約100社のリファラル採用支援で培った知見を活用、リフカムがアナログなサポートを加えた新サービス

社員の人脈を良質な人材の採用に活用する、リファラル採用。特にアメリカでは積極的に取り入れられてきたと言われている手法だが、近年は日本でも少しずつ広がり始めている。

こ関連ツールもいくつかでてきていて、TechCrunch Japanでも何度か紹介したクラウドサービス「Refcome(リフカム)」もまさにそのひとつ。提供元のリフカムは2016年7月から同サービスを通じて、これまでに約100社のリファラル採用を支援してきた。

そのリフカムが2月15日より新たなサービスを始める。リファラル採用の制度設計から施策案の作成、運用代行までを一貫してサポートする「Referral Success Partner」だ。

リファラル採用は思っているより難しい

Referral Success Partnerをシンプルに表現すれば、「リファラル採用に関するアナログなコンサルティングサービス」となるだろうか。

これまでRefcome、Refcome Engage(2017年4月にリリースした社員のエンゲージメント測定ツール)とクラウド上で完結するサービスを提供してきたリフカム。同社がこのタイミングであえてアナログな事業を始めるのは、約1年半に渡ってこの領域に取り組む中で見えてきた気づきがあるという。

「『リファラル採用は思っているよりも難しく、一筋縄ではいかない』というのがこれまで事業をやってきて感じていること。リファラル採用の立ち上げにおいては、システムによって効率化するだけでなく、どのように社員を巻き込んでいくのか、どのような施策を実施していくのかといったアナログなサポートこそが成功に大きく関わることがわかってきた」(リフカム代表取締役の清水巧氏)

清水氏によると、プロダクトの観点ではリファラル採用は「エンゲージメント」「採用広報」「タレントプール」「リファラル」という4つの工程にわかれる。そして成果を出すためには最終工程のリファラルの部分だけでなく、すべての段階が上手く機能している必要があるという。

エンゲージメントについては以前紹介したとおり、リファラル採用に協力的な店舗の社員はエンゲージメントが高いという結果もでているそう。この工程については上述したRefcome Engageで見える化している。

一方でリファラル採用を加速させるストーリーの掘り起こしや社内外への発信(採用広報)、対象となる候補者のリスト作り(タレントプール)についてはこれまで十分に対応できていなかったという。

「(リソースの問題もあったが)もう少し早い段階から顧客の内部に入って密にサポートできていればと思う部分もある。これまでもリファラル採用やリフカムに興味をもってもらったものの、制度設計を自社でやるリソースやノウハウがないという理由で受注に繋がらなかったケースもあった」(清水氏)

100社のサポートを通じて培ったノウハウやデータをフル活用

今回スタートするReferral Success Partnerは、これまでリフカムが蓄積してきたデータやナレッジを活用して、リファラル採用の立ち上げから運用が自力で回るまでの3ヶ月をサポートするサービスだ。

清水氏の話では、これまでRefcomを通じてリファラル採用で成功した会社には共通点があり、いくつかのパターンに分類できるそう。専属スタッフが立ち上げの段階から顧客に伴走することで、「どのパターンにはまりそうか、どのような施策が最適か」を社内のキーマンを巻き込みながら一緒に考えていく。これがReferral Success Partnerの特徴だという。

長期的には採用広報やタレントプールの工程に関するサービスを独立で提供することも視野に入れている。直近ではRefcomのアプリ版もリリースする予定だ。

リフカムでは「蓄積したデータ、ノウハウの活用」「専属スタッフのサポート」「クラウドツールを活用した工数削減」という3つのアプローチで、企業のリファラル採用の活性化を目指す。

なおリフカムは2017年11月に伊藤忠テクノロジーベンチャーズやDraperNexusなど複数VCから約2億円を調達している。

アンケートで従業員のエンゲージメントを可視化し、リファラル採用を加速する「Refcome Engage」ベータ版

refcomeengage_lp

最近スタートアップの採用施策において「リファラル採用(紹介採用)」の話題になることが増えてきた。だがこのリファラル採用、企業の人事担当者からは「従業員の協力が得られない、従業員が人材を紹介してくれない」といった悩みをの声が上がることも少なくない。

そこに着目したのがリファラル採用支援サービス「Refcome(リフカム)」を手がけるCombinatorだ。同社は2月15日、従業員エンゲージメント(社員満足度)を可視化するサービス「Refcome Engage(リフカムエンゲージ)」のベータ版をリリースした。またリリースと同時に事前登録も開始している。サービスの利用は無料だ。

リファラル採用に協力的な従業員を可視化

Refcome Engageは従業員にアンケートを配信し、従業員エンゲージメントを可視化するサービス。使い方は非常にシンプル。従業員情報をCSVファイルで追加した後、あらかじめ用意された「eNPS(employee Net Promoter Score:従業員向けの顧客ロイヤルティ指標)」に基づいて作成したアンケートを配信するだけ。その回答によって、従業員が批判者、中立者、推奨者の3つに分類。従業員エンゲージメントを可視化する。

16763440_1253205311439987_1311185395_o

アンケートの配信は全社はもちろんのこと、部署ごとに絞り込みを行うことも可能。この結果をもとにすることで、批判者の多い部署にリファラル採用の協力依頼をすることなく、推奨者の多い部署からリファラル採用を始めることができる。

リファラル採用、成功のカギは従業員のエンゲージメント

TechCrunchが以前行った取材でCombinator代表取締役の清水巧氏は「社員満足度や組織課題を可視化できるようなプロダクトにしていく」と今後の展望を語っていた。Refcome Engageはその思いを形にしたプロダクトだ。

「Refcomeを半年間運用していく中で、リファラル採用が上手くいく企業と上手くいかない企業がハッキリと分かれてきました。うまくいく企業には何があるのか? そこで重要だったのは『エンゲージメントの高い従業員がどれだけいるか』ということでした」(清水氏)

例えば、非協力的な従業員が多くいる状況にもかかわらず、全社に向けて「リファラル採用の協力をお願いします」と言ってしまっては施策自体がしらけてしまう。極端に言えばかえって会社を嫌いになる人も出てきてしまうだろう。その一方で、協力的な従業員が多い会社であれば、自然と採用に関する話が盛り上がる。であれば、リファラル採用に取り組む前にきちんと自社の環境を分析する方がいいのではないか。そう思って社員のエンゲージメントを把握できるサービスの提供を決めた。

「Refcome Engageはリファラル採用の施策策定をサポートするサービスではありますが、それだけではありません。エンゲージメントを可視化することで退職リスクの高い従業員も浮き彫りになってくるので、事前に対策が打てるようになります」(Combinator取締役 カスタマーサクセス部の石川優氏)

アンケートの回答内容はRefcome Engage内に蓄積されていくため、会社に対する不満の変化も知ることができ、それをもとに面談などが行える。

早期の100社無料登録を目指す

「いきなりRefcomeを使ってもらうのではなく、まずはRefcome Engageを使って社内の環境を分析する。それでリファラル採用が上手くいくかどうかを知ってもらい、その次のステップとしてRefcomeを使ってもらえればと思っています」(清水氏)

まずは100社の無料登録、そして半年後の正式公開を目指すという。一方、従来提供してきたRefcomeに関しては現在、無料ユーザーの募集をいったん停止。有料ユーザーの獲得を狙うことで、MRR(月間経常収益)の向上を目指すとしている。

(左から)取締役 カスタマーサクセス部 石川優氏、代表取締役 清水巧氏

Combinator取締役 カスタマーサクセス部の石川優氏(左)、代表取締役の清水巧氏(右)

リファラル採用ツール「Refcome」のCombinatorがBEENEXTなどから5000万円の資金調達、開発・サポートを強化

左からBEENEXTの前田ヒロ氏、Combinator代表取締役の清水巧氏、Draper Nexus Venture Partnersの倉林陽氏、ANRIの佐俣アンリ氏

左からBEENEXTの前田ヒロ氏、Combinator代表取締役の清水巧氏、Draper Nexus Venture Partnersの倉林陽氏、ANRIの佐俣アンリ氏

リファラル採用(紹介採用)支援サービス「Refcome(リフカム)」を手がけるCombinatorは10月6日、BEENEXT、ANRI、Draper Nexus Venture Partnersを引受先とした総額5000万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

7月にリリースしたRefcomeは、効果的なリファラル採用を行うための施策設計のサポート(コンサルティング)に加えて、人事担当者、社員、社員の友人(採用対象)の3者に向けた機能を提供する。

社員への人材紹介依頼機能や、協力した社員の管理機能、そして友人の招待を促すメッセージの作成機能を提供することで、人事、社員の双方に余計な手間がかからないリファラル採用が実現する。利用料は導入企業の社員数やコンサルティング内容によって異なるが月額7万〜10万円程度。正式公開から3ヶ月で、すでに約30社9000人に利用されているという。

screenshot_667同社は今回調達した資金をもとに、開発および営業・サポート体制を強化。リファラル採用の支援だけでなく、より良い組織創りのヒントが得られるプロダクトの開発を目指すとともに、サポート体制を整えることで、企業ごとに最適化したリファラル採用の施策を支援できるようにするとしている。

「Incubate Camp」での優勝が資金調達の契機に

Refcomeの正式公開から3カ月で資金調達を実施したCombinator。その経緯には7月15日、16日に開催されたスタートアップとベンチャーキャピタリストの合宿「Incubate Camp」が大きく関わっている。

「BEENEXTからの投資はIncubate Campが開催される前に決まっていたのですが、ANRI、Draper Nexus Venture Partnersからの投資はIncubate Campでの結果があったからこそ、決まったのではないかなと思っています」(Combinator代表取締役の清水巧氏)

Incubate Campはシードラウンドの資金調達およびサービスリリース済みで、さらなる事業成長を目指して資金調達を希望するスタートアップとVCが一堂に会し、2日間で事業アイデアを磨きあげる合宿イベント。今回参加した17社のスタートアップの中で、Combinatorは最も高い評価を獲得。その結果も相まって、3社のVCから資金を調達することができたという。

3人の投資家と一緒に戦おうと思ったワケ

もちろん、Incubate Campに参加していたVCは数多くいる。様々な選択肢が用意されている中、なぜCombinator代表取締役の清水巧氏はBEENEXT、ANRI、Draper Nexus Venture Partnersの3社から投資を受けることにしたのだろうか?

「BEENEXTは前田ヒロさんがいたからです。前田ヒロさんには、スタートアップに特化した仲間集めプラットフォーム「Combinator」を立ち上げた頃から事業の相談に乗ってもらってたんです。その経験もあって、今回資金調達の相談をしに行ったら、その場で快諾していただけて。前田ヒロさんは起業家と一緒になって事業をつくっていくことに強みを持っている方だと思っているので、僕自身、一緒にRefcomeをつくっていきたいと思っていました」(清水氏)

清水氏自身、Refcomeはプロダクトマーケットフィットの少し前の段階と話しており、”事業・組織づくり”の観点から前田ヒロ氏が所属するBEENEXTを選択した。ANRI、Draper Nexus Venture Partnersを選んだ理由もそれぞれある。

「Draper Nexus Venture PartnersはIncubate Campでメンタリングを担当してくれたこともあるのですが、パートナーの倉林陽さんがSaaSの領域に強く、BtoBサービスのグロースの方法に精通していた方だったので、その方法を教えてもらいたいと思いました。ANRIの佐俣アンリさんはCombinatorの創業時から相談に乗ってもらっていて、僕のことをすごく理解してくれ方だと思っていました。また、すごくビジョナリーで大変なときも背中を押してくれるので一緒に戦っていきたいと思いました」(清水氏)

組織課題も解決できるようなサービスに

実際、3カ月間サービスを走らせることで見えたこともある。それはリファラル採用のハードルを下げられたこと。リファラル採用の導入・運用の簡略化させることで、「リファラル採用って何から始めて良いかわからない」という人事担当者の悩みに答えることはできた。

しかし、一方で「ツールを導入すればリファラル採用が上手くいく」と思っている企業も一定数出てきたという。その原因は、リファラル採用を運用していくための仕組みづくりができていないことにあるので、今後、清水氏はRefcomeを社員満足度や組織課題を可視化できるようにし、より良い組織づくりのヒントが得られるプロダクトにしていくそうだ。

また、企業によって最適なリファラル採用の手法が異なることもわかったため、カスタマーサポートの採用を強化。導入企業のサポート体制を整えることで、企業ごとに最適化したリファラル施策を支援できる基盤を整えていく。

「3カ月間サービスを運用していく中で、リファラル採用の導入ハードルを下げることはできたかなと思っています。ただし導入後、リファラル採用が定着していない企業も多くある。もちろん、リファラル採用の導入・運用の簡略化も継続して行っていきますが、リファラル採用をきちんと運用できるよう、組織づくりもサポートできるサービスにしていきたいと思っています」(清水氏)。Combinatorでは2016年中の導入企業100社を目指す。