Cellwizeが3200万ドルを調達、通信事業者や提携する事業者の5Gサービス導入及び運用を後押し

モバイル業界における5Gのカバレッジマップが理論上のものとしてではなく現実的なものとして徐々に移りゆく中(消費者にとっても同様のことが言えるかもしれない)、通信事業者にとって負担の大きい移行に伴う手間とコストを軽減するサービスを提供する企業が今注目を集めている。

マルチベンダー環境の中で5Gネットワークを運用する通信事業者向けに、データを自動化・最適化するプラットフォームを構築したスタートアップ、Cellwize(セルワイズ)が3200万ドル(約34億円)の資金調達を行った。同社はこの資金を活用し、より多くの地域での事業拡大を推し進め、研究開発に投資して同社の主力製品であるCHIMEプラットフォームをさらに強化する予定だ。

この資金調達は、Cellwizeに投資を行う企業の顔ぶれと、同社の推進力の大きさにおいて注目に値する。

シリーズBラウンドはIntel Capital 、Qualcomm Ventures LLC、Verizon Ventures (Verizonの一部でありVerizon Media経由でTechCrunchを所有)、Samsung Nextが共同出資しており、また小売、金融サービス、通信などの分野で複数のブランドを所有するポルトガルのコングロマリットであるSonaeやDeutsche Telekomなど、既存の株主も参加している。

こういった後援者たちの存在がCellwize の成長を裏付けている。イスラエルに拠点を置き、ダラスとシンガポールでも事業を展開している同社によると、現在同社はVerizonやTelefonicaを含む約40の通信事業者にサービスを提供しており、16か国で300万の携帯サイト、8億人の加入者をカバーしているという。

同社は企業評価額を公開していないが、これまでに投資家から5650万ドル(約60億円)を調達している。

5Gには通信事業者、ベンダー、携帯電話メーカー、モバイルエコシステムのその他事業から多くの期待が寄せられている。無線データの高速化と効率化により、消費者やビジネスのための新サービスが生まれ、人だけでなくIoTネットワークもカバーし、収益の新たなチャンスが開かれると考えられているからだ。

健康リスクに対する懸念が取り上げられ、そのリスクのほとんどは時間の経過とともに否定されるようになったが、5Gの技術的な問題点の1つはその実装の難しさにある。

通信事業者がより近い距離により多くの機器を配置する必要があるだけでなく、無線アクセスネットワーク(RAN:デバイスが通信事業者のネットワークとどのように連結するかを制御する)でハイブリッドシステムを実行することになる可能性が高いという点や、2G、3G、4G、LTEなどのレガシーネットワークを5Gと同時に管理しなければならない上に5Gだけでも複数のベンダーと作業を行うことになるという点で、移行には非常に大きなコストと手間がかかる。

CellwizeのCHIMEプラットフォームはクラウド上でAIやその他の技術を活用し、データを最適化及び監視して新たな5Gネットワークを設定し、さらにサードパーティ開発者が統合するためのAPIも提供するオールインワンツールとして機能する。同社はこのプラットフォームを、通信事業者が5Gへの移行の際によりオープンショップ型のアプローチで運用できるようにするための橋渡し役として位置づけている。

CEOのOfir Zemer(オフィール・ゼマー)氏は次のように語っている。「従来のRAN市場では大企業が優位に立っていましたが、5Gはモバイル業界全体の運営方法を変えつつあります。これらの従来のベンダーは通常、自社の機器にプラグインするソリューションを提供し、サードパーティの接続を許可しないため、閉鎖的で限定的なエコシステムが形成されています。大手事業者にとってもまた、1つのベンダーに縛られるのは好ましくありません。技術的にもビジネス面でも、この仕組みが自社のイノベーションの阻害要因になると考えているからです」。

Cellwizeは通信事業者がマルチベンダーのエコシステムの中でRANを計画、展開、管理できるようにするオープンなプラットフォームを提供。「当社のソリューションに対する需要は非常に高く、5Gの導入が世界的に増加し続けていることから、当社の製品に対する需要は今後も拡大していくと予想されます」と同氏は言う。

ゼマー氏は以前、通信事業者がRANでデータを管理するために独自の製品を自社で構築すれば、「5Gのサポートに苦労するだろう」と述べている。

これは単なる口先だけの言葉ではない。主要な点で競合するIntelとQualcommの両社がこのラウンドに投資しているという事実は、Cellwizeが自らをモバイルアーキテクチャーにおけるスイスのような存在であると考えていることを裏付けている。また両社ともに、それぞれの通信事業者の顧客に対する優先順位を考えると、自社の技術と簡単かつ完全に統合できるサービスを価値のあるものと見ているということを示している。

Intel Capitalの副社長兼シニアMDであるDavid Flanagan(デビッド・フラナガン)氏は発表文中で次のように述べている。「過去10年間、Intelのテクノロジーは、通信業界が俊敏でスケーラブルなインフラストラクチャーとともにネットワークを変革することを可能にしてきました。複雑性の高い無線アクセスネットワークの管理が課題となっている中、Intelがサービスプロバイダーやプライベートネットワークにクラウドアーキテクチャーのメリットをもたらすため、AIベースの自動化機能を活用するCellwizeのテクノロジーの可能性に大きな期待を抱いています」。

Qualcomm Ventures Israel およびEuropeのMDでQualcomm Israel Ltd.のシニアディレクターであるMerav Weinryb(メラブ・ヴァインリーブ)氏は、「Qualcommは5G拡大の最前線に立ち、コネクティビティの新時代を切り開く強固な技術のエコシステムを構築しています。RANの自動化およびオーケストレーションのリーダーであるCellwizeは、5G展開において重要な役割を果たしています。当社はQualcomm Venturesの5Gグローバルエコシステムファンドを通じてCellwizeをサポートし、世界各地で5Gの導入を拡大、促進していきたいと考えています」と述べている。

ここが重要な点である。現在5Gの展開は非常に少なく、時折5G の展開に関する今ひとつぱっとしないレポートを読むと、現時点では現実というよりも単なるマーケティングのように感じることがある。しかし、ほぼ設立当初の2013年から同社で勤めるゼマー氏(同氏は同社の共同創設者ではなく、実際のところ創設者らは共に同社を去っている)は、実際に通信事業者らと繰り返し会議を行なっているし、同氏自身、近い将来の成功を確信している。

「今後5年以内にモバイル接続の約75%が5Gによって駆動され、26億もの5Gモバイル契約とともに世界人口の65%にサービスが提供されることになるでしょう。5Gテクノロジーは非常に大きな可能性を秘めていますが、現実にはあらゆる技術、アーキテクチャー、バンド、レイヤー、RAN/vRANプレーヤーで構成される非常に複雑な技術でもあります。当社は世界中のネットワーク事業者と協力して、RANプロセス全体を自動化することで、次世代ネットワークの展開と管理の課題を克服し、顧客への5Gの提供を成功させるための支援を行っていきます」と同氏は抱負を語る。

関連記事:アップルが5G対応のiPhone 12シリーズを日本時間10月14日午前2時に発表へ、待望のオーバーイヤーヘッドフォンも?

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:5G 資金調達

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。