誰でもAIの威力を利用できるようにするMITの対話型機械学習予測ツール

もうすぐ、強力な予測ツールを開発するのに何も特別なものは必要なくなる。ごく普通のタッチスクリーンデバイスと、自由にアクセスできるデータさえあればいい。MITとブラウン大学の研究者による新しい実験は、「Northstar」と呼ばれる対話型データシステムに、「機械学習モデルを即座に生成する」能力を追加することに成功した。既存のデータセットに適用して有用な予測を生成できる。

研究者が示した例としては、医師がこのシステムを利用し、患者の医療履歴から、特定の疾患にかかる可能性を予測するというものがある。また、事業主が過去の売上データを使用して、より正確な予測ができるようにするというものもある。いずれも手作業による煩雑な分析は必要なく、迅速に処理できるものだ。

研究者はこの機能を、Northstarシステムの「仮想データサイエンティスト(VDS)」と呼んでいる。この名前は、人間のデータサイエンティストに取って代わるもののような印象を与えるが、人材がすぐに確保できないような状況では、実際にそれも可能だろう。一般的な医師の診療所に、専門のデータサイエンティストがいるわけでもないし、ほとんどの中小企業が、そうした人を常に雇っておけるわけでもない。さらに、個人経営のコーヒーショップや小売業者も、普通はこうした機能を利用することはできないだろう。

このツールは、進化し続ける自動機械学習技術を利用して新たに開発されたもので、AI技術を利用できる人の数を増やすのに役立つ。

Northstar自体は4年以上かけて開発されたもの。複数のプラットフォーム上で動作する。まず空白のキャンバスを提示し、ユーザーがデータセットをアップロードすると、独自のインターフェイス上に箱として表示される。ユーザーは、それらの箱をキャンバスの真ん中あたりにドラッグしてから、箱と箱の間に線を引いて接続する。それにより、あらかじめ選択したアルゴリズムに従って、互いに組み合わせて処理すべきものであることを指示するわけだ。

たとえば、患者の代謝率のデータセットと年齢のデータを持ってきて組み合わせることで、それらの2種類の要因から特定の疾患が発生する頻度を予測するといったことが可能になる。このように、仮想データサイエンティスト機能を使用することで、複数の入力を組み合わせたAIベースの予測分析を生成することが可能となる。

研究者はこのVDSシステムを設計する際に、自動化された機械学習として、これまでで最も速く動作するアプリケーションとなるようにした。それも、このシステムを誰でも使えるものにするためには重要なポイントだ。というのも、このデジタルのホワイトボードで作業しても、その結果が得られるのに何時間も待たされるのでは、とても実用的とは言えないからだ。今後は、エラーの報告機能を改善することにしている。専門家ではないユーザーにとって、単に使いやすいだけでなく、何かおかしくなったときに、どこで間違えたのかをはっきりと示すことができるようにする。次に使うときには、そこを修正できるようにするためだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

ロボットたちに基本的な動作の組み合わせを通して世界を理解させる

言われたことをこなすという点で、ロボットは申し分ない。しかし、そのための情報をシステムに入力する作業は、時にロボットに実行して欲しい作業よりも、遥かに複雑なプロセスになってしまうことがある。これがロボットは単純な反復作業に向いていると言われる理由だ。

ブラウン大学とMITの研究チームは、現実の物体と、基本動作の、抽象的な概念を開発することを通して、ロボット自身がタスクを計画できるようなシステムの開発に取り組んでいる。このシステムでは、ロボットは複雑な作業を、人間が扱いきれない程の事細かな作業手順までに落とすことなく、実行することができる。

研究者たちは2本腕のロボット(Anathema Deviceまたは”Ana”と呼ばれる)を、室内の物体を扱えるようにプログラミングした。食器棚のドアの開閉、クーラーボックスの蓋の開閉、照明スイッチのオンオフ、そしてボトルを掴むことなどだ。タスクを実行しながら、ロボットは、研究者が開発したアルゴリズムを使用して、その周囲の情報を取り込みながら、情報を処理した。

チームによれば、ロボットはそうした動作を通した情報の取り込みによって、物体と環境に関する抽象的な概念を学ぶことができた。例えばAnaは、ドアが開けられるようにするためには、その前に閉められていなければならないと判断することができた。

「Anaは食器棚の中の照明がとても明るいために、彼女のセンサーをホワイトアウトしてしまうことを学習しました」と研究者たちは発表文の中に書いている。「そこで食器棚の中のボトルを操作するためには、ライトをまずオフにしなければなりませんでした。彼女はまた、ライトをオフにするためには、食器棚のドアが閉じていなければならない(開いたドアがスイッチへのアクセスの邪魔になるため)ことも学習しました」。

一度処理されると、ロボットは1つのシンボルをこれらの抽象概念の1つに関連付ける。これは、実行する際に複雑なコーディングを必要としない、ロボットと人間との間に生み出された一種の共通言語である。このような適応性の高さが意味することは、ロボットが特定のシナリオで実行する必要のある行動を選択することにより、より多様な環境で多種多様なタスクを実行できるようになるということだ。

研究を主導するブラウン大学の助教授George Konidarisは「インテリジェントなロボットが必要な場合に、彼らにやって欲しいこと全てを、プログラムすることはできません」とTechCrunchに語った。「彼らに目標を与えて、自分たちで行動してもらうようにしなければならないのです」。

もちろん、すべてのロボットにこの方法で習得させようとすることも、同様に非効率ではあるが、研究者たちは共通言語を開発し、新しいハードウェアにダウンロードすることのできるスキルを作成できると考えている。

「将来的には、スキルライブラリが用意され、それをダウンロードすることができるようになると思います」とKonidarisは説明する。「例えば『キッチンで仕事をするためのスキルライブラリが必要だ』とリクエストすると、キッチンで仕事をするためのスキルライブラリが手に入ることになります」。

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(翻訳:sako)