ロシアが独自の内部インターネットのテストを開始

ロシア国内のニュース報道によれば、ロシアは世界的なウェブの代替として機能する、国家規模のインターネットシステムのテストを開始した。ロシアがどの段階に達したかは明確ではないが、障害回復力が高く、そして恐らくはより簡単にコントロールできるインターネットが追求されていることは確かだ。

もちろんインターネットというものは、物理的に、仮想的に、そしてますます政治的にインターフェイスしなければならない接続する国同士の世界的なインフラストラクチャの連携網で構成されている。中国など一部の国は、そのインターフェースのローカル側からアクセスできるウェブサイト、アプリ、およびサービスを制御することで、そのインターフェイスを極めて慎重に規制している。

画像クレジット:Quynh Anh Nguyen

ロシアも徐々にそのアプローチに傾いていて、今年始めにプーチン大統領はRunetに関する法律に署名している。Runetは上記のような規制が必要になった場合(あるいは都合が良くなった場合)に、分離された内部インターネットを維持するために必要なインフラストラクチャを構築するためのものだ。

プーチン大統領は今週初めに国営の報道機関であるタス通信に対して、これは純粋に防衛的な措置であると説明した。

その説明によれば、Runetは「主に海外から管理されているグローバルネットワークからの、世界的規模の切断の悪影響を防ぐことのみを目的としています。インターネットから切断されないようにオンにできる自分たちのリソースを持つこと、これがポイントで、主権というものなのです」ということだ。

BBCによって伝えられた、タスとプラウダからのより新しい報告によれば、この動きが理論上のものから実践的なものになったことを示している。いわゆるモノのインターネット(IoT)の脆弱性に関するテストも行われた。もしロシアのIoTデバイスのセキュリティ慣行が米国同様にお粗末なものるなら、それは残念なことだったに違いない。また、ローカルネットが、どのようなものであれ「外部の負の影響」に立ち向かうことができるかどうかも調査された。

ロシアがここで試みていることは、小規模な仕事ではない。表向きは主権と堅牢なインフラストラクチャについての話だが、米国、ロシア、中国、北朝鮮、および高度なサイバー戦争能力を持つ他の国々との間の緊張関係も間違いなくその一部だ。

世界から切り離されたロシアのインターネットは、現段階ではおそらくほとんど機能しないだろう。ロシアは他の国と同様、常に世界のどこか別の場所にある資源に依存しており、もし国が何らかの理由で殻に閉じこもってしまった場合、インターネットが通常通りに機能するためには、そうした資源の多くを複製する必要があるだろう。

国の一部から他の場所に直接接続する物理インフラストラクチャと同様に、現在は国際接続を介して接続する必要があるDNSも別個のシステムが必要になるだろう。そして、それは単に、ロシアのイントラネットを機能させる基本的な可能性を生み出すために行われる。

堅固な「主権インターネット」が必要になる、という考えに反対するのは難しいが、それは国家インフラへの単純な投資というよりは、紛争への準備だと考えざるを得ない。

とは言うものの、Runetがどのように成長し、どのように使用されるかは、その機能と意図された目的に関するより具体的なレポートを受け取るまでは、推測の範囲を越えることはない。

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(翻訳:sako)

米財務省が選挙介入のロシア人2名を制裁

米財務省は、虚偽情報集団に従事した罪でロシア人2名を制裁した。声明によると、Igor Nesterov(イゴール・ネステロフ、34歳)およびDenis Kuzmin(デニス・クズミン、28歳)の2名は、Internet Research Agency(IRA)と名乗る虚偽情報やフェイクニュースを流布する集団で働いていた。IRAは、ロシア政府が2016年米国大統領選挙の結果に影響用を与えるために誤情報を拡散した歳に中心的役割を演じた。

財務省はロシア人2名を特定した理由は明らかにせず、昨年トランプ大統領が署名した海外からの選挙介入に関わったロシア人に制裁を課す大統領命令書に言及しただけだった。

財務省広報官は声明の内容以外にコメントしなかった。

米大統領選にロシアが介入した疑惑および当時のトランプ大統領陣営に関わるあらゆる関与を捜査したロバート・モラー特別検察官によると、IRAが活動を開始したのは2014で、大統領選の2年前だった。同組織はTwitter、Facebookなどのオンラインプラットフォームを利用して偽ニュースを拡散した。確認されているある事例では、市民の怒りと過激な政治論争をかき立てるために2つの対立するイベントを実世界で設定した。

財務省はほかにも、企業3社、飛行機3台、および船舶1隻に対しても制裁措置を講じた。

関連記事:Mueller report details the evolution of Russia’s troll farm as it began targeting US politics

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

あなたのインスタストーリーが知らないロシア人に見られているワケ

Instagram(インスタグラム)を使っている人は、ここ数カ月、多くの知らない人が自分のストーリーを閲覧しているのが気になっているかもしれない。それも、自分をフォローしてもいないロシア人と思しき人が。だとしても、それはあなただけではない。

まただからといって、あなたがロシアの偽情報キャンペーンに巻き込まれているわけでもない。少なくとも、たぶんそうではない。しかしなんだか怪しい感じがするのは間違いない。

TechCrunchのイベントディレクターであるレスリー・ヒッチコック(Leslie Hitchcock)が、編集部にこの問題を提起してきた。ここ数カ月、彼女自身のインスタのストーリーが、何の関連もなさそうなロシア人のアカウントによって閲覧されているのが、なんとも「気味が悪い」というのだ。中には、数千人のフォロワーがいるアーティストなど、本物のアカウントもありそうだが、その他は「奇妙」なものにしか見えないという。

Redditのスレッドにも、「私をフォローしていないロシアのモデルが、私のインスタのストーリーをずっと観ているのはなぜ?」といった、現実的な問題を提起しているものがある。残念ながら、その答えは、あなたが期待してしまうような理由からではない。

Instagram自体も、この問題を認識しており対策に取り組んでいると語った。

また、この不当な活動は偽情報キャンペーンなどに関連したものではなく、新たなグロースハッキングの手法によるものだという。つまり、サードパーティにお金を払ってフェイクの「いいね」やコメントを付けてもらったり、フォロワーの数を増やしてもらうことで、自分のアカウントの価値を高めようという行為の一種なのだ。この場合には、本当は何の興味もない人のストーリーを閲覧することで、見せかけの活動を生み出し、それによって本物のアカウントと認められて、より多くのフォロワーを獲得しようというのだ。

不気味と言えば不気味だ。これらのグロースハッカーの中には、おそらく大量のスマホを用意して、実際にはだれも観ていないInstagramストーリーを「閲覧」したことにするのだろう。これは明らかに、ストーリーに広告を掲載するために料金を支払っている広告主にとっても嬉しいものではない。

Hydrogen(ハイドロジェン=水素)という名の英国のソーシャルメディア代理店も6月頃に、この問題に気付いた。そしてブログで「Instagramストーリーの大量の閲覧は、2019年版のフォロワー購入」だと述べている。つまり、Facebook傘下のInstagramが、ボットやフォロワーの売買を禁止した結果、このような新たな手法が登場したというのだ。

つまるところ、偽物をつぶすのは、永遠に続くもぐらたたきのようなものなのだ。これを、ザッカーバーグの苦行と呼ぶことにしよう。

「私たちの研究によって、いくつかの小さなソーシャルメディア代理店が、このテクニックを使って、一般の人々とやり取りしているように見せかけていることが分かりました」と、Hydrogenは書いている。さらに「これはコミュニティを構築するための正しい方法ではありません。Instagramは早急に、これを取り締まることになるでしょう」という賢明なアドバイスも載せている。

Instagramは、これについて対策を講じるよう試みているということを私たちに明かした。つまり、このようなフェイクなストリーの閲覧という新手の不正な活動を防ぐことができるよう、取り組んでいるという。

また今後数カ月の間に、特にストーリーについて、そのような活動を減らすための新たな措置を導入するという。しかしそれがどのようなものになるのか、正確なところは明かさなかった。

私たちは、なぜロシア人なのかということについても質問してみたが、Instagramはなぜ偽のストーリービューの大部分が、ロシアから(愛をこめずに)来ているように見えるのか、その理由についての秘密を明かしてはくれなかった。そう、その部分は謎のまま残っている。

自分のInstagramのストーリーが、無関係な人の注目を集めるための無節操な発信手段として悪用されることを防ぐために、今何かできることがあるだろうか?

