーダー(基本的にはティーチングアシスタントたち)が含まれている。オールレッド氏によれば、現在のところ全員がリモートで働いているという。

しかし、4月より前の時点でも、Lambda Schoolはその遅延支払いビジネスモデルをどのように適用するかについて、多くの否定的な意見に直面していた。酷評する者は、収入に基づいて授業料を返済するやり方を、年季奉公の奴隷(Twitter投稿)とか搾取だと表現してきた。そして、このビジネスモデルは非現実的だと批判する人もいる。なぜなら同社は受講生たちが期待されるような給与を得ることができなかった場合のリスクを抱えているからだ。ISAモデルは給与額に基いて段階的に変化する返済を行うだけでなく、授業料の返済に対して24カ月という制限を与えている。このことが意味するのは、3万ドルの全額を返済する受講生もいれば、返済しない受講生もいるということだ。

オールレッド氏は支払いの不履行数を明らかにしなかったが、受講生の約15%が最初の月の終わりまでに脱落する、つまり彼らは一切何も支払わないと語った。

そうしたことを気にする人もいるだろうが、それはスタートアップの成長や、投資家の間の関心を抑えるには不十分のようだ。

「私たちはCEOとしてのオースティンに引きつけられました」とインタビューで語ったのは、Lambda Schoolの取締役会に参加する、GigafundのパートナーであるStephen Oskoui(スティーブン・オスコイ)氏だ。「Gigafundは、何十年にもわたって形作られていくであろう強みに、重点を置いています。そしてLambda Schoolの運営方法のモデルは、そこに多大な影響を与える可能性があるのです」。

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カテゴリー:EdTech

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画像クレジット:Carlina Teteris/ Getty Images

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(翻訳:sako)

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TechCrunch Japan

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