Dropboxに挑むスイスのpCloud、差別化に成功し黒字化達成

一般向けクラウドストレージ市場は、Dropbox、Google Drive、Microsoft OneDrive、iCloud Driveなどがひしめき合い、混沌としている。そんななか、pCloudと呼ばれるスイスの小さな会社が、この5年で900万人以上のユーザーを獲得した。この社員32人の会社は、最近ようやく採算が取れるまでに成長した。

Dropboxを使い慣れた人なら、pCloudにも戸惑うことはないだろう。このサービスも、ファイルをバックアップしたり、デバイス間で同期する機能を提供する。容量は10GBまでは無料で、それ以上の容量と付加機能は有料となる。

DropboxやOneDriveとは異なり、pCloudはあたかも外付けドライブのように振る舞う。パソコンにアプリをインストールすると、デフォルトではすべてクラウド側にのみ保存されるようになる。macOSの場合は、Fuseを使って新たな仮想ドライブを作り、Finderにマウントする。

pCloud上のフォルダを右クリックして開くメニューから、そのフォルダ全体をローカルにダウンロードして、オフラインでもアクセスできるように設定できる。その結果ローカルのドライブ上に作成されるフォルダは、pCloud上の元のフォルダと同期されるようになる。逆にアプリの環境設定で、ローカルなフォルダを選び、pCloudに追加することも可能だ。こうしたフォルダは、パソコン上でアプリを動かしている限り、常に同期が保たれる。

pCloudはLAN同期もサポートする。同じWi-Fiネットワーク上で複数のデバイスを使っている場合、それらの間ではインターネットを通さずに、ローカルネットワークを使用してファイルを転送する。Dropboxのものと同様の機能だ。

モバイル環境では、専用アプリを使用してファイルにアクセスできる。他のライバルのサービスと同様、pCloudでもカメラロールを自分のpCloudアカウントに自動的にバックアップできる。

セキュリティについてはどうだろう。pCloudも、他のクラウドストレージのサービスと同様に、デフォルトではファイルを暗号化しない。ただしpCloudは、ファイルの転送中には通信を暗号化している。とはいえ、pCloud上に保存したファイルは、原理的にはpCloudの運営会社が読み取れる。もし、プライバシーを重視するのであれば、そもそもクラウドストレージなどは利用すべきではない。

しかしpCloudは、pCloud Cryptoという追加のオプションを提供している。これを利用すれば、パスワードで保護された秘密のフォルダを作成できる。このフォルダにファイルを追加する際、そのファイルはデバイス上で暗号化されてからpCloudのサーバに送信される。設定したパスワードがなければ、ファイルのロックを解除できない。つまりpCloudも、政府機関も、ユーザーの許可なしにその中のファイルを入手することはできないのだ。

価格についても明らかにしておこう。pCloudは、500GBのストレージで月額3.99ドル(約447円)、2TBなら月額7.99ドル(約895円)という価格設定だ。pCloud Cryptoは月額4.99ドル(約559円)の追加料金で利用できる。生涯契約なら、500GBで175ドル(約1万9600円)、2TBで350ドル(約3万9200円)、Cryptoオプションは125ドル(約14000円)で一生利用できる。これは高額のように思えるが、毎月の定額支払に抵抗があるというユーザーには受け入れられるだろう。

Microsoft、Google、Apple、Dropboxなどと競合するのは、かなり困難なことのように思えるだろう。それでも、何かしらの特徴的な機能を用意することで、そうした大企業にも対抗できるサービスを開発することが可能であると証明された。嬉しいことだ。pCloudはDropboxほど大きくなることはないかもしれない。それでも、同社の動きからは目が離せない。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)