今のところ、アカウントをプライベートに切り替えることだけが、グロースハッカーに対抗する唯一の手段だろう。

ただし、それでは、あなたがInstagramのプラットフォーム上で誰にコンタクトできるか、そして逆にだれがあなたにコンタクトできるかを制限することになる。

私たちがヒッチコックに、アカウントをプライベートに切り替えればと提案すると、彼女は肩をすくめて「私はブランドと関わっていたいの」と答えたのだった。

画像クレジット:Aleksander Rubtsov

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

ロシアの作戦行動は非常に日和見主義的で、細分化され、ときには矛盾を孕んでいる

ロシアのセキュリテサービス、とくにハッキングや情報セキュリティに関するものは、長年にわたり悪意に満ちた内部の駆け引きに苦しんできたことをご存知だろうか?ロシアの戦略に関する西側の分析を大幅に採り入れた、誰もが認めるロシアの基本方針など、一度も存在したためしがないことをご存知だろうか?クレムリンの秘密主義が、漏洩したわずかで細かいながらおいしい情報を基に、まったく根も葉もない噂と陰謀論を生み出す家内産業になっていることをご存知だろうか?

まあ、最後のひとつぐらいは知っていたかもしれない。すべての人が、少なくとも「ロシアン・ボット」を信じない人をソーシャルメディアの素人と呼ぶ人たちはみな、今ではロシア陰謀論者だ。そしてもちろん、暗殺、ハッキング、ソーシャルメディア攻撃などのロシアによる広範な敵意ある活動の証拠はおびただしく存在する。

しかし、ロシアのどの組織が何をしているのか、そしてその理由を正確に特定するのは極めて難しい。それは、昔の冷戦時代のスパイ小説を思わせる。クレムリン研究家は、ひと握りの旧ソ連共産党政治局員をあぶり出したものの、いつどこで誰が活動していたかは大きく見誤っていた。ほとんど情報がなかったからだ。あの忌まわしい時代のように、今の私たちの本能も「ロシア」を滑らかに動く精巧で充実した一体型の悪性マシンだと思ってしまう。

もちろん、その認識は間違っている。むしろ、急激に根底からの変化に見舞われる時代においては、複雑で、地に足が付かず困惑した、多くの人や機関の泥沼のような問題が何層にも重なった、ときとして内輪の対立が煽られるところだ。私は本日、Blsck HatでKimberly Zenz(キンバリー・ゼンズ)氏の講演を聞いてきた。彼女が訴えていたのは、ロシアとロシアの活動に関するとても繊細な考察だ。もちろん彼女は正しいが、悲しいかなインターネットの世界では繊細さが絶滅しかけている。

しかし、そうした繊細さは、とくにスパイ小説の要素としては大変に魅力的だ。2017年、ロシア情報部員とハッカーが突然、なぜだかカスペルスキーの調査主任とともに大量に逮捕された。その1人は、Stratforによれば「仲のいいロシア連邦保安局の職員との会議中に、明らかに強制的に退席させられ、鞄を頭の上に載せて連行された」という。最終的にこの事件は、彼らによる「米国に肩入れした大逆」とされた。

今年、4人が最大22年の懲役刑を宣告された(彼らは不服を申し立てている)。長年、情報セキュリティセンター(ハッキングを含む国内外のサイバー能力においてはロシア最大の監視機関とされる)の局長を務めてきたAndrei Gerasimov(アンドレイ・ゲラシモフ)氏は、この事件の1週間後に辞任している。

再びStratforから引用すると「反逆罪で告発されていることから、この事件は国家機密扱いと考えられる。つまり、公的な説明も証拠も示されない」とのことだ。この秘密主義の霧の中から、いくつもの噂や陰謀論が湧き上がってきた。この告発は、ライバルを排除するための完全なでっち上げではないか?ライバルを攻撃するために誰かが米国に情報を漏らし、それが見事に暴発したのではないか? ロシア連邦保安局が操るハッカー集団が、強大な力を持つロシア新興財閥にとって都合の悪い何かを発見してしまったからではないか?それは誰にもわからない。

もちろん、繊細さの欠片もない「滑らかに動く悪性マシン」陰謀論もある。この陰謀論では、今回のケースは機械の内部から出て来た小さなゴミに過ぎない。「一枚岩のロシアの統一された集団意識」という分析が一般に浸透していることには、まったく驚く。その一例として、このスキャンダルが蔓延した後、Politicoはこう書いている。「最近、ロシアはあらゆる相反的な角度から米国を攻撃してくるようになった。頭が混乱する?それはゲラシモフ・ドクトリン(ワレリー・ゲラシモフ大将の名前に由来する。上記の失脚した元ロシア連邦保安局局長アンドレイ・ゲラシモフではないのでご注意を)を理解していないからだ」。

このゲラシモフ・ドクトリンは、自己矛盾しているように見えるにもかかわらず、ロシアによるあらゆる活動の根拠としてよく持ち出される。「敵国内での不安や紛争を状態化させる環境を作り出す」ための、故意に人々を困惑させる多様な戦略として使われているという。昨日のBlack Hatの別の講演でも、これが引き合いに出されていた。波風を立てないよう私はその議論から遠ざかったのだが、自分にとっては意外でもなんでもない。ロシア政策のアナリストは今でも変わらずこれを引用している。

しかし、現代のクレムリン研究においてゲラシモフ・ドクトリンを拠り所にすることの問題点は、まさにこの言葉を生み出した当人の話なのだが、そんなものは実際に存在しないということだ(皮肉にもこれは、CIAがアラブの春を扇動したというゲラシモフ大将自身の陰謀論から発生したものだ)。ロシアの作戦行動には、統一されたドクトリン(基本原則)などはなく、むしろ以下のような状態だ。

非常に日和見主義的で、細分化され、ときには矛盾をはらんでいる。大統領主導によって大規模な作戦行動が組織されることもあるが、それは希だ。むしろ作戦行動は、クレムリンからの見返りを期待して右往左往する「政商」の団体によって考案され実行される。

これは非常に重要な差異に思える。そしてこれがゼンズ氏の講演の(私にとって)もっとも面白かった部分につながっている。彼女は「ロシア政府は、ロシアのサーバー犯罪者を戦略的資産と考えています」と話していた。そしてこの反逆事件のひとつの副作用として、インターネット上の脅威に関するロシアと西側諸国との情報共有と協力関係が大きく後退してしまったというのだ。

この戦略的な立場は、同時に、ロシアのハッカーは政府の諜報員となっている可能性が高く、ロシアの情報セキュリティ企業は政府とべったりの関係であることを意味しているのだろうか?私はクレムリン研究家ではないが、まさにこの疑問が間違いであると感じている。こんなことを問うても仕方がない。むしろ問題なのは、他の国々が強力な法律でもって区別している「民間セクター」と「政府」と「犯罪者」との比較的はっきりとした違いが、現代のロシアのような国には現実に存在せず、その区別が往々にしてあいまいになっていることだ。

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(翻訳:金井哲夫)

ムラー特別検察官報告の公表で民主党ヒラリー候補の大統領選に新しい光

米国時間4月18日に公表されたムラー特別検察官の報告書は、ロシア政府が2016年の大統領選でヒラリー・クリントン候補の選対と民主党全国委員会のコンピューターをいかにハックしていたかに関する新しい情報を含んでいた。

ある時点でロシア機関は大量の機密情報をハッキングするために 米国内に設置されたサーバーから作戦を実行していたと報告は述べている。

今回公表された情報の多くはビクトル・ボリソビッチ・ネティクショ(Viktor Borisovich Netyksho)らに対する2018年7月の起訴状によって知られていた。 ネティクショはロシア軍情報機関GRUのサイバー作戦部署のユニット26165のメンバーで、ムラー特別検察官の起訴状はコロンビア地区連邦裁判所大陪審に付され「起訴相当」と認められている。

