OctoMLが機械学習のアクセラレーションプラットフォームのために巨額約96.5億円調達

OctoMLはシアトルのスタートアップで、企業の機械学習モデルの最適化と多様な実行環境による実用展開を助けている。米国時間11月1日、同社は、Tiger Global ManagemenがリードするシリーズCのラウンドで8500万ドル(約96億5000万円)を調達したことを発表した。これまでの投資家であるAdditionとMadrona Venture GroupおよびAmplify Partnersもこのラウンドに参加した。これで同社の調達総額は1億3200万ドル(約149億9000万円)となり、その中には2021年初めのシリーズBの2800万ドル(約31億8000万円)も含まれている。

同社の共同創業者はCEOのLuis Ceze(ルイス・セゼ)氏とCTOのTianqi Chen(ティアンキ・チェン)氏、CPOのJason Knight(ジェイソン・ナイト)氏、チーフアーキテクトのJared Roesch(ジャレッド・ローシュ)氏、そしてテクノロジーパートナーシップ担当副社長Thierry Moreau(ティエリー・モロー)氏らで、彼らは、オープンソースの機械学習コンパイラーフレームワークApache TVMの作者でもある。TVMは現在、AmazonやMicrosoft、Facebookなどが使っている。OctoMLは、TVMの、機械学習モデルを自動的に最適化し、ほとんどどんなハードウェアでも動くようにする能力をベースにしている。

セゼ氏によると、シリーズAを調達して以降のOctoMLは、QualcommやAMD、Armなど多くのハードウェアパートナーと契約を交わした。同社はまた最近、ビデオコンテンツのモデレーションの大規模な展開に関して、Microsoftと協働している。同社によると、ユーザーはGlobal 100社の企業が多く、たとえばトヨタは、同社のサービスを利用するようになってからMLモデルのパフォーマンスを2倍から10倍向上させている。

2021年初めのシリーズBのころの同社は、同社のSaaSプラットフォームのアーリーアダプターがわずかにいる程度だった。しかし本日の発表に先立ってセゼ氏は、そのサービスがまだ一般的な可用性に達していない、と述べた。それでも現在、OctoMLはともに仕事をする顧客の数が多くなり、そのプラットフォーム上で彼らが成功するよう注力に努めている。

セゼ氏によると、モデルが増殖しより高度になると、それらをクラウドで動かす費用も高くなる。そこで、そういうモデルを最適化できるシステムは直ちに、同社の顧客が達成しているようなコスト削減に向かうことになる。「コストだけでなく持続可能性の問題です。同じハードウェアの上で何かを従来の倍速で動かせるのなら、それは半分のエネルギーしか使わないということであり、スケールにインパクトを及ぼします」とセゼ氏はいう。また彼によると、大きなクラウドプロバイダーでもハイエンドなGPUのデプロイにはチップの不足も相まって容量的に限界があり、モデルを別のGPUや、あるいはCPUにさえ、移すこと、すなわちハードウェアの多様化に新たなアドバンテージがありうる。

セゼ氏によると、現時点では新たな資金調達の必要性はなかったが、現在順調ではあるものの万一に備えておくべきだと結論した。「新たなハードウェアの立ち上げやクラウドの能力拡張など、万一に備えておくべき部分はいくつもあります。これまでは『もっと速くしておけたし、そうすればこの仕事を取れたのに』の連続でした。ビジネスのチャンスはいつも目の前にあるが、それらに全部対応するためには、もっと速くスケールすべきだ」とセゼ氏は語る。

そういうチャンスをものにして新たな顧客を獲得するためには、今回の資金で迅速に技術と営業の両方を拡大する必要がある。また、パートナーのエコシステムも築いていきたい。

Tiger GlobalのパートナーであるJohn Curtius(ジョン・クルティウス)氏は次のように語る。「企業や組織が次世代のAIモデルとアプリケーションを構築するやり方に、OctoMLはとても深い変化を作り出そうとしている。ユーザーが依存しているすべてのハードウェアベンダーにわたって統一的なデプロイライフサイクルを実現しようとするOctMLのビジョンは、MLのデプロイのコスト効率を上げ、もっと多くの開発者がアクセスできるものにしていく。OptMLのLuisらの共同創業者チームがTigerのポートフォリオに来てくれたことは本当にすばらしいし、その成長の次の章では、私たちも重要な役を演じたい」。

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画像クレジット:Zhang Jingang/VCG / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

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TechCrunch Japan

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