編集部:先日の「TechCrunch Tokyo 2013」では、初の試みとしてハッカソンを開催した。そこで我々は、ハッカソンに設けたトークコーナーに登壇いただき、なおかつ2日間にわたって会場でハッカーと交流していたAppSocially社のiOSエンジニアである堤修一氏にイベントの模様を寄稿してもらった。
11月11日(月)・12日(火)の2日間にわたり『TechCrunch Tokyo ハッカソン』が開催された。TechCrunch Tokyo 2013の併催としてのハッカソンは今年初の試みであり、平日、それも2日間という長時間のイベントにもかかわらず、チケットは前日までに完売して満員御礼での開催となったという。
今回のテーマは、下記のAPIのいずれかひとつを使ってサービスを開発すること。2日目に1チームあたり3分間でプレゼンテーションをおこない、アウトプットには必ずデモを含める必要がある、というルールだ。
・Gracenote:音楽認識WebAPI
・トヨタ:IT開発センター車載API
・KDDIウェブコミュニケーションズ:TwilioAPI
・PUX(Panasonic 任天堂JV):顔認識API等
・ドコモ:知識Q&A API等
チーム参戦でなく1人で参加した人のために設けたチームビルディングの時間は、少しユニークな方法をとっていた。各テーブルにはスケッチブックが置いてあり、各々が自分の得意分野(プログラマー、デザイナー等)と、やりたいこと等を紙に書いていく。そして、全員を2組にわけて自己紹介した上で、声をかけあってチームをつくる、という方式だ。ちなみに全部で16組のチームが結成された。
その後のアイデア宣言では、チーム名しか決まっていないチームもあれば、つくりたいものがはっきりしているチームもあったが、とにかくどのアイデア宣言もユニークで一癖あり、会場は非常に盛り上がった。
続いてハッキングという段になると、話し合いながらアイデアを練り上げるチーム、早々にコードを書き始めるチーム、API提供企業のブースで技術調査をおこなうチーム等、それぞれのやり方で2日間にわたるハッキングをスタートした。
2日目は、午前10時よりハッキングスタート。それぞれ家やオフィスで遅くまで作業していたのか、眠そうな姿が目立つ中、主催側からレッドブル、モンスターといったエナジードリンクの粋な差し入れもあった。
いよいよ成果発表。各チームの持ち時間はデモを含め3分。サービス内容を説明しきれないまま持ち時間がなくなってしまうチーム、ついさっきまで動いていたデモが本番で動かなくなるチーム等、トラブルもあったが、わずか2日間でつくったとは思えない完成度の作品や、芸人と見紛う程に鮮やかなプレゼンテーションもあり、会場は大いに湧いた。
そして最優秀賞は、Wondershakeチームの『Fuwari』。iPhoneで再生中の曲の「ムード」をGracenoteのAPIで判定し、Facebookフレンドとムードを共有することで、その人の今の気分を「ふんわりと」知ることができるというプロダクトだ。開発・デザイン共に高い完成度が評価され、見事最優秀賞の受賞となった。
準スポンサーであるAppSocially賞には、Team 6th Manが手がけた表情付きチャット『DoyaChat』が選ばれた。技術+アイデア+実用のバランスが良かった点と、コミュニケーションがコア機能となるスマホアプリなのでAppSociallyとの親和性が高い、という点が評価され受賞に至った。
さて、TechCrunch Tokyoのハッカソンでは、ハッカー界の著名なエンジニアが講演する「TechTalk」という時間も設けている。初日のTechTalkでは、AppSocially社のiOSエンジニアである私(堤修一)より、“「スキルなし、実績なし」 32歳窓際エンジニアがシリコンバレーで働くようになるまで”と題し、私が32歳にして初めて自分で手を動かしてものをつくる立場になり、四苦八苦しつつもエンジニアとしての成功をつかむまでのターニングポイントとなった行動について話させていただいた。
この講演のスライドを後日、「slideshare」にて公開 したところ、非常に大きな話題となり、公開数日ではてなブックマークが1,000件を超えた。
ハッカソン2日目のTechTalkでは、ビデオメッセージングアプリundaの共同創業者である徳井直生氏が講演。有名なシードアクセラレータである “500 startups” より出資を受け、シリコンバレーに3ヶ月滞在しサービスを立ち上げる中で得た7つの気付きについて語った。ハッカソンも終盤にさしかかり、作業が佳境となる中、多くの参加者の興味を引き、講演後の氏のテーブルには名刺交換の行列ができていた。
2日間、という期間は、プロダクトをゼロからつくりあげる、という観点ではもちろん短いが、ハッカソンの期間という意味でいうと国内では珍しく長い方である。それもあってか、今回の各チームの作品は、半日や1日でおこなわれるハッカソンと比較するとレベルが高かったように思う。
また冒頭にも書いた通り平日開催にも関わらず多くの参加者が集まり、会場の雰囲気もよく、非常に盛り上がった。今年初めての試みとのことだが、筆者としては来年の開催にも期待したい。