しかし今回司法省から発表された488ページに上る報告書には新しい情報も含まれており、GRUの米国に対するハッキングに新しい光を当てるものとなっている。

GRUのエージェントは、ヒラリー選対のコンピュータシステムに侵入するために、わずか5日間でスピアフィッシング(特定標的攻撃)メールを選対の職員、ボランティアに大量に送りつけていた。

GRUのハッカーはヒラリー選対の委員長、ジョン・ポデスタ氏のメールアカウントにも侵入しており、この内容は後に公開された。

GRUはハッキングで得られたパスワードなどの認証情報を利用して数日後には民主党議員選挙対策委員会のシステムに侵入することに成功した。GRUのハッカーはシステム管理者のログイン情報を得てサーバーに対する「無制限のアクセス」が可能になり、数週間で民主党ネットワーク内の29台のコンピューターに侵入することができた。

GRUのハッカーはファンシーベア(Fancy Bear)というニックネームで知られていたが、内部には特定の任務を担当するユニットが存在した。ムラー報告は特にユニット26165を米政府、政党のハッキングを行うグループとして認定している。報告ではこのユニットを「DCCC(民主党議員選対)、DNC(民主党全国委員会)およびヒラリー・クリントン選対と関係者を主たるターゲットとする組織」と述べている。

ハッカーは参加ユーザーのパスワードなどの情報を入手するためにMimikatzなど数種類のツールを用いていた。MimitatzははWindowsコンピューターのメモリをダンプしてパスワードなどの認証情報を入手するハッキングツールだ。X-Agentはユーザーのコンピューターのスクリーンショットとキー入力ログを得られる。X-Tunnelはハッキングしたネットワーク内の大量のデータを素早くGRUのサーバーにコピーできる。

ムラーはユニット26165はGRU自身のサーバーとターゲットのサーバーの間に「中間サーバー」を何段階か挟むことで直接の関連を隠そうとしたと認定している。ムラーによれば、こうした中間サーバーはアリゾナに設置されていたという。これは注目を避け、外国勢力介入の証拠を残さないためだったのだろう。

この作戦でヒラリー・クリントン選対のサーバーに保存されちた情報70GBのすべてと民主党全国委員会の300GBのデータの一部がロシアの手に渡った。

一方、ハッキングで入手した情報を公表、拡散すためにGRUは別の組織を作っていた。ユニット74455は不正に入手したデータを拡散するとあめに2つの架空の組織、人物を作り上げた。DCLeaksはハッキングされた資料をホストするウェブサイトで、Guccifer 2.0はジャーナリストに対応するハッカー代表の役割だった。

米政府の圧力を受けてソーシャルメディアはこの2組織のアカウントを停止した。その後、ハッキングされた数千のファイルの内容はWikiLeaks.を通じて公開されている。

ムラーの報告には2016年7月のトランプ(当時)候補の発言とハッキングの関係についても述べている。「ヒラリー・クリントン候補のサーバーから行方不明になっている3万通のメールが発見されることを望む」とトランプ候補が記者会見で述べた。クリントン候補は国務長官になった後も私的サーバーで公的メールをやり取りしていたが、調査時に大量のメールが紛失していることが問題となった。ムラーによれば、トランプ発言の「およそ5時間後」にGRUのハッカーはヒラリー・クリントン候補のオフィスをターゲットにし始めたという。

Unit 26165のターゲットにはヒラリー選対の幹部も含まれていた。ムラーは「これらのメールアカウントは一般に知られていなかった。GRUがどのようにしてこれらのアカウントの存在を知ったのかは不明」だと述べている。

ムラーによればトランプ選対は「ヒラリー・クリントン(が国務長官だった時代の)私的サーバーから消えたメール」を発見しようと努力していたと述べている。トランプはマイケル・フリン氏(安全保障担当補佐官に任命されたがロシア疑惑で辞任)との私的会話でこうしたメールの内容をロシアから得ることができないか尋ねている。この紛失メールを探した人物の1人が2017年5月に自殺したピーター・スミス氏だった。iスミスはロシアのハッカーと接触があったと非難されていたが、ムラー報告は事実ではないとしている。

こうしたトランプ選対の行動はキャンペーン全体を違法なものとするものだったとはいえない。ではすべて合法的だったか?そうではないかもしれない。

CNNの法律千専門家、Elie Hon氏によれば、 「現行法規の下では、ハッキングによって得られた情報を公表しても公表者自身がハッキング行為を共謀したのでないかぎり違法とはならない。特別検察官の報告はトランプ選対の関係者がハッキングで得られた情報を拡散したことがないとは言っていない」ということだ。

画像:Gattyimages

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ロシアはインターネットの遮断スイッチをテストへ

サイバー防衛の方策の1つとして、ロシア政府は、世界のウェブから国を実質的に遮断するような措置を試行する予定だと伝えられている。

昨年、ロシアはDigital Economy National Program(デジタル経済国家プログラム)を導入した。これは、世界規模のインターネットから国ごと切り離した場合でも、ロシア国内のインターネットプロバイダが機能できるようにするための計画だ。この計画では、ロシアのISPは、ウェブのトラフィックを国内のルーティングポイントにリダイレクトし、ドメインネームシステム(DNS)、つまりグローバルなインターネットを支えているドメイン名とアドレスの一覧表を、独自のコピーに切り替える

このテストは、いくつかの理由で有用だろう。ロシアは、国家安全保障に対してある種のサイバー脅威が発生した場合に、取るべき抜本的な措置をシミュレートすることを第1の目的としている。しかし、個人と報道の自由が制限されていることで悪名高い国にとって、このテストは、自国の人々を管理し、外国の影響力から守るために、より密接に管理されたインターネットを、どのように利用できるかを検討するためにも有効な方法だろう。

この極端な措置は、もし成功すれば、ロシアが国家によって管理された独自のインターネットを効果的に運営し、それが適切だと判断した場合には、いつでも世界から切り離すことができるようになる。この試験が実施される日時はまだ分かっていないが、今年の4月1日以前であろうとは予想されている。それは、国会議員がDigital Economy National Programの改定案を提出する期限だからだ。

画像クレジット:MLADEN ANTONOV/AFP/Getty Images/Getty Images

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

iOS版Telegramのアップデートが再開――Appleが凍結を解除

一日のあいだに物事は良い方向にも悪い方向にも変わるものだ。6月1日、TelegramのCEO Pavel Durovは、6週間におよぶ凍結期間を経てiOS版Telegramのアップデートを再開すると発表した。凍結期間のあいだ、Appleは世界中のApp Storeに登録されたTelegramには手をつけず、すでに同アプリをインストールしたユーザーに対するプッシュ通知も許可していたが、アップデートは受け付けていなかったのだ。弊誌が確認したところ、現在ではTelegramのアップデートを許可していることをAppleも認めた。

「素晴らしいニュースだ。たった今、Appleが最新のiOS版Telegramのアップデートのレビューを無事終え、ようやく待ち望まれた修正や改善を含む新バージョンのアプリをApp Storeにアップロードできるようになった」とDurovは同日語った。

このAppleによる方針変更のたった一日前には、iOS 11.4のリリース後TelegramのiOS向けのアップデートが世界中のApp Storeでブロックされたため、アプリに一部不具合が生じているとDurovが発言したところだった。なお、アップデート版をユーザーのもとに届けられなかったため、TelegramはEU一般データ保護規則(GDPR)にも準拠できないままでいた。

しかし依然、そもそもなぜAppleがTelegramのアップデートをブロックし、そしてこの段階でアップデートの再開を許可したのかはわかっていない。

ロシア政府がTelegramを取り締まろうとしていることと、この度の凍結には何か関係があるとDurovは主張する。というのも、ロシア連邦通信局(RKN)がAppleに対してTelegramをApp Storeから削除し、すでに同アプリを利用しているユーザーに対してはプッシュ通知を停止するよう求めたという報道の直後にアップデートが凍結されたからだ(実際のところ、RKNは本件について数日前に声明を出していた)。

