直接会えなくてもリモートアクセラレーターには参加する価値がある

私たちはUC Berkeley SkyDeck(UCバークレー・スカイデック)スタートアップ・アクセラレーターの2020年春のコホート(参加者)だ。初めてのリモートアクセラレーター(SAN FRANCISCO BUSINESS TIMES記事)に参加した。

参加者の多くは、バークレーを訪れるのを楽しみにしていた。なぜなら、Berkeley SKYDECKはいろいろな国の企業創設者のチームを支援し、ベイエリアでの人脈作りや、米国市場への道の開拓を手助けしてくれるからだ。

なので私たちは米国の各地から、さらには台湾、ロシア、トルコ、チリ、インド、イスラエル、カナダといった地域からも飛んできて、カリフォルニアの太陽を浴び、ナパでワインを飲んだり、サンタクルーズで海水タフィーを食べたり、セコイアを見たり、ヨセミテなどを訪れたりとカリフォルニアっぽいことを満喫しようと計画していた。もっとも、それを全部やるほどのヒマはなかったかもしれない。私たちは、スタートアップ創設者なのだから。だが、何かに「ノー」といえる機会が与えられるのは、いいことだ。

何はどうあれ、私たちは大勢の最高に頭がよくてクールな人たちと出会い、ブレインストーミングをして、たくさん友だちが作れると思っていた。同時に製品を市場に適合させ、ピッチの方法を学び、国際的に有名なベンチャー投資家から大きな投資を獲得するための、ものすごく大変だがやり甲斐のある作業に没頭する。キラキラキラ!

しかしこの春、コホートたちがプログラムを開始しようというとき、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大が深刻になった。飛行機は飛ばず、デスクは与えられず、すべてがバーチャルの会合となり、直に(9月15日を記憶しておいて欲しい)バーチャルデモデーが行われる。海外のほとんどの創設者たちは、米国に来ることすらできなくなった。

世界のどこにいようとも、地球上の他の人たちと同じく、結局私たちも自宅で仕事をする羽目になった。ナパワインも、海水タフィーも、セコイアもヨセミテもなし。仲間には、不快な気候に悩まされている者もいる。やれやれ。

しかし、素晴らしい体験になったであろう物事は失われたものの、プログラムの素晴らしさについて、みなさんに疑念を抱かせるようなことはしたくない。SkyDeckは以下のことを私たちに提供してくれた。

  • 想像を絶する特別なネットワークとのVIP待遇のアクセス。そんなネットワークをちょっと思い描いてみて欲しい。それをはるかに超えたものだ。
  • 優秀なアドバイザーのネットワーク:SkyDeckはUCバークレーの卒業生で優れた業績を残している人たちとに1対1で相談ができるよう手配してくれた。このメンタリングのための人間的なアプローチは、新型コロナ禍の中でも滞りなく機能した。なぜならみな自宅に閉じ込められていて、通話を心待ちにしていたからだ。彼らは助言、人脈の紹介、人材募集などなどいろいろな世話をしようと待っていてくれた。
  • 楽しくて勉強になるインフォセッション:ときどき起きるインターネットの接続不良にはイラついたが、そこで苦労する人間がいなかったのは幸いだった。セッションには基本的な組織作りに関する助言、有名企業の創設者たちの苦労話と質疑応答、DEI(多様性、公平、インクルージョン)トレーニングなど21世紀の企業作りに重要な新しい方向性などが盛り込まれていた。講師たちはオンライン会議または教室を開き、特定の話題について深く、意欲的に話し合ってくれた。それはいつまでも続いた。
  • 他のコホート創設者や卒業生からのサポート:このプログラムは驚くほど家族的だ。厳しい時間が、奥深い体験や意義深い人間関係を育む。SkyDeckは、私たちがお互いに知り合えるよう、いくつものバーチャルイベントを設定してくれた。卒業生もSlackで積極的に参加し、1対1のメンタリングにもすぐに応じてくれた。人材募集やその他の無料アドバイスでも協力してくれた。私たち全員が、この先長年にわたり、社会的、職業的な支援をくれる新しい友人を得た。
  • UCバークレーの多用なエコシステムもすべて利用できる。有能なインターン、教員、業界との人脈などだ。これは、製品を市場に適合させる作業の過程で、生産性の向上に大いに寄与してくれた。残念ながら、新型コロナの影響で研究室は使えなかったため、特に一部のバイオテックやハードウェア系の創設者たちは、本当に楽しみにしていたことを逃してしまった。しかし、全員がオンラインでつながっているため、生物情報科学、機械学習、その他のコンピューター主体の共同作業は実によく機能していた。いいぞ、ベアーズ!
  • そしてもちろん、10万ドル(約1050万円)の投資だ。新型コロナで激変した環境に対応するため誰もが現金を必要としている今、これはとくに助かる。

