このロボットアームで途上国の労働搾取がなくなるかもしれない

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SewboのファウンダーJon Zornowは、昨年9月に世界で初めて、人間の手助け無しにTシャルを縫い合わせることができるロボットを完成させたとして話題をよんだ。下のビデオのようにロボットアームと自動ミシンが、予めプログラムされた動きに沿って、入念に準備された材料を縫い合わせていくと……

Tシャツが出来上がる。

この一見単純なプロセスには、とてつもなく重要な意味がある。平等や未来の仕事に関する議論が深まる中、昨年9月の時点では面白くて可愛いだけだったこのロボットが、今ではひとつの重要な論点となっているのだ。途上国経済や低賃金と関連付けられることの多い仕事が、自動化によってさらに減少したらどうなるのだろうか?ロボットが今の低賃金労働者を代替して食費や住居もなしに仕事をこなすことで、企業が途上国に製造拠点を置く必要がなくなったら何が起きるのだろうか?

人間で溢れかえったスウェットショップ(劣悪な労働環境で貧困層を搾取する工場)という概念は、長距離トラックやタクシー、さらには配達トラックなどと一緒に、そのうち過去の遺物となるかもしれない。人間が操作するミシンの最後の1台がその役目を終え、全ての服をロボットが作るようになったらどうなるのだろうか?ハンドメイド品にはプレミアムがつくようになるのだろうか?人間が作ったジーンズをはくというのが、ファッションステートメントとして扱われるようになるのだろうか?

しかし、ロボットを使ってTシャツを縫い合わせるというのは難しい作業だ。端的に表現すると、人間はロボットよりも生地の扱いがうまい。ロボットの専門家でさえ、洗濯物たたみ機の開発に10年もかかり、まだ実物は販売されていないのだ。腕の部分に何かを縫い付けたり、裾上げしたりという作業を考えると、裁縫はまだまだ人間の手を離れていかないような気がする。

「Sewboは、現在私が設立中のスタートアップで、自動裁縫技術の開発および商業化を目指しています。5000億ドルもの市場規模を誇る衣料業界ですが、製造面では今でも完全に手作業に頼りきっており、主要産業の中では大幅な自動化の余地が残っている最後の業界だと言えます」とZornowは話す。「1番のハードルは技術障壁です。特にこれまでは、生地の扱いという複雑な問題と、同じくらい複雑な機械の問題をいっぺんに解決しようとしていて、思ったような成果がでていませんでした」

そこでZornowは、それまでとは違うアプローチをとることにした。柔らかい生地の代わりに、硬いシートを使うことにしたのだ。そしてその決断が功を奏した。

「私たちは、水に溶ける熱可塑性プラスチックを使って、一時的に生地を硬めることにしたんです。既製品の産業用ロボットと、プラスチックやダンボール、金属製のシートを扱うためのツールを組合せることで、硬くなった生地を正確に裁つことができ、生地も裁断後に勝手に成型するようになっているんです。その後は、生地を縫い合わせてお湯で洗い流せば、服が完成します」と彼は説明する。

まだ会社の規模は小さく、現在Zornowは社員とシード投資家を探しているところだ。彼らのミッションはもちろん、衣料の製造現場から手作業を無くすことだ。これは何千もの職を消滅させてしまうかもしれない、本当の意味でのディスラプションだ。ニューヨーク、シカゴ、ロンドン以西の全ての都市で服を作っていた人は、グローバリゼーションの結果、職を失った。今度は彼らの仕事を奪った人たちが、ロボットアームと水溶性の熱可塑性プラスチックによって、職を奪われることになるかもしれない。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter