数々の賞を受賞したiOSゲーム「Alto’s Adventure」「Alto’s Odyssey(アルトのオデッセイ)」「Skate City」などを開発した小規模な開発スタジオであるSnowman(スノーマン)が、教育的な子ども向けエンターテインメントに特化した新会社Pok Pok(ポク・ポク)を設立した。Pok Pokは、2021年5月末に最初のタイトル「Pok Pok Playroom」を発表している。このゲームタイトルは、未就学児を対象に、遊びを通して創造的思考を引き出すことを目的としている。
今回の発表は、Snowmanがゲーム開発スタジオとしてではなく、アプリメーカーとしての原点に立ち返るものだ。
実際、同社の最初のiOSアプリである「Checkmark」は、iPhoneユーザーに位置情報を利用したリマインダーを提供する生産性向上のためのアプリだった。しかしその後Snowmanはゲーム制作にシフトし、CirclesやSuper Squaresなどの初期リリースでモバイルゲームの需要を開拓した。しかしSnowmanが本格的にゲームへの進出を開始したのは「Alto’s Adventure」が登場してからだった。
Snowmanの共同設立者でクリエイティブディレクターのRyan Cash(ライアン・キャッシュ)氏は「Snowmanのことをビデオゲームの開発スタジオであると考えたことはありません。多くの人はSnowmanを開発スタジオだと思っているでしょう。今のところ私たちはゲーム開発でしか知られていません。これは私たちのコアビジネスのようなものです。しかし、私たちは自分たちのことを、クリエイティブな作業が好きな実験屋が集まるチームだと考えています。今はたまたまビデオゲームですが、これからも何が起こるかわかりませんよ」と語る。
Pok Pokは、実はSnowmanの実験の文化から生まれた。
Snowmanの社員であるMathijs Demaeght(マティス・デマエト)氏とEsther Huybreghts(エスター・ユイブレシュト)氏は、現在それぞれPok Pokのデザインディレクターとクリエイティブディレクターを務めているが、彼らの息子のJames(ジェームズ)が幼児だった頃、彼を楽しませるためのアプリを探していた。しかし、自分たちが探しているようなアプリがあまりないことに気づいた。
エスターは、彼を怒らせないもの、あまり専門なものではないもの、ゲーム要素がないものを求めていたと説明する。
その後次男のJack(ジャック)が生まれたとき、彼らは自分たちが欲しいと思うアプリを作ってみようと考えた。大まかなプロトタイプをライアンに見せたところ、彼はそれに可能性を見出し、彼らにやってみなさいと言ったのだ。
ライアンの姉であるMelissa Cash(メリッサ・キャッシュ)は、ディズニーで乳幼児向け製品の開発に携わっており、当時「アルトのオデッセイ」の立ち上げを手伝っていた。彼女は、エスター氏とマティス氏が取り組んでいるものを見て、感銘を受けた。
「私は5年間、子ども向けの商品の仕事をしてきましたが、このようなものは見たことがありませんでした。その時、この先20年はこの仕事をしていきたいと思ったのです」と彼女は語る。メリッサ氏はこのプロジェクトに参加し、現在はPok PokのスピンアウトのCEOを務めている。
Pok Pokは法律的には独立した会社だが、Snowmanと密接な関係を保っている。
メリッサ氏はまたこう語る。「私たちはSnowmanの中でPok Pokをインキュベートしてきました。デスクを一角に移動し、全員がメンターとして、同僚として、グループで共同作業をしています」。ライアンもやはり関わっている。「ライアンは、私たちのアドバイザーであり、ヘルパーであり、すべてです。私たちはまだ彼のための肩書きを思いついていないほどです」と彼女は付け加えた。
現在、Pok Pokのチームは6人の正社員から成るが、プロジェクトでは請負業者や専門家と協力する。一方、Snowmanは20人以上で、ほとんどがトロントにいる。しかし、Snowmanの社員の中には、30%から50%の時間をPok Pokに費やしている人もいるとライアンはいう。