飛行機が飛ばないため、海外の参加者たちは、母国からあり得ない時間帯にセッションに参加する必要に迫られたが、バーチャルセッションには、他の形では参加が難しかった我々の仲間が加われるという利点もあった。デモデーは、これまでで最大規模になるとの噂も聞いた。バーチャルだから自由に拡張できるのだ。ただこの話は、私たちからは聞かなかったことにして欲しい。

今は、ちょうど投資家月間が始まったところだ。デモデーまでの間にSkyDeckが設定した会合は、さらに興味深く内容の濃いものになる。投資家たちには、創設者と話をする方法が他にない。実際にシリコンバレーを歩いて回るよりも、オンラインで次々につながるほうがずっと楽だ。超裕福層の人たち著名な投資家も、私たちとZoomで話し合うのを楽しんでいるように感じられる。他のみんなと同様、ずっと家にいて退屈しているために、誰かと話をしたくて仕方がないのだ。

SkyDeckに参加が決まったときに楽しみにしていたことの多くは失われたが、バーチャルデスクやバーチャルデモデーだけでも、SkyDockにはものすごい価値がある。

SkyDeck 2020のコホートは以下のとおりだ。

  • Jeremiah Scholl(ジェレマイア・スクール) – AESOP Technology(イサプ・テクノロジー)
  • Vadim Nazarov(バディム・ナザロフ) – ImmunoMind(インミュノマインド)
  • Roland Polzin(ローランド・ポルザイン) – Wing AI(ウィング・エーアイ)
  • Sarah Placella(サラ・プラセラ) – Root(ルート)
  • Andrea Wang(アンドレア・ワン) – AHEAD Medicine(アヘッド・マシン)
  • Derrick Koenig(デリク・コーニグ) – ontopical(オントピカル)
  • Michael Morehead(マイケル・ムーアヘッド) – syGlass(サイグラス)
  • Vrinda Kapoor(ブリンダ・カポー) – 3rdiTech(サーディテック)
  • Camilo López(カミロ・ロペス) – Adereso(アデレソ)
  • Shirley Ying Pan(シャーリー・イン・パン) – Fibulas(フィビュラス)
  • Rahul Ramakrishnan(ラフール・ラマクリシュナン) – Xoba(ソバ)
  • Riya Muckom(リア・マコム) – Axent Biosciences(アクセント・バイオサイエンセズ)
  • Sukhi Singh(スキ・シン) – zHealth(ズィーヘルス)
  • Lindsey Hoell(リンジー・ホール) – Dispatch Goods(ディスパッチ・グッズ)
  • Erhan Ciris(イーハン・シリス) – 4D Sight(フォーディー・サイト)
  • Garrow Geer(ギャロウ・ギア)- Kura Technologies(クラ・テクノロジーズ)
  • Gevo Soghomonyan(ジーボ・ソーゴモニアン) – AimHub(エイムハブ)
  • Yosef Peterseil(ヨセフ・ピーターセイル) – Blings.io(ブリングズ・アイオー)
  • Dasha Kroshkina(ダーシャ・クロシュキナ) – StudyFree(スタディーフリー)
  • Guilhem Herail(ギレム・ヘレイル) – Hermes Robotics(ハーミス・ロボティクス)
  • Georgios Pipelidis(ジョージオス・ピペリディス) – Ariadne Maps(アリアドネ・マップス)

【TechCrunch Japan編集部注】本記事は、カリフォルニア大学バークレー校が主催するスタートアップアクセラレーターであるUC Berkeley SkyDeckのコホート(参加者)の共著となる。

