インターステラの民間宇宙ロケット「モモ5号機」が宇宙到達前にエンジン停止

多くの民間打上げ会社が、宇宙へ行くコストの削減を求めて新たな宇宙船の開発を続けている。宇宙を目指す最新の事例がInterstellar Technologies(インターステラテクノロジズ、IST)。2003年に設立された日本の民間ロケット開発会社だ。同社は2017年に初めてロケットを打上げたが、宇宙に計画通り到達することはできなかった。そして2019年、同社の観測ロケット MOMO-3はカーマン・ライン(高度100 km)をわずかに超えたが、本日打上げられた観測ロケット MOMO-5(モモ5号機)は、残念ながら計画通り宇宙に届くことなく、大気圏を脱出する前の最大動圧点、Max-Qに到達する前後に何らかの誤動作と制御不能に陥ったとみられている。

MOMO-5は日本時間14日午前5時15分に打上げられ、無事発進したように見えた。この打上げはISTの既存の開発プログラムに基づき、同社が「ファミリーセダン」と呼ぶ小型低価格のロケットを使って少量の貨物を宇宙に送るデモンストレーションを目的として行われた。

ISTのアプローチで興味深いのは、最先端技術を謳うのではなく、ロケット技術の「伝統的手法」を活用し、新たな製造技術と近代的材料を加えることで極力コストを下げ、幅広い顧客が利用できるようにすることに焦点を当てていることだ。ある意味で、SpaceXやRockt Labのアプローチに似ているが、ISTはいっそう近代化にこだわらず、ライバルより効率を高めることに注力している。そうすることで、定期的に商業打上げできるようになった時には、コスト優位性を得られると考えている。

日本の北海道で打上げられたMOMO-5は、スケジュールがCOVID-19(新型コロナウイルス)や5月の連休のために、2019年末と今年始めから再三変更された。MOMO-5は全長約10メートル、重さ約1トンで、Rocket Labのロケット、Electronよりも小さい。

ISTによると、MOMO-5は指令センターから送られた「緊急停止」命令によって予定より早く飛行を終え、その後海面に安全に着水した。早期中止の詳しい理由は後に発表される予定。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

インターステラテクノロジズが観測ロケット「MOMO5号機」を12月29日に打ち上げへ、小型ロケット用航法センサを搭載

インターステラテクノロジズは12月23日、自社開発の観測ロケット「MOMO 5号機」を12月29日に打ち上げることを発表した。同社は堀江貴文氏が創業者の宇宙開発スタートアップ。これまでMOMO 1〜4号機を春や夏に打ち上げてきたが、冬の打ち上げは5号機が初となる。なお2号機、4号機は打ち上げに失敗しているが、2019年5月4日に打ち上げられた3号機は、日本の民間ロケットとしては初めて宇宙空間に到達している。

今回は、北海道広尾郡大樹町字晩成にある同社の公式ロケット打上げ見学場である「SKY-HILLS」での見学者を募集しているほか、大樹町生涯学習センターでの無料のパブリックビューイングを予定している。SKY-HILLSでの見学には、打ち上げ協力金として18歳以上は7000円、小学生以上は3500円が必要(小学生未満は無料)。なお、札幌駅から現地まで往復バス成温泉での昼食がセットになった日帰りバスツアーも用意されている。打ち上げの概要が以下のとおり。なお、気象条件や打ち上げ準備状況、その他複合的要因により、打ち上げを予備日以降に延期する可能性もある。

  • 打ち上げ予定日時:2019年12月29日 6時45分
  • 打ち上げ予定時間帯:05時15〜7時40分、11時10〜12時20分、16時10分〜17時10分
  • 打ち上げ予備日:2019年12月30日、31日、2020年1月1日、2日、3日(12月30日以降の打上げ予定時間帯は、29日のものと同様)
  • 打上げ場所:インターステラテクノロジズ 大樹ロケット射場(北海道大樹町)

従来機と同様にMOMO 5号機も、協賛企業などから託されたペイロード(積載物)を宇宙に運ぶミッションに挑戦する。同機は企業8社、個人1名から機体スポンサーからの支援を受けており、今回新たに三菱プレシジョン製の「小型ロケット用航法センサ」の搭載が決定した。

同センサは、誘導制御用、飛行安全用の2種類の用途があり、ロケットの位置や速度、姿勢、加速度、角速度などを計測できる。小型ロケット用航法センサは、インターステラテクノロジズが開発中の超小型人工衛星の軌道投入用ロケット「ZERO」への搭載も計画されており、今回の実証実験が成功すれば「ZERO」の開発を前進させるものとなるという。

そのほかのスポンサーとペイロードは以下のとおり。

  • なにわ:お好み焼き北九州伝統の味なにわのロゴ
  • IMV:大阪拠点の振動試験装置メーカーのロゴ
  • 平和酒造:日本酒(紀土 純米大吟醸 宙へ!!)
  • 高知工科大学:インフラサウンドセンサ(超低周波音マイク)
  • チル:シーシャ(水タバコ)フレーバー&吸い口
  • サザコーヒー:超高級パナマ・ゲイシャコーヒー
  • 超電磁P(個人):自作の電子工作製作物

さらに、たこ焼きスイーツ「たこパティエ」を製造販売する瓢月堂が、MOMO5号機の打ち上げの際に噴出されるロケットの炎でたこパティエを焼き上げる地上ミッションも開催される。

堀江貴文氏創業の宇宙開発スタートアップ・インターステラテクノロジズが12.2億円を調達

ロケットの開発や製造、打ち上げまでを手がけるインターステラテクノロジズは7月29日、総額12.2億円の資金調達を発表した。今回調達した資金は人工衛星軌道投入用ロケット「ZERO」の開発に必要な設備投資、人材採用、材料費などに活用する。同社は堀江貴文氏が創業者で、稲川貴大氏が社長を務める2003年5月設立の企業。

また、日本創生投資代表取締役の三戸政和氏を取締役に迎えて、今後はシリーズC以降での資金調達を進めていく。さらに海外展開を見据え、トレードシフトジャパン代表取締役の大久保紀章氏も取締役に就任する予定とのこと。シリーズBラウンドおける第三者割増資で引き受け先は以下のとおり。

  • 帯広信用金庫
  • 北洋銀行
  • ほっかいどう地方創生投資事業有限責任組合
  • 笠原健治氏(ミクシィ取締役会長)
  • 内藤裕紀氏(ドリコム代表取締役)
  • 田中修治氏(OWNDAYS代表取締役)
  • 古川健介氏(アル代表取締役)
  • 三戸政和氏(日本創生投資代表取締役)
  • 山本博士氏(スマレジ代表取締役)

同社は2016年にプロサッカー選手の本田圭佑氏、East VenturesなどからシリーズAラウンドで2億円を調達し、観測ロケット「MOMO」の開発を推進。5月4日に「MOMO3号機」の打ち上げが成功したことにより、同社としては観測ロケットとしては商業打上げのベースに乗ったことを確信、ZEROの開発を本格化できるフェーズに入ったと考えている。

なお、7月27日に打ち上げられた観測ロケット「ペイターズドリームMOMO 4号機」については残念ながら失敗となった。

打ち上げ約64.3秒後に機体に搭載したコンピュータが異常を検知したことでエンジンを自動で緊急停止させ、 警戒区域内の海面へ安全に落下したとのこと。打ち上げ結果は以下のとおり(暫定値のため今後の解析により変動する可能性あり)。

  • 打上時刻:7月27日16時20分00秒
  • 飛行時間:172 秒(2分52秒)
  • 最大高度:13.3km
  • 最大高度時刻:打上げから96 秒(1分36秒)後
  • 落下位置:射点より東南東9kmの海上

機上カメラからの静止画

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    提供:インターステラテクノロジズ
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    提供:インターステラテクノロジズ
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    提供:インターステラテクノロジズ
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  12. 20190728-165309

    提供:インターステラテクノロジズ

堀江貴文氏語る「日本が世界に勝てるのは宇宙とロボティクス、今が大チャンス」

Infinity Ventures Summit 2019 Summer KOBEの2日目となる7月12日には、宇宙開発を手がけるスタートアップのインターステラテクノロジズの創業者である堀江貴文が司会を務めた「宇宙開発概論」というセッションが開催された。

