農林水産省が農林水産業のDXに向けビズリーチで人材公募、先進モデルとして官公庁全体への波及目指す

農林水産省が農林水産業のDXに向けビズリーチで人材公募、先進モデルとして官公庁全体への波及目指す

Visionalグループのビズリーチが運営する、即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」は、農林水産省が取り組む農林水産業・食品産業のDXを推進できる人材の公募を発表した。期間は2020年12月8日から2021年1月4日まで。

農林水産省は、2019年に「デジタル政策推進チーム」を新設。同年に初めて農林水産分野のDXを推進できる人材をビズリーチ上で募集し、約900名の応募の中から2名を採用した。農林水産省では、この8月、省内のDX推進体制をより一層強化するため、「デジタル政策推進チーム」を含めた新たな組織として「デジタル戦略グループ」を設置。さらに民間のDX人材を採用することにより、農林水産業・食品産業におけるDXの早期実現を目指す。

日本の農林水産業を成長産業にするDX

日本の農林水産業は、農林漁業従事者の高齢化(基幹的農業従事者数140万人のうち7割が65歳以上)や労働力不足などに直面しており、生産基盤を強化し、生産性を向上させることが課題となっている。

今後、農林水産業を成長産業とするためには、労働集約型の「人手に頼る農業」から、デジタル技術を活用したデータ駆動型経営を通じて新たな農林水産業への変革(DX)を実現することが必要となる。

また、農林水産業のDX実現のためには、農林水産物の生産現場のほか、流通、加工、小売、外食・中食の各段階や、農山漁村を含めた「現場」におけるDXと、現場のDXを支える農林水産政策や行政内部の事務の効率化・利便性向上など、農林水産省の「業務」のDXを速やかに進めることが不可欠とした。

省内のデータサイエンティストを2024年までに100人に

政府発表の経済財政白書によると、官公庁や学校など公的機関で働くIT人材は、IT産業以外の産業全体の1%未満にすぎず、民間企業でもIT人材の獲得競争が激化している中で、優秀な人材をいかに採用するかが公的機関の課題となっている。

そのような中、農林水産省では2019年に初めて農林水産業分野のDXを推進できる人材をビズリーチで募集し、約900名の応募者の中から2名のDX人材を採用。

そして現在、民間人材の知見・経験を十分に活用して農林水産業分野のDX実現に向けたプロジェクトの企画・立案のほか、省内の業務のデジタル化や情報システムの高度化に向けた取り組みを実施。

また、データに基づく行政の推進のため、職員のデータサイエンティスト教育にも取り組んでいるという。農林水産省は、2024年までに省内のデータサイエンティストを100名に増やすことを目指しており、外部からDX人材を採用するだけでなく、組織内育成にも力を入れることでデータ活用に強い組織に成長することを目標にしているそうだ。

そして、今回新たに、農林水産業分野のDX実現を一層強力に進めるため、多様なプロジェクトの企画・立案・実行に携わる人材を公募するとともに、省内の情報システム開発に必要なIT関連業務に特化した人材を公募することとなった。今回の公募が行政のデジタル化に向けた先進モデルとなり、官公庁全体に波及していくことを目指す。

公募概要

募集職種名:「デジタル戦略グループ」配属 デジタル政策プロデューサー

  • 業務内容:農林水産業・食料産業の現場におけるDX実現に向けたプロジェクトの企画・実行。データに基づく農林水産政策の効果検証・企画立案への変革および行政事務の見直しによる国民の利便性向上・業務の効率化。その他、農林水産業のDX推進に対して有益な施策の立案等
  • 応募資格:「デジタル分野での事業推進・管理等に関する専門的知識を有すること」「デジタル分野での事業推進・管理等に従事した実務経験を5年以上有すること」「民間企業のプロジェクトでデジタル分野の知見を生かして企画・推進等の業務に携わり、成果を出した方」「大学卒業または同等の教養を有し、一定の事務調整能力(文章作成能力および関係機関との調整能力)を有すること」「当該任期を継続して勤務が可能であること」の5条件を満たす方

募集職種名:「デジタル戦略グループ」配属 システムプロデューサー/システムディレクター

  • 業務内容:DXの重要政策に係る情報システムの構築。農林水産省の重要プロジェクトに関わるシステム開発における、要件定義・工程の適正化。システム構築・運用業者および工程管理業者との調整。その他、多様な政策の遂行に必要な情報システムの構築等
  • 応募資格:「民間企業等において、情報システムに関わる企画立案、構築、管理等に携わった経験を有すること」「民間企業等において、情報システムのプロジェクトリーダーとして情報システムの内容、スケジュール管理、予算管理に携わった経験を有すること」「情報処理技術者試験のうち応用情報技術者試験(レベル3)以上の資格を有すること」「大学卒業または同等の教養を有し、一定の事務調整能力(文章作成能力および関係機関との調整能力)を有すること」「当該任期を継続して勤務が可能であること」の5条件を満たす方

労働条件

  • 任期付きの常勤の国家公務員としての採用を基本とするが、昨今の働き方を見据え、希望により、非常勤職員や業務委託契約での採用にも対応
  • 「給与」「就業時間」「待遇・福利厚生」などの詳細は公募ページに記載

関連記事
石川県加賀市がxIDおよびLayerXと連携、ブロックチェーンとデジタルID活用の電子投票システム構築へ
オープンソースによる総務省「住民記録システム標準仕様書」準拠のシステム開発が開始
総務省による第二期政府共通プラットフォームがAWS上で運用開始、行政サービスのDX加速
ご近所SNS「マチマチ」が東京消防庁と連携、コロナ禍対応のデジタル防災インフラ目指す
「ふるさとチョイス」のトラストバンクが自然災害発生時の復旧力強化を包括支援する自治体向け新サービス
神戸市がスタートアップとの協働で年間5000時間超のリモートワークを推進、5年で4億円超のコスト削減を目指す
「東京都 新型コロナウイルス感染症 支援情報ナビ」のソースコードが公開
LINE Fukuokaが自治体向けにLINE公式アカウント機能のソースコードを無償提供、福岡市アカウントがモデル
TRUSTDOCKが福岡市の実証実験プロジェクトに採択、デジタル身分証による行政手続きを検証
福岡県がAIリアルタイム危機管理情報のSpectee Proを採用、災害対応に活用

カテゴリー:GovTech
タグ:食品(用語)農業(用語)農林水産省ビズリーチ日本(国・地域)

ビズリーチと立教大がAIの社会実装に向けてタッグ、「求職者の価値観」の発見目指す

Visionalグループのビズリーチ立教大学大学院人工知能科学研究科は4月27日、AIの社会実装を目的とした共同研究協定を締結することを明らかにした。第1弾として転職プラットフォーム「ビズリーチ」のデータを活用し、AIで「人のキャリアにおける価値観」を発見する取り組みを行う方針。共同研究は4月30日からスタートする。

本人が自覚していないような価値観をAIで可視化

ビズリーチが力を入れている採用領域は直近の新型コロナウイルスの影響もあって急速にデジタル化が進みつつある。言わば「採用のDX」が加速する中で、同社としても「テックカンパニーとしてどのような形で新しいテクノロジーを取り入れ、サービスを提供していけるのかが1つの重要テーマになっている」(ビズリーチ執行役員CSOの枝廣憲氏)という。

ビズリーチでは2016年から社内にAIグループ(旧AI室)を設け、自社サービス内でAIテクノロジーを活用していくための研究開発を続けてきた。今回は2020年4月に日本初のAIに特化した大学院「人工知能科学研究科」を開設した立教大学と連携することで、高度なAIの社会実装を加速させるのが狙いだ。

両者が第1弾の研究テーマに選んだのは、AIによって「本人が自覚していないようなキャリアにおける価値観」を発見すること。AIで人間の感情を推定するような試みだと解釈してもいいだろう。

キャリアを選択する際の重要指標としては定量的に判断できる項目(年収、業種・職種、勤務条件など)だけでなく、仕事のやりがいや価値観など個人ごとに持つ定性的な項目もある。共同研究ではこれまで定量的に分析するのが難しかった個人の価値観を、立教大が注力する深層学習の先端研究を活用してAIで解析することを目指すという。

「本人がこの条件を気にしないと思っていても、実は隠れた行動の中でちょっとしたサインが出ていたりすることがある。他のユーザーや企業のデータなどを複合的に分析していくことで、『もしかしたらあなたはこんなことが好きなのでは?』といった新たな気づきを発見できるかもしれない」(枝廣氏)

立教大学大学院 人工知能科学研究科委員長の内山泰伸氏によると、具体的にはGAN(敵対的生成ネットワーク)を使った新しいレコメンドの仕組みを作る計画だ。僕自身はGANと言えば架空の人物画像の生成などディープフェイク分野に使われているイメージが強かったけれど、内山氏の話ではやり方次第でレコメンドエンジンにも使えるそう。「世界的に見ても成果と呼ばれるものは片手で数えられるほどで、まだまだ研究が進んでいない領域」であり、そこに本気でチャレンジするという。

両者としては研究成果をビズリーチ内で活用していくのはもちろん、論文として発表することも視野に入れている。論文については「当然やるべきだと思っているし、やるからには世界レベルで注目される質のものを目指していく」(内山氏)。

研究機関の先端AI技術をビジネスの現場で有効活用へ

今回の共同研究では、AIの早期社会実装を実現する上で「大量かつ高品質なデータの収集と蓄積の基盤を保有していること」と「最先端のAI研究人材および、HR領域の知見を持つAIエンジニアがいること」が大きなポイントになる。

ビズリーチでは10年以上にわたって運営を続ける転職プラットフォーム・ビズリーチのデータを安全かつ円滑に利用できるように、個人情報の仮名化やノイズ除去を行い、高品質なデータ基盤を構築してきた。この膨大なデータがあるからこそ「ビッグデータ時代に対応したAIを作れる」という。

