Capsuleが「超シンプル」な分散型ソーシャルメディアを構築するために1.6億円調達

Capsuleが計画しているのは、ビッグ・テックに個人情報を覗かれることのない、とてもシンプルな分散ソーシャルメディアだ。同社は米国時間3月9日、Beacon Fundがリードするシードラウンドで150万ドル(約1億6000万円)のシード資金を調達し、その実現に向かって一歩前進した。Beaconのファンドを支えるPolychain Capital自身が、Dfinityの分散ネットワークの上でスタートアップの育成にフォーカスして、次世代のオープンアプリケーションすなわちインターネットコンピューターを目指している。

2021年1月に報じたように、Capsuleのアイデアはツイートで始まり、たちまち10万ドル(約1100万円)のプレシードを獲得した。それに今回のシードが加わり、プロトタイプの発表予定も2021年3月後半へと早まった。

モバイルアプリも予定しており、Capsuleのチームづくり(現在は4名ほど)にも今回の資金が投じられる。

Capsuleの創業者であるNadim Kobeissi(ナディム・コベイシ)氏は暗号技術の研究者で、過去にオープンソースでエンド・ツー・エンドの暗号化デスクトップチャットアプリケーションCryptocatを開発したことがある。コベイシ氏によると、MVP(実用最小限の製品)は月内に出せる、あと少しインフラの調整が必要、ということだ。

コベイシ氏は「プロトタイプはできている。今はインフラの一部をGUNからIPFSに切り替えることを検討している。ユーザーインタフェイスも改良したい。MVPは今でもローンチできるが、それも数週間後にしたい」と語っている。

Polychain CapitalがBeacon Fundを作ったのは2020年9月だ。1450万ドル(約15億8000万円)の投資原資はPolychainの他に、Andreessen HorowitzとDfinity Foundationが出し、Dfinityのインターネットコンピューター(The Internet Computer、TIC)を作る起業家やチームを支援する。TICは一般に、ソフトウェアとサービスを各自がホストするサーバーレスのアーキテクチャ、と呼ばれている。それは「容量が無制限でウェブのスピードで動く初めてのブロックチェーンコンピューター」とも呼ばれる。

一方、コベイシ氏によるCapsuleの最初のコンセプトは、セルフホスティングのマイクロサービスを作ることだった。しかし一部の技術的問題の解決には、TICのポテンシャルを頼りにしている。

画像クレジット:Capsule

コベイシ氏は次のように述べている。「インターネットコンピューターによって私たちは『カスタマイズされたミニブロックチェーン』を作り、Capsuleの2つの問題を解決したい。それはポスト(投稿)のグローバル認証のタイムスタンプと、ポストのユーザー認証鍵の信頼性のルートを得ることだ。今回の投資の前にも、この問題の解決を模索しており、すでにDfinityをソリューションの候補と見なしていた。それにはプログラミング言語があって、そういう『カスタムのミニブロックチェーン』を、私たちの構想どおりに作れるからだ」。

「その他の部分では、前からと同じく、セルフホスティングで自己充足的で精密に設計施工されたマイクロサービス、というコンセプトに変わりはない。分散データベースと接続性を支えるバックエンドは、それまでのGUNではなくIPFSを使う」とコベイシ氏は付け加えた。

TICの意図は、ありとあらゆるアプリケーションを特定のサーバーの上ではなくインターネットの上で分散化してホストすることだから、ソーシャルメディアも大量の分散ソーシャルメディアが登場する。たとえば2020年にDfinityは、プロフェッショナルのためのソーシャルネットワークであるLinkedInの「オープンバージョン」のPoC(概念実証)を立ち上げ、だじゃれ的にそれを「LinkedUp」と呼んだ。

さらに2020年夏は、DfinityはTikTokのクローンをデモし、その概念を開発者以外の人たちにも示した。ビッグテックのお節介な手に介入されずに、大量のアプリケーションが、ソーシャルネットワーキングサービスを自称するネットワークの上で作られていくのも、もうすぐだ。コベイシ氏が主張するCapsuleのセールスポイントもそこにある。インターネットが、検閲や盗視行為に対して強い分散メガアプリの大きな海になったら、一体どういうことになるだろうか?

「Capsuleの真価は、その優れたユーザー体験とクオリティーとパフォーマンスと使いやすさと高品質な設計施工にある。これらはTICやIPFSのような先進的な技術を利用し、しかも肥大していない。他が同じ技術を使っていても、シンプルという点で良い仕事をしているのは私たちだ。それは単純明快に仕事をし、使っていて楽しい」とコベイシ氏は語る。

彼は自分の意図を、もっと一般的な言葉で次のように述べている。「これからは、マクドナルドのメニューに対してベジタリアンのメニューが健康的といわれるように、FacebookがだめならCapsuleといわれるようになるだろう。Capsuleはソーシャルメディアの一種かもしれないが、しかしそのユーザーやデベロッパーとの関係は、ビッグ・テックのプラットフォームとは根本的に異なる」。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Capsule資金調達分散型ソーシャルネットワーク

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hiroshi Iwatani)

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TechCrunch Japan

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