当面、Pok Pokは自己資金で運営されているが、これはSnowmanが他の分野で成功を収めているおかげでもある。「アルト」シリーズだけでなく、Apple Arcade(アップルアーケード)の「Where Cards Fall」や「Skate City」など、いずれも現在PCやコンソールに展開している。また、Slingshot and Satchel(スリングショット・アンド・サッチェル)とのコラボレーションである「DISTANT」にも取り組んでいる。
2歳から6歳までの子どもを対象としたPok Pok Playroomは、Pok Pokの第1弾タイトルとして、5月20日に配信を開始した。このアプリには、子どもたちが創造的に遊べる、6つのいわゆる電子玩具が収録されている。また、これらのおもちゃは、子どもの成長に合わせて成長していく。
例えば、積み木のおもちゃは、形を動かしたいだけの幼児にとっては魅力的だが、年齢が上の子どもなら街を作ることができるかもしれない。お絵かきのおもちゃは、小さいうちは落書きができるが、大きくなってからはキャンバスになる。また、musical blobsという心を落ち着かせるおもちゃもある。これは、ラバライトのようなもので、さまざまな形の塊が跳ねたり、触ると反応したりするものだ。
すべてのおもちゃは、自由に使えるように設計されている。正しい使い方や間違った使い方はない。また、Pok Pok Playroomはゲームではない。レベルをクリアしたり、目的を達成するものではなく、買うものもない。
Pok Pok Playroomが、例えばToca Boca(トッカ・ボッカ)のようなライバル企業のゲームや電子玩具と比べて違うのは、より教育的でリアルな設計になっていることだ。
エスター氏はこう語る。「私たちは教育的なアプローチをとっており、今後のアプリについても、発売後のPok Pok Playroomがどのように成長しようとも、そのようなアプローチをとる予定です。例えば、Pok Pok Playroomには、ユニコーンも魔法使いも登場しません。すべてが現実に即しています。私たちは、子どもたちと一緒に、世界がどのように見えて、どのように機能するのかを探りたいのだと思います。私たちには、すべての子どもたちを対象にした、いわゆるアルファベットや数字では必ずしもない教育的なアプローチについてのアイデアがたくさんあります」。
また、Pok Pokでは、多様性の問題を避けるために、しゃべる動物や架空のキャラクターは使わない。代わりに、すべての人種、すべての性別、すべての家族構成、さまざまな能力や障害を持った人たちがアプリの中に登場する。
エスター氏は次のように述べる。「子どもたちがアプリの中で自分や家族、友人を認識できるようにすることは、私たちにとってとても重要なことです。私たちのチームにとって、誰もがありのままの自分や家族の姿を尊重されていると感じることがとても重要なのです。私たちはその点でトップランナーでありたいと思っています」。
約3年前から開発を進めてきたこの新アプリは、サブスクリプション方式で価格が設定されており、時間の経過とともに「電子玩具」が追加されていく。
Pok Pokは就学前の子どもを対象としているが、将来的には次の年齢層やその他のタイプの学習者を対象とした創造的なプロジェクトの設計を見越している。
Pok Pok Playroomは、発売に先立ち、約250世帯でベータテストを実施した。
Pok Pok PlayroomはiPhoneおよびiPadで利用でき、5月20日午前9時(米国東部時間。日本時間5月20日午後11時)より、14日間の無料体験版を提供する。その後の価格は、月額3.99ドル(約440円)または年額29.99ドル(約3300円)で、アプリ内課金はない。
関連記事
・ファンタジーの世界でドラゴンや魔法とともに算数・語学・科学を学ぶゲーム「PowerZ」が約9.2億円調達
・何度でも作り直して遊べる&プログラミングできる組み立て式ロボット「愉快なパチパチブロックキット」が8月5日発売
・学費出世払い方式のプログラミングスクール「Microverse」、世界188カ国の生徒が参加
カテゴリー:EdTech
タグ:Snowman、Pok Pok、アプリ、子ども
画像クレジット:Snowman
[原文へ]
(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)