個人所有のクルマによる配車サービスという分野でUberなどの企業がしのぎを削る一方、人を運ぶという分野には運ぶ人数がはるかに多いのにも関わらず、まだ古いビジネスモデルがそのままの業界がある。長距離バス業界だ。
ここまで言っただけでは笑われそうだが、私は「バス版のUber」というビジネスを話しているのではない。この業界がもつ複雑さはバスが家までやって来たとしても無くならない。そうではなく、それぞれのバス会社が単体で提供するルートよりも遠くに行くとき、この業界の複雑さがのしかかる。バスを乗りつぐ中距離や長距離の旅行を計画することは、ユーザーにとって非常に骨の折れる作業だ。バスの時刻表は会社によって別々に提供されていて、チケットを購入するプラットフォームはもちろん、価格もバラバラなのだ。
ベルリンを拠点とするGoEuroが1億4600万ドルを調達し、ヨーロッパ地域の鉄道、飛行機、バス、車での移動手段の比較し、それぞれの移動手段を組み合わせることができる検索ツールを開発したのも、おそらくこれが理由だろう。
しかし、より大きなディスラプションが起こる土壌ができているのは開発途上国のマーケットのようだ。なぜなら、バスが最も利用されている地域はそのような開発途上国のマーケットだからだ。
ロシアのマーケットが抱える問題に世界が注目するなか、モスクワを拠点とするBusforは静かにその仕事に取りかかっていた。
同社はロシア、東欧、アジア諸国のバスチケットの検索と購入ができるプラットフォームを提供している。どのようなチケット販売サイトにも対応しているため、バスの運用会社と競合することはない。彼らは企業と消費者の両方が使いやすいプラットフォームを提供しているだけあり、そこから得る手数料が彼らの収益となるからだ。
今回、BusforはロシアのPEファンドであるBaring VostokとElbrus Capitalの2社から2000万ドルを調達したことを発表している。
それと同時に、おなじくロシアを拠点とする既存投資家のInVenture Partnersも出資金額を引き上げている。これにより、今回の合計調達金額は2500万ドルとなる。
Busforは今回の資金を利用して国内向けビジネスを強化するとともに、新しいマーケットへの進出も目指す。2019年までにロシアのバスチケット販売において20%のシェアを獲得することが今後の目標のようだ。
同社の創業は2012年で、創業者は元レーシングドライバーのIIya Ekushevskiyと元デベロッパーのArtem Altukhovの2人だ。彼らがBusforを起業したのは、旧ソ連諸国ではどの交通手段よりもバスが利用されていることに気づいたことがきかっけだった。しかも、それらの国々で利用されているオンラインのチケット販売サイトはどれも酷いクオリティのものばかりだった。
同社のプラットフォームを利用することで、バス会社やバス停は簡単にバスチケットのオンライン販売ができるようになる。同サービスはロシア、東欧諸国、独立国家共同体(CIS)に所属する12ヵ国、タイで利用可能だ。Busforはこれまでに5000社のバス運営会社と提携を結んでおり、月あたりの利用ユーザー数は200万人だという。
同社の競合にはドイツのFlixbusとインドのRedBusなどがある。しかし、Busforのビジネスモデルはこの2社を組み合わせたものであり、それによりバス運営会社はより広いマーケットにアプローチすることが可能となる。その結果、運営会社は他社と競争するためにサービスのクオリティを高めなければならず、乗り心地のよいバスの購入などにもっと資金を回すようになるかもしれない。便利なプラットフォームだ。
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