Rani Therapeuticsのロボットカプセルは皮下注射治療をどう変えるか

新しい自動注射カプセルがまもなく皮下注射治療の代わりになるかもしれない。

このいわゆるロボットカプセル(ロボットピル)のアイデアは、ライフサイエンスラボであるInCube Labsの研究プロジェクトから生まれた。同ラボは約8年前にラトガーズ大学で電気・生物医学工学の学位を取得したRani Therapeuticsの会長兼CEOであるMir Imran(ミール・イムラン)氏が運営する。ライフサイエンス分野のイノベーションで有名なイムラン氏は、20以上の医療機器会社を設立し、世界初の植込み型除細動器の開発を支援してきた。

サンノゼを拠点とするRani Therapeuticsがその基盤となる技術に取り組んでいるとき、イムラン氏と同氏のチームは、皮下(または皮膚の下の)注射による痛みをともなう副作用を軽減すると同時に、治療の有効性を改善する方法を見つけたいと考えた。「技術自体は非常にシンプルな仮説から始まりました」とイムラン氏はインタビューで述べた。「患者が飲み込む生物学的薬剤を内包するカプセルを作れないのはなぜだろうと考えました。腸に到達するとカプセル自体が変形し、痛みなく注射を行います」。

Rani Therapeuticsのアプローチは、消化管固有の特性に基づいている。カプセルの注射メカニズムは、患者の胃から小腸に移動するときに溶けるpH感受性コーティングで覆われている。これにより、カプセルが適切な場所に適切なタイミングで確実に薬を注射することができる。目的地に到達すると、反応体が混ざり二酸化炭素を生成する。二酸化炭素が小さなバルーンを膨らませ、圧力差を生じさせて、薬物を充填した針を腸壁に入れる。「つまり、一連の出来事が本当にタイミング良く起こることにより針が目的地に届きます」とイムラン氏は話した。

機械的ともいえる手順にもかかわらず、カプセル自体には金属やバネは含まれていないため、体内の炎症反応の可能性が低くなる。代わりに、針やその他のコンポーネントは注射可能なグレードのポリマーでできており、イムラン氏によると他の医療機器にも使用されている。小腸の上部に注射を行う場合、胃酸と肝臓からの胆汁の広がりが細菌の繁殖を妨げるため、感染のリスクはほとんどない。

カプセルに関するイムラン氏の優先事項の1つは、皮下注射による痛みをともなう副作用を排除することだった。「それを痛みをともなう別の注射に置き換えても意味がありません」と同氏はいう。「しかし、生物学が私たちに味方しました。腸には皮膚にあるような痛みのセンサーがありません」。さらに、小腸の高度に血管新生された壁に注射を投与すると、通常は脂肪組織に薬を入れる皮下注射よりも効率的に働く。

イムラン氏と同氏のチームは、成長ホルモン障害先端巨大症、糖尿病、骨粗鬆症など、さまざまな適応症にカプセルを使用する計画を立てている。先端巨大症治療薬であるオクトレオチドは2020年1月、1次臨床試験で安全性と持続的なバイオアベイラビリティの両方を実証した。彼らは他の適応症について臨床試験を将来続けることを望んでいるが、最初は先端巨大症を優先することを選択した。先端巨大症に対し確立されている治療薬は「非常な痛みをともなう注射」が必要だとイムラン氏は述べた。

Rani Therapeuticsは2020年末、プラットフォームのさらなる開発とテストのために6900万ドル(約75億円)の新規資金を調達した。「これが今後数年間私たちに資金を提供してくれるでしょう」とイムラン氏はいう。「私たちのビジネスへのアプローチは、テクノロジーを非常に堅牢で製造可能なものにすることです」。

カテゴリー:バイオテック
タグ:Rani Therapeutics医療

画像クレジット:Rani Therapeutics

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(文:Sophie Burkholder、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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