共同研究では最初に仮説の立案やデータセットの作成を両者で行うが、その際には公開情報やサービスデータから統計的に生成されるダミーデータを用いる。それを基に理論の骨子(アルゴリズム)を作成する部分を立教大側が担当し、そこで生まれたアルゴリズムを実際のサービスに統合する部分はビズリーチのAIグループが担う(まずは匿名化されたユーザーの行動履歴を使いながら実験、検証する)。

この仕組みによって立教大とビズリーチ間においては、ユーザーから取得した個人情報を含むデータの受け渡しを一切せずに研究開発が進められるわけだ。そこで重要なのは両者に高度なAI人材がいることだという。

「ビズリーチ側にAIの研究者がいることで、アルゴリズムを開発した後のリアルデータに適合する工程を立教大抜きで実現できる。これが企業側に研究者がいない場合だと、革新的なアルゴリズムを開発できたとしても、活用するまでのハードルが高く実現に至らない場合もある」(内山氏)

ビズリーチは従業員の約3割が自社サービスのプロダクト開発を担うエンジニアであり、AIグループの中にはコンピュータサイエンスや理学分野の博士号取得者も複数名在籍している。一方の立教大学大学院人工知能科学研究科も今年4月に開設されたばかりではあるものの、AIに関するさまざまな分野で強みを持つ研究者が集まる。

「(立教大は)技術力の観点で日本トップクラスであることに加え、スピード感やベンチャースピリットを持つ『学術界におけるベンチャー企業のような組織』であることが魅力だった。自分たち自身もAIグループを通じて研究開発を進めてきたからこそ、コラボレーションすることで新たな社会価値を生み出せるのではないか。それを期待した産学連携のプロジェクトだ」(枝廣氏)

「ビズリーチの中にはHR分野のドメイン知識とAIの知識をどちらも兼ね備えているエンジニアがいることが大きい。ビジネスにAIを社会実装するには現場の知見が必要で、自分たちだけではどうしようもない部分もある。今回の取り組みは研究費をもらうための共同研究などではなく、研究者同士の対等なコラボレーション。こういう形だからこそ有意義な価値を生み出せると思っているので、(研究機関と企業による)共同研究の良い事例を作っていきたい」(内山氏)

ビズリーチがセキュリティ分野に進出、オープンソースの脆弱性と対応策を自動で可視化する「yamory」公開

今や多くのテクノロジー企業にとって、プロダクトを効率よく開発するためにオープンソースを活用することはごく普通のことだ。米国では2018年時点で商用アプリの96%でオープンソースが利用されているという調査結果もあるほど、デベロッパーにとっては欠かせないものとして普及してきている。

ただしオープンソースを使うということは、それらが抱えるセキュリティの問題までも自分たちのアプリケーションに持ち込むことにもなり得る。上述した調査ではオープンソースを利用する商用アプリのうち、78%にオープンソースの脆弱性が含まれているという報告もあるほどだ。

こうしたコードの脆弱性調査や対策にはセキュリティ部門のエンジニアが手動で対応するのが一般的だが、当然ながら相応の時間と手間がかかる。それならば担当者の負担となっていた業務を出来る限りツールで自動化することで、現場の課題を解決しようというのが「yamory(ヤモリー)」のアプローチだ。

オープンソースの脆弱性を可視化し「対応優先度」を提案

yamoryは人材領域のプロダクトを中心に複数事業を展開するビズリーチが本日8月27日に公開したセキュリティ分野の新サービス。オープンソースの脆弱性を自動で可視化した上で、対応優先度や対応策を指南する。

たとえばGitHubと連携すれば、ユーザーはほんの数分でyamoryを使い始めることが可能。「自社システムでどのようなオープンソースが使われているか、それはどのバージョンか、そこにはどのような脆弱性が潜在的に隠れているのか」といった形で自社の利用状況を整理するとともに、最新の脆弱性情報のデータベースと照合して脆弱性を見える化する。

その結果など複数の情報を基に「対応優先度」まで自動的に導き出してくれる(オートトリアージ機能)のがyamoryの大きな特徴だ。

「1プロダクトあたり何百という単位のオープンソースを利用していることも稀ではなく、それぞれに大小5〜10、それ以上の数の脆弱性があることも珍しくはない。結果的にあまり対策をしていないと数千単位の脆弱性がいきなり出てくることもある。そうなると、そもそも何から手をつけていいかわからない」(ビズリーチ取締役CTO兼CPOの竹内真氏)

yamoryでは脆弱性としての危なさだけでなく「実際にどれほど攻撃が行われようとしているのか、それによる被害がどれほどなのか」といったやサイバー攻撃の危険度なども加味した上で、優先的に対応すべきポイントを分類。開発チームごとに対応優先度と対策を通知するほか、ダッシュボード上で脆弱性対応の進捗を管理できる仕組みを整備することで、現場の負担を減らす。

yamoryの核であり、対応優先度や対応策の決定にも影響を与える脆弱性に関するデータベースは、オープンソースの脆弱性情報や攻撃用コードを収集して構築したものとのこと。

具体的にはセキュリティ関連のメディアやブログ記事などインターネット上に散らばる様々な情報をクローリングし、自然言語処理を施して「危険性を自動で検知する」機能を開発。それを自社で使っているオープンソースのデータと突合することで、リアルタイムに近いスピード感で現場に通知していくという。

ここにはビズリーチが運営する求人検索エンジン「スタンバイ」で世の中の求人をクローリングするために使っていた技術も活用されているそうだ。

「脆弱性に関する情報や、どのような攻撃手法で穴があくといった情報はハッカーや開発者によってインターネット上で明示されたり、共有されているものも多い。それらの情報をきちんと監視し続けることができれば、想定される被害が大きく、実際に攻撃される危険性も高いものをリアルタイムに近い速度で見つけられるのではないか。そうすれば人力の煩わしさから逃れられるのではないか、そんな現場の仮説をベースに始まったプロジェクトだ」(竹内氏)

対策の工数を大幅削減、1人の担当者を配置するような効果を

yamoryはこれからプロダクトマーケットフィットを図っていくことになるが、今のところ大きく2つの顧客層を想定している。

1つ目は比較的規模の小さい、専任のセキュリティ担当者がいないようなIT企業。そういった企業ではエンジニアが事業開発と並行してセキュリティ面の業務を担うため、抱えているタスクが膨れ上がっているケースが多い。

そこをyamoryで自動化することで「セキュリティ対策の工数を大幅に削減するだけでなく、高度な専門知識がなくても脆弱性を管理できるようにする。1人のセキュリティ担当者を配置するくらいの威力を、(実際に担当者を雇うより)圧倒的に安いコストで実現したい」(竹内氏)という。

2つ目はビズリーチのように複数のIT事業を展開する企業。全社横断のセキュリティチームは存在していても、プロジェクトごとにそれぞれ異なるオープンソースを使っていて、その利用状況や脆弱性の対応状況が正確に管理されていない企業もあるだろう。そのような企業にとっては、リアルタイムに近い形で情報を一元化できる「脆弱性マネジメントツール」としても効果的だ。

もともとyamoryの構想はビズリーチの社員ナンバー8番でもある、古参のエンジニアメンバーからボトムアップで生まれたものなのだそう。実際に複数の社内事業に携わってきた中で、自らも経験したオープンソースの脆弱性管理に関する課題を解決するためのプロジェクトとして事業化に至ったという。

これまでビズリーチと言えば、中途・新卒・アルバイトなど各種求人プラットフォームや 「HRMOS」ブランドのクラウドサービスのように人材関連のプロダクトを手がける会社のイメージが強かった。ただ竹内氏いわく「創業時の中心メンバーがもともとHRに深く携わっていたわけでもなく、最初のスタートが人材領域だっただけ」であり、決して領域を限定するつもりはないそうだ。

実際に近年はM&Aプラットフォームの「ビズリーチ・サクシード」など人材関連以外の事業にも着手しているし、遡ればタイムセールサイトの「LUXA(ルクサ)」も元々はビズリーチの一事業としてスタートしたものだったりする(ルクサは2010年に分社化された後、2015年にKDDIにより子会社化され現在は同グループ企業が運営)。

創業後に人事や法人営業のバックグラウンドを持つメンバーが増えたこともあり、社内のアセットを活かすためにも人材領域に力を入れてきたが、今後は別の領域でも新たな事業を立ち上げていく計画なのだそう。セキュリティはその中でも有力なドメインの1つであり、yamoryに限らず複数のプロダクトを手がける可能性もあるという。

「HR市場においては種植えの作業がある程度終わったような状況。もちろんそれらを大きくする取り組みは必要だが、ここからは自分たちのアセットを活かせる新しい市場でのチャレンジも見据えている。yamoryも1年以上前から徐々に種植えを始めていたものであり、サクシードなども含めてHR以外の市場・産業に軸足をおいたプロジェクトも進めてきた。会社としては今回のように社員が起案したものも積極的に取り入れながら、新規事業を創出し続けていきたい」(竹内氏)

資金に加えて採用も支援——ビズリーチがファンド開始、投資第1号は電話営業解析AIのRevComm

転職サイト「ビズリーチ」をはじめとした人材サービスを展開するビズリーチは10月11日、創業期のスタートアップを資金面・採用面から支援する「ビズリーチ 創業者ファンド(以下、創業者ファンド)」の立ち上げを発表した。この“ファンド”は投資組合として設立されたものではなく、同社の事業として企業へ直接投資する形。また投資第1号案件として、セールステック領域でAIを活用したサービスを提供するRevComm(レブコム)へ出資したことも明らかになった。

創業期の原体験をスタートアップコミュニティに還元

2017年版の中小企業白書によれば、起業家が創業初期・成長初期の課題として第1に挙げるのは、資金調達に関するもの。また、人材採用に関する課題も大きくのしかかっているという。

ビズリーチは、2009年の創業以来、転職サイトをはじめとしたサービスでスタートアップを含む企業の採用活動をサポートしてきた一方、自らもスタートアップとして人材採用に苦心した経験を持つ。これらの経験を創業期・成長初期のスタートアップ支援に生かすべく、資金と採用の両面をサポートするために立ち上げられたのが創業者ファンドだ。

ビズリーチ代表取締役社長の南壮一郎氏は「創業10年目の節目に、これまでを振り返る機会も多いのだが、正直、一番苦しかったことといえば、最初はひとりぼっちのところから、経営チームを組成するところだった。勉強会に参加したり、知り合いのつてをたどったりして、何とか人を探すところから始まった」と語る。

その後、創業期の原体験を元に何かスタートアップコミュニティに還元できないか、と考えるようになった南氏。海外で、投資家も含めたさまざまな人に会う機会が増えて感じたのは「シリコンバレーのVCの投資実績は、金銭だけでなく、補完的価値をどれだけ提供できて、出資先とどう向き合うかで見られている」ということだった。

「彼らはファンドの中に、創業期の経営者チーム組成のための採用支援を行う、プロのリクルーターを従業員として在籍させている。自分が創業当時なら受けたかった支援だ」(南氏)

こうした金銭面だけでない、事業への貢献・支援が世界中、特に米国のVCで広がっている、と南氏は言う。だが日本では、スタートアップと向き合い、事業にも踏み込んだ積極的なサポートはまだまだ浸透していない。そこで「自らの本業を、スタートアップ支援に生かせるのでは」と考え始めたのが、2017年秋のことだった。

「自分の創業期と違い、ビズリーチやキャリトレといった、企業からの声かけを待っている人材が何十万人も登録しているプラットフォームが、今はある。それに創業者としての考え方や、人材の採用テクニックも知っている。プラットフォームと採用活動のノウハウとを、資金と合わせて“投資”することができるのではないかと考え、1年ぐらい前から構想していた」(南氏)

そして構想だけではなく何らかの形で実現したい、そのためにプロトタイプとなるケースで実験できないか、と思っていた南氏に、ちょうど起業についての相談を持ちかけたのが、学生時代からの知り合いで、投資第1号案件となるRevCommを創業したばかりの會田武史氏だったそうだ。

會田氏の相談を受けて、南氏はまず「テクノロジードリブンのプロダクトを出そうとしているのに、エンジニアがいない。このままでは事業が立ち上がらないのではないか」と感じたという。そこで採用ノウハウと自社サービスを資金とともに提供する、というファンドの構想を會田氏に伝え、「モデルケースとしてサポートしていいなら、出資も含めて支援する」と申し入れた。

それからは「資金+付加価値を提供する、新しい日本のモデルケースとなる投資事業を一緒につくってきた」(南氏)というビズリーチとRevComm。ビズリーチの支援もあって、RevCommは3人のエンジニアを創業チームとして採用することに成功。2月には、プロダクト「MiiTel(ミーテル)」のプロトタイプを、6月にはクローズドベータ版をリリースした。

電話営業の可視化で生産性を向上させるMiiTel

RevCommは2017年7月、企業の生産性向上をフィロソフィーに掲げ、會田氏により設立された。會田氏は三菱商事の出身。商社マンとしていろいろな国の人と仕事をする中で、「日本の生産性はG7各国のうち最下位とされているが、果たしてこれは本当なのか」と疑問を持つに至る。「日本人のレベルは低くない。生産性=効率×能率としたら、日本人は教育水準も高く、能率は担保されているはず。では効率はどうか、と考えたときに、高いコミュニケーションコストに行き当たる」(會田氏)

「日本では『何を言ったか』ではなく『誰が誰に言ったか』『どう言ったか』に焦点が当たるようなコミュニケーションが多い。テクノロジーの力でコミュニケーションのあり方を変えたい」というのが會田氏の考えだ。

セールスやマーケティング畑が長い會田氏は、「マーケティングの世界は、かなりデータドリブンになってきているが、セールスはいまだに属人的。現状では気合いと根性で、とにかく数打ちゃ当たるという労働集約的な世界だからこそ、テクノロジーの力で生産性は大きく向上できる」と話す。

特に電話営業の分野では、営業と顧客が会話した内容が他の人には可視化されず、それが効率よく成果につながるものかどうかを知るすべがなく「ブラックボックス化」しやすい。そこで、AIによる音声解析を用いて電話営業を可視化しよう、と開発されたのが、AI搭載型クラウドIP電話サービスのMiiTelだ。

MiiTelはSalesforceと連携したIP電話で、営業トークの内容を録音し、ログを取得。AIでトークの音声を分析し、担当者自らが課題を確認してセルフコーチングできる。

會田氏も、自社プロダクトを営業する際にMiiTelを使ってみたところ、「話す・聞くの割合では、話す時間が長く、相手の話の途中で話をかぶせてしまう“発話かぶり”も多かった」とのこと。クセが可視化されたことで、意識して改善したところ、アポイント成立率や成約率が実際に向上したそうだ。「これなら、営業担当者自身のエンゲージメントも上がり、生産性が向上すると実感した」と會田氏は話している。

2月のプロトタイプからビズリーチでもテストを兼ねて活用されていたMiiTelは、6月リリースのクローズドベータ版がすでに有料で30社に利用されており、本日、正式版がリリースとなる。利用料金は月額4980円/ID。10 ID以下の場合は導入費用が8万9000円、11 ID以上では導入費は無料だ。

