Instagramはまったく新しい収入源を開拓している。ついに、その米国内の1億3000万人のユーザーは、ショッピング用の投稿に載っている商品に付いたタグをタップするだけで、直接アプリの中で買えるようになる。あらかじめ支払い情報を登録しておくことは必要だ。「Checkout on Instagram」は、Adidas(アデイダス)、Kylie Cosmetics(カイル・コスメティクス)、Warby Parker(ワービーパーカー)をはじめとする、20以上のトップブランドを対象に、米国時間3月19日から米国内で使えるようになる。もはや、顧客を各ブランドのウェブサイトに誘導して購入してもらう必要はなくなった。
Instagramの広報担当者はTechCrunchに、「販売手数料を設定して、チェックアウトを可能にするための仕組みや設備の費用をまかない、取引に関連するコストも埋め合わせます」と説明した。その「販売手数料」として販売者に請求する金額を尋ねたところ、担当者は「今のところその具体的な数字は公表していません。非公開ベータ期間中に、手数料についても販売者と試行しています。それによって、消費者が払う商品の価格が変わることはありません」と答えた。このことからしてInstagramでは、向上が期待できる顧客転換率の見返りとして、販売者に高めの手数料を請求し、アプリ上で購入するための料金をユーザーの支払額に上乗せするようなことはしないようだ。
Checkoutの導入によって、Instagramの広告ビジネスもさらに繁栄するだろう。そこから購入に至るまでに必要なステップも短縮されるので、Instagramを利用したほうが、投資に対する見返りが大きいとブランドに納得させることができるからだ。現時点では、Checkoutボタンは、発表時にパートナーとなっている販売者によるオーガニックな投稿にのみ表示され、広告には表示されない。しかし、Checkout機能を付加した広告は、Instagramにとって金脈になる可能性もある。というのも、Facebookのニュースフィード広告ビジネスの先行きは怪しく、CEOのマーク・ザッカーバーグ氏も、2019年のロードマップに不可欠なものとして、商取引を挙げているからだ。
Checkoutのタグは、非公開ベータに参加しているブランドのフィード投稿、ストーリーズ、発見タブのコンテンツに表示される。Instagramではいずれ、より多くの企業に、この機能を公開する予定だ。ユーザーが投稿をタップして商品のタグを表示し、それを開くと、これまでの「View on Website」ボタンの代わりに「Checkout on Instagram」ボタンが表示される。
初めて利用する際には支払い情報を入力する。それは保存されて、その後の買い物にも使われる。「保護された支払い情報を1カ所に保存しておけば、毎回ログインしたり、同じ情報を何度も入力しなくても、お気に入りのいろいろなブランドの商品を購入できます」と、Instagramは説明する。ブランドごと別々にサインアップしなければならないと、ユーザーはイラついて、カートに商品を入れただけで、途中で放棄してしまうことも少なくない。それを防ぐことができるのも、この機能の重要なメリットだ。TechCrunchでは、最近Instagramがストーリーズで、「資金調達中」のステッカーをプロトタイピングしていることをレポートした。それも同様に支払い情報を保存するものだった。Instagramが、支払い情報のデータベースを構築したいと考えているのは確かだろう。
ユーザーが何かをInstagram内で購入した後は、自分のプロファイル内に新設された「Orders」セクションでトラッキングできるようになる。そこには、注文の状況が表示され、オプションで注文をキャンセルしたり、返品や販売者に連絡することも可能となる。そして注文が出荷されたら、Instagramから直接通知を受け取ることになる。興味深いのは、Instagramでは、メッセージ機能に領収書発行機能を付加していない。FacebookのMessengerとは対照的だ。
販売者は、連絡先や住所など、注文を処理するための必要最小限な情報しか知ることができない。支払い情報は通知されないのだ。ユーザーは、任意で、販売者に電子メールのアドレスを伝えて、その後に商品やサービスの情報などを受け取ることもできる。Checkout on Instagramでは、ユーザーが販売者のウェブサイトで直接購入した時に比べて、少ない情報しか販売者に伝わらない。しかしInstagramは、その購入がどの投稿で発生したのかという情報は、販売者に伝えるとしている。
ユーザーは、PayPal、Visa、Mastercard、American Express、そしてDiscoverによる支払いが可能となっている。Instagramでは、販売者が、Shopify、BigCommerce、ChannelAdvisor、CommerceHub、その他のツールを、Checkout機能と統合できるようにすることを計画している。またInstagramは、Checkout機能の使われ方が、ユーザーがよく見るコンテンツのランキングのヒントとしても利用される可能性を認めている。支払いはPayPalによって処理される。そのビジネス分野には、Facebookも侵略するつもりはない。PayPalに支払う手数料は、おそらくInstagramが受け取る販売手数料から出ることになる。
「私たちが商品にタグを付けることによって、顧客にとって買い物がより便利なものになります」と、Warby Parkerの共同創立者兼CEOのNeil Blumenthal氏は述べている。「Checkoutは、買い物の体験を一歩進んだものにします。その場で買いたいとひらめいた商品を見つけた人にとって、より直感的でシームレスな買い物ができるようになるのです」。発表時にパートナーとなっている全ブランドを挙げておこう。Adidas、Anastasia Beverly Hills、Balmain、Burberry、ColourPop、Dior、Huda Beauty、H&M、KKW Beauty、Kylie Cosmetics、MAC Cosmetics、Michael Kors、NARS、Nike、NYX Cosmetics、Oscar de la Renta、Outdoor Voices、Ouai Hair、Prada、Revolve、Uniqlo、Warby Parker、そしてZaraだ。
今のところ、開発中と伝えられていたInstagramの独立したショッピングアプリが登場する兆候は見られない。その代わり、発見タブの中に専用のショッピングチャンネルを設置し、ストーリーズにタグも追加した。6カ月前のことだ。また最近我々は、私的に保存した投稿のコレクションを公開できる、Pinterestに似たような機能を、Instagramがプロトタイピングしているのを発見していた。その機能は、インフルエンサーにとってCheckoutが使える商品を他の人に勧めるのに適した手段となるだろう。Facebookはこの5年をかけて、さまざまな「購入」ボタンを試してきた。それが今ようやく自然な居場所に落ち着いたわけだ。
Instagramは、アプリの外にリンクする権利を必死に守り続けてきた。それは、コンテンツを着実に消費し続けてもらうためだ。今や世界で10億人以上のユーザーを抱えるまでに成長したInstagramは、人々の注目をずっと内部に閉じ込めてきた。そしてついに、その中で販売する権利を売るための準備が整ったのだ。
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(翻訳:Fumihiko Shibata)