カテゴリー:VC / エンジェル

タグ:Berkeley SKYDECK アクセラレータプログラム

画像クレジット:Blake Callahan / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

カリフォルニア大学バークレー校が唾液によるPCR検査の試行を開始

カリフォルニア大学バークレー校の研究チームは、同校のInnovative Genomics Institute(イノベーティブ・ジェノミクス・インスティチュート/ IGI)が開発したCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)唾液検査の試行を開始した。

米国内で最初にこの疾病が確認されて以来、IGIではCRSPR研究の先駆者であるJennifer Doudna(ジェニファー・ダウドナ)氏の下で、ウイルス検査と治療方法の開発に励んできた。

同校が試行している新たな唾液ベースの検査は、被験者の感染を調べる検査を実施するために、訓練を受け個人防護具を着用した医療従事者を必要としない。

この方法が鼻腔拭い液方式と同じように有効であることが証明されれば、バークレー校の学生、教職員を8月末の秋学期開始前に検査するための能力を高められると同大学は声明で語った。

Jennifer Doudna, wearing mask, outside kiosk

COVID-19唾液検査の試行に協力している大学院生のAlex Ehrenberg氏と話すJennifer Doudna 氏(UC Berkeley photo by Irene Yi)

「本校では、学生の少なくとも一部が秋学期に安全にキャンパスに戻れることを望んでおり、そのための方法のひとつが無症状者の検査を行うことだ。そうすることでみんなの健康を観察し、ウイルスの感染を防ぐことができる」と、仮設検査場と唾液検査を陣頭指揮するJennifer Doudna氏が声明で語った。

検査は最短5~6分で実施できるとDoudna氏は考えている。同研究は学内にはすでに公開されており、同キャンパスに所属する学生と教職員は施設のウェブ・サイトで、Free Asymptomatic Saliva Testing(無料無症状唾液検査)研究に参加できる。

「鼻腔拭い液検査と異なり、唾液検査はずっと容易であり、試験管の中に唾を吐くだけでよい」とDoudna氏は言った。「検査場を出るまでに5~6分しかかからないと考えているので、手間がかからず、簡単に検査を受けることができる」

この検査は、すでに食品医薬品局(FDA)による家庭内検査の緊急使用許可を得ているポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いている。

Doudna氏らが先駆けて遺伝子工学に応用したCURSPR-Casプロテインを使用することで、同研究所は安価で実験室分析が不要で数分間で結果のでる家庭で使える検査方法の開発を進めている。

Innovative Genomics Instituteは、2014年にDoudna氏がカリフォルニア大学のバークレー校とサンフランシスコ校と共同でに、CRISPRベースのゲノム編集を推進するために設立した。

大学の声明によると、同研究所は6月初めに新たなロボティックハンドリングシステムを導入し、検査能力を1日当たり1000件に増加させた。

「パンデミックが起きた時、われわれ自らに問いかけた、『COVID-19による健康危機に対しわれわれは科学者として何をすべきか』、とDoudna氏が声明で言った。「そして目標を検査に絞った。現在われわれは、臨床検査室を設置してバークレー校キャンパス内で無症状唾液検査を行おうとしている。成功したらこの戦略を他の場所へも広げていけることを望んでいる」

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

産業用ロボティクスAIのスタートアップCovariantが約43億円調達

米国カリフォルニア州バークレーを拠点とする創業3年のスタートアップであるCovariantは今週、Index Venturesが率いるシリーズBで4000万ドル(約42億5800万円)を調達したことを発表した。これにより調達総額は6700万ドル(約71億3300万円)になる。カリフォルニア大学バークレー校のPieter Abbeel(ピーター・アビール)教授を共同創業者とする同社は、産業用ロボットに自律性を持たせる研究・開発に専念している。

いまはますます多くの企業が、新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックの最中にあって前進するための方法としてロボティクスとオートメーションに着目している。Covariantは1月にステルスを脱し、すでに同社の技術がヨーロッパや北米に実在する工場で使われていると発表した。3月に同社は、産業用ロボットの上位企業ABBとのパートナーシップを発表した。

