電気自動車は基本的に「車輪の付いたソフトウェア」で、それは多くの可動部品を必要とする。もちろん、物理的なものではなく、仮想的なものだ。そのソフトウェアは、走行中の電気自動車の性能、効率、安全性を継続的に最適化する必要がある。しかし、そこに問題が生じている。自動車メーカーが自社のソフトウェアを公開して、改善に役立てることができないということだ。そこで、この自動車用の組み込みソフトウェアを、その土台にある電子部品のハードウェアから切り離せば、より最適化が進み、より効率的な自動車を実現することが可能になる。それはバッテリーの航続距離や性能全体に重要な影響を及ぼす。
このような理由から、英国に本拠を置き「インテリジェントな自動車用ソフトウェア」を開発しているEatron(イートロン)という企業は、英国のMMC Ventures(MMCベンチャーズ)が主導する1100万ドル(約12億5000万円)のシリーズA資金調達を成し遂げた。
この投資ラウンドには、Aster Capital(アスター・キャピタル)とベトナムの自動車メーカーであるVinFast(ビンファスト)も参加した。Eatronはこれまで、VinFastの電気自動車開発に協力してきた。また、このスタートアップ企業はドイツのHirschvogel Group(ヒルシュフォーゲルローランド・グループ)とも戦略的パートナーシップを結んでおり、同グループはEatronに150万ドル(約1億7000万円)を出資している。
同社の技術を利用することで、自動車メーカーやティア1サプライヤーは、バッテリーマネジメント、インテリジェントモーションコントロール、先進運転支援などを目的とする自動車用ソフトウェアを、自社のハードウェアから切り離すことができる。これにより、自動車メーカーにとってはサプライヤーの選択肢が増え、コスト、リスク、市場投入までの時間を減らす効果がもたらされる。
今回のシリーズA資金の一部は、サードパーティ製ソフトウェアモジュールや、半導体およびハードウェア部品のサプライヤーとの提携を増やし、プラットフォームを拡大するために使用される予定だ。また、ドイツ、インド、米国の営業チームを増強することも計画されている。
Eatronの共同創業者兼CEOであるUmut Genc(ウムット・ゲンク)博士は次のように述べている。「モビリティ、特に自動車は、劇的な変化の真っ只中にあり、その変化の一環として、ソフトウェア主導型の産業になることが必要とされています。端末に組み込まれ、クラウドに接続されたインテリジェントな自動車用ソフトウェアプラットフォームは、この変革において重要な役割を果たすでしょう」。
MMC Venturesの投資家であるMina Samaan(ミナ・サマーン)氏は次のように述べている。「自動車メーカーをサポートする興味深いアルゴリズムのコンセプトを構築するソフトウェアビジネスは数多く見てきましたが、量産市販車に必要な規制、セキュリティ、安全性の要件を満たす専門知識を持った企業はありませんでした。しかし、Eatronは例外です。同社のソフトウェアは、自動車用品質を目指して一から構築されたもので、今後の数年間で何十万台もの自動車のバッテリーや自動運転機能を推進する可能性を秘めています」。
画像クレジット:VinFast
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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)