「5年後には、MiiTelの1万社への導入を目指す」という會田氏は、「生産性を向上するサービスを提供することで、(経営分析に必要な)ビッグデータを集め、将来的には経営判断を行うAIプラットフォームを開発したい」と話している。

資金+側面の支援で「アイデア」を「事業立ち上げ」へつなぐ

創業者ファンドでは「経営チーム組成のための採用ノウハウ・テクニックの提供」「転職サイトのビズリーチ、キャリトレのサービス1年間無償提供」「資金援助+調達ノウハウ、投資家ネットワークの紹介」「経営チームによるメンタリング」「プロダクトのプロトタイプのテスト利用とフィードバック」を出資先企業への支援内容としている。

対象企業は、企業の生産性向上をテクノロジーで促すSaaS型のB2B事業や、AI、ブロックチェーンなどの最新技術を活用した事業を営むスタートアップ。南氏は「ビズリーチの『働き方、経営の未来を支える』という理念に沿った事業を行うシード期の企業を対象とする。資金の他に採用ノウハウ・テクニックや自社サービスを“投資”することで、創業期の経営チーム組成を支援していく」と述べる。

會田氏は創業者ファンドについて、こう語る。「創業期は金も時間も足りない中で、マインドセットやスキルセットが合致したメンバー選びが重要になる。だが、ふつうに採用サービスを利用するとお金がかかる。ビズリーチのダイレクトリクルーティング機能を使い、『カジュアルでいいので会ってみませんか』と声をかけられたのは、非常に良かった」

南氏によれば、會田氏は「ビズリーチの登録データを何人も見て、数百人という相手に会っている」という。「創業前の企業でも興味を持つ人が、これだけいるのかと驚いた。スタートアップがキャリア選択の可能性のひとつになった。起業家もパッションさえあれば、データベースがあって、そこを探せば人材が見つかる、という状況になっている」(南氏)

南氏は「アイデアだけはある、というのが創業者でよくあるパターン。事業立ち上げまで支援できれば、それが自分が恩恵を受けてきた、スタートアップコミュニティへの恩返しになるのではないか」と考えている。

「スタートアップはやっぱり人。創業期は特にそうだ。自分の創業した時には人材のデータベースがなかったが、データベースからスタートアップ採用人材の情報が集められるというのは、衝撃的。これは起業家の諸先輩方を含め、みんなでつくってきたエコシステムだ。採用候補者が話を聞いてくれる、努力すれば見つかる、というところまでは来ている。創業者ファンドの支援によって、事業立ち上げの確度も上げていきたい」(南氏)

写真左から:ビズリーチ代表取締役社長 南壮一郎氏、RevComm代表取締役 會田武史氏

ビズリーチの新サービス、M&Aで企業の後継者問題を解決する「ビズリーチ・サクシード」をローンチ

プロフェッショナル人材向けの転職サービス「ビズリーチ」を手がけるビズリーチは本日、事業承継の課題の解決を目指す新サービス「ビズリーチ・サクシード」のリリースを発表した。

人口の高齢化に伴い、中小企業経営者の高齢化も進んでいる。経済産業省と帝国データバンクの調査によると、2025年には約245万人の経営者が70歳以上となり、約127万社に後継者がいないという。2016年には休廃業・解散件数は約3万件だ。休廃業する企業のおよそ半数は黒字事業であり、後継者がいれば事業を継続できた会社も少なくない。

ビズリーチはこれまでに累計7200社以上の企業の採用支援を行い、全国44箇所の自治体との連携や委託事業の中で、地方企業の採用支援事業などに携わって来た。「採用支援を進める中で、必ず中小企業の後継者問題に直面してきた」とビズリーチ代表取締役社長を務める南壮一郎氏は話す。

事業承継の選択肢としては、親族や従業員への承継の他、外部人材の採用、他企業への事業承継(事業承継M&A)がある。ビズリーチではこれまで経営人材・後継者の採用支援という面で、企業の事業承継を支援してきたが、今回リリースする「ビズリーチ・サクシード」では「事業承継M&A」により、中小企業の経営の選択肢を増やせるようにしたい考えだ。

「ビズリーチ・サクシード」は、事業承継を検討している企業と譲り受け企業をマッチングする。譲渡企業は審査を経て、会社概要や財務状況などを匿名で「ビズリーチ・サクシード」を登録する。譲り受け企業は掲載情報を閲覧し、連絡を取ることができる。

譲渡企業は「ビズリーチ・サクシード」の利用は無料だ。譲り受け企業は、サービスを介して譲り受けが成約した場合にのみ、案件紹介料として譲り受け金額の1.5%を支払う。

ビズリーチは「ビズリーチ・サクシード」の正式リリースに伴い、三井住友銀行や中小企業支援を手がける全国20地域の中小企業支援センターと連携する。三井住友銀行や中小企業支援センターは企業から事業承継の相談を受けた場合、企業の要望に応じてビズリーチ・サクシードへの案件登録を代行するという。