しかし結局Appleはアップデートを受け付けなくなったものの、TelegramをApp Storeから削除することはなく、プッシュ通知もそのままだった。

「ロシア当局がAppleにTelegramをApp Storeから削除するよう求めて以降、Appleは世界中のApp StoreでTelegramのアップデートを受け付けなくなった」とDurovは5月31日の時点で記している。なお、GoogleやMicrosoftさらにMacのアプリストアに登録されたTelegramは何の影響も受けていない。

弊誌はTelegramに何がこの方針転換の背景にあるのか確認しているが、Appleは本件に関するコメントを控えている。

Telegram上の暗号化されたメッセージを復元する手段を求めるRKNに同社が応じなかったことから、RKNがTelegramの利用を禁じて以降、同アプリをめぐってはさまざまな争いが巻き起こっている。

ロシアでは、国内で利用できるいかなるアプリやサービスの運営者も、政府がデータにアクセスできるようサーバーを現地に置いたり、バックドアを作成したりしなければならないと法律で定められている。政府は安全保障という大義名分のもとにこのような制度を設けているが、多くの企業は同法に異論を示しており、Telegramのように(イデオロギー的な反対は別にして)政府の要請を叶えるようなキーを提供することは不可能だと主張する企業も存在する。

Durovは、以前立ち上げたソーシャルサイトVkontakte.com上での表現の自由をめぐっても当局と衝突した経験があり、それが現在Telegramに導入されている仕組みを作るきっかけのひとつとなった。

ここ数週間のあいだ、Telegramはこの問題に対する一時的な解決策として、ユーザーにVPNを使って同アプリにアクセスするよう勧めると同時に、当局にデータを渡さずにサービスを継続しようとするTelegramに共感するホスティング企業のサービスを利用し、IPアドレスを次々に変えながら生きながらえてきた。

かつてRKNがTelegramのIPアドレスホッピングを阻止しようとした結果、一時は合計1900万件以上ものIPアドレスがブロックされ、Googleを含むさまざまなサービスがダウンしたことがあった。そのときは多くの人々がデモに参加し、結果的にTelegramと事件に関する報道が世界中に広まっていった。しかし、これまでのところAWSやGoogle Cloud Platformは、TelegramにIPアドレスホッピングをやめるようには要請していない。

Telegramは世界中に2億人ものユーザーを抱えており、そのうち約1400万人がロシア国内のユーザーとされている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

Image Credits: Thomas Trutschel/Photothek via Getty Images

ロスコスモス、衛星打ち上げ失敗は初歩的エラーとの説を否定――ロシアの宇宙ビジネスには打撃

先月、ロシアはアムール州に新たに建設されたヴォストチヌイ宇宙基地から多数の衛星を積んだロケットを打ち上げたが軌道投入に失敗した。このほどロシアの宇宙開発組織ロスコスモスが発表したところによると、この失敗はこれに先立ってロシアのドミトリー・ロゴジン副首相が示唆していたのとは異なり、初歩的なプログラミング・エラーによるものではないという。

11月28日の打ち上げはロシアの宇宙事業にとって重要なビジネスで、4500万ドル相当のロシアの気象衛星Meteor-M No. 1およびNo.2に加えて18基の小型衛星を搭載していた(SpaceNewsのリスト)。この打ち上げはヴォストチヌイ基地からは2回目で、前回の打ち上げは1年半以上前のことだった。

Soyuz-2.1Bロケットの発射自体は正常に見えたものの、数時間後にロスコスモスはMeteor-Mが「所定の軌道上にないためコンタクトを取れなくなった」と発表した。その後、ロケットの2段目とペイロードの衛星はすべて太平洋上で失われたことが確認された。

当然ながら、何億ドルもの損失に「いったい何が起きたのか?」という声が起きた。ロスコスモスのアレクサンドル・イワノフは「ソフトウェア・アルゴリズムに誤りがあり、新しいヴォストチヌイ発射基地の位置とが予期せぬ複合を招いた」と説明した。

ところが昨日、国営テレビ、Rossiya 24のインタビューでロゴジン副首相が思いがけないヒューマン・エラー説を述べた。

Reutersによれば、「あのロケットは打ち上げ地点が(カザフスタンの)バイコヌール宇宙基地に設定されていた。打ち上げ地点の設定が誤っていた」と述べた。

これが本当ならロシアの宇宙事業には大恥辱だ。バイコヌールはロシアの主要な宇宙基地だが、何千キロも東のヴォストチヌイで発射されるロケットにバイコヌールの位置が入力されたというのも驚きなら、その間違いが最後まで訂正されなかったとすればそれ以上に大きな問題だ。ロスコスモスが異例に早く反応してロゴジンの主張に反駁したのもそれが理由だろう。

RIA Novostiの記事(原文ロシア語、RTの英訳による)によれば

今回の飛行ミッションはすべてヴォストチヌイ・スペースドロームを基準としており、実証済みの方法により専門家がチェックを行った。今回の事故の原因は、ヴォストチヌイ宇宙基地の特異性による[もので]既存のいかなる数学的モデルによっても予測不可能だった。

要するに「衛星打ち上げは難しい。しかしわれわれは間抜けの集まりではない」というこだろう。ロスコスモスは衛星打ち上げで最近まで成功を繰り返しており、発射位置というような初歩的なミスで失敗するというのは辻褄が合わない。どんな高度な数学モデルも失敗することはあるだろう。

しかしたとえそうであっても、この失敗はロシアの宇宙事業にとって高くついた。失敗の原因を巡る今回のような論争も決して好感を与えない。全体としてロスコスモスに対する信頼感は大きく低下した。SpaceXのような民間宇宙企業が衛星打ち上げを連続して成功させている状況を考えると、、先月の失敗はこれまで多額の収益をもたらしてたきたロシアの宇宙事業に対する深刻な打撃となりかねない。

画像:: Roscosmos

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

アメリカYahooデータ漏えいで起訴されたカナダのハッカーが有罪を認める

2014年に起きた大規模なアメリカYahooのデータ漏えい事件に関与したとして起訴されていたカナダ国籍のハッカーが有罪答弁を行ったことが明らかになった。このハッカーはロシア情報機関の職員に雇われてYahooのデータベースに侵入し、5億件のアカウント情報を不法に得ていた。被告人は22歳のカザフスタン生まれのカナダ人で、Karim Baratovといい、アメリカYahooへのハッキングで逮捕された唯一の人物だ。関与が明らかとされる他の3人はロシアにおり、アメリカの連邦裁判所に姿を現すつもりはまったくないようだ。

検察側発表によれば、関与している他の3人のうち2人はFSB〔ロシア連邦保安庁〕に勤務するロシアのスパイだったとされる。もう1人は、ロシア人ハッカーのAlexsey Belanだ。検察側はFSB職員のDmitry DokuchaevとIgor Sushchinがハッキングを画策し、 Baratovを雇ったとしている。カリフォルニア州北部地区連邦検事局が発表した資料によれば、事件はこのようなものだったようだ。

共謀容疑に対する Baratovの有罪答弁から判断すると、同人の役割はFSBが関心を抱く人物のウェブメール・アカウントのハッキングにあった。Baratovはアカウントのパスワードを取得して金銭と引き換えにDokuchaevに引き渡した。〔カナダで逮捕された〕Dokuchaevの合衆国への引き渡し請求においても明らかにされているとおり、SushchinとBelanの2人もYahooのネットワークへの侵入に関与し、Yahooアカウントへのアクセスを得ていた。〔ロシア情報機関は〕Google、Yandex(ロシアのサービス)など多数のウェブメール・アカウントへのアクセスも必要と考えており、 Dokuchaevはこうした任務もBaratovに与えていた。

Baratovの証言によれば、彼はロシア語のウェブサイトにハッキングの求職広告を掲載していたという。連邦保安庁からの契約を得るとBaratovは正当なメールサービス管理者になりすまして被害者にメールを送りつける「スピア・フィッシング」の手法で騙し、パスワードを入手していた。

Baratovは コンピューター不正行為防止法違反共謀容疑1件および加重個人情報窃盗容疑8件について有罪を認めている。

画像: Justin Sullivan/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ロシアのYandexによる自動運転車オンデマンドタクシーサービスのデモ動画

ロシアの検索とインターネット技術の巨人Yandexが、Yandex自身が開発した自動運転車のプロトタイプを披露している。最初はタクシーのオンデマンド乗車サービスで、上のビデオは実際に車が動作している様子を示したものだ。このプロトタイプは、Yandexによるソフトウェアのテストを助けることが目的だ。Yandexはこの新興市場に向けての開発に対して、独特な良い位置を占めていると考えている。

Yandexは、Yandex.NavigatorとYandex.Mapsを含む現在の製品やサービスの中から、ナビゲーション、ジオロケーション、コンピュータビジョン、機械学習の専門知識を引き出したことに言及している。

「私たちは、YandexNavigatorのユーザーから受け取った匿名データを使用しています。このことから、交通渋滞、事故、速度制限、道路閉鎖などの交通イベントを伴う都市での運転を行なうことができるのです」。YandexTaxiのPR責任者であるVladimir Isaevが、電子メールで説明した。「私たちは長い間、多くのサービスでコンピュータビジョン技術を利用してきました。私たちはそれらを使って、私たちのジオロケーションサービスの中で、空き駐車スペースを見つけたり、道路標識を読み取ったりしています」。

Yandexでのコンピュータビジョン利用に関する専門知識は、類似した画像を検索結果で照合したり、言語サービスの提供を通じて写真内のテキストを翻訳したりすることで培われたものだ。そのソフトウェア開発努力と、この技術を自動運転の世界に適用する努力が合わされることによって、Yandexのプロトタイプ自動運転車用のソフトウェアは完全に社内で開発されている、と同社は語った。

また、屋根の上のVelodyne LiDARユニットだけでなく、車内のNvidia GTX GPUのショットにも気が付いた読者もいるかもしれない。Yandexは現在一般市場で手に入るコンポーネントだけでなく、「カスタムビルド」ハードウェアも利用していると語ったが、現在パートナーたちと、目的に合った自動車利用可能品質ハードウェアの作成について話し合っているということだ。

ビデオの中の車両はまだ実際の街の通りを走行してはいないものの、Yandexによれば、すべてが計画どおりに進めば、テストは1年以内に公道で行われると語った。商用サービスの可用性に関して語るのは時期尚早だが、最終的には、自動運転車を市場に出そうとしている自動車メーカーや他の企業と提携することが希望だと、Isaevは語った。

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(翻訳:Sako)

ロシア政府がJollaのSailfish OSを初のAndroid代替OSとして認可

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残り少ない独立系モバイルOSプラットフォームのひとつである、JollaのSailfish OSの未来が少しずつ見え始めてきた。他社へのライセンシングを目的に、Sailfish OSのコアコードの開発・保守を行っている、フィンランド生まれのJollaは、本日同OSがロシア政府および企業で利用されるために必要となる認証を取得したと発表したのだ。

近年ロシア政府は、AndroidとAppleのiOSの複占市場となっているモバイルOS界で、2つのOSを代替できるようなシステムの開発を奨励しようとしており、SailfishとTizenがその候補に挙げられていた。現状では、SailfishがTizenよりも、Androidの代替OSとして優位に立っているようだ。

さらにロシア政府は、海外製モバイルOSへの依存度を抜本的に減らしたいと語っている。具体的には、2015年の段階でAndroidとiOSが市場の95%を占めているところ、2025年までにはこの数字を50%以下にしたいと考えているのだ。

Sailfishがロシアの認証を取得する前に、今年に入ってからOpen Mobile Platform (OMP)と言う新たな会社が、ロシア国内の市場向けにSailfishプラットフォームのカスタマイズ版を開発する目的で、同OSのライセンスを購入していた。つまり、ロシアにとって極めて重要な”Androidの代替OS”は、現在Sailfishをもとに開発が進められているのだ。

OMP CEOのPavel Eygesは声明の中で「私たちは、オープンソースベースで作られ、他のOSに依存していないSailfish OSこそが未来のモバイルOSプラットフォームだと考えています。このOSは、ロシア以外の地域でも活躍できる可能性を秘めています。Sailfish OS RUSは、さまざまな人の参画やパートナーシップの上に成り立っており、ロシアを新たな高みに導くようなイニシアティブに向けて、私たちは積極的にパートナーやディベロッパーコミュニティに協力を働きかけていきます」と語っている。

他の独立系OSとは違って、SailfishはAndroidアプリと互換性を持っているため、MozillaのFirefox OSなど、なかなかユーザーが増えないOSに比べ、利用できるアプリの数において優位に立っている。なお、TizenでもいくつかのAndroidアプリが使えるようになっている。

Jollaは、TechCrunchの取材に対し、同社の投資家に今回Sailfishのライセンスを購入したOMPが含まれていることを認めた。そのため、昨年シリーズCを期間内にクローズできずトラブルに見舞われた(その後復活した同社は、今年の5月に再度資金調達を行い、1200万ドルを無事調達した)Jollaは、今後間違いなくB2Bのビジネスに注力せざるを得なくなる。

つまり今後Jollaは、インドのIntexのように、消費者に対してSailfishが搭載されたデバイスを販売している企業にOSをライセンスすることよりも、企業や政府に対してデバイスを販売している企業へのライセンシングに注力していくことになる。世界的にみれば、消費者向けデバイスにおけるAndroidの支配率はかなり高く、企業や政府の方が、データ・セキュリティについて専門的かつ差し迫った問題を持っている上、政府のサービスインテグレーションに対するニーズなどを考慮すると、この戦略にも納得がいく。

さらにJollaは、最近Sailfishが、ロシアのソフトウェアやデータベースに関する統一登録簿に追加されたと話す。これにより、今後ロシア政府やロシアの公企業は、モバイルデバイス関連のプロジェクトを行う際に、SailfishをOSとして利用することができるのだ。

Jolla会長のAntti Saarnioは、この登録プロセスに2015年の春から1年半近くかかったと語る。「登録プロセスは大がかりかつ長期に渡り、私たちもかなり力を入れてきました。まずは、ロシア情報技術・通信省が作成した代替モバイルOSの長いリストからスタートし、その後数が絞られていった結果、最終的に2つのOSが技術分析の対象となりました。ひとつがTizenで、もうひとつが私たちのSailfish OSでした」

「数ヶ月間におよぶ徹底的な技術審査を終え、彼らはようやくSailfish OSをコラボレーションの相手に選んだのです。その後、ロシア政府がSailfishベースでありながらも、独立したOSを利用できるように、Sailfishのロシア版のようなものを、私たちは現地企業と共同開発しました」

「ロシア政府は、監査・認証のプロセスを経た国家ソフトウェアのリストを持っているんですが、現在のところSailfishだけが、モバイルOSとしてそのリストに含まれています」と彼は付け加える。

ロシア版のOSは、Sailfishの派生物にはならないとSaarinoは強調する。むしろこのモデルは、ライセンシングパートナーのニーズにあわせて、Jollaがそれぞれのバージョンを開発するための土台となるものなのだ。ただし、コアコードは全てのバージョンで同じものが使われることになる。

同時にJollaは、拠点をロシアへ移し、アメリカ以外のひとつの国でだけ、AndroidとiOSに太刀打ちできるようなOSを開発するつもりもない。同社は、フィンランドにヘッドクオーターを置き続け、現在ロシアで取り組んでいるようなプロジェクトを、他のBRICs諸国へも展開していきたいと話しているのだ。

「私たちの使命は、OSをさまざまな目的に適合させ、その効率性を保つことです」とJollaのCEO兼共同ファウンダーであるSami Pienimäkiは話す。

「基本的に、私たちはSailfishをオープンソースのままにして、(ライセンス先に対して)常に最新のバージョンを提供しようとしています。ここでのJollaの責務かつ役目は、Sailfishの派生OSをつくらずに、ライセンス先企業とのコラボレーションを通じてのみ、Sailfishのカスタマイズ版を開発するよう徹底することです。私たちは、このモデルが他の市場でも成功すると信じています」と彼は付け加える。

「Jollaがロシアで成し遂げたのは、国家に対して自社のコードをベースにした独立モバイルOSを、自分たちのリリース方法で提供するという実例を作ったことです。私たちが知る限り、このような例は現在世界中で他には存在しません」とさらにSaarnioは続ける。

「世界中にはたくさんの国家が存在しますが、私はそのうちの多くが自分たち専用のサービスを求めていると考えています。そして、相手がロシアであるかそれ以外の国であるかに関わらず、実際に彼らにサービスを提供する方法について、少なくとも私たちにはノウハウがあります。今後は新たな顧客や国にアプローチして、ロシアで構築したモデルを他国で再現していきたいと考えています」

Sailfishは、大企業の支配が及ぼない独立系かつオープンなOSであるため、目的に応じてコラボレーションやカスタマイズをするのに最適です

「ある国が、自分たちのデータを管理するために、独自のモバイルOSを必要としているとしましょう。そして、彼らは既にクラウドソリューションなどへ投資しているとした場合、彼らの頭の中にすぐに疑問が浮かんできます。『それじゃ、専用のモバイルOSの開発には、どのくらい時間がかかって、いくらぐらいの資金が必要になるんだ?』これは普通であれば、答えるのが大変難しい問題ですが、今の私たちであれば、半年でここまでできると回答することができます。既にロシアでの実施例があり、予算感も把握しています。そのため、ロシアでのパイロットテストが完了すれば、私たちの顧客候補となる国は、具体的な情報をもとに判断を下すことができるんです」

2015年2月に、ロシアの情報技術・通信大臣であるNikolai Nikiforovは、「グローバルITエコシステムの非独占化」を求める発言をし、国内のディベロッパーが、SamusungのTizenとJollaのSailfishをサポートするよう、両社のプラットフォームへのアプリの移植に対して助成金を交付していた。

さらに同年5月、Nikiforovは、Jollaの株主にフィンランド、ロシア、中国の投資家が含まれていることに触れながら、Sailfishのことを”ほぼ国際企業”だと表現していた。

「私たちは、オープンなOSをベースとした、クローズドなモバイルプラットフォームを独自に開発する必要があると考えています。そのような構想をサポートする準備はできていますし、きっとBRICs諸国のパートナーもその計画に賛同してくれることでしょう。インド、ブラジル、南アフリカの戦略投資家も、いずれSailfishに参加することを私たちは願っています」と彼は当時語っていた。

また、フィンランドとロシアの物理的な距離がロシア政府の好感につながり、SailfishがTizenに勝つ要因のひとつとなった可能性も高い。

「Sailfishは、大企業の支配が及ぼない独立系かつオープンなOSであるため、目的に応じてコラボレーションやカスタマイズをするのに最適です」とPienimäkiは、Sailfishが選ばれた理由について話す。

OMPのロシア版Sailfishには、カスタマイズの結果、追加でセキュリティ機能が搭載される予定だ。Sailfishのプラットフォーム自体は既にロシア語をサポートしているため、ローカリゼーションは必要ない。「現在私たちはセキュリティ機能の強化にあたっています。さらに、顧客のニーズに合わせてOSのセキュリティレベルを上げられるように、OS用のセキュリティ・イネイブラーの開発も進めています」とPienimäkiは言う。

Jollaは以前、セキュリティ機能を強化したSailfishのバージョンを開発するため、どこかの企業とパートナーシップを結ぶ意向を示していた。Pienimäkiは、OMPとの協業がその結果だと言う。

「私たちは顧客の望む機能を実現し、OS用のイネイブラーを開発し、ソースコードや、システムの透明性、ライセンシングモデルなどを提供していますが、最終的なソリューションの実装は、その地域ごとの規制やアルゴリズムなどを理解した、地元企業が行うことが多いです。さらに、地元に根づいたテクノロジーを利用するほうが好まれるということも理解できるため、その地域のテクノロジーとの統合についても、地元企業に一任しています」と彼は話す。

Sailfishを搭載したデバイスが、実際にロシア市場に投入される時期については、未だ明確になっていないが、Pienimäkiは2017年中には実現するだろうと話している。さらに彼は、市場に製品が出るまでの最初のステップとして、公企業でパイロットプロジェクトが行われる予定だと付け加えた。

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またSaarnioは、長期的に見て、消費者もプライバシー機能が強化されたAndroidの代替OSを求めるようになると自信を持っているが、現段階では市場がSailfishを求めてはいないと認め、Indexが次の(上図のような)Sailfishデバイスを発売する予定もないと言っている。だからこそ、Jollaはビジネスモデルを、B2BやB2B2Gのライセンシングパートナシップモデルへと切り替えたのだ。

さらにJollaは、現在中国や南アフリカ政府ともSailfish導入に関する議論を進めている。

「中国はロシアよりも、交渉が難しい国です。しかし今回のロシアの例が、中国政府にとってかなり具体的なプロジェクト提案になると言え、さらに彼らは明らかにSailfishのようなソリューションを必要としています」とSaarnioは語る。

「さらに私たちは、他のBRICs諸国とも話を進めており、南アフリカとの議論や交渉も進行中です。しかしもちろん、普通の企業である私たちには、政治的な意図はありません。そのため、独立系OSの必要性や課題を持っている国であれば、どんな国とも喜んで議論をしていくつもりです」

また資金面に関し、Jollaは次の投資ラウンドを検討してはいるものの、新しいビジネスモデルのおかげで資金ニーズは減っているとSaarnioは話す。

「ライセンス先となる法人顧客へとターゲットを変更した結果、Jollaのキャッシュフローも増加しています。そのため、私たちはエクイティ過多の財務体質から脱却しました。しかし当然新たな資金は必要となるため、新しいライセンス先の獲得に努め、新たな顧客からの収益でキャッシュフローがポジティブになるよう願いながら、外部資金調達の計画も立てています」

また、JollaはSailfishを”オープンソース”と表現しているものの、プラットフォームの一部の要素は依然として公開されていない。同社によれば、この部分についても出来る限り公開しようとはしているものの、リソース不足から計画は思うように進んでいない。

「私たちは、プラットフォームの非公開箇所の公開に向けて努力を続けており、今はUIやアプリケーションのレイヤーを優先して、段階的に情報を公開していくつもりです。具体的な計画の詳細については、準備ができ次第発表します。いずれにせよ、私たちはこの課題に本気で取り組んでいきます」とPienimäkiは話す。

「私たちが採用している、ライセンス先企業とのコラボレーションモデルからも恐らく分かる通り、顧客もライセンシングとオープンソース、コラボレーションを組み合わせた形を望んでいます」

「オープンソースとは、実は私たちにとっての投資でもあるんです。ただソースコードを公開したからといって、みんながハッピーになるわけではありません。私たちがそのプロセスをサポートすることによって初めて、コミュニティ内の人たちが公開されたソースコードから意味のあるものを作ることができるんです」とSaarnioは語る。

「そして私たちのような企業にとって、これは大きな投資だと言えます。しかし、Jollaは今の道をこのまま進んでいくつもりでいると同時に、この投資が無駄になることがないよう、きちんとそのプロセスを管理しようとしています」

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

ロシアのSpotify、Zvooqが社員の引き抜きを理由にYandexを相手取り2900万ドルの賠償請求

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西欧の主要レーベルを味方につけ、ロシアと独立国家共同体(CIS)で音楽ストリーミングサービスを提供しているZvooqが、Yandexに2900万ドルの賠償金を求める裁判を起こしている。同社は、ロシアの検索エンジン大手Yandexが、今年の2月に両社の間で結ばれたとされる秘密保持契約書(NDA)に反し、自社の音楽ストリーミングサービスのために、Zvooqのキーメンバーを引き抜いたと主張しているのだ。

モスクワを拠点とし、キプロスに登記されているZvooqは、Yandexを不正競争とNDA違反で訴えている。なお、問題となっているNDAは、YandexがZvooqの戦略的投資家になる意向を示したことを契機に締結されていた。

NDAの中では、調印日から6ヶ月以内に、YandexがZvooqの社員を自社に勧誘することや、社員に解雇を促すことが禁じられていた。

しかし今春、同社のマーケティングディレクターを務めるVarvara SemenikhinaがYandexから勧誘を受けた結果、同社の音楽ストリーミングサービスであるYandex.Musicのマーケティングディレクターに就任したとZvooqは主張しているのだ。

2014年7月からZvooqに勤めていたSemenikhinaは、同社のプラットフォームの開発に”密に関わって”おり、さらには将来的なビジネスプランにも通じていたとZvooqは話す。

またZvooqは、Yandexによる引き抜きが、Zvooqの大型資金調達計画のタイミングと重なっていたため、投資家や同社の買収を検討していた人たちがZvooqから離れていってしまったと語っている。

Zvooq共同ファウンダーのVictor Frumkinは、「不正競争や不正な商習慣が業界全体に与える影響を考慮して、私たちは今回訴訟に踏み切りました。これは特に、公正なビジネス環境が整っていないロシアでは重要なことだと考えています。自由で開けたマーケットは、主要なプレイヤーが適正競争に関する基本的なルールを守ってこそ、効果的に機能するものです。そうすることでしか、Zvooqのように素晴らしいビジネスモデルと革新的なアイディアを持った企業が、消費者の生活を良くすることはできません。もしも企業の行いや市場原則に関する基本的なルールが守られなければ、また、もしも締結済みの契約書の内容が履行されなければ、政界に繋がりを持ったモラルの低い企業だけが市場で生き残ることになってしまいます。昨今の地政学的な状況を鑑みて、保護貿易主義が台頭しているロシアではなおさらです」と話す。

「Yandexによる引き抜きは許されざる行為であり、彼らはその報いを受けるべきだと考えています。というのも、今回の事件によってYandexは、世界中の人々に対して、ロシアの商習慣はまだ未発達で投資には高いリスクが伴うと言っているようなものです。私が知る限り、YandexはZvooq以外の企業にも同じようなことを行ってきており、業界全体のためにも、不正な商習慣がこれ以上悪影響を生み出さないように、私たちはこの状況に歯止めを掛けたいと考えています」と彼は続ける。

Zvooqのリーガルステートメントは、NDAの締結地でもあるリマソール(キプロス)の地方裁判所に提出されているため、英国法に基いて裁判が進められることになる。

Yandexの広報担当者は、TechCrunchに対し「私たちは、この裁判の知らせにとても驚いています。Zvooq社員の引き抜きは起きていないため、YandexはNDAにも違反していませんし、ここ数日の彼らの発言には、現実の状況が反映されていません。私たちは法的な立場を十分に理解しておりますので、裁判でそれを守るだけです。ZvooqとYandexの関係についてのこれ以上の詳細は、企業秘密のためお答えすることはできません」と語った。

ZvooqからYandexに引き抜かれたとされる、Varvara Semenihinaは「私の転職とヘッドハンティングは全くの無関係です。私がYandexにCVを送るずっと前に、Zvooqは私が辞めることに合意していました」と話す

ZvooqもZvooqで、Yandexがロシアの地元メディアに対して一方的な説明をしていると語っている。

ロシアのテックシーンに詳しい情報筋は以下のように語っている。「Yandexは以前ロシアのテック界の申し子でしたが、Googleによってロシア第2位の地位へと徐々に押し込まれてきています。さらに地政学的、経済的にも孤立しはじめたことから、現在同社は暴君のように振る舞っています。そのため、Zvooqのような小さなスタートアップは、以前にも増して今回の引き抜き事件のような集中攻撃を受けて、彼らにねじ伏せられてしまっているんです」

Zvooqによれば、同社の音楽ストリーミングサービスには現在2500万曲が登録されており、Zvooqはユーザーに対して、Universal Music GroupやSony Music Entertainment、Warner Musicといった大手レーベルからライセンスを受けた楽曲を提供している。

今年の6月にZvooqは、500万ドルの資金を調達すると共に、大手携帯電話オペレーターのTele2とパートナーシップ契約を結んでいた。さらにZvooqは、Yandex.Music、Google Play、Apple Musicに続く、ロシア第4の音楽ストリーミングサービスと考えられている。

また、2014年の8月にZvooqは、シリーズAで2000万ドルを調達しており、ロシアの小売企業Ulmartがリードインベスターとなったこのラウンドには、フィンランドのプライベート・エクイティ・ファンドEssedel Capitalが参加していた。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Foodpandaが1億ドルでロシアのフードデリバリー事業をMail.Ruに売却

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Rocket Internetの投資先で、フードデリバリー事業を営むFoodpandaが、海外事業のさらなる処分を進めている。本日同社は、ロシアにある子会社のRussian Delivery ClubをMail.Ru Groupに1億ドルで売却すると発表した。

売却益を他の事業に投じることで「コアとなる地域にさらにフォーカスできる」とFoodpandaは話す。今回の売却は、Mail.Ruがロシアの顧客に売れるような他のサービスがないか探しているタイミングで起きた。Mail.Ruによれば、mail.ruやFacebookのようなSNSのVK.com、ICQといったサービスを通じて、同社はロシア国内のインターネット人口の94%と繋がりをもっている。

Foodpandaのロシア事業は短期間で終わりを迎えることとなった。2012年に同社はロシア市場へ参入し、2014年には現地企業のDelivery Clubを買収してロシア事業を増強したばかりだった。

Develiry Club単独での評価額は不明だが、FoodpandaはDelivery Clubが全売上の10%を占めていたと話す。さらにFoodpandaは今回の売却を成功と捉えており、彼らの言葉を引用すれば「素晴らしいリターン」を得ることができた。

しかし、Foodpandaの株式の49%を保有する親会社で、今では上場企業となったRocket Internetは、広範囲に渡る投資先の中から赤字事業を切り続けている。対象となっているのは、芽が出はじめた、もしくは成長を続ける世界中のECスタートアップだが、なかなか上手く進んでいない。なお、Foodpandaは今回の売却によって、今後20の市場でビジネスを展開することになる。

今年に入ってから、Foodpandaは他にもスペイン、イタリア、ブラジル、メキシコの子会社をJust-Eatに1億4000ドルで売却し、インドネシアを含む東南アジア事業も売却した。

さらにDelivery Clubの売却は、Rocket Internetが(いつものようにカリスマ性のある名付け方で)Global Online Takeaway Groupと呼ぶ、事業統合計画の一部でもある。その一環としてRocket Internetは、以前は競合相手であったDelivery Heroに投資し、アセットスワップも実行している。

Foodpandaのロシア事業単体が黒字であったかどうかは分からないが、一般的に言って今回の売却は、オンラインテイクアウェイ・デリバリーサービス市場で利益を増やすことの難しさ、そしてギャップを埋めるために必要な外部資金を調達するのが最近難しくなってきていることを表している。

実際にFoodpandaも「今回の売却益は、アジア、中東、東欧といったFoodpandaのコアとなる地域で、引き続き事業を拡大するために投資される予定です」と発表しており、Delivery Clubの売却は確かに自分たちで資金を調達するための手段だったとも考えられる。

そして、Foodpandaはコア地域に注力せざるを得ない状況にある。というのも、FoodpandaとDelivery Heroの関係が良化したところで、DeliverooUber Eats、そして新たに加わったAmazon Restaurantsといった競合の影が既に見え始めているのだ。

Uber Eatsは、シェアライド界の雄であるUberにとって重要な新規事業で、今年の夏には新たな幹部をアジアで採用していた

なお、Foodpandaはこれまでに外部から3億1800万ドルの資金を調達したと発表している。”発表”としたのは、Rocket Internetがインキュベーターとなったスタートアップは、資金情報を進んで公開していないため、調達額がこれ以上である可能性があるためだ。3億1800万ドルというのは、これまで公にされている調達資金の合計額ということになる。

