ビズリーチと立教大がAIの社会実装に向けてタッグ、「求職者の価値観」の発見目指す

Visionalグループのビズリーチ立教大学大学院人工知能科学研究科は4月27日、AIの社会実装を目的とした共同研究協定を締結することを明らかにした。第1弾として転職プラットフォーム「ビズリーチ」のデータを活用し、AIで「人のキャリアにおける価値観」を発見する取り組みを行う方針。共同研究は4月30日からスタートする。

本人が自覚していないような価値観をAIで可視化

ビズリーチが力を入れている採用領域は直近の新型コロナウイルスの影響もあって急速にデジタル化が進みつつある。言わば「採用のDX」が加速する中で、同社としても「テックカンパニーとしてどのような形で新しいテクノロジーを取り入れ、サービスを提供していけるのかが1つの重要テーマになっている」(ビズリーチ執行役員CSOの枝廣憲氏)という。

ビズリーチでは2016年から社内にAIグループ(旧AI室)を設け、自社サービス内でAIテクノロジーを活用していくための研究開発を続けてきた。今回は2020年4月に日本初のAIに特化した大学院「人工知能科学研究科」を開設した立教大学と連携することで、高度なAIの社会実装を加速させるのが狙いだ。

両者が第1弾の研究テーマに選んだのは、AIによって「本人が自覚していないようなキャリアにおける価値観」を発見すること。AIで人間の感情を推定するような試みだと解釈してもいいだろう。

キャリアを選択する際の重要指標としては定量的に判断できる項目(年収、業種・職種、勤務条件など)だけでなく、仕事のやりがいや価値観など個人ごとに持つ定性的な項目もある。共同研究ではこれまで定量的に分析するのが難しかった個人の価値観を、立教大が注力する深層学習の先端研究を活用してAIで解析することを目指すという。

「本人がこの条件を気にしないと思っていても、実は隠れた行動の中でちょっとしたサインが出ていたりすることがある。他のユーザーや企業のデータなどを複合的に分析していくことで、『もしかしたらあなたはこんなことが好きなのでは?』といった新たな気づきを発見できるかもしれない」(枝廣氏)

立教大学大学院 人工知能科学研究科委員長の内山泰伸氏によると、具体的にはGAN(敵対的生成ネットワーク)を使った新しいレコメンドの仕組みを作る計画だ。僕自身はGANと言えば架空の人物画像の生成などディープフェイク分野に使われているイメージが強かったけれど、内山氏の話ではやり方次第でレコメンドエンジンにも使えるそう。「世界的に見ても成果と呼ばれるものは片手で数えられるほどで、まだまだ研究が進んでいない領域」であり、そこに本気でチャレンジするという。

両者としては研究成果をビズリーチ内で活用していくのはもちろん、論文として発表することも視野に入れている。論文については「当然やるべきだと思っているし、やるからには世界レベルで注目される質のものを目指していく」(内山氏)。

研究機関の先端AI技術をビジネスの現場で有効活用へ

今回の共同研究では、AIの早期社会実装を実現する上で「大量かつ高品質なデータの収集と蓄積の基盤を保有していること」と「最先端のAI研究人材および、HR領域の知見を持つAIエンジニアがいること」が大きなポイントになる。

ビズリーチでは10年以上にわたって運営を続ける転職プラットフォーム・ビズリーチのデータを安全かつ円滑に利用できるように、個人情報の仮名化やノイズ除去を行い、高品質なデータ基盤を構築してきた。この膨大なデータがあるからこそ「ビッグデータ時代に対応したAIを作れる」という。

共同研究では最初に仮説の立案やデータセットの作成を両者で行うが、その際には公開情報やサービスデータから統計的に生成されるダミーデータを用いる。それを基に理論の骨子(アルゴリズム)を作成する部分を立教大側が担当し、そこで生まれたアルゴリズムを実際のサービスに統合する部分はビズリーチのAIグループが担う(まずは匿名化されたユーザーの行動履歴を使いながら実験、検証する)。

この仕組みによって立教大とビズリーチ間においては、ユーザーから取得した個人情報を含むデータの受け渡しを一切せずに研究開発が進められるわけだ。そこで重要なのは両者に高度なAI人材がいることだという。

「ビズリーチ側にAIの研究者がいることで、アルゴリズムを開発した後のリアルデータに適合する工程を立教大抜きで実現できる。これが企業側に研究者がいない場合だと、革新的なアルゴリズムを開発できたとしても、活用するまでのハードルが高く実現に至らない場合もある」(内山氏)

ビズリーチは従業員の約3割が自社サービスのプロダクト開発を担うエンジニアであり、AIグループの中にはコンピュータサイエンスや理学分野の博士号取得者も複数名在籍している。一方の立教大学大学院人工知能科学研究科も今年4月に開設されたばかりではあるものの、AIに関するさまざまな分野で強みを持つ研究者が集まる。

「(立教大は)技術力の観点で日本トップクラスであることに加え、スピード感やベンチャースピリットを持つ『学術界におけるベンチャー企業のような組織』であることが魅力だった。自分たち自身もAIグループを通じて研究開発を進めてきたからこそ、コラボレーションすることで新たな社会価値を生み出せるのではないか。それを期待した産学連携のプロジェクトだ」(枝廣氏)

「ビズリーチの中にはHR分野のドメイン知識とAIの知識をどちらも兼ね備えているエンジニアがいることが大きい。ビジネスにAIを社会実装するには現場の知見が必要で、自分たちだけではどうしようもない部分もある。今回の取り組みは研究費をもらうための共同研究などではなく、研究者同士の対等なコラボレーション。こういう形だからこそ有意義な価値を生み出せると思っているので、(研究機関と企業による)共同研究の良い事例を作っていきたい」(内山氏)

“おためし副業”で自分に合う会社を発見、採用のミスマッチなくす「workhop」が正式公開

結局のところ一緒に仕事をしてみないとわからないことも多いから、まずは短期間働いてみてから考えよう——。これからは転職の前に「おためし入社」をした上で、本当に自分に合った会社に納得感を持って入社するスタイルが徐々に広がっていくかもしれない。

本日4月16日に正式ローンチを迎えた「workhop」は個人が気になる会社で“短期間、ちょこっとだけ”働ける仕組みを作ることで、採用における企業と個人のミスマッチをなくす。

スタートアップ界隈だと副業や業務委託からスタートした後に正社員になる、もしくは学生インターンとしてジョインした会社に新卒入社するといった話もそこまで珍しくはないけれど、まだまだ一般的に普及しているとはいえない。

workhopはそれに近い形で企業と個人の新しい出会い方、新しい採用の方法を提案するサービスと捉えることもできるだろう。

おためし入社・おためし採用の間口を広げる

workhopの構造は既存の求人プラットフォームに近しい。ユーザーは企業が作成した募集の中から気になるものを探し、応募をする。企業側も会ってみたいと思った場合にはマッチングが成立。面談を実施してお互いが納得すればおためしで一緒に働いてみる。実にシンプルな仕組みだ。

ただしworkhopの場合は企業が募集を作成する際に「おためし副業」か「体験入社」から選ぶ点がポイント。おためし副業は1〜2週間ほどの期間をかけて空き時間に副業で働くタイプ、もう一方の体験入社は2〜3日などかなり短い期間に絞って実際に入社するような感覚で働くタイプで、どちらの場合も短期間一緒に仕事をしてみることでスキルやカルチャーのマッチ度を確かめられるのが特徴だ。

料金モデルは本採用時の成果報酬制のため、企業側はノーリスクでおためし採用に取り組める。おためし採用後に本採用に至った場合に正社員で1成約70万円、副業や業務委託、アルバイトで30万円が必要になる。

今回の正式版ではスカウト機能も加わったので、企業側から気になるユーザーにアプローチすることもできるようになった。

「働いてみた上で本当にマッチした会社に入る、確実にマッチした人を採用するというのは双方にとってポジティブなこと。働く側は『ビジョンに共感して入社したけど実態とズレがあった』『入社してみたら面接で言っていた話と全然違う』というミスマッチを防げる。一方の企業側もスキルやカルチャーとの相性を見極めて採用できるのはもちろん、転職サイトには登録しないような人と接点を作れるチャンスもある」(workhop運営元のnで代表取締役を務める熊⾕昂樹氏)

冒頭でも触れた通り、特にITスタートアップ界隈では本業とは別に数社で副業をしている人も珍しくはない。その中には現職に不満があるわけではないので転職活動はしていないが、面白そうな会社に副業で携われるならやってみたかったという人も一定数含まれるはずだ。

僕の周りでも副業として関わっているうちに本気でコミットしたいという思いが芽生え、副業先に転職した知人がいるが、もともと積極的に転職活動をしていたわけではなかった。おためし副業や体験入社という仕組みによって個人と企業がカジュアルに接点を作れるようになれば、新しい転職のスタイルが広がるきっかけにもなるだろう。

「おためし入社のような形を選べる人は限られているのが現状。業界内に繋がりがあって知り合い経由で紹介してもらっているようなケースも多く、知らない会社にいきなり『ためしに少しだけ働かせてください』と言うのはハードルも高い。誰でも使える一般的な入り口がないのが課題だ」(熊⾕氏)

熊谷氏が1つのベンチマークに挙げていたのが「Wantedly」だ。同サービスは気軽に会社訪問できる仕組みとしてさまざまな企業・個人に広がったが、会社訪問という概念自体はそれ以前からあった。ただ実際には全く接点のない会社に訪問するのは難しく、実現するのが大変だったわけだ。

Wantedlyがその間口を作ったことで会社訪問を普及させたのと同様に、workhopでもおためし入社・おためし採用の間口を作ることでその概念を浸透させていきたいという。

ベータ版は約500人が登録、累計50社以上が活用

workhopを開発するnは2019年3月の設立。創業者の熊谷氏はDeNAを経て入社したバンクで初期(CASHリリース直後)からプロダクト開発に携わっていたエンジニア起業家で、同社を離れた後にnを立ち上げた。

workhopを作るきっかけとなったのはバンク時代の同僚からさまざまな転職活動のエピソードを聞いたこと。バンクは2019年9月に解散を発表したこともあり、そのタイミングで転職活動に取り組むメンバーが多く、自然とその話を聞く機会も多かったという。

「自分に合う会社を見つけられた人もいれば、転職してみたもののあまり合わなかったという人もいた。いろんな人の話を聞く中で、転職前に業務委託や副業を通じて数社と接点を持ち、実際に1番マッチするところに転職した人は入社後もすごく幸せそうに働いていることがとても印象的だった。本来はそれが理想的だけど、現時点では誰でもできる方法ではない。その間口を作れれば課題解決に繋がるのではと考えたのが最初のきっかけだ」(熊⾕氏)

今年2月にworkhopのベータ版をローンチしたところ、特に個人ユーザーから「こういうサービスが欲しかった」といった反響が大きく、ノンプロモーションながら登録会員数も約500名まで増えた。企業側に関しても最初は2社のみからのスタートだったが、現在は累計50社以上が活用。もともと副業などを取り入れているITスタートアップを中心に少しずつ導入企業が広がってきた。

workhopに限らず3月に紹介した「Offers」や1月に1.1億円を調達した「YOUTRUST」を始め、副業を軸に企業と個人を繋ぐようなプラットフォームが増えてきている。これれのサービスがさらに盛り上がっていけば、採用の形式も拡張されていくだろう。

workhopとしては今回の正式版から企業がスカウトを送れる機能や個人が募集を検索できる仕組みを加えているほか、ユーザーの利用状況を見ながら随時アップデートを行っていく計画。おためし採用の概念がどのように受け入れられていくのか、今後に注目だ。

Web上のすべての求人から個々人に合うキャリアを提案、LAPRASが今夏に新サービスローンチへ

真剣に転職を考える際、多くの人が登録するであろう転職エージェントサービス。まずはキャリアアドバイザーとの面談を通じて具体的な条件や自身の志向性をクリアにした後、候補先となる企業の提案を受けるのが通常の流れだ。

一方でHR Tech企業のLAPRASが開発に乗り出した「Matching Intelligence」はこの“キャリアエージェントによる面談”をシステム化した上で、Web上に公開されている求人情報を集め、その中から個人個人に合った求人を提案する。いわば同社が磨いてきたテクノロジーとデータを軸にキャリアコンサルティングの仕組みをアップデートしようという試みだ。

LAPRASでは2月26日、同社にとって新事業となるMatching Intelligenceの開発を本格化し、今夏を目処にローンチする計画であることを明らかにした。

機械学習とクロリーング技術でキャリアコンサルティングを自動化

TechCrunch Tokyo2017のファイナリストでもあるLAPRAS(当時の社名はscouty)は、個人向けのスキル可視化サービス「LAPRAS」や企業向けのヘッドハンティングサービス「LAPRAS SCOUT」など人材領域で複数のサービスを展開するスタートアップだ。

特徴の1つはオープンデータを収集するための「クローリング技術」。個人向けのLAPRASではエンジニアの情報を集めるのに使っていたこの技術を、Matching IntelligenceにおいてはWeb上の求人情報を収集するのに転用。集めてきた求人をLAPRASのポートフォリオやWebアンケートの結果と照らし合わせ、機械学習を活用してマッチングする。