これまでビズリーチは採用の領域で、求職者と採用企業を直接つなぐダイレクト・リクルーティングを推進してきた。ビズリーチで培った知見を活かし、「ビズリーチ・サクシード」を事業承継M&Aのプラットフォームとして確立していきたいと南氏は説明する。

「ビズリーチ・サクシード」は2017年9月からテスト版サイトの運営を開始し、この2か月ですでに500件以上の事業承継M&A案件、50社の譲り受け企業の登録があったという。

マネーボール理論を企業でも、ビズリーチが採用管理システム「HRMOS」公開

映画「マネーボール」といえば、貧乏球団のアスレチックスを強豪チームに変えた実在のGM(ジェネラルマネージャ)、ビリー・ビーンの活躍を描いた物語である。

ブラッド・ピット演じる主人公のビリーは、野球のデータを統計学的に分析して、選手の評価や戦略を決める「セイバーメトリクス」という手法を採用。これによって、資金不足にあえぐ弱小チームを、ア・リーグ記録の20連勝を遂げるまでに育てあげた。

このセイバーメトリクスを企業人事で実践しようとしているのが、転職サイトを手がけるビズリーチだ。

ビズリーチが発表した戦略人事クラウド構想

ビズリーチが発表した戦略人事クラウド構想

人事業務のムダをなくす

人材の採用から育成、評価までをクラウド上で最適化する構想「HRMOS(ハーモス)」を6月14日に発表。第一弾として、求人媒体ごとの採用状況を一元管理するサービス「HRMOS 採用管理」をスタートした。

例えばリクナビやマイナビといった求人媒体からCSVファイルを取り込むと、ダッシュボード上で応募者のステータスを一覧表示する。ビズリーチの転職サイト経由の応募者情報は自動的に、人材紹介エージェントや社員紹介による応募者情報は手動で入力すれば、ダッシュボード上で一元管理できる。

設定済みの面接や要対応メールの有無などのタスクをダッシュボードでわかりやすく表示する

ダッシュボード上では、「書類選考」「最終面接」「内定」といった応募者のステータスがわかり、人事担当者はやるべきタスクがひと目でわかる。応募者とのメールのやり取りもHRMOS上で完結する。

応募者の情報や面接の進捗状況をExcelで管理して、そこからメールアドレスをコピペして連絡する……といった人事業務にありがちな面倒な事務手続きから開放されそうだ。

02

応募者ごとの選考ステータス

応募経路別の採用単価をグラフ化する機能もある。求人媒体や人材エージェント、社員紹介によるリファラル採用などで、一人あたりの採用にかかるコストを比較することで、もっとも効率のよい採用方法に注力できる。

04

応募経路別の選考状況

面接官が応募者に出した評価もグラフ化する。面接官の山田さんは内定者に「A評価」を出す傾向があるが、面接官の鈴木さんは内定者に「C評価」を出す傾向があるので、「山田さんの判断を重視すべき」といった意思決定を支援してくれそうだ。

05

面接官別の選考評価レポート

企業経営でマネーボールの理論は実践できるか

採用管理サービスに続き、第二弾として「HRMOS 勤怠管理」を今秋、第三弾として「HRMOS 業績管理」を来春にリリースする。これらのモジュールが連動しながら、自社で活躍する人材の行動や成果を人工知能が学習し、戦略的な人材活用の意思決定を支援するという。

ビズリーチの南壮一郎社長は「人事関連のデータを活用した企業経営が実現できる」と意気込む。

「◯◯さんは現在、どれだけ会社に貢献していて、採用時はこんなパラメータだった、ということがわかるようになる。自社で活躍する社員のデータと照らし合わせることで、高い実績を残すハイパフォーマーの採用や育成にもつながる。」

とはいえ、企業の業績は市場環境や競合などの外部要因で左右するもの。南氏も「経営は野球ほどシンプルな指標で分析できない」と認めるが、人事領域では「採用したら終わり」で完結しているのが問題点だと指摘する。

「営業やマーケティングでは効果検証を行うにもかかわらず、なぜか人事領域は例外。採用した人材が3〜5年後にどんな成果を出したかを数値化し、次回の採用の改善に役立てている企業は少ない。」

プレイヤーが乱立するATS業界

HRMOSをリリースするにあたっては、セールスフォース・ドットコムと業務提携し、機能面での連携を視野に入れている。今年3月に実施した総額37億3000万円(37.3億円で「みなみ」ということらしい)の資金調達では、Salesforce Venturesからも投資を受けている。

スタート時は特別価格として月額5万円で提供。すでに試験提供を開始していて、スタートアップ業界ではRettyやSansan、ラクスルなどが導入済み。2019年6月までに、ビズリーチの利用企業を中心に2000社以上の導入を目指すという。

biz01

ビズリーチの南壮一郎社長

クラウド型採用管理システムは、ATS(アプリカント・トラッキング・システム)と言われ、米国では大企業向けのOracle「Taleo」やSAP「SuccessFactors」が先行、スタートアップではairbnbやsnapchatが導入することでも知られる「greenhouse」がある。

