Facebookは本日、「データスクレイピング」を国際的に実施していた2社を相手取り米国で訴訟を起こしたと発表した。このデータスクレイピングによる影響は、FacebookとInstagramの両方を含むFacebookのプロパティに加え、Twitter、Amazon、LinkedIn、YouTubeなどその他の大規模なウェブサイトやサービスにも及んでいる。「マーケティングインテリジェンス」を目的にFacebookユーザーのデータを収集したこれらの企業は、Facebookの利用規約に違反した行為を行ったとFacebookは伝えている。
訴訟で挙げられたその社名は、イスラエルを拠点とするBrandTotal Ltd.とデラウェア州で法人化されたUnimania Inc.だ。
BrandTotalのウェブサイトによると、同社は、メディアやインサイト&分析チームに競合他社のソーシャルメディア戦略や有料キャンペーンが可視化されるように設計された、競争力の高いインテリジェンスプラットフォームをリアルタイムで提供している。同社からの情報により、顧客は予算配分を分析してシフトし、新たなチャンスを見定めたり、新興ブランドのトレンドや脅威を監視したり、広告やメッセージングを最適化したりすることが可能となる。
一方でUnimaniaによると、同社のアプリを使用するとユーザーは異なる方法でソーシャルネットワークにアクセスできるようになると言う。例えば同社は、Facebookをモバイルウェブインターフェースで閲覧できたり、Twitterなど他のソーシャルネットワークと一緒に閲覧できたりするアプリを提供。その他にも匿名でInstagramのストーリーが見られるアプリなども提供しているとのことだ。
しかしフェイスブックによる今回の訴訟での焦点は、Unimaniaの「Ads Feed」とBrandTotalの「UpVoice」という2つのブラウザーの拡張機能についてである。
Ads Feedを使用するとユーザーはFacebook上で見た広告を保存して、後から閲覧することができる。しかし拡張機能のページで開示されているように、そうすることでUnimaniaの企業顧客の広告決定を知らせるパネルにユーザーをオプトインすることになる。一方でUpVoiceは、ユーザーが人気のSNSやショッピングサイトを利用したり、有名ブランドが運営するオンラインキャンペーンに対する意見を共有したりすると、ギフトカードがプレゼントされるというものだ。
Facebookは、これらの拡張機能はスクレイピングに対する保護とその利用規約に違反して運営されていると主張。ユーザーが拡張機能をインストールしてFacebookのウェブサイトを閲覧すると、拡張機能が自動的にプログラムを実行して、名前やユーザーID、性別、生年月日、交際状況、位置情報などアカウントに関連する情報をスクレイピングする仕組みだ。その後、それらのデータはBrandTotalとUnimaniaが共有するサーバーに送られる。
Facebook lawsuit vs BrandTo… by TechCrunch
データスクレーパーは、ボットやスクリプトのような自動化されたツールを使って、可能な限り多くの情報を収集することを目的として存在する。2016年の大統領選挙時、Cambridge Analyticaが誰に投票するか決めかねている有権者をターゲットとして、何百万人ものフェイスブックプロフィールをスクレイプしたという悪名高い事件がある。ボットを使用してコンサートやイベントのチケット価格を監視して、競合他社より安価で売れるようにするのもデータスクレイピングの一例だ。集められたデータはマーケティングや広告に使用されたり、単に他社に販売されたりすることもある。
Cambridge Analyticaのスキャンダルを受けて、Facebookは利用規約を破るさまざまな開発者に対して法的措置を取り始めた。
データスクレイピングにまつわるほとんどのケースは、コンピューターハッキングを起訴するために1980年代に制定されたコンピュータ詐欺・不正利用防止法に基づいて訴訟が行われている。「許可なく」コンピューターにアクセスした人は誰でも高額な罰金や実刑判決を受ける可能性があるわけだ。
しかし、法律では何が「許可された」アクセスで何が許可されていないのかが明確に定義されていないため、大手テック企業がデータスクレーパーを締め出すための努力は報われない場合もある。
2019年にLinkedInが、スクレイパーはインターネットで公開されているデータを収集しているに過ぎないとの控訴裁判所の判決を受け、HiQ Labsを相手にした訴訟で敗訴した事件は有名だ。電子フロンティア財団のようなインターネットの権利団体は「一般に公開されている情報へのアクセス方法が、パブリッシャーが異議を唱える方法でなされたからといって」インターネットユーザーが法的な脅威に直面すべきではないと主張しこの決定を称賛している。
Facebookによる今回の訴訟は、実質的には公開されていないFacebookのプロフィールデータをスクレイピングしたBrandTotalを告発すると言うものであるため、これまでとは多少異なったケースである。Facebookによると、告発されているデータスクレイパーは、ユーザーのコンピューターにインストールされたブラウザー拡張機能を使用して、Facebookのプロフィールデータにアクセスできるようにしたという。
2019年3月、クイズアプリやブラウザーの拡張機能を使ってデータを収集し、プロフィール情報や友達リストをスクレイピングしていたウクライナ人の2名の開発者を提訴したとFacebookは伝えている。カリフォルニア州の裁判所は最近、この事件でFacebookに有利な判決を下している。昨年、マーケティングパートナーであるStacklaに対して起こしたスクレイピングをめぐる別件の訴訟でも、同様にFacebookに有利な結果となった。
そして今年、Facebookはスクレイピングと偽のエンゲージメントサービスに関与している企業や個人を相手に訴訟を起こした。
ただし、Facebookはユーザーのプライバシーを保護するためだけにデータスクレイピング操作を取り締っているわけではない。そうしないと多額の罰金につながる可能性があるからだ。同社は今年初め、イリノイ州の個人情報保護法の体系的違反を疑う集団訴訟の和解のため5億ドル(約527億円)以上の支払いを命じられている。そして昨年はプライバシー侵害をめぐってFTCと和解し、50億ドル(約5270億円)の罰金を支払っている。政府がオンラインプライバシーとデータ違反の規制をさらに強化しようとしているため、このような罰金がさらに加算される可能性がある。
同社は、法的措置だけがデータスクレイピング防止のための処置ではないと言及。技術チームやツールにも投資しており、不審な活動や不正な自動機能を使ったスクレイピングを常に監視、検出しているとのことだ 。
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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Facebook 訴訟 スクレイピング
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(翻訳:Dragonfly)