SaaSの購買サービスで成長するVendrがシリーズAで約65.5億円の大型資金調達

米国時間3月8日、Vendrが6000万ドル(約65億4600万円)の大型シリーズAラウンドを発表した。このラウンドを主導したのはTiger Globalで、他にY Combinator、Sound Ventures、Craft Ventures、F-Prime Capital、Garage Capitalが参加した。

Vendrは2020年6月にシードラウンドで400万ドル(約4億3600万円)を調達し、その際にTechCrunchは同社が収益を上げていることを報じた。今回の大型シリーズAはそれに続く資金調達となる。Vendrは今回のシリーズAより前に600万ドル(約6億5400万円)以上を調達していた。

TechCrunchにはいくつか疑問があった。まず、Vendrはどのようにしてこれほど多額の資金を短期間で集めたのか。CEOのRyan Neu(ライアン・ノイ)氏がインタビューで答えたところによると、Vendrは2020年に5倍弱の成長を遂げ、同年のキャッシュフローも黒字だった。同社のビジネスモデルはSaaSの売り手と買い手の間に立ち、取引を迅速化しつつコストを抑えるもので、ソフトウェア依存の高まりとコスト管理の重視という2020年の2つのトレンドにうまくフィットしたようだ。

次の疑問は、どのようにしてこれほど大きく成長しているのかということだ。Vendrは顧客に対しソフトウェアに支払う代金の1〜5%を請求しており、これを積み上げて増やしていくことができる。ノイ氏はTechCrunchに対し、従業員500人の標準的な企業はソフトウェアに年間200万〜350万ドル(約2億1800万円〜3億8000万円)を支払うと述べており、計算してみると最小の1%の場合にVendrは2万〜3万5000ドル(約218万〜380万円)を受け取ることになる。パーセンテージの中間である2.5%なら、5万〜8万7500ドル(約545万〜955万円)を受け取る。

このような価格体系でVendrは年間の売上を短期間で増やすことができる。それではなぜVendrの顧客はソフトウェアの費用を処理するためにVendrに支払いをするのか。それは節約に有効だからだ。Vendrに支払う費用以上に節約できるなら、企業は得をする。さらに、企業は購入にかかる時間を節約できるとVendrが主張するとおり、Vendrの顧客はツールの確保にかかる時間を削減することができる。

誰にとっても良いことのように見えるが、例外はソフトウェアの売り手だ。売り手にとっては、あまり詳しくない買い手が自分たちのコードに高い費用を払ってくれるチャンスを失っているのではないか。しかしノイ氏は、Vendrのモデルは売り手企業にとってもそれほど悪くないという。迅速に、高確率で契約が成立するからだ。売り手企業はセールスチームの時間を節約することができ、差額とのバランスがとれるかもしれない。

現在、買い手を中心としているVendrはソフトウェア市場の売り手に対して何ができるかをさらに尋ねたが、ノイ氏は今後の計画を明らかにしなかった。

資金調達ラウンドに話を戻すと、新規の外部資金なしでうまくやっていたのならVendrはなぜ資金を調達したのか。同社はTechCrunchに対し、1年前は10人だった従業員を60人に増やしたことと、バランスシートをもっと強化したかったことを挙げた。なるほど。Tiger Globalからこれほど多額の小切手を用意されて受け取らないスタートアップは滅多にないだろう。評価額の上昇がVendrにとって何を意味するかを考えれば、謎を解くのはそれほど難しくない。

TechCrunchはここ数週間、ソフトウェア市場のとてつもない深さを探ってきた。ソフトウェアのTAM(Total Addressable Market、実現可能な最大の市場規模)を考えると、Vendrは投資家が今回のラウンドで期待を示したハイパーな成長を維持できるかもしれない。2021年のVendrの動向に注目しよう。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:SaaSVendr資金調達

画像クレジット:Karl Tapales / Getty Images

原文へ

(文:Alex Wilhelm、翻訳:Kaori Koyama)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。