Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏が3225ワードにわたる長文のブログ記事で、人権の守られていない国にはデータセンターを建設しないと宣言して間もなく、彼は約束を破った。
彼はシンガポールを例外扱いすることを選んだ。Facebookのファウンダーはわずか数ヶ月前の投稿で、「全員にサービスを提供」するために、同社にとってアジア初のデータセンターをこのミニ国家に作ると宣言した。
ザッカーバーグ氏は明快だった。「世界中に基盤を構築していく中で、われわれはプライバシーや表現の自由などの人権を侵害した歴史のある国にはデータセンターを置かないことに決めた」
シンガポールについて知られていることが2つあるとすれば、プライバシーも表現の自由もないことだろう。
その華やかさと経済力をよそに、シンガポールの人権の歴史は国際的認識のはるか下を行っている。人口500万人のこの国は人権団体による世界ランキングで最下位に近く、それは言論、表現、集会の自由に反対する圧政的法律と、 拡大する監視社会の元でのプライバシー権利の制限などが理由だ。さらに悪いことに、この国はLGBTQ+コミュニティーに対する残虐な扱いでも知られており、彼らの行動は極度に制限され、公衆でのあらゆる行動や表現は犯罪とみなされている。メディアさえも厳重な監視を受け、政府による懲戒や名誉毀損訴訟による脅迫が後を絶たない。
国境なき記者団は、シンガポールを「不寛容な政府」を持つ国であると言い、ヒューマン・ライツ・ウォッチはこの国の制限の厳しい法律を「ドラコンのように過酷」であると評している。
われわれはこうした指摘をFacebookにぶつけてみたが、同社はザッカーバーグ氏の発言が矛盾するとも偽善であるとも見ていない。
「データセンターをどこに新設するかは多段階のプロセスであり、再生可能エネルギー、インターネット接続、地元の強力な人材資源など、何十種類もの要素を考慮しなくはならない」とFacebookの広報担当者Jennifer Hakes氏は言った。「しかし最重要な要素は、その設備に保存されたあらゆるユーザーデータを、われわれが確実に守れることだ」
「これはザッカーバーグ氏が先週の投稿で強調した重要な点だった」とHakes氏は言った。「我々はシンガポールについてこれらの要素を慎重に検討した結果、アジア初のデータセンターに適切な場所であるという結論を下した」
皮肉なことに、Facebook自身のプラットフォームは、シンガポール政府によるよる口うるさい反対者の取締りの標的になっている。活動家のJolovan Wham氏は、Facebookページで 集会を組織した後に投獄された。集会許可申請が却下されたため、Wham氏は連絡手段をSkype通話に切り替えた。
Facebookに、どんな場合にある国の人権を容認できないのか尋ねたところ、ザッカーバーグ氏の投稿を再度指し示しただけだった。
シンガポールは今でもIT業界とビジネスにとって重要な拠点であり(特に欧米企業にとって)、そのため日頃プライバシーと言論の自由への強い意志を強調している会社も、人権を捨ててきた。Amazon、Microsoft、Google、DigitalOcean, Linode、およびOVHの各社はいずれもこのミニ国家にデータセンターを置いている。
しかし、現時点で人権の歴史に汚点のある国にデータを保存しないと公約しているのは1社だけだ。
なぜFacebookはシンガポールを例外にしたのか?これはザッカーバーグ氏にしかわからない謎だ。
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook )