Skyland Venturesの新シードプログラム「Morning Sprint」は起業家重視の常時開催型

Y Combinatorの成功を受けて、世界各地でいわゆるシードアクセラレータープログラムが雨後のタケノコのように大量に立ち上がりブームとなっている。すでに米国では失速気味とも言われていたりするが(The Startup Accelerator Trend Is Finally Slowing Down)、日本ではまだまだ黎明期といっていいかもしれない。

シードアクセラレーターといえば、たいていは「バッチ」とか「○期生」と呼ぶ単位で一度に複数のスタートアップに少額ずつ投資するスタイルが一般的だ。1年に2度とか3度、スタートアップを募集する。そこで選ばれ、同時期に投資を受けたスタートアップのメンバーたちはメンタリングを受けたり互いに切磋琢磨したりする。

こうした一般的なスタイルと、ちょっと様子の異なるプログラムを東京に拠点を置くSkyland Venturesが開始すると、今日発表した。応募時期を年2回などと区切らずに、常に起業家に門戸を開いている常時開催型のシードアクセラレータープログラム「Morning Sprint」だ。

名前が示す通り、Morning Sprintは朝に行われる。月、火、木と週に3度、朝7時から8時までシードステージの起業家4名ほどがプロダクトのデモを中心としたピッチを行うという場だ。Morning Sprintの場にはメンター起業家として、MOVIDA JAPANの孫泰蔵氏、East Venturesの松山太河氏、インブルーの大冨智弘氏などが参加して、コミュニティ構築をしていくといい、こうした中で育った起業家に投資して支援してく狙い。Skyland Venturesの木下慶彦氏といえば、これまで同様の朝の集まり「Morning Pitch」を継続して開催してきた中心人物としても知られている。これまでSkylandが投資してきた八面六臂ナナメウエイベントレジストgamba!などは、Morning Pitch出身だ。

今回新たにプログラムを開始するにあたって木下氏は「起業家ファンドを作りたい」と話す。資金を運用するファンドは、出資者と起業家の間に立っているわけだが、そのいずれに重点を置くかという話だ。「ECのアナロジーでいえば、Amazonが顧客ファーストと言うように、われわれは起業家に集中したいのです。だから、事業シナジーは作りません、レポーティングもしませんと最初から明言しています」(木下氏)。ECには売り手と買い手がいて、仲介者であるECサイトは両方の顔を見ながらバランスを取るのが一般的。しかし、Amazonは徹底した買い手優先で知られている。同様に、VCは出資者とベンチャー企業の両方とコミュケーションするわけだが、そうであるにしても徹底して起業家と向き合いたい、というのがSkyland Venturesが出すメッセージということだそうだ。

事業会社が作るファンド、いわゆるCVCでは事業シナジーを求められることがあるし、早期マネタイズの圧力もあってグループ会社と提携することも少なくない。それはスタートアップ企業にとって大きなメリットとなることもあれば、足かせとなることもある。目線を高く起業したはずが、大企業の下請けのような提携プロジェクトばかりこなしていては、コアの事業に集中できないということもあり得るからだ。木下氏は過去の経験から、出資側の思惑やメリットを最大化する施策をスタートアップ企業に押し付けたくないと考えてMorning Sprintというプログラムを始めた面もあるのだという。

ちなみに「朝」にこだわるのは、朝の早いうちに投資家など外部とのコミュケーションを済ませれば、起業家は午前も午後も事業に集中できるからだそう。Skyland Venturesの投資も大方は朝に決まるそうで、額は数百万円から3000万円程度。「決まるときは15分で決まる」(木下氏)という。Skyland Venturesは2012年8月設立で、1号ファンドの総額は約5億円。スマホ分野のプロダクト持つエンジニアや起業家、及びその予備軍を応募していて、ファンドのうち2億円をスマホ投資枠としている


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TechCrunch Japan

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