サービスの流れ自体はシンプルだ。転職を考えているユーザーはまず、オンラインのアンケートに答える。たとえば転職を考えた理由や企業を選ぶポイントの優先順位、希望の勤務形態、興味のある分野、希望年収、好みのカルチャーなど。これはキャリアアドバイザーとの面談でよく聞かれる内容をアンケートに落とし込んだものだと思ってもらえればいい。

Matching Intelligenceではこの回答結果とLAPRASに蓄積されたスキルや志向性データを解析し、Web上の求人情報の中から相性が良さそうなものをピックアップして提案する。ユーザーが提案内容に対してフィードバックを行うことで、その結果がどんどん学習されて提案精度が向上する仕組みだ。

今回本格的に開発に着手する前段階として、LAPRASでは社内でプロトタイプを作り仮説検証を行った。複数のエージェントに協力してもらって標準的な質問事項を洗い出し、共通するものや重要なものを抽出。Googleフォームでアンケートを作り社内エンジニアに回答してもらった上で、実際にクローリングしてきた求人情報を1人数件ずつ提案し、その会社に面談に行きたいかどうかをチェックしてもらったという。

LAPRAS代表取締役の島田寛基氏によると1回目の提案時には面談に行きたい率の平均が約37%だったが、複数回のフィードバックを繰り返すことで最終的に約60%ほどまで精度が改善したそう。磨きこめばプロダクトとして世の中に出せる手応えもあったため、力を入れて開発に取り組むことを決めた。

今後は社外での実証実験を経て、夏頃のサービス化を予定しているとのこと。まずはLAPRAS上で転職意思が高いと表明しているユーザーに対してサービス内でアンケートを実施し、企業のレコメンドやマッチングを進めていく計画。従来のエージェントは担当者が1人ずつ面談を行っていたが、この工程にテクノロジーを入れることでマッチングの効率や精度をあげていく狙いだ。

最も自分に合った求人情報が提案されるサービス目指す

これまでLAPRASではLAPRAS SCOUTやフリーランス・副業エンジニア紹介サービスの「LAPRAS Freelance」を通じてエンジニアと企業のマッチングを図ってきたが、現状では企業側からアプローチをするものが中心。ユーザー側からアクションする手段は自身の転職意欲を示すことくらいに留まる。

要はスカウトサービスであるが故に企業側に依存する部分が多く、特に転職意欲が高まっている個人のニーズを十分に満たせていない側面もあった。また企業の中には採用活動をサポートしてくれるエージェントの仕組みを求める声もあり、スカウトサービスとエージェント型のサービスの両方が必要との結論に達したそうだ。

LAPRASによると、従来の転職エージェントサービスでは自社が契約している企業の採用募集しか取り扱わないため、選択肢が限定され求職者にマッチした募集が他にあっても紹介できないことがあった。加えて多くのサービスが成果報酬モデルを採用していることもあり、一部では本人の志向性を考慮せず給料が高い企業に求職者を押し込むようなエージェントも存在する。

Matching Intelligenceが目指すのは機械学習による解析とクローリング技術によってこれらの課題を解決し「ミスマッチな転職」をなくすことだ。

最終的には「提案の精度」が大きなポイントになるが、個人のスキルや志向性についてはLAPRASで蓄積してきたデータを活かせるのが強み。もう一方の求人情報に関しても“求人票には書かれていない”企業のフェーズやカルチャーなどの情報を補完的に収集することで、マッチングの精度を高めていくという。

「やりたいことはオープンデータや(Webアンケートなどの)クローズドデータを活用しながら、その人に合った求人情報をマッチングすること。いわゆるAIエージェントの概念自体はすでに存在するが、マッチングの部分を研究していくことで最も良い提案ができるサービスを目指す」(島田氏)

空き時間に合うバイト求人を自動表示、過去の評価が好待遇やスカウトにも繋がる「CAST JOB」

シフト管理アプリ「CAST」などを展開するhachidoriは11月6日、同アプリ上にて新たにアルバイト求人サービス「CAST JOB」の提供をスタートした。

CASTと一緒に使うことで、アプリに登録したスケジュールの空き時間にマッチしたスポットワーク(単発バイト)が自動表示される仕組みを搭載。ユーザーが毎回自ら検索する手間を減らし、効率的に自分のスケジュールや興味に合ったバイトを探せるようなサービスを目指していく。

CASTは昨年6月のリリース時にも紹介した通り、シフト管理を軸に店舗内のコミュニケーションを活性化する業務管理アプリだ。法人向けに勤怠管理や労務管理などの機能を備えたプロダクトを有料で提供しつつ、同サービスを導入していない店舗に勤務する個人でも無料でシフト管理や給料計算ができるツールとして展開。アプリのダウンロード数は20万件を超える。

今回リリースしたCAST JOBは、このCAST上で使える1サービスという位置付け。これまでCASTを使ってシフト管理をしていたユーザーは新らなアプリをダウンロードすることなく、CAST JOBを使うことが可能だ。

仕組み自体は比較的シンプルなバイト探しアプリ。まずは東京23区内を中心としたスポットワーク求人に特化する形で開始するが、年内を目処に長期のバイトにも対応する予定だという。

個人ユーザーにとっての特徴は、冒頭でも触れた通りCASTに登録したスケジュールと連動することで効率よく求人を探せることと、CAST JOBでの頑張りや評価が好待遇に繋がるチャンスがあることだろう。

ユーザーは「一般的なアプリと同じように自分から条件を入れて検索」「スケジュールに合わせて表示されたものから選択」「店舗からのスカウトを承諾(今後搭載予定)」という3通りの方法でバイトを探すことができ、特に2番目の方法はユーザーの隙間時間を可視化されているCASTならではのものだ。

最近は先日20億円を調達したタイミーの「タイミー」やリクルートの「Job Quicker」など、履歴書や面接が不要でアプリ上から簡単にスポットワークを検索・応募できるアプリが増えてきているが、「毎回毎回検索して求人を選択するのが手間になっているのではないか」というのがhachidori代表取締役社長である伴貴史氏の見立て。CAST JOBではシフト管理アプリを軸にしているという特性を活かしてその手間の解消を狙う。

スケジュールの空き時間にマッチしたバイト案件が自動で表示されるのはCAST JOBの特徴の1つ

またCAST JOBではスポットワーク後に店舗とユーザーで相互評価をする仕組みを導入。高評価を貯めたユーザーは本来の時給に上乗せ金をもらいながら働いたり、採用後にお祝い金がもらえる長期バイトのスカウトを受け取れるチャンスを得られるという。

「アルバイト採用に『正社員採用のあたりまえ』を持ってくるというのが1つのコンセプト。過去の評価や実績、能力が時給にしっかりと反映されたり、企業側からダイレクトリクルーティングのような形でスカウトを受けたり。正社員採用ではあたりまえになっている仕組みを設けることで、求職者にとって働きやすい環境の実現や定着率の向上などに繋げていきたい」(CAST JOBの責任者である真後淳氏)

そのような思想があるため、スポットワークはあくまで1つの働き方にすぎず、今後は長期のバイトにも広げていく計画。スポットワークが企業と求職者双方にとって「インターン」的な形で使われ、お互いが納得すれば適正な条件で長期バイトに移行するような流れも考えているとのことだった。

利用料金はWantedlyのような月額制(求人記事数に応じた従量課金)で展開する方針。まずは長期も含めてアルバイト求人の拡充やエリア拡大を進めつつ、ゆくゆくは他社サービスの応募者も一括で管理できる採用管理システム(ATS)機能の提供や、相互評価データを用いた正社員採用領域への参入も検討していくという。

ミートアップで候補者と繋がりCRMで関係性構築、企業の採用マーケを加速する「Meety」公開

人材不足が加速するとともに働き方に対する価値観も多様化しつつある昨今、企業が自社に合った人材を採用するためには枠が発生してから候補者を募る「短期的なアプローチ」だけではなく、潜在的な転職者も含めてじっくりと関係性を構築していく「中長期的なアプローチ」が重要度を増してきている。

その流れを反映するように、国内でもタレントプールやタレントCRM(採用CRM)のようなコンセプトのプロダクト・取り組みの話をよく耳にするようになった。

TechCrunch Japanでも過去に「LAPRAS SCOUT」や「Refcome Teams」といった関連するプロダクトを紹介してきたけれど、本日11月6日に公開された「Meety」もまさに企業が候補者と中長期的に関係性を築く際に役立つものだ。

Meetyは大きく2つのサービスから構成される採用マーケティングSaaSだ。1つが少人数に特化したミートアップ(イベント)の企画・管理を簡単にするプラットフォーム。もう1つがミートアップで接点を持った候補者や社員から紹介された人材などとの繋がりを可視化するCRMサービス。これらによって候補者とのカジュアルな接点作りから、採用に至るまでの工程を管理できる仕組みを提供する。

まずは本日より先行してミートアッププラットフォームが公開されていて、2020年にはそこにCRMも追加される予定だ。

Meetyにおけるミートアップ機能は、わかりやすく言えば「Wantedly」のイベント版に近い(ちなみに同サービスにもミートアップを掲載する機能がある)。1対1で会話ができる「トーク」と参加者10人以下の座談会「グループトーク」という2つのフォーマットが用意されているほか、集客や当日の運営を効率化するツール・マニュアルが整備されているので、企業はそれに沿ってミートアップを企画し、Meety上に掲載する。

ゆくゆくはCRMもセットで月額定額制モデルで提供する計画だが、当面は無料の予定。完全なCGM形式ではなく審査制にして、厳選されたイベントのみを扱っていくという。

Meety代表取締役の中村拓哉氏はITベンチャーのSpeeeでマーケティングや人事を担当していた人物。自身でもエンジニア採用のためにミートアップを企画した経験があり、そこで感じた苦労などがこの領域で事業を立ち上げることにも繋がった。

「ミートアップは資料やケータリングの準備などが大変。またイベントを企画・管理できるサービスはすでにあるが採用用途に最適化されているわけではないので、アンケートはGoogleフォームなどで別途管理したり、情報をATSに手入力したりなどの負担もある。(CRMやMAツールを始め)マーケティング領域ではこういった業務を楽にするツールがあるのに、なぜ人事にはないのか。両方の現場の経験を掛け合わせたプロダクトがあればニーズがあるのではと考えた」(中村氏)

Meetyでは1対1で会話ができる「トーク」と10人以下の座談会「グループトーク」の2種類のミートアップが並ぶ

中村氏によると2019年5月の創業後は数社のミートアップをサポートしてきたそう。その中で少人数限定のミートアップであれば、ピッチ用の資料やケータリングなどの準備が不要で負担が少ないことに加え、数十人規模のイベントに比べて密にコミュニケーションを取れるので双方にとって効果的であることが結果にも表れてきた。

「近年は求職者の方がパワーバランスが上だということもあってか、“本当の意味でカジュアルすぎる1on1面談”に疲労している人事担当者が多いと感じる。(大人数向けのイベントに比べて)小規模のミートアップはいい意味でハードルも上がりものすごくゆるい感じで参加する人が少なく、参加者側にも満足してもらう設計がしやすい。最初の接点作りだけでなく、社内の雰囲気を深く知ってもらうために面接と面接の間に実施するような企業もある」(中村氏)

それらの結果も踏まえて、Meetyでは10人以下でのミートアップに特化。通常のイベントプラットフォームのようにエントリーしたメンバーが誰でも参加できるわけではなく、企業側が会いたいと思った人にだけ連絡する仕様にした。

またフォーマットやツールだけでなく、企業向けの勉強会なども含めて効果的なミートアップの開催を支援。ユーザー視点ではMeetyは様々な企業のミートアップ情報を集めたメディアとしての性質も持つので、特集ページなどを通じて集客にも繋げていきたいという。

Meetyのローンチパートナー

MeetyにはすでにDMM.comやマネーフォワード、ユーザベース、エウレカなどIT系のベンチャー企業やスタートアップ31社がローンチパートナーとして参画していて、まずはミートアップ文化のあるネット業界を中心に顧客を広げる計画だ。

なお同社では本日サービスのローンチと合わせてXTech Venturesを引受先とした数千万円規模の資金調達を実施したことも発表した。今回調達した資金を活用しながら組織基盤を強化し、採用マーケティングSaaS化の実現を目指す。

Meety代表取締役の中村拓哉氏(中央)とXTech Venturesのメンバー

公開データからエンジニアのスキルを可視化するLAPRASがフリーランス・副業マッチングの新サービス

オープンデータを用いてエンジニアのプロフィールを自動生成する「LAPRAS」や企業向けのAIヘッドハンティングサービス「LAPRAS SCOUT」を展開するLAPRAS(旧scouty)は10月24日、フリーランスや副業エンジニアと企業をマッチングする新サービス「LAPRAS Freelance」のベータ版を公開した。

LAPRAS FreelanceはLAPRASで蓄積された人材データベースを活用して、フリーランスや副業スタイルで働きたいエンジニアと企業をつなぐサービスだ。

LAPRASは以前から紹介している通りGitHubやSNS、個人ブログなどインターネット上に公開されているエンジニアのオープンデータを収集し、スキルを独自のスコアで可視化するとともにユーザーのプロフィールを自動で生成するというもの。4月より各ユーザーが自身のページを閲覧できるようになったほか、まだ自分のページが存在しない場合にはログインすることで作成できる仕様になった。

LAPRASで生成されるプロフィールページ。独自のLAPRASスコアが算出されるほか、個人のアクティビティのログ(参加したイベントなど)も自動でまとめられる。このページを名刺代わりにボタン1つで共有できる機能も7月に実装された

現在は約143万人のデータが自動で収集されていて、そのうち約5000人が自らデータベースにログイン(オプトイン)している状態。7月からは正社員、副業、フリーランス、インターンシップの中から興味がある雇用形態を選択できる機能が加わり、54%が副業、34%がフリーランス(重複あり)を希望しているという。

LAPRAS Freelanceでは担当者が企業側の要望を聞いた上で、LAPRASに自らログインしていて、なおかつ副業やフリーランスに興味を示しているエンジニアの中から要件に合った人材を提案。企業とのマッチングを図る。

特徴の1つは「企業は求人票の作成、ユーザーは履歴書や経歴書の作成」の必要がないこと。そのためユーザーは登録したその日から紹介を受けるチャンスを得られる。そもそもLAPRASではscouty時代から企業の採用要件にマッチした人材をレコメンドするエンジンを磨いてきているため、今回のサービスでもその技術を活用していく形だ。

企業の利用料金は初期費用無料の完全成果報酬型。1名の採用につき一律で30万円の成果報酬が発生するが、設立登記から3年未満のスタートアップに関しては15万円で利用ができる。またエンジニアに対して不当に低い金額での業務発注を防ぐために案件の最低時間単価は5000円にしているそう。こちらも上述した条件に当てはまるスタートアップの場合は最低3500円から提案が可能だという。

エンジニアのスキルをスコア化した上で、それを副業やフリーランスのマッチングに活用するという観点では6月に紹介した「Findy」の取り組みとも近しい。ただ両社ではスキルを算出するためのソースが異なるほか(FindyではGitHubを解析してスコアを出す)、求職者側との面談の有無や最低単価の仕組みなど、サービスの設計面でも違いがありそうだ。

「正社員採用が主であるLAPRAS SCOUTを運営する中で、フリーランスや副業で働くことを希望しているエンジニアが想定よりも多いことに気づきました。まだ正社員採用をメインとする企業が多いものの、働く側の組織にとらわれない働き方のニーズは増え、業務委託やフリーランス人材を活用する企業も急速に増えてきたように思えます。そういった背景を受け、LAPRAS SCOUTとは切り分けた別のサービスとしてLAPRAS Freelanceをローンチしました」(LAPRAS代表取締役の島田寛基氏)

前々から島田氏が話していたように、今後はエンジニアに限らず人事、マーケティング、コーポレート、デザイナーなど対象となる職種を拡大していく構想。「誰でもアウトプットさえ出していけば副業の誘いのような新しい機会に出会うことができる環境を作っていきたい」という。

月間100万人が使う就活クチコミサービス「ワンキャリア」にUB Venturesなどが資本参加

⽉間100万⼈が利⽤する就活クチコミサイト「ONE CAREER」を手がけるワンキャリアは10月23日、ユーザベースグループのUB Ventures、PKSHA SPARXアルゴリズム1号、ヘイ代表取締役社⻑の佐藤裕介⽒、ニューピース代表取締役CEOの⾼⽊新平⽒、およびその他個⼈投資家らが資本参加したことを明らかにした。

ワンキャリアにとって外部資本を入れるのは初めてのことで、調達額については非公開。今回の資本参加を通じて各事業会社と事業面での提携を強化し「データとテクノロジーでHRマーケットを変⾰する」取り組みを進めていく。

ONE CAREERは各企業ごとの会社概要や選考情報、就活に関するハウツーコンテンツに加えて、ユーザーによる企業ごとのクチコミやESなどを集約した複合的な就活サービスだ。

これまでのHRマーケットでは基本的に企業側が一方的に情報を提供する構造になっていたが、同サービスでは「実際に選考を受けた学生のクチコミを集めたCGM」というアプローチで情報の非対称性を解消する取り組みを進めてきた。

もちろん以前から「みん就」を始め就活に関するクチコミサイトや掲示板サービスは存在していたし、僕自身も就活生時代に使った記憶がある。ただこれらのサービスは参考になる情報も多い一方で、ゴシップ的な投稿や成否が判断できないような投稿も一定数含まれているのも事実だ。

ONE CAREERでは投稿されたコンテンツを検閲する仕組み(システム側でNGワードを設定、個人情報が記載されている際のアラート、事実に基づかない明らかな中傷コメントの削除など)を通じて、正しい情報が提供されるサービスを目指してきたという。

そうして蓄積された生の声や体験談を軸に企業ごとのスケジュールや選考対策情報、オリジナルの就活関連コンテンツなどを1つのサービス上にまとめることで、就活生が効率よく情報収集できる基盤を構築。就活生にとっては実際に社員に会ったり、インターンに参加したりすることに多くの時間を使えるのが大きなメリットで、この点が支持されユーザーの拡大に繋がっているそうだ。

事業概要や選考スケジュール、選考対策、就活生のクチコミやESなど、選考を受ける際に必要となる情報を集約。インターンや選考情報など募集中のイベントもチェックできる

結果的に現在では東⼤/京⼤就活⽣の9割以上、早慶MARCH就活⽣の7割以上が利⽤し、⽉間利⽤者数100万⼈のアクセスが集まるメディアに成長した。ワンキャリアでは企業側に対してコンサルティングも行なっているが、時価総額ランキングTOP100企業のうち70%が顧客になっているという。

現在同サービスには4万社以上の企業情報や14万件以上の先輩の通過ES/選考体験談/志望動機といった情報、10万件を超える企業説明会やインターンシップのクチコミといったデータが蓄積。今後はこれらのデータとテクノロジーを活用した取り組みをさらに強化していく計画だ。

ワンキャリア代表取締役の宮下尚之氏に確認したところ、まずは年明けに企業の採用課題にアプローチするSaaSの提供を予定しているそう。大枠としては、蓄積してきたデータを基に学生の動向や他社の採用手法・状況、学生からの自社の評価などを把握できるプロダクトになるようだ。

その他、中長期的にはONE CAREER上で学生に対してマッチング度の高い企業をレコメンドしていくような方向性もありえるということだった。

今回タッグを組むユーザベースやPKSHA SPARXアルゴリズム1号(PKSHA Technologyの子会社とスパークス・AI&テクノロジーズ・インベストメントが運営)とは具体的な取り組みこそまだ未定とのことだが、当然膨大なデータやコンテンツを効果的に活かしていくことを見据えた上での提携だろう。

ワンキャリアでは調達先とも連携しながら「学⽣と企業の採⽤における意思決定を⽀援するデータプラットフォームの構築」を⽬指していくとしている。

リファラル採用を人事部任せではなく企業文化に、リフカムがスタートアップ特化の新サービス

拡大期のスタートアップにとって「自社にあった優秀な仲間を採用できるかどうか」はその後の成長スピードに大きな影響を与える重要なポイントだ。

TechCrunch Japanでは日々国内スタートアップの資金調達ニュースを紹介しているけれど、起業家にその使徒を聞いても多くの場合「エンジニアを中心とした人材採用の促進」や「組織体制の強化」という答えが返ってくる(“プロダクトの拡充”なども、突き詰めていくとそのための人材採用だったりすることが多い)。

近年採用のカタチが多様化し様々な概念も生まれている中で、社員の繋がりを生かした「リファラル採用」は多くのスタートアップが取り組む手法の1つではないだろうか。

本日10月16日にベータ版が公開された「Refcome Teams」はまさにスタートアップのリファラル採用にフォーカスして、そこにまつわる課題を解決するプロダクトだ。

飲食店とスタートアップではリファラル採用の毛色が異なる

Refcome Teamsを簡単に説明するとスタートアップ向けの「リファラル採用に特化したタレントプール」ということになるだろうか。このプロダクトを手がけるリフカム代表取締役の清水巧氏は「Salesforceのタレント管理版」という表現をしていたが、これがわかりやすいかもしれない。

まずは社員みんなの繋がりをベースに候補者のプールを作り、各候補者に対するアクションの履歴や転職意向などのステータスをプロダクト上で管理していく。その上でSlackなどと連携することで適切なメンバーに通知が届き、現場が主体となってチーム一丸でリファラル採用を進めていけるようにサポートする。そんなプロダクトだ。

リファラル採用サービスはすでにいくつも存在する中でRefcome Teamsはどんな特徴を持つのか。それについてはリフカムがこのプロダクトを開発するに至った背景を紹介するのが1番良さそうだ。

リフカムの主要プロダクト「Refcome」。人事担当者からメールやアプリで送られてきた専用ページを友人に転送するだけで簡単に紹介できる

リフカムは2016年7月にリファラル採用を活性化させるサービス「Refcome」をリリース。約2年強の間に、飲食店やサービス業を中心に累計約850社で活用されてきた。特に近年はすかいらーくグループや吉野家といった大手飲食チェーンへの導入が進んでいる。

ただ清水氏の話では一口に「リファラル採用」と言っても、飲食店やサービス業におけるリファラル採用とITベンチャー・スタートアップにおけるリファラル採用では若干毛色が異なるようだ。

「飲食店では特にアルバイト採用で重宝されていて、“スカウト”のような機能を使ってフランクに知り合いに声をかけることが多く、時間軸も短期的なものが多い。一方でスタートアップにおけるリファラル採用は、優秀なエンジニアの知り合いを『数ヶ月、数年かけて口説く』といったように長期スパンで時間をかけながら進めていく。違う使い方やニーズに対して同じプロダクトを提供していることに関して、徐々にもやもやするようになった」(清水氏)

そもそもリフカムは創業当初に「Combinator」というスタートアップの仲間集めを支援するプロダクトをやっていたこともあり、清水氏もこの分野で事業を展開したい気持ちが強かったそう。それを踏まえた時に「何より自分たち自身が今のRefcomeをヘビーユースできていなかった」ため、スタートアップにフォーカスした新たなサービスを作ることを決断したという。

リフカムが創業当初に手がけていた「Combinator」

スタートアップが抱えるリファラル採用3つの課題

リファラル採用支援サービスを手がけるということもあり、以前から自社採用についてはリファラル経由での割合が1番多かったという清水氏。とはいえ「この課題に対してしっかりアプローチできていればもっと上手くいっていたと思う」という3つのポイントがあるそうだ。

1つ目がリファラル採用の依頼をしても、多くのメンバーは「優秀かつ転職を考えている人にしか声をかけない」ということ。優秀な人であるほど当然引く手数多であり、すでに他社で活躍していることも多い。本来はそういう人材にも中長期的にアプローチをしていくべきだが「リファラル採用に協力して」と言われただけでは、社員も候補者としてリストアップしづらい。

実際リフカムの社内でも同様の課題が発生していたため「まずは一旦タレントリストに追加してくれるだけでいい」と伝え方を変えてみたところ、リストに追加される候補者の数自体が一気に増えたという。

2つ目のポイントが「タレントプールに追加した候補者の管理が大変」だということ。特に数が増えてくるとエクセルやスプレッドシートで動向を記録していくのは困難。リフカムでも「(候補者が)気づいたら転職している」「社員の知り合いなのにエージェントから紹介されてしまう」という自体に陥っていたようだ。

「社内で試したところタレントプールに約250人の候補者があがり、そこから4人採用に繋がった。ただ後々調べてみると少なくともそのリストの中で20人以上転職していて、もっと多くの仲間を採用できるチャンスがあったことがわかった」(清水氏)

そして3つ目のポイントが「会社規模が大きくなるとリファラルの協力率が下がる」ということ。リフカムが80社にアンケートをとってみたところ、特に企業間で差が出るのが社員20〜30名以上になるタイミングなのだそう。「具体的に人事部ができるタイミング。それまでは全員が採用に積極的でも、人事部ができると『採用は人事がやってくれる』という状況に陥りがち」だという。

この3つのポイントでつまずかないようにサポートするツールこそが、Refcome Teamsだ。

社員全員参加型のでリファラル採用プラットフォーム

現時点でのRefcome Teamsの機能を整理しておくと以下がメインとなる。

  • メモリーパレス機能 : 人事も知らない人脈を発見しタレントプールを作成
  • コラボレーション機能 : 候補者のステータスを全員で管理し関係性を構築
  • アラート機能 : 候補者の転職意向の変化や社員のネクストアクションをアラート
    • カルチャー機能 : チームの頑張りを可視化

中でも候補者をリストアップする「メモリーパレス」は核となる機能。実はメモリーパレスというのは米国の著名VCセコイアキャピタルが投資先に推奨しているリファラル採用手法の名称だ。

この手法では「高校時代の友人で特に優秀な人を3人教えてください」といった形で各メンバーに候補者をリストアップしてもらう。これを高校、大学、インターン時代、社会人1社目、と時系列で実施していくことからメモリーパレスというらしい。

Refcome Teamsの場合は若干仕様が異なるが、大枠は同じだ。まず最初に管理者がプールに追加してほしい候補者の条件を選択する。たとえばセールスorエンジニア、新卒or中途といったものを想定してもらうといいだろう。その条件に合わせて「前職のセールスメンバーで優秀な人を3人教えてください」などの質問が自動で生成され、各社員に届く。

社員は受け取った質問に該当する知人をSNSなどの繋がりをベースにリストアップすればいい。清水氏によるとだいたい各メンバーあたり10人ぐらいの候補者が出てくるそうで、社員数が30人規模の企業であれば、約300人のタレントプールができるようなイメージだ。

プールに新たなメンバーが追加されると、該当する部門のリーダーにSlackで通知が届く仕組み。各候補者ごとのページで「この人気になるから話聞いてきてくれない」と社員に依頼したり、候補者に対するアクションや進捗を一括で管理していくことができる。

「リファラル採用は本来営業と同じで最終的なゴールの手前に『今月何人の候補者をプールに追加できたか』『何人に具体的なアクションができたか』といった細かいKPIがあるはず。一連の状況や進捗を可視化し、人事部任せではなく全員で管理しながら効果的なアクションができるようになる」(清水氏)

清水氏がこのプロダクトを「Salesforceのタレント管理版」と表現していたのも、まさに上記のような理由からだ。営業と同様に、仲間集めにおいてもCRMのような仕組みを浸透させていきたいそう。候補者の前段階の人を“prospect(プロスペクト)”と呼ぶことから、そういった人材との関係性を構築できる「PRM(プロスペクトリレーションシップマネジメント)」という概念を広げていきたいということだった。

「1人3役」から「1人適役」のリファラル採用へ

Refcome Teamsは社員数1人につき月額3000円の定額モデルで提供していく計画。すでに30社で導入が決定していて、約半数ではすでに運用も始まっている。まだタレントプールを作っていく段階の企業が多いが「こんな優秀な人と繋がっているならもっと早く教えてよ」と、今のところはこれまで社員からあがってこなかった繋がりに気づけるようになったと評判も良いそうだ。

また今回リフカムではベータ版の提供開始と共に、メルカリの石黒卓弥氏とReBoost代表取締役社長の河合聡一郎氏が開発パートナーとして協力していることも発表している(河合氏はリフカムに出資もしているとのこと)。

2015年1月にジョインしたメルカリで人事企画や組織開発担当として活躍してきた石黒氏は、個人でも複数のスタートアップにて人事領域のアドバイザーを務める人物。河合氏も過去に在籍していたビズリーチやラクスルで採用領域の現場経験が豊富なほか、現在は投資先のスタートアップの社外人事を担っていたり企業向けに人事組織や採用の支援を行っていたりもする。

河合氏からは「スタートアップの成長においては『全社員が当事者となり、良いチームを創ると言う事が当然な文化』を、なるべく早い段階から築くことができるかがポイント」だとした上で、スタートアップにおけるリファラル採用や、今回のプロダクトで実現したいことに関するコメントを得られた。

「その為には自社や事業が『なぜ存在しているのか』と同じように『なぜその組織なのか』という組織創りへのビジョンやストーリーも必要です。その上で今後の組織創りにおけるテーマは『共創』だと思います。それらを理解、体現し全社員が採用活動に関与する中で、リファラルはとても相性や有用性が高いと思います」

「一方でリファラル採用は、そのプロセスにおいて『職種ごとにフィットした仲間の紹介のしやすさ』や、『適切な紹介タイミング』『入社決定できるかどうか』『候補者のDBの可視化』など、様々な課題に対する解決策が必要だと考えています。RefcomeTeamsを通じて、CRMやMAの要素を提供することにより、結果的に『仲間づくりの文化創り』のきっかけになればと思います」(河合氏)

リフカムでは今後「Refcome」と「RefcomeTeams」の2つのプロダクトを軸に様々な企業の仲間集めをサポートする計画。現在はTeamsにもかなりの開発リソースを割いているそうで、機能面のブラッシュアップなども随時実施していく予定だ。

「従来のリファラル採用は各社員が候補者をリストアップして、口説いて、入社確度がある程度高まったタイミングで初めて人事や経営陣に紹介するという『1人3役』のリファラルが中心だった。今回掲げるのは社員が候補者の追加を担当し、実際に口説いたり、クロージングするのはマネージャーや経営層が一緒に取り組んでいくという『1人適役』のリファラル採用。この文化を作っていくのは自分たちにとっても大きなチャレンジになる」(清水氏)

最大の競合は“エクセル”、約550社が使う人事評価クラウド「HRBrain」が4億円調達

HRBrain創業者で代表取締役社長の堀浩輝氏

人事評価クラウドサービス「HRBrain」を提供する株式会社HRBrainは10月9日、三谷産業、サイバーエージェント(藤田ファンド)、みずほキャピタル、JA三井リースを引受先とした第三者割当増資により、シリーズBラウンドで約4億円を調達したことを明らかにした。

2017年1月リリースの同サービスは現在約550社に導入されるまでに拡大。今回の調達によりプロダクトの機能拡充と組織体制の強化を行い、さらなる事業成長を目指す計画だ。

なおHRBrainは2016年3月の創業で、TechCrunch Tokyo 2017のスタートアップバトルにも登壇した経験を持つスタートアップ。2017年12月のシリーズAラウンドではジェネシア・ベンチャーズ、BEENEXT、KSK Angel Fund、みずほキャピタルなどから2億円を調達しており、累計の調達額は約6億円となる。

人事評価をクラウド化「従来よりもシンプルでカンタンに」

HRBrainは従来エクセルやスプレッドシートなどで行われていたような「人事評価」をクラウド化し、より効果的かつ効率的に管理できるようにするサービスだ。

詳しくは後述するが「豊富なテンプレート」「面談/目標シートへのアクセス性の高さ」「集計作業の自動化」といった機能や仕組みが大きな特徴。これらに加えて約10名ほどのカスタマーサクセスチームによる顧客サポートを武器に事業を拡大してきた。

HRBrainのウリの1つは定番のMBOやOKRを始め、1on1やWill Can Mustなど幅広い目標管理フレークワークをテンプレートに落とし込んで提供していること。社内で目標管理制度が整備されていなくても、他社で成果に繋がっているテンプレートを活用すればすぐにスタートすることが可能だ。

OKRのフォーマット。各目標管理手法ごとにフォーマットが用意されているので、初めてのものでもすぐに使い始めることができる

当初は創業者である堀浩輝氏が前職のサイバーエージェント時代にやっていた手法をクラウド化するような形で始まったサービスだが、ローンチ以降対応できるフォーマットを着々と増やしてきたそう。近年IT企業だけでなく病院や出版社、飲食店、ガソリンスタンド、結婚式場など多様な業界で導入されるようになったのも「世の中の大抵のフォーマットに対応できるようになった」のが大きいという。

このようなフォーマットに沿って目標を設定した後は定期的に振り返りをすることになるが、「目標シートに紐付けて1on1のログを残せる仕組み」は導入企業の約7割が使う人気機能になっている。

メンバーと上司の間で毎回の面談の記録を残していき、いつでも簡単に検索してアクセスできる設計。これを基に期末の人事評価が行われれば、従来はブラックボックスになりがちだった各メンバーへの評価やフィードバックが透明化されることにも繋がるため、納得度もあがる。

これをエクセルやスプレッドシートなどで行うと閲覧権限の管理なども含めて手間がかかるが、HRBrainの場合は権限の付与などもスムーズなため導入企業からは評判が良いそうだ。

エクセルやスプレッドシートだと工数がかかってしまうのは集計作業も同様。こちらについては完全に自動化することですぐに社員全体の評価を可視化できるのはもちろん、人事担当者が創造的な仕事により多くの時間を使えるようにもなる。

このような一連の仕組みをSaaSとして月額3万9800円からまるっと提供するというのがHRBrainのビジネスモデルだ(従業員数に応じた従量課金制)。

導入企業は550社超え、ホリゾンタルSaaSとして拡大

前回のシリーズAから約2年。核となる機能は大きく変わらないものの、細かいアップデートに加えてカスタマーサクセス体制を強化することで着実に基盤を固めてきた。今年に入ってからはフルリニューアルも実施。カスタマイズ性やテンプレートを拡張するとともに、エンタープライズ向けとしてセキュリティやログイン管理機能の強化にも取り組んだ。

結果として幅広い業界に使われるホリゾンタルSaaSとして拡大し、導入企業数はすでに550社を突破している。

「日本中の企業で目標の設定や評価は行われているが、多くの企業ではもっと効率化できる余地がある。プロダクトを磨き込む中でシンプルではあるが深いものが作れているという手応えはある」(堀氏)

堀氏の話では顧客のタイプは大きく2パターンに分かれるそう。1つはまだ「これといった目標管理制度が社内に根付いていない」企業で、優れた目標管理制度を導入するための最短コースとして、テンプレートなどの機能やシステムの使い勝手、サポート体制などを理由にHRBrainを導入するケースが多い。

そしてもう1パターンがすでに目標管理制度を自社で導入しているものの、煩雑なオペレーションに課題を感じて効率化したいという企業。特に従業員数が数百名〜数千名規模の会社が典型例だ。

「社内に目標管理制度がない企業の場合、そもそも目標設定の考え方からセットでサポートすることで自社に合った手法を設計するところから伴走する。一方ですでに何らかの管理制度がある企業の場合、規模が大きくなるほど既存のフローを変えたくないという力学が働く。業界ごとの特徴なども押さえた上で、いかにHRBrainでも同様の形を再現できるか、ここ1〜2年はそのシステムやサポート体制を作り込んできた」(堀氏)

目標管理サービスの領域にはHRBrainの他にも複数のプレイヤーが存在する。たとえば過去に紹介したカオナビやOKRに特化したResilyなども近しい使い方ができるサービスだ。

ただ堀氏いわく「最大の競合はエクセル」。特にそれまでエクセルを使っていたエンタープライズの顧客にHRBrainを使ってもらうのはなかなかハードルが高く「オンボーディングが非常に重要。勉強会をやったり、管理者向けのサポートをこまめにやったり。運用開始に至るまでのプロセスを丁寧に、地道に進めることが成果として現れてきている」という。

今後は人事データベースなどサービス拡張進める

HRBrainでは次の打ち手として人事データベースの準備を進めている

この2年間だけでもエクセルからの乗り換え事例は何社もあり、その手応えは掴めているそう。今回の資金調達は「プロダクトが売れる市場がわかってきたタイミングで、それを一気に加速させるためのもの」(堀氏)だ。

新たに投資家とした参画した3社のうち、サイバーエージェントはHRBrainのメイン顧客の1社。AbemaTVなどサイバーエージェントグループの事業部やグループ企業などで積極的に同サービスを活用しているヘビーユーザーだ。

三谷産業とJA三井リースについては一緒にプロダクトを広げていく構想があり、三谷産業は販売代理店としてHRBrainの拡大をサポート。JA三井リースもファイナンス機能の提供や全国に拡がる顧客網を活かした営業協力などを通じてHRBrainを後押しするという。

このバックアップ体制の下、より多くの顧客への導入を目指していくというのがHRBrainの今後の打ち手の1つ。そして既存プロダクトと並行して関連するHRTechツールの開発にも着手する。

最初のターゲットとなるのは「人事データベース」だ。従業員情報や組織情報をシンプルに一元管理できるだけでなく、従来のHRBrainに蓄積されたデータと連携することで「パフォーマンスデータを経営のヒントとして使える」ような仕組みを考えているようだ。

「(目標管理データと連動することで)自分たちだからこそ実現できるサービスを提供できると考えている。データベースについては特にエンタープライズ企業から以前から要望が多かったもの。これがあれば顧客の対象が増え、成約率が上がることもわかっているので、少しでも早くリリースしたい」(堀氏)

堀氏の話では今後予定している人事データベースを皮切りに、HRBrainシリーズのプロダクトを増やしていく計画とのこと。最終的には人事評価を軸とした「タレントマネジメントプラットフォーム」を見据えているという。

ITで“面接の近代化”へ、約1100社が使うウェブ面接ツール開発のスタジアムが5.6億円を調達

スタジアムの経営陣とジャフコのメンバー。前列右からスタジアム取締役の間渕紀彦氏、代表取締役の太田靖宏氏、取締役の石川兼氏。後列右からジャフコ取締役パートナーの三好啓介氏、プリンシパルの吉田淳也氏

「いろいろな業界がテクノロジーの力で変わってきているが、“面接”は未だに進化していない。応募者と企業それぞれにストレスや課題があって、みんな『これでいいのか』と疑問を持っている。僕たちが目指すのは面接とテクノロジーを掛け合わせることで、最高の面接の場を提供すること」

そう話すのはSaaS型のウェブ面接ツール「インタビューメーカー」を展開するスタジアム取締役の間渕紀彦氏だ。

同社が取り組むのはまさにテクノロジーによる「面接のアップデート」。まずは場所や時間の制約を取っ払うウェブ面接ツールからスタートし、面接を進化させる取り組みを実施していく計画だ。

そのスタジアムは5月28日、ジャフコを引受先とした第三者割当増資により5億6000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今後同社では面接映像データのAI解析や新機能の開発を進める方針。調達した資金を基にエンジニアやセールスメンバーを中心とした人材採用やマーケティング活動を強化するほか、シンガポール拠点を軸としたグローバル展開にも力を入れるという。

時間や場所の制約なし、スマホやPCから面接ができるツール

インタビューメーカーはスマホやPCを使って、場所や時間の制約を受けることなくオンライン上で面接ができるサービスだ。

コアとなる機能はオンライン上で面接ができる「ウェブ面接」、応募者が投稿した動画を基に選考する「録画面接」、選考状況や採用目標などを管理できる「採用管理」の3つ。付随する機能も合わせて、企業が応募者を獲得するところから人材の選定、面接、内定後のフォローに至るまでの各課題を解決する。

中でもウェブ面接の効果はわかりやすいだろう。オフラインの会場で面接を実施する場合と比べて応募者と面接官双方の移動コストを削減できるほか、ウェブ面接の選択肢を用意することでより多くの人材と接点を持てる可能性もある。

特に今は一部の人気企業はさておき、多くの企業が人材難で困っている状況だ。遠方に住む人材がエントリーしやすい環境を作るという観点でも、一次面接などにウェブ面接を取り入れている企業も少しずつ増えてきているようだ。

面接官面接可能な日程を登録しておけば、あとは応募者が日程を予約するだけで日程調整が完了する機能も搭載。Googleカレンダーなど外部のカレンダーツールとも連携が可能

僕自身も学生時代は関西に住んでいたため、面接や会社説明会のために頻繁に東京に訪れていた経験がある。当時は時間や体力的なもの以上に金銭的なコストが負担になっていたので、一次面接だけでもオンライン対応が可能になれば、特に地方に住む学生は助かるだろう。

そういう点では、そもそも面接に至る前の段階(人材を絞る段階)でお互いの認識をすり合わせる用途でもインタビューメーカーは活用できる。そこで活躍するのが録画面接だ。

「録画面接はどちらかと言うと多くの応募が集まる人気企業が面接に進む候補者を絞り込む際に使いたいという需要が多い。動画を通じて書類だけでは伝わらない雰囲気を確認でき、時間調整なども不要。優秀な人材や熱量の高い志望者に気づくこともできる」(スタジアム代表取締役の太田靖宏氏)

もちろん新卒採用に限らず、アルバイトの採用や中途採用でも使える。たとえば働きながら転職活動をしている求職者だと平日の日中は面接が難しい場合もあるだろう。そんな際にウェブ面接や録画面接を有効活用すれば、お互いの負担を最小限に留めてスピーディーに選考フローを進めることもできる。

面接用の動画を撮影して録画データでエントリーする「録画面接」は24時間エントリーが可能。事前に用意された質問に対して、回答となる動画を送る仕組みだ

面接の「録画データ」が重要な資産に

インタビューメーカーには面接を自動で録画する機能が搭載されているのだけど、実はこの録画データが「面接の質を高める」際に重要な役割を果たすそうだ。

「面接の様子は面接官と応募者以外にはわからず、いわばブラックボックスとなっていた領域。録画が残ることで面接官がきちんと応募者の話を引き出せているのか、内定辞退率が高い面接官はどのようなコミュニケーションをとっているのかなどが全て可視化される。企業全体として面接の質を高めるための教育ツールにもなりうる」(太田氏)

実際にスタジアム社内でも日常的にインタビューメーカーを活用しているが「面接の様子を見ると、一方的に面接官が話してしまっていたり、本質的な質問ができていないことが原因で面接官によって評価にズレが生じてしまっていることもわかるようになった」(間渕氏)という。

面接の模様を他の担当者と共有できる自動録画面接機能を搭載

たとえば一次面接で担当者が評価に迷った場合、役員などに動画を見せて判断を仰ぐこともできるので、ポテンシャルの高い人材を途中で不採用にしてしまうリスクも減らせる。面接の録画データを有効活用できる点は企業から好評なのだそうだ。

興味深いのが、まだ一部の企業には限られるものの「対面の面接時にもインタビューメーカーを開いてその様子を録画する事例もある」(太田氏)こと。太田氏や間渕氏は面接のブラックボックス化が課題と話すが、同じような課題感を持っている企業は少なくないという。

自分たちが感じた「面接の大変さ」を解決するツールとして開発

スタジアムはもともとライフノートという社名で2012年にスタートした会社だ。

創業者の太田氏はリクルートで「HOT PEPPER」の創成、成熟に主要メンバーとして携わっていた人物。同社を退職後ライフノートを立ち上げ、営業アウトソーシングを軸に事業を展開してきた。

ある時クライアントから約2ヶ月で70名規模の営業部隊を立ち上げて欲しいというオーダーが入り、期間内で800名ほどの面接を実施。そのプロジェクトを通じて「採用や面接の大変さを痛感した。それを解決できるようなシステムがないのであれば、自分たちで作ろうと思った」(太田氏)ことをきっかけに生まれたのが、インタビューメーカーの前身とも言える「即ジョブ」だった。

機能改善を進める中で「面接」に機能を絞り込み、2016年5月に無料のβ版を公開。翌年5月に正式版をリリースし、現在はADKホールディングス、コーセー、積水ハウス、キユーピー、ダイドードリンコを始めとする1100社以上に導入されている。

料金体系は月額3万9800円(ベーシックプラン)からの定額課金モデル。業界や規模はさまざまだが、初期からエンタープライズの顧客が多いことも特徴だ。

IT業界やスタートアップ界隈にいるとウェブ面接やオンライン会議も決して珍しくないような気もするが、太田氏や間渕氏によると「特に大企業を中心とする非IT系の企業や求職者にとってはまだなじみが薄く、過渡期」だという。

「それでも採用マーケットが厳しくなってきた中で、何かを変えなきゃいけない、特に『地方の学生や遠方の人材にもアプローチできる仕組みが必要』という声はよく耳にする。昨年ごろから『ウェブ面接を考えているので資料を欲しい』という問い合わせも一気に増え、他社ツールも含めて具体的に検討しているお客さんが多くなってきた」(太田氏)

グローバルで見ると日本企業も複数社が導入する「HireVue」が特に有名。そのほか国産のサービスでもウェブ面接を軸にしたものがいくつか立ち上がっている状況だ。

もちろん機能面やプロダクトの使い勝手も差別化要因にはなるが、ツールに慣れるまでにある程度の期間や教育コストがかかること、蓄積される録画データを活用したい企業が多いこともあり、一度入ってしまった後はスイッチングコストが高い。

それだけに「いかに早く多くの企業に使ってもらえるか、スピードも非常に重要」(太田氏)で、今回の資金調達はそのための体制強化が1つの目的だ。

合わせて、これまでインタビューメーカーは子会社のブルーエージェンシーを通じて提供していたが、事業を加速させるこのタイミングでライフノートと統合。5月からスタジアムとして再スタートを切った。

面接テックの追求へ、7万件の面接データの活用も

今後スタジアムではインタビューメーカーの新機能開発に取り組むほか、7万件を超える面接データの解析を進める。

「たとえば表情や声のトーンを解析することで応募者が言っていることの真偽を判定したり、感情を分析した結果あまり楽しそうでなければ『こういう質問をしたらどうですか』と面接官をアシストしたり。面接が終わった時に『楽しかったね』と思える状況を作りたい」(間淵氏)

面接の場を盛り上げるための仕掛けだけでなく、録画されたデータと社内で実績のあるメンバーのデータを照らし合わせることで、自社で活躍しそうな人材を抽出することもできるかもしれない。実際HireVueには人工知能が選考を支援する機能があるが、そのような展開も可能性としてはありえるという。

スタジアムはもともと営業アウトソーシング事業から始まっているため当初はセールスに強みを持つメンバーが中心となっていたが、近年はテクノロジーサイドの人材採

用も進めてきた。

取締役の間淵氏と石川兼氏はそれぞれクックパッド在籍時に執行役員広告事業部長、人事部長を務めた人物。その他クックパッドやお金のデザインを経て加わったCTOを始め、IT業界で経験を積んだ人材も増えてきているそうだ。

今回ジャフコの三好啓介氏、吉田淳也氏にも少し話を聞けたのだけど「人材と雇用は企業の最重要課題になっているものの、『採用』という部分については変革が進んでいないこと」「面接を科学していくことが、最適な人材や雇用の在り方にも繋がっていくと考えていること」に加えて、「営業だけでなくエンジニアを中心とした開発チームも良い人材が集まってきていること」が出資の決め手になったという。

スタジアムでは調達した資金を活用して、営業やエンジニアを中心とした人材採用にはさらに力を入れる計画だ。

「『面接の場』にだけ絞って、追求している会社はほとんどないと思っている。そこを誰よりも深く考え、面接×テクノロジーで大きな変革を起こすチャレンジをしていきたい」(間淵氏)

目標は“Indeedのレコメンド版”、AI転職エージェント「GLIT」が6300万円を調達

AIエージェントサービス「GLIT(グリット)」を提供するCaratは5月16日、複数の投資家を引受先とした第三者割当増資により、6300万円を調達したことを明らかにした。

プレシリーズAとなる今回のラウンドに参加したのは求人サイトなどを展開するキャリアインデックスのほか、杉山慎一郎氏、高梨大輔氏、マイナースタジオ代表取締役の石田健氏、元リクルートキャリア執行役員の山本剛司氏。キャリアインデックスとは業務提携も締結し、サービス間の連携を深める計画だ。

Caratは2016年12月の創業。これまで2017年6月にスカイランドベンチャーズとCandle創業者の金靖征氏から1500万円を調達するなど複数回の資金調達を実施済みで、累計の調達額は約1億円となる。

AIが自分に合った求人を推薦してくれるTinderライクな転職アプリ

GLITはAIを活用することで求職者と企業双方の効率的な転職・採用活動を支援するマッチングサービスだ。

iOS版とAndroid版を合わせたユーザー数は約1万人。シリーズAから上場後くらいのITベンチャーを中心に200社近くの企業が活用する。現在は東京エリアに絞ってサービスを展開中だ。

前回「TinderライクなUIが特徴の転職アプリ」と紹介した通り、求職者のプロフィール情報やアプリ上での行動データを基に、AIが個々に合った求人情報を自動でレコメンド。求職者は各求人を左右にスワイプすることで「興味のあり or なし」を示す。

自分で求人情報を検索する手間がかからないので、隙間時間でも手軽に転職活動を始められるのが1つの特徴。プロフィール登録時にシェアリングエコノミーやAIなど「希望テーマ」やエンジニア、マーケターなど「希望職種」を入力しておくことで、レコメンドされる求人をある程度調整することもできる。

マッチングした企業からのみスカウト届く仕様になっているため、自分が全く興味のない企業から立て続けにスカウトが送られてくる心配もない。

一方の企業側に対しては、採用担当者が複数の求人サービスを使うのがごく普通の時代において、人的なコストや手間を抑えつつ新たな人材にアプローチできる仕組みを提供する。

企業が最初にやることは求人情報を登録するだけ。AIが公開した求人に合いそうなユーザーに向けて求人情報を配信し、興味を示したユーザーの中からマッチング率の高い人を自動で選定する。担当者にとってみれば、求職者の抽出業務はAIに任せ、最終的な判断とスカウトを含めたコミュニケーションに時間を使えるいうことだ(もちろんAIの抽出精度が高いことが前提にはなるけれど)。

スカウトの対象となるのは自社の求人に対して興味を示した求職者のみのため母数は絞られるが、その分スカウトに対してはある程度良い反応を期待することもできる。今のところ開封率は平均で約90%、返信率も約20%ほどだという。

なお求職者は一連の機能を無料で使うことが可能。企業側は初期の導入費に加えて、採用が決定すれば1人あたりにつき90万円を支払うモデルだ。

企業版のアップデートでSlack上で採用活動が進められるように

今回Caratでは資金調達と合わせて、企業版の大幅なアップデートとキャリアインデックスとの業務提携についても発表した。

企業版については新たにビジネスチャットツール「Slack」との連携を開始。GLITの管理画面を開かずとも、Slack上で候補者の確認やスカウトメッセージの送信ができる仕組みを整えた。

「今まではメールの通知を確認したり、管理画面にアクセスして行なっていた業務をSlack上でできれば採用活動をより効率化できると考えたのがきっかけ。採用担当者だけでなく経営層や現場のメンバーを巻き込んで採用活動をすることが主流になってきている中で、普段から使い慣れているSlackを使って一連の業務ができれば余計な負担を増やさずに済むし、隙間時間に使いやすくもなる」(Carat代表取締役の松本直樹氏)

特にGLITのユーザーはIT系のベンチャー企業が多いこともあり、Slackとの相性が高いと考えて複数社にテスト版を提供したところ、かなり反応が良かったそう。それを踏まえて、この機能を一般開放することに決めたという。

目指すのは「Indeedのレコメンド版」

また企業の採用活動の支援だけでなく、引き続き求職者のサポートを加速させるための取り組みも進めている。

調達先でもあるキャリアインデックスとの提携も「GLITが膨大な求人情報から各求職者ごとに最適な求人をレコメンドすることで、ワンストップで転職活動が完結できる仕組みを作る」(松本氏)という世界観の実現に向けた、新たな一歩だ。

具体的には今後キャリアインデックスが扱う約50媒体・60万件超の求人にGLITが対応することで、より多くの求人情報をカバーできるようにしていきたいという。

現在GLITでは同サービスに登録されている求人情報に加えて「Green」と「Wantedly」の情報をアグリゲーションして求職者に届けているので、サービス間の連携が進めばここに上述した50媒体がプラスされる形になる。

合わせて求人情報を閲覧してから面接の実施・採用に到るまでのフローをGLIT上のみで完結する仕組みの構築にも力を入れていく計画。現時点でGLIT独自の求人についてはマッチング以降の工程もワンストップで実施できるので、他媒体の求人についても同様の体験を提供するのが目標だ。

「求職者は転職活動をする際に複数媒体を使うことも多いが、各媒体に情報を登録したり、都度チェックするのは大変。最終的にはGLITがWeb上に公開されている求人情報を全て網羅することで『GLITに登録しておきさえすれば大丈夫』という状態を目指したい。イメージしているのは『Indeedのレコメンド版』のようなサービスだ」(松本氏)

今回調達した資金もプロダクトの機能拡充や事業拡大に向けた人材採用の強化と、求職者獲得のためのプロモーションに用いる方針だという。

SmartHRに「カスタム社員名簿」機能追加、労務から人材活用の領域へ

HRTechスタートアップのSmartHRは4月10日、クラウド人事労務ソフト「SmartHR」上に「カスタム社員名簿」機能をリリースした。この機能では、SmartHRから必要な社員情報を抽出した名簿を作成し、人事労務担当だけではなく、必要な人が社員の必要な情報だけを閲覧することが可能になっている。

カスタム社員名簿は、SmartHRの管理者により作成・管理できる。作成画面から、表示したい情報、公開したい部門や職種などの範囲を設定し、名簿を作成して公開が可能だ。

人事労務管理で必要な社員情報は、入社手続きの際にSmartHRに入力されるため、新たに人事データベースを構築したり、社員情報を追加入力する手間は不要だ。また、労務に直接関係がない情報(例えば保持資格や制服のサイズなど)でも、入社のときに収集した情報であれば、表示項目に追加することができる。

社員名簿の用途としては、「社員同士で顔と名前、所属部門や職種だけ確認できるようにしたい」といった全社員向けのものや、「部門やチームメンバーの情報を抽出して、人事異動や登用の意思決定に活用したい」という経営者や管理者向けのもの、また多店舗展開する企業のエリアマネージャーや店長が、アルバイトの緊急連絡先をすぐ調べられるようにしたり、管理部門が社員に支給している手当や備品を簡単に把握できるようにしたり、といった使い方が想定されている。

SmartHRの人事データベースは、労務担当者だけでなく、人事・経理・情報システム部門や経営戦略を担う部門からも「個人情報を除いた形式で活用したい」との要望が多く寄せられていたという。

人材活用や多様な働き方実現に必要な社員情報が、分散管理されていたり、データが不揃いであったりという運用の課題に着目したこの機能。SmartHRでは新機能について、「これまでSmartHRが提供してきた労務管理の領域を超えて、人材管理を目的に活用できる初の機能」と位置付けている。

なおSmartHRによれば、人材管理の分野で、評価や目標管理のような、さらに深掘りした機能を自社開発で追加する予定はないが、外部サービスとのAPI連携の開発は進めているとのこと。SmartHRでは「より多くの部門・社員の皆さまに活用いただくことで、スムーズな組織マネジメントや社内コミュニケーションの活性化など、さまざまな用途での活用を期待する」としている。

カスタム社員名簿はSmartHRのスタンダードプランより上位のプランで利用が可能だ。SmartHRでは2019年夏をめどに、社員や組織の統計値を可視化できる「分析レポート」機能の公開も予定している。

パーソルキャリアが仕事や転職の匿名相談サービス「JobQ」を子会社化

左からパーソルキャリア経営戦略本部本部長 村澤典知氏、ライボ代表取締役CEO 小谷匠氏、パーソルキャリア代表取締役社長 峯尾氏太郎氏、同社執行役員 岩田亮氏

転職サービス「doda」やアルバイト求人情報サービス「an」などを展開するパーソルキャリアは3月14日、キャリアや就職・転職に特化した匿名相談サービス「JobQ」を手がけるライボの発行済株式を全て取得し、完全子会社化したことを明らかにした。株式の取得価格は非公開だ。

直近では両社のサービス間で連携を進めるほか、将来的には両社の持つナレッジやHRデータを統合しながらキャリア選択を支援する新サービスの開発なども見据えていく計画。ライボに関しては創業者で代表取締役CEOの小谷匠氏が引き続き代表を務め、独立的に運営していく

現場のリアルな情報が得られる就職・転職版の「Yahoo!知恵袋」

ライボは2015年2月の創業。代表の小谷氏は新卒で入社したソーシャルリクルーティング(現ポート)にて営業やエンジニアとして働いた後、ライボを立ち上げた。

当初は友人間で転職をサポートし合うようなプロダクトからスタートし、そこから少し方向性を変える形で同年4月にJobQのβ版をローンチしている。

2015年6月にはサイバーエージェント・ベンチャーズ(現サイバーエージェント・キャピタル)から最初の資金調達を実施。その後も同社や約10人のエンジェルから資金を集めつつ、時には「共同創業者と別れたり、キャッシュアウトを経験したり」しながらも約4年に渡ってJobQを育ててきた。

そんなJobQは、匿名のQ&Aコンテンツを軸に個人のキャリア選び・企業選びをサポートするユーザー投稿型のメディア(CGM)だ。

求職者が匿名で質問をすると、その内容に精通する個人から回答を得られる仕組みを採用。CGM型にすることで、現場を知る人からリアルな情報を低コストで入手できるのがウリだ。

個人的には「人材領域に特化したYahoo!知恵袋」と「『転職会議』や『Vorkers』のような企業クチコミサイト」が合体したようなサービスという印象で、実際キャリアや転職に関する投稿と特定の企業に紐づく投稿(クチコミ)が、それぞれ半分ずつくらいなのだという。

「(企業のクチコミサイトは複数ある一方で)他社が狙っていないような、働く悩みに関する投稿を蓄積しているのがひとつの特徴。これまでキャリアについて考える際、リアルな情報を手に入れるのが難しかった。たとえば転職エージェントに聞いてみても、エージェントとしては収益に直結しない部分でもあり、サポートできることに限りがある。JobQはそこを民主化するようなサービスだ」(小谷氏)

JobQのコンテンツは「●●社の研修制度について教えて欲しい」のように特定の企業に関するQ&Aから、「円満に退職する秘訣を知りたい」「面倒な飲み会の断り方」など働くことに関連する多様な相談まで幅広い。ちなみに小谷氏によると日曜日の夜間にトラフィックが伸びるそうだ

始めは転職ユーザー向けのサービスとして作っていたが「CGMの特性上、情報の非対称性が大きいとこで使われやすい」こともあり、次第に就職(新卒)ユーザー向けのQ&Aコンテンツも増加。今では3〜4割が就職関連の投稿となっている。

コンテンツが蓄積されていくことでサイトのトラフィックも増え、2019年2月時点では前年同期比で270%の成長を記録まさに数年間温めてきた事業が徐々に形になってきたフェーズで、成長をより加速するべく次の一手を考えていたそうだ。

決め手はJobQの持つ「働く悩み」全般に関するコンテンツ

一方のパーソルキャリア側では、転職活動中のユーザーだけに留まらず、転職前後や転職を明確に意識していない層までサービスの対象を拡大する方向にシフトしつつある。

転職先が決定した個人の内定から入社後までをケアする「dodaキャリアライフサポート」を2017年11月よりスタート。2018年10月には転職活動中のユーザー以外もサポートすることを目指しdodaのブランドを刷新した。

つい先日にはハイクラス人材を対象にした新たなサービス「iX(アイエックス)」を発表。今夏を目処に複数のサービスを順次展開する計画だ。

そんな流れがあったからこそ、JobQ上に投稿されているコンテンツに関心があったという。

「dodaを活用して転職するユーザーにとって企業のクチコミはすごく重要な情報になるので、その点で魅力を感じたのがひとつ。加えて、会社としてこれから転職活動の前後まで領域を広げていく中で、そこに対するコンテンツもJobQが保有していたことが大きな決め手だ。自分たちでこれらの情報をゼロから集めるのは難しく、非常に価値が高いと判断した」(パーソルキャリア経営戦略本部本部長 村澤典知氏)

もちろんdodaにもキャリアアドザイザーがいてキャリア全般の相談に乗ってはいるが、やはりメインは転職活動のコアの部分に寄ってしまう。過去には自社でJobQのようなサービスの立ち上げも検討したそうだが、サイクルを回すのが大変で時間もかかるため、ライボとタッグを組んだ方がいいと考えたという。

特にこの領域では昨年リクルートがGlassdoorを子会社化したり、ヴォーカーズがリンクアンドモチベーションから大型の資金調達を実施したりと、大きな動きが続きスピード感も増してきている。小谷氏も「最短距離で走るために最適な選択をする」ことを重視した結果、今回の意思決定に至ったと話す。

「自分たちのサービスがまだまだ小さい中で『この領域で1番のサービスにしたい』という思いが強かった。もともとは増資も含めて検討していたが、(パーソルキャリアと組めば)データや営業リソースなどを持ち寄ってサービスの成長速度を加速することができる。合わせて、自分たちは当初からtoC向けにプロダクトを作り続けたいと考えていて、そこを尊重してもらえたことも大きい」(小谷氏)

データ連携を通じて、より発展的なプラットフォームの構築も

冒頭でも触れた通り、まずは両社のサービス間で連携を進める。具体的には「JobQの企業クチコミをdoda上に表示したり、反対にdodaからJobQへ送客する導線を作るなど、双方がグロースできる取り組みから着手する」(村澤氏)計画だ。

また中長期的には「転職活動に限らず、さまざまな働く悩みに答えられるプラットフォーム」を開発する構想もある。

「そこに行きさえすれば、キャリアに関するどんな悩みでも解決する、そんな場所を作りたい。その時にCGMだけでなく、キャリアアドバザイザーのような専門家や企業の人事部スタッフから回答を得られる仕組みがあってもいい。今のJobQは定性的な情報が多いが、そこにパーソルが持つ定量的な情報を加えることもできる。双方のサービスに溜まったHRデータを統合することで、やれることはたくさんある」(村澤氏)

なおパーソルキャリアとしては、今後もHR Techに関わる企業との協業を積極的に進めていく方針とのこと。国内でもこの領域のスタートアップはかなり増えてきたように感じるし、これから人材系の大手企業とHR Techスタートアップのタッグを紹介する機会が増えていくかもしれない。

離職に繋がる衛生要因を見える化する「ハイジ」β版公開——「オフィスおかん」提供元の新サービス

日本が抱える深刻な社会問題はいくつもあれど、「労働力人口の減少による人手不足」はメディアなどでも頻繁に取り上げられる代表的な課題の一つだ。

そんな状況だからこそ多くの企業がこれまでにも増して人材採用に投資し、魅力的な仲間を増やそうと努めている。積極的に自社の特徴を発信する採用広報の動きが加速。採用を支援するHR Techツールもここ数年で細分化が進み、より細かいニーズに応えられるようになっている。

一方で健康経営やエンプロイー・エクスペリエンス(EX)といった言葉を目にする機会が増えたように、新たなメンバーを採用することと同じくらい「今いるメンバーが安心して働き続けられるような組織を作ること」も重要だ。そのためにはメンバーの離職につながる原因を予め突き止め、適切な対策を講じることが必要になる。

本日1月24日にβ版が公開された「ハイジ」は離職の原因に繋がる要因を見える化するサーベイツール。このプロダクトを手がけるのは、累計で1500社への導入実績があるサブスク型の社食サービス「オフィスおかん」運営元のおかんだ。

ハイジの特徴は職場環境や給与、社内での人間関係など、それが整っていないと従業員の不満足に繋がる「ハイジーンファクター(衛生要因)」に特化していること。企業はサーベイの結果をハイジスコアとして定量的に分析できる。

ハイジスコアをマッピングした「ハイジマップ」

基本的な使い方はすでに存在するサーベイツールに近しい。まず導入企業は従業員にオンライン上でアンケートに回答してもらう。回答にかかる時間は約10分ほど。PCだけでなくスマホにも対応する。

その結果を執務環境や制度の充実、休暇の取りやすさなど12要素に分け、各項目ごとにスコアを算出。このスコアを年齢や性別、所属部署ごとにマッピングしたハイジマップ機能も備える。

経営者や管理部門のスタッフにとっては、これまで可視化することの難しかったハイジーンファクターにおける問題点を数値ベースで把握することが可能。社内のどこに問題点があるのか、どこから着手すればいいのかを判断する材料になるだけでなく、継続的にサーベイを実施することで打ち手の効果検証や数値目標の設定にも活用できるという。

離職要因の約80%を占める衛生要因に特化したサーベイツール

開発元のおかんが2018年7月に7億円の資金調達を実施した際に、代表取締役の沢木恵太氏は「(労働力人口が減少していく中で)企業側が正しい課題意識を持ち、正しい施策に対して投資をしていく」ためのサポートをしたいと話していた。それに向けてオフィスおかん以外のソリューションも仕込んでいるということだったけれど、それがハイジだったということらしい。

それにしてもなぜこの領域なのか。従業員サーベイを通じて組織の現状を診断・改善できるサービスはすでに複数存在する。代表的なサービスで言えばリンクアンドモチベーションの「モチベーションクラウド」や以前TechCrunchで紹介したアトラエの「wevox」などがそうだ。

そもそもハイジが着目したハイジーンファクターとは、アメリカの臨床心理学者であるフレデリック・ハーズバーグ氏が提唱した二要因理論の中で出てくる考え方だ。この二要因理論で従業員の仕事に対する満足度を二つの要因に分類していて、一方が満足に関わるモチベーターと呼ばれる要因(動機付け要因)。そしてもう一方が不満足に関わるハイジーンファクターと呼ばれる要因(衛生要因)になる。

モチベーターはあればあるほど意欲が向上するような要因のことで、たとえば理念への共感や仕事内容に対するやりがいなどが該当する。その反面、ハイジーンファクターは冒頭でも触れた通り「あることが当たり前」の要因で、なくなってしまうと著しい不満足に繋がってしまうもの。職場環境や給与、社内での人間関係、健康や家庭との両立などが当たる。

沢木氏の話では、あくまで厚労省の統計ベースにはなるが離職原因の80%以上がハイジーンファクターにまつわるものなのだという。

「離職を減らすためには、“働きやすい”環境というよりも“働き続けられる”環境を作ることが重要。そのためには働き続けられない理由を潰すツールが必要だと考えた。採用に投資をすることももちろん重要だが、入社後のサポートがしっかりしていないと意味がなくなってしまう」(沢木氏)

既存のサーベイツールはやりがいやモチベーションなど、どちらかというとモチベーターに着目したものが多い。一方でハイジーンファクターに特化したサービスはまだこれといったものがなく、自分たちでやる意義があるというのが沢木氏の見解だ。

オフィスおかんとの親和性も

なおかつ、ハイジはこれまで展開してきたオフィスおかんのユーザーとも親和性が高い。オフィスおかんの直接的な窓口となるのは、総務や人事といった管理部門の担当者や経営者が中心。管理部のスタッフからは「健康経営に対するプロジェクトにアサインされたが、定量的な目標設定や優先順位付け、各施策の評価やフィードバックが難しい」といった課題を聞いていたという。

同様の悩みは経営者も抱えている。ハイジーンファクターに分類されるような施策は費用対効果の判断が難しい領域。「結構な投資が必要だと意思決定も難しく、後手後手になって状況が悪化してしまうケースもある」(沢木氏)ため、その判断材料となる指標が欲しいという声は多い。

すでに複数社には試験的にα版の提供を始めていて、上述したような課題の解決や「なんとなくそう思っていた」要因を可視化することに役立ててもらっているそうだ。今後ハイジで見つかった課題に対するソリューションの一つとして、オフィスおかんを提供することもできるだろう。

おかんでは今回のβ版を経て、今年の春〜夏頃を目処にハイジの正式版をリリースする計画。ゆくゆくは国から義務化されているストレスチェックも内包できるようにプロダクトをアップデートするほか、サーベイの結果を基に「どの領域にどのくらい投資をすればいいか、どんな対策を講じるべきか」までレコメンドする機能も提供していきたいという。

「人事労務freee」と「SmartHR」がAPI連携開始、労務手続きと給与計算をよりシームレスに

クラウド型の人事労務ソフト「人事労務freee」と「SmartHR」が、1月21日よりAPI連携を開始した。

経理・会計ソフトのfreeeが生んだ人事労務freeeは、給与計算機能に強みを持ち、勤怠管理・労務管理機能を持った統合プロダクト。一方、SmartHRは社会保険・雇用保険の電子申請機能など、行政手続きに対応。入社手続きや年末調整といった労務手続きに特化したプロダクトだ。

今回のAPI連携では、人事労務freee、またはSmartHRのいずれか一方に従業員情報が登録されていれば、もう一方に転記することなく、従業員情報が同期できるようになった。これにより、双方のサービスが得意とする機能をシームレスに活用することが可能となる。

SmartHRでは、2018年に外部サービスとの連携強化や拡張機能ストア公開など、プラットフォーム化構想を打ち出している。今回のAPI連携にあたり、SmartHRは「今後も外部連携の強化と、拡張機能が追加できる『Plusアプリ』の開発・提供により、SmartHRの設計を複雑にすることなく、多様化するユーザーのニーズにお応えし、SmartHRのプラットフォーム化を実現していく」としている。

企業と人材エージェントをつなぐ「JoBins」が資金調達ーーエージェント間の“求人票シェア”機能も搭載

中途採用を行っている企業と人材エージェントをつなぐ求人プラットフォーム「JoBins」。同サービスを展開するJoBinsは10月16日、栖峰投資ワークスが運営するファンドを引受先とする第三者割当増資により4000万円を調達したことを明らかにした。

JoBinsは人材紹介業における課題解決に取り組むサービスなのだけど、いわゆる“転職サイト”ではなくB2Bのプラットフォームだ。つまり転職希望者が登録するタイプのものではなく、企業とエージェントの2者のみが使うシステムになっている。

人材を採用したい企業はJoBinsに求人票を掲載し、同サービスに登録しているエージェントからの推薦を待つだけ。エージェントを自ら開拓する負担がなく、料金も完全成果報酬のため「転職者を採用できないのに費用だけがかかる」ということがない。

一方のエージェントにとってはコストをかけずに新規求人企業を手に入れられる点が特徴。求人の閲覧や転職者の推薦は無料ででき、自社が保有する案件だけでは転職に至らなかった人材に適した求人を紹介するチャンスを得られる。転職希望者の視点で考えても、エージェントの取り扱う求人数が増えることはメリットだと言えるだろう。

当初からある通常プランは、上述した通り採用が決まった際に企業側が転職採用者の年収の約13%を支払うモデル。内訳は約10%がエージェントの収入、残りの約3%がJoBinsのサービス利用料となる(サービス利用料の最低金額は15万円)。

一般的にエージェントを利用して転職希望者を採用する場合、企業が負担する利用手数料は転職者の年収の30~35%にも及ぶ。JoBinsの場合はそのコストを1/3近くの約13%まで抑えている点が特徴だ。

またJoBinsでは7月より月額15万円からのプレミアムプランもスタートした。これはエージェント同士が自社の保有する求人票をサービス上でシェアできる仕組みで、全国のエージェントから転職希望者を集客できるのがウリ。他のエージェントがJoBinsにシェアした求人案件を取得して求人成約した場合には、エージェント同士で報酬を分配する。

JoBinsというプラットフォームを通じて、人材エージェント間で連携しながら求人成約を目指し、その利益をお互いでシェアするという新しい概念のサービスと言えそうだ。

2018年10月時点で同サービスの累計登録社数は1000社を突破。今後はエンジニア採用を強化して機能拡充に取り組むほか、マーケティングにも予算を投じる方針だという。JoBinsでは「2019年6月までにオンライン人材紹介プラットフォーム求人掲載数および登録企業数No.1を目指してまいります」としている。

AIヘッドハンティングの「scouty」が正式公開、転職可能性を知らせるタレントプール機能を追加

「技術力3.74、ビジネス3.56、影響力3.44」——これはAIヘッドハンティングサービス「scouty」で算出された、エンジニアのスコア評価の一例だ。

同サービスではSNSやGitHub、個人ブログなどインターネット上に公開されているエンジニアのオープンデータをシステムが収集。上述した3つのスコアをはじめ、個人のスキルや志向性、活動内容などを含めた“個人の履歴書のようなページ”をAIが自動生成する。

このデータベースから企業は自社の採用要件に合った人材を検索し、スカウトすることが可能。双方の情報を基に質の高いレコメンドを実現することで、企業とエンジニア(いずれはそれ以外の職種の人材も)のミスマッチをなくそうというのがscoutyの試みだ。

そして本日8月27日、2017年5月からのオープンβ版期間を経て同サービスの正式版がついにリリースされた。

正式版には新たにタレントプールという概念が導入。検索内容に合わせてレコメンドされたユーザーだけでなくSNSアカウントを入力することで候補者をタレントプールに追加できる機能のほか、登録した候補者の転職意欲が高まったタイミングで通知してくれる機能が加わっている。

転職潜在層にアプローチできるAIヘッドハンティングサービス

オープンβ版リリース時にも紹介した通り、scoutyのひとつの特徴が転職潜在層のエンジニアもデータベースに登録されていること。システムが自動でWeb上の情報をクローリングして個人のページを作るため、ユーザーによる登録は不要。企業側は転職サービスなどにはいないエンジニアにもアプローチできるチャンスがある。

マッチング精度を高める土台としてscoutyでは独自のスコアリングの仕組みを開発。たとえば冒頭で紹介した「技術力」「ビジネス」「影響力」という3つの指標は、以下のようなソースを基に評価している。

  • 技術力 : オープンソースプロジェクトの参加経験、GitHubやQiitaなどで公開しているアウトプットの量や他者からのいいね数、質問回答サイトでのベストアンサー数、技術系イベントの参加数など
  • ビジネス :  経験した職歴など(職歴ごとにスコアを付与)
  • 影響力 : Twitterのフォロワー数、フォローとフォロワー数の比率など

scouty代表取締役の島田寛基氏の話では、特に技術力スコアについてはこの数値でフィルタリングする企業も少なくないため、スコア算出のアルゴリズムを常に改善し続けている。

たとえばエンジニアがプログラムを書いた際に添付するReadme(リードミー。コードの説明書のようなもの)を解析してみたところ、この内容と技術力に強い相関関係があったという。そこでReadmeの量や書き方を自然言語処理や機械学習の技術をもとに解析し、スコアに反映することを始めている。

また他者からのいいね数についてはフォロワー数に依存する部分も大きい。そこでどんな人からいいねをされているか「いいねの質」を評価したり、記事の内容からいいね数を予測するアルゴリズムを開発することで、日の目を浴びていないけれど質の高いアウトプットをしているエンジニアが評価される仕組みも実験しているようだ。

収集したデータからエンジニアのスキルや興味分野を分析することに加えて、scoutyは候補者の転職可能性も予測する。これは過去の職歴や在籍経験がある企業の継続年数分布、SNS上での行動(例えばわかりやすいものだと、Twiiterで「辞めたい」と言っているなど)を基にAIが算出したもの。

上述したような仕組みによって、自社の要件にマッチし、かつ実は転職の意欲が高まっているエンジニアをスカウトできるというわけだ。これまでこの仕組みに興味を持った約50社がscoutyを導入。同サービスを通じて20数名のエンジニアが転職をしているという。

とはいえ、法律や外部サービスの規約に基づいた形ではあるもののエンジニアにとってはある意味“勝手に”自分の情報が登録されて、ある日突然スカウトされるわけだから驚くだろう。中には抵抗がある人もいるのではないか。

この点について島田氏に聞いてみたところ「メールを返信してくれるエンジニアの7〜8割は自分のGitHubやブログを見てくれて嬉しい。御社の技術に興味があるので話を聞いて見たいというポジティブな反応を示している」という。

この辺りは実績ができてきたことによって、1年前と比べてもかなりポジティブな反応が増えてきているそうだ。ただ「抵抗がある人もいるのは事実」とのことで、そういったエンジニアの情報の提供を停止する仕組みや体制をこの1年で整備してきた。

データベースから長期に渡って使えるプロダクトへ

ここまではscoutyが当初から備えるコアの部分と、それに関するアップデートを紹介してきたわけだけれど、今回の正式版では新たに「タレントプール」という概念が加わった。

このタレントプールにはscoutyでレコメンドされた人材のほか、SNSアカウントなどを基に人材を追加することが可能。

たとえばTwitterで気になるエンジニアを見つけた場合、Google Chromeの拡張機能を使ってscouty上の詳細なプロフィールやスキルを即座にチェックし、タレントプールに加えるといった使い方ができる。

そのほか普段参照しているブログの執筆者や自社イベントの参加者などを含め、興味を持った人材の母集団を形成し継続的にウォッチしやすくなった。

もちろんタレントプールを形成できるサービスはすでに存在する。ただscoutyの場合は従来から備える転職可能性を予測する仕組みを組み合わせることで、候補者にいつアプローチをするのが良いのかを通知してくれるのがユニークなポイントだろう。

島田氏に聞いたところタレントプールに入っている候補者のSNSの情報を定期的にクロールし、プロフィール変更やSNSで転職意向が高まっているような発言があると通知が飛ぶ仕組みになっているようだ。

今までのscoutyを踏まえるとかなり大きなアップデートとも言えそうだが、島田氏によると「マッチングの部分はある程度理想通りに実現できた一方、潜在層を対象にしているため、転職意向がないとそこで止まってしまうことがひとつの課題になっていた」という。

「ベータ版リリース時の仮説として『人はたとえ転職活動をしていなくても、今よりもいい職が見つかれば転職するのではないか』と考えていたが、それは必ずしも正しくなかった。お互いがいい印象を持っているけど今すぐに転職というわけではない場合でも関係性を継続したいというケースが多く、そのニーズに応える形でプロダクトの方向性を少し変えている」(島田氏)

スカウトに適したタイミングを通知するなど、タレントプールの運用を一部自動化することで「採用に特化したCRMやMA(マーケティングオートメーション)ツールの要素を取り入れたプロダクト」をイメージしているそう。

単なるデータベースではなくツールとして長く使ってもらえるものを目指し、料金体系も従来の月額利用料+成果報酬のプランを廃止し、月額15万円のプラン1本に絞った。

今後はデザイナーなどエンジニア以外の職種以外にも広げていくことを検討しているほか、scoutyの個人ページを本人に公開し、スコアを確認したり情報の追加や削除をしたりできるような仕組みも考えているという。

「たとえばどのような企業が自分のスコアや趣向に近い人を採用しているか、同じくらいのスコアの人はだいたいどれくらいの年収で転職しているかなどがわかると、もっと情報をオープンにする人も増えるのではないか。クローリングの技術も改善していくことで、その人のさまざまな情報が溜まったライフログのようなものを自動で作り、徹底的にパーソナライズしたレコメンドの仕組みを開発したい」(島田氏)

約100社のリファラル採用支援で培った知見を活用、リフカムがアナログなサポートを加えた新サービス

社員の人脈を良質な人材の採用に活用する、リファラル採用。特にアメリカでは積極的に取り入れられてきたと言われている手法だが、近年は日本でも少しずつ広がり始めている。

こ関連ツールもいくつかでてきていて、TechCrunch Japanでも何度か紹介したクラウドサービス「Refcome(リフカム)」もまさにそのひとつ。提供元のリフカムは2016年7月から同サービスを通じて、これまでに約100社のリファラル採用を支援してきた。

そのリフカムが2月15日より新たなサービスを始める。リファラル採用の制度設計から施策案の作成、運用代行までを一貫してサポートする「Referral Success Partner」だ。

リファラル採用は思っているより難しい

Referral Success Partnerをシンプルに表現すれば、「リファラル採用に関するアナログなコンサルティングサービス」となるだろうか。

これまでRefcome、Refcome Engage(2017年4月にリリースした社員のエンゲージメント測定ツール)とクラウド上で完結するサービスを提供してきたリフカム。同社がこのタイミングであえてアナログな事業を始めるのは、約1年半に渡ってこの領域に取り組む中で見えてきた気づきがあるという。

「『リファラル採用は思っているよりも難しく、一筋縄ではいかない』というのがこれまで事業をやってきて感じていること。リファラル採用の立ち上げにおいては、システムによって効率化するだけでなく、どのように社員を巻き込んでいくのか、どのような施策を実施していくのかといったアナログなサポートこそが成功に大きく関わることがわかってきた」(リフカム代表取締役の清水巧氏)

清水氏によると、プロダクトの観点ではリファラル採用は「エンゲージメント」「採用広報」「タレントプール」「リファラル」という4つの工程にわかれる。そして成果を出すためには最終工程のリファラルの部分だけでなく、すべての段階が上手く機能している必要があるという。

エンゲージメントについては以前紹介したとおり、リファラル採用に協力的な店舗の社員はエンゲージメントが高いという結果もでているそう。この工程については上述したRefcome Engageで見える化している。

一方でリファラル採用を加速させるストーリーの掘り起こしや社内外への発信(採用広報)、対象となる候補者のリスト作り(タレントプール)についてはこれまで十分に対応できていなかったという。

「(リソースの問題もあったが)もう少し早い段階から顧客の内部に入って密にサポートできていればと思う部分もある。これまでもリファラル採用やリフカムに興味をもってもらったものの、制度設計を自社でやるリソースやノウハウがないという理由で受注に繋がらなかったケースもあった」(清水氏)

100社のサポートを通じて培ったノウハウやデータをフル活用

今回スタートするReferral Success Partnerは、これまでリフカムが蓄積してきたデータやナレッジを活用して、リファラル採用の立ち上げから運用が自力で回るまでの3ヶ月をサポートするサービスだ。

清水氏の話では、これまでRefcomを通じてリファラル採用で成功した会社には共通点があり、いくつかのパターンに分類できるそう。専属スタッフが立ち上げの段階から顧客に伴走することで、「どのパターンにはまりそうか、どのような施策が最適か」を社内のキーマンを巻き込みながら一緒に考えていく。これがReferral Success Partnerの特徴だという。

長期的には採用広報やタレントプールの工程に関するサービスを独立で提供することも視野に入れている。直近ではRefcomのアプリ版もリリースする予定だ。

リフカムでは「蓄積したデータ、ノウハウの活用」「専属スタッフのサポート」「クラウドツールを活用した工数削減」という3つのアプローチで、企業のリファラル採用の活性化を目指す。

なおリフカムは2017年11月に伊藤忠テクノロジーベンチャーズやDraperNexusなど複数VCから約2億円を調達している。

人材紹介会社マッチングのgrooves、地銀系VCなどから1.8億円を資金調達——地方の人材不足解消を支援

有料職業紹介、つまり人材紹介を行う事業所は、日本全国で約2万カ所もある。実はそのうちの多くが、社員数名以下の中小零細規模だという。人材を探す側としては、優秀な人材を中途採用するなら、できるだけ多くの人材紹介会社と接点を持つ方が採用の成功確率は上がるが、小さな事業所1社1社と契約し、毎回募集内容を登録するのは手間がかかるため、大手エージェントに利用が流れがちだ。

groovesが運営する「Croud Agent(クラウドエージェント)」は、求人を1カ所に登録することでその手間を省きながら、複数の人材紹介会社が抱える人材とマッチングできるプラットフォームだ。

groovesは2月13日、いよぎんキャピタル、新潟ベンチャーキャピタル、北洋キャピタルが運営するファンドと、新生銀行を引受先として、総額1.8億円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。groovesでは、2017年2月に実施した大分ベンチャーキャピタル、広島ベンチャーキャピタルからの資金調達を皮切りに、地方銀行系ベンチャーキャピタル(VC)も含む地域金融機関からの資金調達と提携を進めている。今回の調達により、地域金融機関(地銀系VC含む)からの出資・提携は11行・社、資金調達額は累計4.5億円となった。

groovesが「社会課題を解決する意味もある」として取り組むのは、地方の人材不足に対する支援だ。地域に根ざす金融機関は、金銭面で地域の中小企業を支えることはできるが、事業をスケールさせる人材を実際に集めることは難しい。そこでCrowd Agentを運営するgroovesが金融機関と連携することで、人材確保の面で企業の支援を行っていく考えだ。

こうした「金融機関×人材紹介」の動きを後押しする動きも背景にある。1月23日、金融庁が明らかにした「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の一部改正案では、銀行やその子会社などが、職業安定法に基づく許可を得た上で、人材紹介業務を行うことを認める内容となっている。

Crowd Agentは、人材紹介会社約500社に利用されており、そのメインは都市部のエージェントだ。しかし、都市部在住の地方出身者を紹介するケースでは、地域金融機関との連携で、実際にUターン・Iターン採用を果たした例も出ているという。groovesは「地域で、絶対数の少ない候補者の中から人材を探すのでは、思ったような人材の採用は難しい。その点でも、銀行だけではできないことをgroovesで支援していく」という。

groovesでは、地方企業が人材紹介会社を利用することの効果について「地方企業がウェブメディアに掲載されたとしても、都市部から転職しよう、とはなかなかならないもの。しかし人材紹介会社が、企業のメリットなどを細かくヒアリングして魅力を伝えることで、転職が起こりやすくなる」と説明する。「例えば、大分県に資本金1000万円未満のIoT関連スタートアップがある。普通に転職活動をしていたら、出身県だったとしても転職先候補には挙がりにくいし、気づかれない可能性がある。そうした企業でも、『大分ベンチャーキャピタルや行政からの支援も得て、IPOを目指しているんですよ』といった情報を人材紹介会社が説明することで、『それじゃあ、3年とか5年ほどそこで働いて、実績を上げてみるか』ということも起こりうる」(grooves担当者)

現在、Crowd Agentを使って求人を行う企業のうち、約25%が地方企業だそうだ。groovesは「人材紹介会社とのマッチングプラットフォームを、地方企業は高く評価してくれている」として、地域経済活性のための人材供給にさらに力を入れ、地域銀行との連携の拡大、47都道府県を網羅する全国の地域銀行との提携・開拓を目指す。

リファラル採用支援「Refcome」提供元が約2億円調達――1年で登録社員数10倍、アルバイトにも活用

リファラル採用を支援するクラウドサービス「Refcome(リフカム)」を提供するリフカム(Combinatorから社名変更)は11月6日、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ及び既存株主のDraperNexus、Beenext、ANRIを引受先とした第三者割当増資により総額約2億円を調達したことを明らかにした。

今回調達した資金で現在伸びているアルバイト領域への展開に力を入れていくほか、リファラル採用の運用支援体制の強化、さらには新サービスの開発にも取り組んでいく。なおリフカムは2016年10月にも伊藤忠テクノロジーベンチャーズを除く3社から5000万円を調達している。

1年間で登録社員数が10倍、アルバイト・派遣領域で利用が拡大

Refcomeは2016年7月にリリースされたリファラル採用を活性化させるクラウドサービス。人事と現場の社員双方の負荷を減らし、リファラル採用に取り組みやすい環境をサポートすることがウリだ。具体的には人事担当者が社員へ募集内容を周知できる機能や協力してくれた社員を把握できる機能、社員が友人に会社の紹介をしやすい機能などを備える。

2016年10月時点で2700人だった登録社員数は1年間で10倍越えの3万人に増え、月次の売上高も15倍へと成長した。リフカム代表取締役の清水巧氏の話では、この1年でIT企業だけでなく飲食チェーンやアパレル、不動産など導入企業の幅が広がったという。合わせてわずか10%だったアルバイトや派遣での利用比率が1年間で40%に増えるなど、正社員以外の利用も増えたそうだ。

アルバイトや派遣の採用でRefcomeの利用が増えてきた理由はどこにあるのだろうか? その背景のひとつには「離職率の問題」があると清水氏は話す。

「ある飲食店では採用したアルバイトの3人に1人が入社から2週間以内に辞めてしまうということがあった。その1人を採用するのにも求人媒体を使うと7〜8万円かかるということもあり、そもそも辞めない人をなるべく安く採用したいというニーズが強くなっている。リファラル採用の場合は友人が社内にいるため社内になじみやすいこともあり、問い合わせが増えてきた」(清水氏)

アルバイトの募集においても、たとえば「友人紹介キャンペーン」など、これまでもリファラル採用的な施策は行われていた。ただ時代の変化とともにほとんどの人がSNSを使うようになり「リファラル採用」という概念や、それを支援する仕組みも整い始めている。「おそらく5年前では少し早かった。外部環境が追いついてきてちょうどいいタイミングになってきている」という清水氏の話も頷ける。

従業員のエンゲージメント測定とリファラル採用を連動

清水氏にこの1年の変化についてもう少し詳しく話を聞くと「従業員のエンゲージメント測定とリファラル採用を連動させて提案できるようになったこと」と「事例が増えてナレッジが蓄積されてきた結果、提案できる施策が増えたこと」がサービスの成長につながっているという。

リフカムは2017年4月、アンケート結果を基に社員のエンゲージメントを可視化できる「Refcome Engage(リフカムエンゲージ)」をリリースした。リリース時にも話があったが、リファラル採用がうまくいくかどうかは、従業員のエンゲージメントが大きく影響するのだという。

たとえばある飲食チェーンではリファラル採用に協力的な店舗と非協力的な店舗があり、双方で従業員のエンゲージメントを測定したところ、協力的な店舗はエンゲージメントも高いという結果が出たそうだ。そこでまずはRefcomeの導入企業を中心にRefcome Engageを提案。双方のツールは連動しているため、エンゲージメントの測定結果からリファラル採用の施策設計までをシームレスに行えるようにした。

また1年以上をかけて様々な企業のリファラル採用をサポートする中で、ナレッジが蓄積されより効果的な提案ができるようになったきている。

「たとえば100名規模のITベンチャーで人事から全社的に人材紹介の依頼をしても効果が薄い一方で、事業部長など現場のトップから依頼をするようにしただけでうまく機能するようになった事例がある。規模や業種によっても最適な手法は異なるため、フォローアップする体制を強化してきた」(清水氏)

清水氏が前職のSansan時代にカスタマーサクセス部門に携わっていた経験もあり、リフカムでは初期からカスタマーサクセス(CS)に力を入れていてきた。年間の解約率は10%未満とのことで、現在もCSドリブンで新たな機能や施策が生まれているという。

採用から組織作りまでを一気通貫するHRサービスへ

今回の資金調達を踏まえて、リフカムではアルバイト採用領域を中心にIT業界以外への展開をさらに進めていくほか、リファラル採用の運用支援体制の強化も引き続き進めていく。

そしてその先には新たなサービスや機能を加えることで、リファラル採用システムを超えて組織作りまでをサポートするシステムへ拡張することを構想しているという。

「リファラル採用を推進していると中には今すぐ転職することは考えていない人もいる。そのようなタレントをデータベース化できるものなど、さらに川下のサービスも作っていく。もともと『採用を仲間集めに』をミッションに、リファラル採用を通じて良い会社を作るサポートをすることが目的。RefcomeやRefcome Engageに新サービスも加えることで組織作りまでを一気通貫でできるようにすることで、ミッションの達成を目指したい」(清水氏)