アビール氏は、今回の投資に関連するニュースリリースで「Covariantを創業したときの目標は、AIを装備したロボットが現実世界で自律的に作業できるようにすることだった。そのマイルストーンに到達した今では、弊社の普遍的なAI技術を新たな用途や、新たな顧客環境、そして新たな業界に拡張していくことに、次の大きな利益機会がある」と語る。

新たな資金はCovariantの人員増と、同社の技術が適用される新たなカテゴリーの探究にあてられる。

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

UCバークレー校が海底光ケーブルを地震計にするテクノロジーを発表

地震の観測は重要な活動だが、精度をアップするためには地震活動が起きている場所になるべく近い地点に地震計を設置しなければならない。これが海洋の中心などになると困難を極める。そこでカリフォルニア大学バークレー校では海底に設置された光ファイバーケーブルを地震計に利用しようという研究が進められている。光ケーブルを利用して全地球的なテクトニクス観測ネットワークを構築しようという試みだ。

現在、地震計のほとんどは地上に設置されているため、地球に関するわれわれの知識は地球全体の3分の1しかない陸地に大きく偏っている。断層などの情報も海底については不十分だ。米国カリフォルニア大学バークレー校の研究のリーダーであるNathaniel Lindsey(ナサニエル・リンジー)氏は.「大洋底における精密な地震データがどうしても必要だ。 海岸からの距離がたとえば50kmでもいいから海底に設置された地震計が欲しい。それでも非常に役立つ」とリリースに書いている。

長期間精密にモニターできる地震計が海底にほとんどないのは、設置が難しいのはもちろん、データの取得、メンテナンスなどがすべて困難であり、莫大なコストがかかるからだ。しかしすでに海底に設置されているインフラが地震計に利用できるとしたらどうだろう?それがリンジー氏のグループが海底の光ファイバーで地震を観測するというプロジェクトを立ち上げた動機だという。

これらのケーブルはインターネットのバックボーン回線であることもあれば、企業のプライベートネットワークの一部の場合もある。しかし共通しているのは通信に光を使っていることだ。もしケーブルがねじれたり向きを変えたりすると光の進行に微小な散乱などの影響が出る。ケーブルが曲げられるるときに科学者が「後方散乱」(Backscatte)と呼ぶ現象が起きる。これを精密に解析すれば光ケーブルによって地震活動が起きた地点をこれまでには考えられなかった精度で決定できる可能性がある。

このプロジェクトではDAS(分散音響センシング、Distributed Acoustic Sensing)というテクノロジーが用いられている。これにより光ケーブルを何千もの区間に分割し、それぞれをモーションセンサーとして役立てようというものだ。チームがテストに用いているのはMBARI(モントレー湾水族館研究所)が設置した全長20kmの光ケーブルで、これを1万の区間に分けて微小な位置変化を検出しようとしている。

バークレー国立研究所のJonathan Ajo-Franklin(ジョナサン・アジョ・フランクリン)氏によれば、「これは地震研究の最前線だ。海底光ケーブルによって海洋底から信号を取り出して地層欠陥を観測しようという初めての試みだ」という。

チームはMBARIのケーブルに接続したDASシステムのデータを解析し、マグニチュード 3.4の地震を特定することに成功している。これによりモントレー湾において現在知られていない断層をマッピングし、また地震が影響している可能性がある海流のパターンについても新たな知見を得た。

ARS(Monterey Accelerated Research System)の海底データ取得ノード。カニにケーブルを切られないのだろうか?

リンジー氏は「データを取得するために海底に潜って機器をケーブルの途中にいくつも取り付ける必要がない。単にケーブルの端にアクセスできればいい」のが素晴らしい点だという。

もちろん一般の商用光ケーブルの場合、研究者が自由に機器を取付られるようなエンドポイントがそうそうあるわけではない。また後方散乱はきわめて微弱なため他のノイズに隠されてしまう。これを正確にフィルターするためのテクノロジーがテストされているところだ。もし大型の海底光ケーブルが地震観測に利用できることになれば大洋底の地震やテクトニクス運動がこれまでにない精度でモニタできる。本日11月28日、研究チームはこれまでの成果をScienceに掲載した。

画像:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook