名刺のQRコードから自己紹介動画を再生、新たな名刺体験を実現する「名刺 THE MOVIE」

名刺とQRコードと動画を組み合わせることで、名刺体験をもっとリッチにできないか——。これから紹介するのはそんなアイデアを形にしたプロダクトだ。

たとえばイベントや交流会、もしくは商談などで短時間の間に複数の人と名刺交換をした時。後から落ち着いたタイミングで名刺を見返しても「相手のことがほとんど思い出せない」という経験をしたことがある人も少なくないはずだ。

そんなシーンにおいて、自分のプロフィールや人柄に関するストーリーを「動画として埋め込んだ名刺」があったらどうだろう。名刺交換の際にお互いのことをあまり話せなかったとしても、後から動画を見ることで相互理解を深められる。もしくは名刺交換時にアイスブレイクの一環として、その場で動画を見せ合ったりしてもいいかもしれない。

本日12月5日にリリースされた「名刺 THE MOVIE」は、その名の通り動画を用いて名刺の体験をアップデートしようという試みだ。構造はとてもシンプル。紙の名刺に印刷されているQRコードをスマホで読み取ると、その人のパーソナルな情報をまとめた縦動画を簡単に視聴できる。

開発したのはTechCrunchでも何度か紹介している動画関連スタートアップのカクテルメイクだ。同社ではクリエイターが作成した豊富なフォーマットとAIによるサポートによって、専門知識がなくても動画を作れるSaaS型のサービス「RICHKA(リチカ)」を運営している。

今回のプロジェクトは「形骸化しがちな名刺交換において、記憶に残りやすい動画との相性は非常に良い」との考えから発足。その人の人柄や、趣味などパーソナルな部分を1分以内にまとめることで営業でのアイスブレイク、採用などのコミュニケーションに活用されているという。

名刺 THE MOVIEはRICHKAの仕組みを活用した1つのパッケージという位置付けになる。通常であれば撮影や編集にそれなりの時間や手間がかかるが、RICHKAを用いた制作スキームを構築することで圧倒的な効率化を実現している。

実際にカクテルメイクでは全メンバー約40名が名刺 THE MOVIEを使用。2時間で15人分の素材動画を撮影し、編集については非クリエイターのメンバーが40人分を1日で完了させたそうだ。

まずは問い合わせベースでカクテルメイク及び同社のパートナーが撮影や編集のサポートを行っていく方針だが(RICHKAユーザーへの15社限定無料撮影支援キャンペーンも実施するそう)、ゆくゆくはユーザー自身でも簡単に動画の撮影や編集ができる仕組みをRICHKAの派生サービスのような形で提供していくことも考えているという。

知識なしでも最短1分で動画作成、「RICHKA」が2.1億円を調達

SaaS型の動画生成ツール「RICHKA(リチカ)」を運営するカクテルメイクは5月14日、ベンチャーキャピタルのNOWなど6社を引受先とする第三者割当増資により総額で2.1億円を調達したことを明らかにした。

今回の資金調達はカクテルメイクにとって昨年9月にNOWや佐藤裕介氏などから5000万円を調達して以来のラウンドで、シリーズAに該当するもの。需要が高まっている動画広告用途を軸に、5G時代到来に向けてプロダクトの機能拡充やパートナー企業との連携、人材採用など組織基盤の強化を通じてさらなる事業拡大を目指す。

なおシリーズAに参加した投資家陣は以下の通りだ。

  • NOW
  • みずほキャピタル
  • 新生企業投資
  • ドリームインキュベータ
  • マネックスベンチャーズ
  • FFGベンチャービジネスパートナーズ

素材とテキストのみでサクッと動画生成

RICHKAは専門知識がないユーザーでもパフォーマンスの高い動画を作れる動画生成サービスだ。

必要なのはシーンに合わせて素材(動画や画像)とテキストを入れるだけ。動画の制作経験がなくても、ドラッグ&ドロップで用意した素材を配置して、表示させたいテキストを入力すればブラウザ上でスピーディーに動画が完成する。

素材についてはRICHKA上にある100万点以上の動画や画像素材を使うことも可能。素材を選択すると画像認識システムを通じて最適な切り抜き位置を判定するなど、AIを用いた制作サポート機能も搭載されている。

細かいポイントはいろいろとあれど、RICHKAの大きな特徴となっているのがバラエティに富んだ動画フォーマットだ。

約100人のクリエイターが毎月100種類以上の動画フォーマットを作成していて、ユーザーはその中から目的や業種、配信先などに合わせて最適なものを選び動画を作る。

現在用意されているフォーマットはだいたい1000種類ほど。RICHKAで蓄積されたナレッジを反映してどんどん新しいものが追加される仕組みが構築されていて、これが高いパフォーマンスを実現することにも繋がっているという。

この領域では昨年9月にリリースされた「VIDEO BRAIN」のように動画制作をAIで自動化するようなプロダクトも登場してきているが、今のところRICHKAではユーザーがツールを活用して自身で動画を作成する。AIは一部の工程を補助する位置付けだ。

この点についてカクテルメイク代表取締役の松尾幸治氏に話を聞いてみたところ「自分たちもAIで全自動化するような実験にも取り組んでみたが(現段階では)多様なニーズをAIだけで捌くのは難しいと判断した」結果、今の仕組みで提供しているという。

「ユーザーの視聴態度はSNSや年齢層によっても異なり、ものすごく細分化される。ただ広告という数秒〜長くても30秒くらいの尺の中で、かつ業種業態が限られているという条件下であれば自動化できる余地はある。それも見据えて今はフォーマットの種類を増やしている段階。トレンド自体は人が作るものなので、そこはクリエイターに担ってもらうことは変わらない」(松尾氏)

今後はフォーマットのレコメンドなどにも力を入れていく計画。サービスのサービスの業種業態や特徴を入れたら適切なものを推薦したり、もう一歩進んで出来上がりの状態まで提示するような仕組みも検討しているという。

動画広告用途を中心に累計200社以上が導入

松尾氏によると、RICHKAはこれまでで累計200社以上に導入され月間の動画生成数は5000本を突破。トータルで生成された動画数は10万本を超えたそうだ。

2018年9月の調達時に話を聞いた際は「動画広告用のクリエイティブ、Webメディアやプラットフォームでの利用、その他の用途がそれぞれ3分の1ずつ」ということだったけれど、直近では動画広告用途が増加。現在は全体の約7割を占める。

「広告事業者や事業会社において高速で(動画クリエイティブ作成の)PDCAサイクルを回したいという声がものすごく増えてきている。特に以前に比べて広告代理店からの引き合いが強くなってきた。クライアントからの動画広告のニーズを無視できない状況である一方で、制作会社に頼るとコスト感が合わなかったり、PDCAを回すスピードが遅くなってしまったりする」(松尾氏)

そこでRICHKAの登場というわけだ。RICHKAの場合は動画制作経験のない広告運用者でも手軽に動画を作ることが可能。料金も月額10万円からの定額モデルのため、コストを抑えながら何本もの動画を試すこともできる。

実際RICHKAのユーザーの9割ほどは動画を作ったことが一度もないような人たちだが、上述した機能とフォーマットの助けを借りることで、成果を出しているケースも多いようだ。

「フォーマットを介して各業界や用途ごとに今の動画のトレンドを知れるのも特徴。(各フォーマットの)パフォーマンスなどを把握した上で動画を作れるため、ゼロから自分でナレッジを貯めていくよりも効率が良い」(松尾氏)

2月には広告代理店向けの「RICHKA for Agency」をリリース。サービス上の動画フォーマットを営業資料として持ち歩き、自社のオリジナルWebカタログ(自社のロゴを入れることが可能)として使えるような仕組みも整えた。

カクテルメイクでは今回調達した資金を用いてRICHKAのさらなる機能拡張やマーケティングの強化、人材採用などを進めていく計画。培ってきたノウハウやデータを活かしながら、5Gの本格的な商用化が見込まれる2020年末までに、ハイクオリティでリッチな動画を100万本生成することを目指すという。

知識不要、最短1分で動画を作れる「RICHKA」が5000万円を調達――月間の生成動画数は3000本以上

動画生成ツール「RICHKA(リチカ)」を提供するカクテルメイクは9月5日、ベンチャーキャピタルのNOWや佐藤裕介氏など複数の個人投資家を引受先とする第三者割当増資により、5000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

数100種類の独自フォーマットで知識なしでも動画を生成

RICHKAは動画制作の経験や専門スキルがない人でも、ブラウザ上から簡単に動画を生成できるクラウドサービスだ。

必要なのは動画の基となる素材(画像や動画)と、動画内で表示するテキストだけ。素材に関しては自分でアップロードすることもできるし、メディアの記事を動画にする場合などはURLを入力することで記事内の素材を抽出することもできる。

これらの素材をRICHKA独自のフォーマットに組み込むことで、複雑なものでなければ最短1分で動画を作成できるのがウリだ。

料金は月額10万円で20本の動画を作成できるプランをメインに提供。このプランではRICHKA側で毎月1本各社に合ったフォーマットをオーダーメイドで作成することで、ブランドイメージに合った動画を作れるようにサポートしている。加えて様々な用途に対応できるように数100種類のフォーマットを用意し、ユーザーが膨大な時間や手間をかけずとも、品質を担保した動画を制作できる環境を整えた。

カクテルメイク代表取締役の松尾幸治氏によるとリリースから約10ヶ月で累計100社への有償導入実績があり、現在は月間3000本以上の動画が生成されているそう。大まかな内訳としては動画広告用のクリエイティブ、Webメディアやプラットフォームでの利用、その他の用途がそれぞれ3分の1ずつを占めるのだという。

以下の動画は、以前TechCrunchでも紹介した車コミュニティアプリ「CARTUNE」の広告配信用に作られたもの。車の画像素材と車種のテキストのみを使ったシンプルなものなので、これなら確かに短時間で作れそうだ。

課題となっている“制作コスト”を抑える仕組みが必要

松尾氏の話では、RICHKAを導入している企業のほとんどが「以前から動画を作りたいという思いはあったものの、制作コストがネックで1度きりで断念してしまっていた、もしくはそもそも試せていなかった」のだという。

「外注すると1本あたり数十万円、1週間かかることもある。内製するにしても相応のコストはかかるし、そもそも人材が必要だ。費用や時間といった制作コストを抑える仕組みがないとPDCAを回せないので、動画広告などを作っても正解がわからず悪循環に陥る。制作コストの重さこそが、動画コンテンツの普及を妨げる要因になっていると感じていた」(松尾氏)

カクテルメイクは2014年の設立以来、映像制作会社として数千本の動画コンテンツ制作を行ってきた。松尾氏が「動画関連で来るといわれるものは一通りやってみた」と話すように、ライブ配信や分散型動画メディアのコンテンツなど、制作した動画の幅は広い。

さらにさかのぼれば、松尾氏は前職でも経営者のインタビュー動画メディア事業に携わっていたというから、カクテルメイク創業前から数年に渡って動画制作と向き合ってきたことになる。

動画の制作コストがネックとなりPDCAが回しづらいという課題は、松尾氏自身も現場で感じていたもの。同時にこれまでカクテルメイクで貯めてきた動画制作やトレンドに関する知見、それをフォーマットに落とし込むノウハウを活用することで、この課題を解決するプロダクトを作れるのではないか。そのような考えもあって、約1年前に開発したのがRICHKAだ。

「たとえば動画広告であれば、1個あたり数千円のコストで近しいクリエイティブを1日に十数パターン作ることもできるため、『動画広告のABテストがしやすくなった、PDCAが回しやすくなった』という反応はよく頂くようになった」(松尾氏)

もっとライトな価格帯だと試しやすいという声も多く、今後はより安価に動画コンテンツを作れる新プランの提供も予定しているそう。今回調達した資金を基に人材採用とプロダクトの改良を進め、まずは2019年中に1000社への導入を目指す。特に動画広告におけるニーズを軸に考えていて、動画広告用のクリエイティブ制作ツールにおいてトップシェアを狙っていく方針だ。

またその先には「誰でもクリエイターの知見や脳みその中身を使えるようになり、クリエイター側にはストックの収入が入る仕組み」を作るという構想がある。

たとえば現在はカクテルメイクと一部のクリエイターで作っている動画フォーマットを、より多くの動画クリエイターが登録・販売できる仕組みなどを考えているという(WordPressで有料テーマを販売する感覚に近いかもしれない)。

「クリエイターじゃない人がクリエイティブを作れるようになる。クリエイターは知見を提供することで収益を得て、ライスワークをしていたような時間を新しいチャレンジの時間に使えるようになる。インターフェイスを通じた新しい“スキルシェア”のようなサービスを作っていきたい」(松尾氏)

写真左からNOW梶谷亮介氏、カクテルメイク代表取締役の松尾幸治氏、NOW家入一真氏