ゲストとして、2027年までの有人宇宙飛行を目指すSPACE WALKER(スペースウォーカー)で代表取締役CEOを務める眞鍋顕秀氏と、人工流れ星を開発中ALEで代表取締役を務める岡島礼奈氏の2人が登壇した。

堀江氏がセッション中にしきりに強調していたのが「日本にとって宇宙産業は非常に有望で、世界に勝てる数少ない産業」という点。

その根拠として同氏は、国内には最適な射場があることに触れた。ロケットは地球の自転速度を利用できる東に向けて打つことが多く、西に向けて打つことはない。また、縦に回る極軌道に載せる必要がある地球観測衛星などは南や北に打つ。インターステラテクノロジズが利用する北海道にある射場は東、北、南のどの方向に打てるそうだ。米国では、東に打つときはフロリダ(ケネディ宇宙センター)、南に打つときはカリフォルニア(ヴァンデンバーグ空軍基地)の射場が使われることが多く、開発拠点から遠いとそれだけ移送コストもかさむ。

次に堀江氏が挙げた理由が、ロケット部品の国内製造能力。日本では、すべての部品を国内調達できるのが非常に大きな強みだという。「ロケットの部品を海外から輸入するとなると、輸入や移送にコストがかかるうえ煩雑な税関手続きなども発生し、低コストのロケットを量産するには不利」と眞鍋氏。堀江氏は「日本なら、国内の部品を集めて射場の近くに建設した工場で組み立てればすぐに発射できる」ことを強調した。実際にインターステラテクノロジズのロケットは1カ月程度で組み上げたそうだ。

この点に関してさらに眞鍋氏は、助成金の申請に行くと「海外でやれば?」という意見もあるが「海外でロケットを打ち上げるのは、許認可や輸出など大変」と話す。岡島氏も「ロケットには国籍があり、日本のロケットは宇宙活動法という法律に則って運用するが、海外で打ち上げるとなると同じような別の法律に従う必要があり、その都度必要な調整が煩雑」と語る。

ちなみに岡島氏が代表を務めるALEが開発した人工流れ星を生成可能な衛星は、すでに打ち上げは成功しているものの、人工流れ星の放出には着手できていないとのと。JAXAのイプシロンロケットに載せて打ち上げられて高度500kmの位置にいるのだが、高度400kmの位置にある宇宙ステーションよりも低い高度で検証する必要があり、現在高度を調整している最中とのこと。

公表はできないがすでに顧客もついているそうだ。問い合わせベースでは、ホテルやイベントのオープニングに使いたいという依頼もあったとのこと。明るさはマイナス1等星程度で、オリオン座が見える空なら、そのオリオン座を構成する星よりも明るく見える。気になる価格は、流れ星1つあたり数百万円程度になるとのこと。この価格設定について「特大の花火と同じくらいの値段」と岡島氏。数百万でコストであれば結構な需要が生まれそうだ。

話を元に戻そう。堀江氏は3つ目の理由として国内の資金調達市場の成熟を挙げる。国内のスタートアップ企業への投資は現在も盛んで、ネット関連企業に数十億円が投資されることも少なくない。最近ではVCが組成するファンドに機関投資家も加わるようなり、ファンド規模も拡大している。堀江氏は「ネット企業への投資もいいが、もっと宇宙産業に目を向けてほしい」とも語る。「インターステラテクノロジズでは、さまざまなアイデアを駆使してなんとか10億円ほど集まった」とのこと。宇宙産業への投資熱がまだ低いことに不満を募らせているようだった。

堀江氏はどのように資金を集めたかも語ってくれた。インターステラテクノロジズのロケットは100kgほどのペイロード(可搬重量)があるが、コーヒーやハンバーガーなどを載せて打ち上げるのだそうだ。ハンバーガーは250万円でロケットに載せる権利を売ったとのこと。「宇宙に行ったハンバーガーというだけで十分な宣伝効果になるじゃないですか」と堀江氏。確かに、数百万円で宇宙に持って行けるのであれば、宣伝費用としてはリーズナブルかもしれない。

そのほか、宇宙で飛ばす紙飛行機などエンタメ系の実験も真面目に進めている。

実はインターステラテクノロジズは7月13日にロケットの打ち上げを予定している。この機体は「ペイターズドリームMOMO4号機」と名付けられており、ロケットとしては珍しく外装に広告が入っているのが特徴だ。ペイターズ(paters)とはオンラインラウンジアプリ、いわゆるパパ活アプリだ。そのほか、メガネのオンラインストアを運営するOWNDAYS(オンデーズ)、平和酒造といったさまざなスポンサーのロゴが機体にペイントされる。これらも堀江氏のアイデアだ。

最後の理由が、スタートアップが宇宙開発に参入できる環境を整ったこと。現在堀江氏のインターステラテクノロジズは、JAXAとの共同実験を進めているそうだ。「例えば、JAXAが機体に使うシールは200万円ぐらいする。もちろん超高性能で剥がれないのだが、剥がれるかもしれないが30万円ぐらいの品質のシールを試したりしている」とのこと。そのほか、ロケットの姿勢制御用などに使うジャイロスコープもJAXAは1個800万円ぐらいのものを使っていて、万が一のために冗長性を持たせるために2、3個を搭載する。これも汎用のジャイロスコープにしてコストダウンできないかを検討している」そうだ。

堀江氏によると、インターステラテクノロジズでは現在10基のロケットを作っており、1基を5億円ぐらいで売る予定。そうなると1基あたり1000万円ぐらいの部品コストしか使えないとのこと。「JAXAのシールを2枚使うだけで400万円するので、残り600万でほかの部品を調達するのは無理で、部品の大幅なコストダウンは必須」という。

そしてスタートアップの強みとして堀江氏は「失敗してもいい」点を強調した。JAXAなどの国家事業となると絶対に失敗できないため、基本設計はあまり変えられない。H-IIAロケットも基本設計は古く「iPhoneより性能が低いコンピュータを使っている」と眞鍋氏。堀江氏は「スタートアップであれば、どんどん新しい設計のロケットを試すこともできる」とし「インターステラテクノロジズのロケットもH-IIAロケットよりも高性能なコンピュータを積んでいる」と教えてくれた。そして「高性能といってもラズパイなのでコストは安い」とのこと。ご存じのようにラズパイは、ワンボードマイコンのRaspberry Piのことで一般向けなら6000円弱、産業用でも5万円ぐらいで手に入る。

このように堀江氏は、スタートアップと宇宙産業の相性がいいことをアピールした。「海外のネットベンチャーは非常に強く、日本企業が進出しても成功するのは難しい。これからの日本が世界で戦えるのは、ロボティクスの分野と宇宙の分野しかない」と堀江氏。岡島氏も「ロケットには言語バリアがなく、載せられるのであればどの国のロケットであっても構わない」と語る。

堀江氏と眞鍋氏によると、現在の日本の宇宙産業はインターネットの黎明期に似ているそうだ。「当時は回線やサーバーのコストがむちゃくちゃ高く、以前経営していた会社はその影響で上場年に赤字になったほど。そのあと、Linuxベースの安価なサーバが出てきてサーバーコストは大幅に下がり、回線コストも非常に安くなった」と堀江氏は振り返る。

堀江氏は「宇宙産業で日本と競争できるのは米国と中国ぐらい。フランスも実力はあるが、射場が南米のフランス領などにあるので移送コストの問題がある。とにかくいまは日本にとって大チャンス」と何度も強調していた。

余談として堀江氏は、所有するプライベートビジネスジェット「HondaJet Elite」に触れ、現在6人で共同所有しており購入時には1人あたり1億円程度を出したことを明かしてくれた。そして、年間の維持費は1300~1400万円、1回のフライトは40~50万円とのこと。共同所有であれば、起業家やVCが無理なく所有できる額であり「この飛行機が30機ほど日本にあればシェアリングも可能なってさらに身近になる」と堀江氏。HondaJet Eliteの最大定員は、乗員1名+乗客6名、もしくは乗員2名+乗客5名。ビジネスやファーストクラスでの移動を考えれば、それほど高コストではない。また、移動時間をコストとして考えれば、十分に現実的だろう。

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