養殖魚のタンパク源となるミールワーム生産のŸnsectが240億円追加調達、フランスに世界最大の昆虫農場建設へ

世界で最もハイテクな昆虫のコロニーを建設中のスタートアップであるŸnsect(インセクト)は、事業の商業化を目指し、以前獲得した印象的な1億4800万ドル(約160億円)のキャッシュに、株式と負債などにより2億2400万ドル(約240億円)を追加した。

同社に投資する投資家には、ロサンゼルスを拠点とする投資会社のUpfront Venturesや、有名なスーパーヒーローであるRobert Downey Jr(ロバート・ダウニー・ジュニア)氏が資金提供する投資ビークルのFootPrint Coalitionがある。

今回調達した資金には負債による1億3900万ドル(約150億円)と株式による6500万ドル(約70億円)が含まれる。資金は2022年初頭開業予定の仏アミアンにある世界最大の昆虫農場の建設に使用される。

なぜ昆虫農場に合計3億7200万ドル(約400億円)を株式と負債で投資するのか。Ÿnsectにとってはタンパク質と魚、それも大量の魚がすべてだ。

養殖は爆発的に成長している産業。消費者需要増加と、海洋酸性化や気候変動による水温上昇を要因とする供給減少により、天然の魚の数が減少しているからだ。

魚の商用養殖には多くのタンパク質が必要だが、商用の養殖魚をしっかり育てるのに十分なタンパク質供給源がない。Ÿnsectは、魚の餌に使える昆虫タンパクを提供することによりその状況を変えたいと考えている。ゆくゆくは肥料や、最終的にはペットフード、さらに(その随分先に)人間の食料となる昆虫タンパク質に拡げる。

「Ÿnsectの行っていることは昆虫の飼育だけに限られません。気候変動と世界の人口増加に伴い、より少ない資源と利用可能な土地でより多くの食料を生産する必要があります。そうすれば森林を伐採したり海の資源を枯渇させたりすることが避けられます。Ÿnsectは世界を変える解決策により、極めて重要な役割を果たすことができると信じています」と共同創業者でCEOのAntoine Hubert(アントワーヌ・ユベール)氏は声明で述べた。

Upfront VenturesのYves Sisteron(イブ・システロン)氏のような投資家によると、同社のハイテク垂直昆虫農場(主にミールワームを飼育)は魚にとって完璧なタンパク質であり、業界が現在依存する限られたタンパク源に取って代わることが可能だ。

「海洋は枯渇しつつあり、養魚場がそれに代わりつつあります。養殖による魚は50%に迫ろうとしています」とシステロン氏は述べた。「魚の餌の主な成分は魚由来です。トロール船が海の底でかき集めたカタクチイワシをタンパク質のペーストと合わせたものが養魚場で魚に与えられます。これは基本的に持続可能ではありません。問題となっている量が莫大なのです。世界で養殖魚に与えられる魚の餌は年間約4400万トンに上ります」。

システロン氏によると、Ÿnsectのミールワームは実際に低コストで高品質のタンパク質を魚に与えることができる。「Ÿnsectが解決する問題は、拡大可能で栄養豊富な新しいタンパク質を魚に与えることです」 と同氏は説明した。

Ÿnsectは昆虫(特にミールワーム)を動物や植物のタンパク質に変換する。同社は、昆虫の繁殖から滅菌、選別、包装まで、完全に自動化されたフルスタックの工場を建設している。

同社は、アミアンの農場が操業を開始すれば、年間10万トンの昆虫製品が生産されると見込む。500人が直接・間接にプロジェクトに関わる。

ダウニー・ジュニア氏が投資するFootPrint Coalitionの創業パートナーであるJonathan Schulhof(ジョナサン・シュルホフ)氏によると、Ÿnsectによる持続可能なタンパク質生産と大規模な最終市場の組み合わせは魅力的な投資機会であり、気候変動と戦う役割を果たす会社をまた1つ支援する機会となったという。

これはFootPrint Coalitionにとって、竹をベースにしたトイレットペーパーの会社Cloud Paper(クラウドペーパー)に続き、公表された投資としては2番目になる。

「当社は水産養殖産業が絶対に魅力的だと感じており、この業界で彼らがしていることは不可欠だと考えています」とシュルホフ氏は言う。

UpfrontとFootPrintは、既存投資家であるAstanorVenturesや、Happiness Capital、Supernova Invest、Armat Groupなどの金融投資家に加わる。

Caisse des Dépôts、Crédit Agricole Brie Picard、Caisse d’Epargne Hauts-de-Franceがクレジットラインにより資金調達に貢献している主要な銀行だ。株式を取得した銀行もあり、他の銀行もそれに続く。Ÿnsectは2011年以来4億2500万ドル(約450億円)を調達した。

複数の企業がすでに1億500万ドル(約110億円)相当の契約を結んでいる。クライアントには、Torres(ブドウ農場)、魚飼料会社のSkretting、植物肥料会社のCompoGroupなどがある。

将来的には、Ÿnsectは米国にも進出し、ウェットペットフードなどの新製品を生産する予定だ。

カテゴリー:フードテック
タグ:Ÿnsect、資金調達

画像クレジット:Ÿnsect

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(翻訳:Mizoguchi)

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TechCrunch Japan

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