「Deliery Clubの売却はFoodpandaにとっての大きなマイルストーンであり、市場をリードするようなフードデリバリー事業を立ち上げてスケールさせる力をFoodpandaが持っている、ということの証明でもあります」とFoodpandaグループのファウンダー兼CEOのRalf Wenzelは声明の中で語った。「私たちの事業を現地のネット業界のリーダーであるMail.Ruに移管することで、Foodpandaはアジア、中東、東欧市場での事業拡大に集中でき、結果として私たちのマーケットリーダーとしての地位を確固たるものにすることができます」

Mail.Ruは、事業の多角化および、既存のビジネスに新たなサービスを付加しようとしている同社の動きの一環として、Delivery Clubを買収した。Mail.Ruの既存ビジネスには、ロシアで1番の人気を誇るメールクライアントのmail.ruや”ロシアのFacebook”として知られるVK.com、メッセージングプラットフォームのICQなどがある。

ゲームなどのサービス以外にも、Mail.RuはGoogleやYandexからヒントを得て、巨大なカスタマーベースを利用した決済サービスの開発を行っている。

「Mail.Ru Groupがロシアのモバイル界を牽引する中、Delivery Clubの買収によって、私たちのモバイルサービスの幅がさらに広がっていくことになるでしょう」とMail.Ru Groupの会長兼共同ファウンダーであるDmitry Grishinは話す。彼は先週CEOの座から退き、今後は同グループの戦略面にフォーカスした業務を行っていく予定だ。

「フードデリバリー市場は引き続き安定した成長を見せており、私たちのネットワークやリソース、専門性と、Delivery Clubのマーケットリーダーとしてのポジションが組み合わさることで、この市場でさらなる成功を掴むことができるでしょう」

さらに興味深いことに、FoodpandaによるDelivery Clubの売却から、フードデリバリー業界の別のトレンドが浮き彫りになった。それは、もともと保有していた食品関連事業を手放すEC企業がいる一方で、同業界へ真剣に参入しようとしている企業も同時に存在するということだ。

ちょうど昨日も、AmazonのクローンのようなLazada(以前はRocket Internetの傘下にあったが、現在はAlibabaの子会社)が、Instacartのクローンのようなシンガポール企業RedMartの買収を発表した。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

ロシアのバスチケット比較サイト「Busfor」が2000万ドルを調達、東欧やアジア諸国へのさらなる拡大を目指す。

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個人所有のクルマによる配車サービスという分野でUberなどの企業がしのぎを削る一方、人を運ぶという分野には運ぶ人数がはるかに多いのにも関わらず、まだ古いビジネスモデルがそのままの業界がある。長距離バス業界だ。

ここまで言っただけでは笑われそうだが、私は「バス版のUber」というビジネスを話しているのではない。この業界がもつ複雑さはバスが家までやって来たとしても無くならない。そうではなく、それぞれのバス会社が単体で提供するルートよりも遠くに行くとき、この業界の複雑さがのしかかる。バスを乗りつぐ中距離や長距離の旅行を計画することは、ユーザーにとって非常に骨の折れる作業だ。バスの時刻表は会社によって別々に提供されていて、チケットを購入するプラットフォームはもちろん、価格もバラバラなのだ。

ベルリンを拠点とするGoEuroが1億4600万ドルを調達し、ヨーロッパ地域の鉄道、飛行機、バス、車での移動手段の比較し、それぞれの移動手段を組み合わせることができる検索ツールを開発したのも、おそらくこれが理由だろう。

しかし、より大きなディスラプションが起こる土壌ができているのは開発途上国のマーケットのようだ。なぜなら、バスが最も利用されている地域はそのような開発途上国のマーケットだからだ。

ロシアのマーケットが抱える問題に世界が注目するなか、モスクワを拠点とするBusforは静かにその仕事に取りかかっていた。

同社はロシア、東欧、アジア諸国のバスチケットの検索と購入ができるプラットフォームを提供している。どのようなチケット販売サイトにも対応しているため、バスの運用会社と競合することはない。彼らは企業と消費者の両方が使いやすいプラットフォームを提供しているだけあり、そこから得る手数料が彼らの収益となるからだ。

今回、BusforはロシアのPEファンドであるBaring VostokとElbrus Capitalの2社から2000万ドルを調達したことを発表している。

それと同時に、おなじくロシアを拠点とする既存投資家のInVenture Partnersも出資金額を引き上げている。これにより、今回の合計調達金額は2500万ドルとなる。

Busforは今回の資金を利用して国内向けビジネスを強化するとともに、新しいマーケットへの進出も目指す。2019年までにロシアのバスチケット販売において20%のシェアを獲得することが今後の目標のようだ。

同社の創業は2012年で、創業者は元レーシングドライバーのIIya Ekushevskiyと元デベロッパーのArtem Altukhovの2人だ。彼らがBusforを起業したのは、旧ソ連諸国ではどの交通手段よりもバスが利用されていることに気づいたことがきかっけだった。しかも、それらの国々で利用されているオンラインのチケット販売サイトはどれも酷いクオリティのものばかりだった。

同社のプラットフォームを利用することで、バス会社やバス停は簡単にバスチケットのオンライン販売ができるようになる。同サービスはロシア、東欧諸国、独立国家共同体(CIS)に所属する12ヵ国、タイで利用可能だ。Busforはこれまでに5000社のバス運営会社と提携を結んでおり、月あたりの利用ユーザー数は200万人だという。

同社の競合にはドイツのFlixbusとインドのRedBusなどがある。しかし、Busforのビジネスモデルはこの2社を組み合わせたものであり、それによりバス運営会社はより広いマーケットにアプローチすることが可能となる。その結果、運営会社は他社と競争するためにサービスのクオリティを高めなければならず、乗り心地のよいバスの購入などにもっと資金を回すようになるかもしれない。便利なプラットフォームだ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

芸術写真フィルタアプリPrismaがAndoroid版をリリース

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Prismaの人気が続いている。iOSでの公開からほんの1か月余りでInstagramの多数の利用者の想像力をほとんど根こそぎにさらったAIベースの写真加工アプリケーションのPrismaが、ついにすべてのAndroidユーザーのために開放された 。これはGoogleのモバイルOS上でベータ公開されたわずか5日後のことだ。

このアプリはもちろんスマートフォーンのスナップ写真を「芸術作品」に変貌させる初めての製品ではないが、数多い「アートフィルター」を使って、印象的な速度と複雑な結果と共に、写真を異なるスケッチや描画スタイルへと変換する。アプリはすぐにApp Storeのチャートの上位へと浮上し、私たちが共同創設者兼CEOのAlexey Moiseenkovを取材した数日前には米国では10位となっていた。その勢いはその後少し落ち着いているものの、アプリはまだ17位の位置を保持している。

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これは間違いなく、App Storeにおける最新人気アプリにとっての分水嶺である。InstagramがAndroidバージョンをリリースしたわずか1週間後にFacebookに10億ドルで素早く買収されたことを業界人たちは忘れてはいない。買収の噂はすでにこのロシアの会社の周りに流れている − そして、なんと、同社の代表は図らずも私たちの取材前後でソーシャルメディアの巨人を訪れていたのである。

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Facebookはこの憶測に対しては言葉を濁しているが、Moiseenkovは謎めかして「現段階ではこの情報は何も明かせないのです。週の終わりまでに、私たちはより多くを議論することができると思います」と付け加えた。それが買収、資金調達または何か他のものを意味しているのかは、見守らなければならない。

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とりあえず今は、Google Playストアで何がそんなに騒がれているかを知ることができる。 アプリのAndroidバージョンには、3ダースほどの異なるフィルタが含まれていて、そのスタイルは現代風から古典そしてアニメにまで及んでいる。その中にはブレイキング・バッドスタイルさえ含まれているのだ。

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(翻訳:Sako)