国内でもTaleoやSuccessFactorsが先行するが、古株では2005年に開始した「リクログ」、2008年に開始した「ジョブスイート」、直近3年では「jinjer」や「talentio」、シンガポールに本拠を置く「ACCUUM」も日本市場に進出するなど、新興サービスの参入も相次ぐ。

ちなみにマネーボールの舞台となったアメリカでは、人事にもビッグデータを活用するのは当たり前という風潮になってきている。このあたりの話は過去記事「経験や直感による採用はもう古い、人材採用に広がるデータ・ドリブンなアプローチ」に詳しいので、興味のある方は読んでほしい。

ビズリーチが求人検索エンジン「スタンバイ」公開、企業は無料で求人掲載

bizreach02

bizreach02

年収1000万円クラスの人材と企業をマッチングする会員制転職サイトを運営するビズリーチが26日、ネット上の求人情報を横断検索できる「スタンバイ」を正式リリースした。業種、業態、雇用形態を問わず、全国の求人サイトに掲載されている約300万件が検索対象。検索結果ページからは掲載元ページに誘導する。PCやスマートフォン、タブレット、iOSAndroidアプリから利用できる。

求職者は職種や会社名などのキーワード、勤務地を入力すれば、著名な求人サイトが掲載する正社員からアルバイトまで求人情報を一括で探せる。給与や雇用形態、最寄駅でも絞り込める。例えば、キーワードに「AOLオンライン・ジャパン」、勤務地に「東京都」と入力すると、いくつかのサイトで募集中の求人が出てくる。検索結果をクリックすると各サイトに飛ぶ仕組みで、求人情報に特化したGoogle検索のようなイメージだ。

企業や店舗は、無料でスタンバイに直接求人を申し込むことも可能。専用の管理画面に求人情報を入力するだけで、PCとスマホに最適化した求人ページを作成、スタンバイ上に公開できる。特徴的なのは、求人情報の作成から採用希望者の管理までが無料なことだ。求人ページがクリックされるたびに料金を払う必要もなければ、採用決定時の手数料もない。

AOLオンライン・ジャパンで検索すると、いくつかの求人サイトに掲載されているページがヒットする

AOLオンライン・ジャパンで検索すると、いくつかの求人サイトに掲載されているページがヒットする

リクルート傘下のindeedと何が違う?

求人市場に詳しい読者であれば、リクルートが2012年9月に買収したindeedに似ていると思ったかもしれない(実際に検索結果ページはよく似ている)。

indeedでAOLオンライン・ジャパンと検索した画面

indeedでAOLオンライン・ジャパンと検索した画面

indeedは無料で求人ページを掲載できるが、クリックされるたびに料金が発生するクリック課金型の料金体系を採用している。さらに、掲載自体が有料の「スポンサー求人」を利用すれば、検索画面の目立つ位置にハイライト表示できる。これらの点が「完全無料」をうたうスタンバイとは異なる。

スタンバイの収益源は、検索結果ページに表示されるヤフーの「スポンサードサーチ」による売上のみ。ビズリーチの南壮一郎社長は「黒字化は5年目を見込み、それまでは投資フェイズ」と意を決している。同社はハイクラス層を対象とした「ビズリーチ」、20〜30代の若手をターゲットにした「キャリアトレック」という転職サービスを手がけるが、「既存事業で稼いだ収益をスタンバイに再投資する。シナジーも一切考えていない」という。

「求人メディアのあり方をディスラプトしたい」

2015年版中小企業白書によれば、人材採用に悩んでいる企業の56%は「コストに見合う効果が期待できない」と回答。特に地方の中小企業の採用課題は深刻だと、南氏は指摘する。

「採用コストがないからハローワークを使うが、母集団が少なくて良い人材が獲得できない。この無限ループに陥っている。全国の求人情報が探せるスタンバイが無料で採用できるようにすることで、この流れが変わる。求人メディアのあり方をディスラプトしたい。」

完全無料かどうかの違いはあれど、競合はindeedだろう。55カ国以上、28言語で展開、世界で1億5000万人以上の月間アクティブユーザーを抱えるindeedだが、日本での存在感はまだまだ。スタンバイも将来的にはクリック課金を導入するかもしれないが、無料モデルを武器に2016年5月末までに求人掲載社数5万社、登録求人掲載数20万件を目標に掲げている。

ビズリーチ南壮一郎社長は、求人メディアのあり方をディスラプトしたいと語る

ビズリーチ南壮一郎社長は、求人メディアのあり方をディスラプトしたいと語る

レジャー予約サイト「アソビュー」と提携、地方事業者の採用支援

26日にはレジャーの予約サイト「asoview!」を運営するアソビューと業務提携契約を締結。asoview!を利用する全国のレジャー事業者に対して、無料の採用サービスを提供することも発表している。

アソビューは2700店舗の事業者と提携し、ラフティングや陶芸体験といった約300ジャンル、約6000プランのレジャーを掲載。今年4月にはJTB、YJキャピタル、グロービス・キャピタル・パートナーズ、ジャフコを引受先とする総額約6億円の第三者割当増資を実施している。