お手軽社食サービス運営のおかんが離職防止特化型HRツール「ハイジ」を正式公開

オフィスおかん」サービスを提供するおかんは7月17日、離職を防ぐための人事評価ツール「ハイジ」を正式リリースした。今年1月にβ版をローンチ後、半年をかけて正式版になった。

オフィスおかんは、企業の福利厚生費から月額5万4600円〜を支出することで、従業員には100円〜の低価格で小分けされた料理を提供できるサービス。サービスに加入すると、専用の冷蔵庫が設置され、小分けされた料理を配送員が定期的に配送してくれるため、在庫管理の手間もないのが特徴だ。

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同社によると、厚生労働省の調査データ(平成28年雇用動向調査結果の概況 転入職者が前職を辞めた理由別割合)を集計したところ、離職理由の80%以上を占めるのが健康や家庭との両立、人間関係などのハイジーンファクターであることが判明。同社はこのハイジーンファクターを解消するためにハイジを開発したという。

ハイジでは、月1回の48項目に及ぶサーベイ(アンケート)を従業員に実施し、その集計を基に労働環境のどの部分に問題があるのかを数値化できる。従業員は、所属部署や役職、年齢、性別などの入力が必要だがサーベイ自体には匿名で回答できる。

具体的には、集計データから本社・支社、各部署で問題になっている内容がランキング表示される。本社のクリエイティブ部ではフィジカルヘルス(体調)に問題を抱えている従業員が多いといった結果から、仕事の分担や労働時間の短縮、人員に補充などの改善施策を検討できるわけだ。

数値化が難しいHR関連施策だが、月1回のサーベイによって改善したかどうかも可視化できる。

同社代表取締役CEOの沢木惠太氏によると、創業当時から離職率などの企業の問題を解決したいとは考えていたが、ハイジの構想はオフィスおかんの導入企業のさまざまな意見を聞くうちに着想を得たとのこと。SmartHRやカオナビなど現在はさまざまなHRツールがあるが、同社では離職防止に特化させることで差別化していく狙いだ。

「ハイジによって可視化された問題を解決する施策としてのサービスも充実させたい」と沢木氏。解決する施策の1つとして既存サービスの「オフィスおかん」を挙げ、「今後は、自社開発、他社連携にこだわらずハイジのデータを生かせるソリューションをオフィスおかん以外にも広げていきたい」とコメントした。

離職に繋がる衛生要因を見える化する「ハイジ」β版公開——「オフィスおかん」提供元の新サービス

日本が抱える深刻な社会問題はいくつもあれど、「労働力人口の減少による人手不足」はメディアなどでも頻繁に取り上げられる代表的な課題の一つだ。

そんな状況だからこそ多くの企業がこれまでにも増して人材採用に投資し、魅力的な仲間を増やそうと努めている。積極的に自社の特徴を発信する採用広報の動きが加速。採用を支援するHR Techツールもここ数年で細分化が進み、より細かいニーズに応えられるようになっている。

一方で健康経営やエンプロイー・エクスペリエンス(EX)といった言葉を目にする機会が増えたように、新たなメンバーを採用することと同じくらい「今いるメンバーが安心して働き続けられるような組織を作ること」も重要だ。そのためにはメンバーの離職につながる原因を予め突き止め、適切な対策を講じることが必要になる。

本日1月24日にβ版が公開された「ハイジ」は離職の原因に繋がる要因を見える化するサーベイツール。このプロダクトを手がけるのは、累計で1500社への導入実績があるサブスク型の社食サービス「オフィスおかん」運営元のおかんだ。

ハイジの特徴は職場環境や給与、社内での人間関係など、それが整っていないと従業員の不満足に繋がる「ハイジーンファクター(衛生要因)」に特化していること。企業はサーベイの結果をハイジスコアとして定量的に分析できる。

ハイジスコアをマッピングした「ハイジマップ」

基本的な使い方はすでに存在するサーベイツールに近しい。まず導入企業は従業員にオンライン上でアンケートに回答してもらう。回答にかかる時間は約10分ほど。PCだけでなくスマホにも対応する。

その結果を執務環境や制度の充実、休暇の取りやすさなど12要素に分け、各項目ごとにスコアを算出。このスコアを年齢や性別、所属部署ごとにマッピングしたハイジマップ機能も備える。

経営者や管理部門のスタッフにとっては、これまで可視化することの難しかったハイジーンファクターにおける問題点を数値ベースで把握することが可能。社内のどこに問題点があるのか、どこから着手すればいいのかを判断する材料になるだけでなく、継続的にサーベイを実施することで打ち手の効果検証や数値目標の設定にも活用できるという。

離職要因の約80%を占める衛生要因に特化したサーベイツール

開発元のおかんが2018年7月に7億円の資金調達を実施した際に、代表取締役の沢木恵太氏は「(労働力人口が減少していく中で)企業側が正しい課題意識を持ち、正しい施策に対して投資をしていく」ためのサポートをしたいと話していた。それに向けてオフィスおかん以外のソリューションも仕込んでいるということだったけれど、それがハイジだったということらしい。

それにしてもなぜこの領域なのか。従業員サーベイを通じて組織の現状を診断・改善できるサービスはすでに複数存在する。代表的なサービスで言えばリンクアンドモチベーションの「モチベーションクラウド」や以前TechCrunchで紹介したアトラエの「wevox」などがそうだ。

そもそもハイジが着目したハイジーンファクターとは、アメリカの臨床心理学者であるフレデリック・ハーズバーグ氏が提唱した二要因理論の中で出てくる考え方だ。この二要因理論で従業員の仕事に対する満足度を二つの要因に分類していて、一方が満足に関わるモチベーターと呼ばれる要因(動機付け要因)。そしてもう一方が不満足に関わるハイジーンファクターと呼ばれる要因(衛生要因)になる。

モチベーターはあればあるほど意欲が向上するような要因のことで、たとえば理念への共感や仕事内容に対するやりがいなどが該当する。その反面、ハイジーンファクターは冒頭でも触れた通り「あることが当たり前」の要因で、なくなってしまうと著しい不満足に繋がってしまうもの。職場環境や給与、社内での人間関係、健康や家庭との両立などが当たる。

沢木氏の話では、あくまで厚労省の統計ベースにはなるが離職原因の80%以上がハイジーンファクターにまつわるものなのだという。

「離職を減らすためには、“働きやすい”環境というよりも“働き続けられる”環境を作ることが重要。そのためには働き続けられない理由を潰すツールが必要だと考えた。採用に投資をすることももちろん重要だが、入社後のサポートがしっかりしていないと意味がなくなってしまう」(沢木氏)

既存のサーベイツールはやりがいやモチベーションなど、どちらかというとモチベーターに着目したものが多い。一方でハイジーンファクターに特化したサービスはまだこれといったものがなく、自分たちでやる意義があるというのが沢木氏の見解だ。

オフィスおかんとの親和性も

なおかつ、ハイジはこれまで展開してきたオフィスおかんのユーザーとも親和性が高い。オフィスおかんの直接的な窓口となるのは、総務や人事といった管理部門の担当者や経営者が中心。管理部のスタッフからは「健康経営に対するプロジェクトにアサインされたが、定量的な目標設定や優先順位付け、各施策の評価やフィードバックが難しい」といった課題を聞いていたという。

同様の悩みは経営者も抱えている。ハイジーンファクターに分類されるような施策は費用対効果の判断が難しい領域。「結構な投資が必要だと意思決定も難しく、後手後手になって状況が悪化してしまうケースもある」(沢木氏)ため、その判断材料となる指標が欲しいという声は多い。

すでに複数社には試験的にα版の提供を始めていて、上述したような課題の解決や「なんとなくそう思っていた」要因を可視化することに役立ててもらっているそうだ。今後ハイジで見つかった課題に対するソリューションの一つとして、オフィスおかんを提供することもできるだろう。

おかんでは今回のβ版を経て、今年の春〜夏頃を目処にハイジの正式版をリリースする計画。ゆくゆくは国から義務化されているストレスチェックも内包できるようにプロダクトをアップデートするほか、サーベイの結果を基に「どの領域にどのくらい投資をすればいいか、どんな対策を講じるべきか」までレコメンドする機能も提供していきたいという。

“社食版オフィスグリコ”の「オフィスおかん」運営が7億円を調達、累計で約1200社に導入

オフィスに冷蔵庫と専用ボックスを設置することで、従業員が惣菜やご飯、カレーといった健康的な食事を低価格で楽しめるサービス「オフィスおかん」。同サービスを提供するおかんは8月2日、複数の投資家より総額7億円の資金調達を実地したことを明らかにした。

今回おかんに出資をしたのはグローバル・ブレインと楽天(楽天ベンチャーズ)、それから既存株主でもあるYJ キャピタル、みずほキャピタル、SMBCベンチャーキャピタルだ。なおグローバル・ブレインについてはグローバル・ブレイン6号投資事業有限責任組合と31VENTURES Global Innovation Fund 1号(三井不動産とグローバル・ブレインにより組成されたファンドで運営はグローバル・ブレイン)からそれぞれ出資をしている。

おかんは2014年にサイバーエージェント・ベンチャーズとオイシックスから、2015年にもYJ キャピタルなど4社から資金調達を実施。今回も含めると累計の調達額は約10.5億円になるという。

同社では調達した資金をもとに、主力サービスであるオフィスおかんの拡大に向けてマーケティングや開発体制を強化する計画。また新規事業にも予算を投じていく。

働き方改革の波にも乗って、累計1200社に導入

オフィスおかんについては前回の資金調達時にも紹介しているが、“社食版オフィスグリコ”と言えばイメージがわきやすいかもしれない。

導入企業の従業員はさばの味噌煮、ひじき煮、玄米ごはんといった約20種類のメニューを1品100 円で購入できるのが特徴。冷蔵庫と専用ボックスを設置するスタンダードなものに加え、最近では規模が大きい企業用に自販機型のプランも始めている。ビジネスの構造としては法人向けのサブスクリプション型サービスとなっていて、企業が月額利用料を負担する仕組みだ。

もともとは個人向けサービス「おかん」からスタートし、2014年3月にオフィスおかんをリリース。主力事業へと成長したオフィスおかんの導入企業数は、2015年11月の約200社から3年弱で累計1200社まで増えている。

おかん代表取締役の沢木恵太氏によると「初期はIT系の企業に偏っていたが、最近では病院やクリニックといった医療福祉業界や百貨店やカラオケ店のバックヤードなどサービス業をはじめ、多様な業種で導入してもらえている」とのこと。規模も3名ほどの所から5000人を超える企業まで幅広く、対象エリアも1都3県から全国の企業へと拡大した。

近年は働き方改革や健康経営といったキーワードが徐々に浸透し始めていることもあり、ここ数年で導入を検討する企業のニーズも「健康経営を推進するための手段として導入したい、ホワイト500の取得に向けたひとつの施策として導入したい」といったより具体的なものが増えてきたという。

オフィスおかんは今後日本で高齢化と労働人口の減少が進んでいく中で、健康・育児・介護といったライフスタイルと仕事の両立をサポートするべく立ち上げたサービス。ここ数年で新たなトレンドが生まれ企業の意識が変わってきたことは、同社にとっても追い風だ。

導入企業では従業員の食のサポートに加えて「ロイヤリティ・満足度の向上」「社内コミュニケーション活性化」「女性の育休復帰率向上」など、社内の課題を解決するツールとして活用されているそう。特に最近では人材採用が難しくなっていることを受け、人材の定着や新規の採用促進の目的でオフィスおかんを導入するケースも増えているという。

裏側のサプライチェーンを磨いてきた4年間

表向きはシンプルでわかりやすいサービスに見えるだけに、特に初期は大企業に真似されたらどうするの?と言われることも度々あったそう。

ただ沢木氏によると裏側のサプライチェーンの構築が思った以上に面倒で、かつ事業を成長させるためのカギとなる部分であり、この仕組みを時間をかけて磨いてきた。

「一定日持ちするとは言え賞味期限があるので需要予測の重要性が高く、オペレーションによってもコスト構造がかなり変わってくる。そういった部分を4年以上やり続けてきた。ある意味エンドユーザーではないものの、ラストワンマイルを抑えている。そこに対するサプライチェーン部分をシステムなども絡めて構築できてきているので、真似しづらい独自の仕組みができてきたと思っている」(沢木氏)

現在オフィスおかんで提供しているメニューは、地方にある6〜7箇所の工場とタッグを組み共同開発という形で製造。一部定番のメニューはあるものの毎月3分の1ほどは入れ替えているそうで、だいたい3ヶ月でほぼ一新されるのだという。

各メニューについては販売データをウォッチしながら定量的なアプローチを中心に企画・開発していて、その点はD2C(Direct to Consumer)型のプロダクトに近い構造とも言えるだろう。

オフィスおかんの成長と新規事業の創出目指す

今回の資金調達のひとつの目的は、一連の仕組みができてきた中でさらにオフィスおかんの成長スピードを上げることだ。

「オフィスおかんについてはかなり社会的ニーズが強まっていて、自社としても形ができあがってきているのでスケールアップを目指していく。SaaSに近しいモデルなので、ユニットエコノミクスを見ながらマーケティングをしっかりやれば伸ばしていける感覚がある。(規模の拡大を目指す上で)提供している商品の品質やサプライチェーンの仕組みをさらに良くするための投資もしていく」(沢木氏)

また現時点ではまだ詳細は言えないとのことだが、オフィスおかんとはまた異なるアプローチで「『働く』と『ライフスタイル』の両立」を実現するための新規事業にも力を入れていく計画だ。沢木氏によると、新サービスはオフィスおかんよりも「HRや健康経営よりのプロダクト」になるという。

「高齢化や労働年齢人口の減少は重要な社会問題になっている。これを解決するためには個々人の努力だけでなく、企業側が正しい課題意識を持ち、正しい施策に対して投資をしていくことが必要。それを促せるような事業を目指していく。足りてないピースがまだまだあるので、そこをひとつずつ埋めていきたい」(沢木氏)