対話可能な音声広告をテストするPandora

ラジオの広告は、メッセージを一方的にリスナーに放送する。Pandora(パンドラ)の新しい音声広告は、リスナーが声を出して応答することを可能にする。それによって、宣伝されている製品に関するより詳しい情報を得たり、興味がないものについては広告をスキップできる。Pandoraは、リスナーが広告に対して返事をすることの可能な対話音声広告をテストすることに同意したことを明らかにした。そのテストは、サンフランシスコに本拠を置く広告技術会社、Instreamaticの協力によって実施されるもの。今年の後半にはベータ版として開始されることになっている。

ウェブやモバイルの広告なら、インプレッション数(広告がユーザーの目に触れた回数)やクリック数などによって効果を計測することができる。しかし、従来の音声広告はクリックできない。つまり広告主は、その広告を耳にした人のうち、後でどれくらいの人がもっと詳しい情報を求めたかとか、実際に製品を購入したか、といったことを知る由もない。

対話音声広告が、それを変えるかもしれない。このしかけは、ちょうど消費者が音声アシスタントとやりとりするのに慣れてきたころに登場した。たとえばAmazon Echoのようなスマートスピーカーや、Siriを備えたiPhoneのようなスマホを利用することになる。

広告主のメッセージを単に放送するのではなく、対話音声広告は、商品についてより詳しく知りたいかどうか、リスナーに尋ねることができる。たとえば、新しいスマホの広告なら、音声による司令によって、リスナーがその機種の特長について知ることができるようにする。リスナーが、声で広告に応答すれば、より詳しい情報が得られるのだ。あるいは、否定的な応答によって、それ以降の広告をスキップすることも可能となる。

さらにInstreamaticによれば、同社の音声広告プラットフォームはAI技術を利用していているので、顧客は単に「はい」か「いいえ」だけでなく、それ以上の言葉で広告と対話できるという。機械学習や自然言語理解といった技術を使用して、広告がユーザーの意図を理解するのだ。この能力によって、より多くの顧客が広告とやりとりできるようになる。

Pandoraでは、通常は応答できないような状況でも、広告主はリスナーにアプローチできるようになると考えている。たとえば、屋外でランニング中や、ジムで運動中、あるいは運転中や料理の最中といった状況だ。そのような場合には、クリックしたりタップしたり、その他の方法で広告とやり取りすることはできない。

Instreamaticは、対話音声広告に関してPandoraと提携したことを発表したが、Pandoraにとっては、この市場をターゲットにする方法は、それだけではない。

「Pandoraは音声広告に大きく投資しており、エコシステムの促進によって市場を開拓し続けています」と、同社の広告商品管理担当副社長のEric Picardは述べている。

「Pandoraは、消費者向けの広告サービス全般について、包括的な音声ソリューションを開発しています。そこには、私たち自身、つまり「ファーストパーティ」によるものだけでなく、InstreamaticやAdsWizzなどの「サードパーティのベンダー」がプラグインできるようなサービスもあります。私たちが期待しているのは、買主側、つまり広告主や代理店が、「1回作ってあちこちで買う」タイプのソリューションを、他の市場と同様に、音声広告にも求めるようになることです。そしてInstreamaticは、さまざまなサイトにまたがる買主側の音声広告を専門とする最初の会社です」と、彼は説明した。

Instreamaticは、5年前にデジタルオーディオ広告ネットワークとして起業した会社だ。それから、さまざまなツールを開発し、今では音声で作動する広告も実現した。同社は、この機能を他の分野にも応用し、数社に提供している。たとえば、無料の音楽配信プラットフォームAudiomack、ロシア最大のラジオグループの1つGazprom-Media Radio、ヨーロッパのラジオ会社GlobalDAXなどだ。そこでは広告主が、音声プロンプト付きの広告を、TuneInやAccuRadioといったストリーミングアプリに挿入できるようにしている。

Pandoraは、顧客獲得においても非常に優れている。音声で作動する広告についても、かなりのユーザー数を確保し、その現実性を証明できるはずだ。

現在Pandoraは、Instreamaticと協力してそのフォーマットをテストすることに合意しており、AdsWizzのような他のサードパーティのベンダーも今年中にサポートする予定だ。Picard氏は、対話音声広告の大規模なソリューションとしては、これら2社以外には認識していない、という。

つまりサイト運営者は、独自の音声ソリューションを準備するか、さもなくば、これらのベンダーに協力を求めることでしか、この領域に足を踏み入れることはできないことになる。

Pandoraは、音声で作動する広告の戦略について、これ以上の詳細を明らかにしていない。しかし、興味を抱いている広告主を獲得してテストが開始されれば、より詳しいことも明らかになるはずだ。

「音声の時代がやってきました。しかし、音声広告の領域で意味のある消費者の参加を実現するには、まだやるべきことが残っています。それを測定する指標も必要です」と、Instreamatic.aiのCEO、Stas Tushinskiy氏は述べている。「Instreamaticは、この市場で役立つ理想的な広告プラットフォームを提供しているものと信じています。Pandoraと協力して、このAIを利用した技術をリスナーや広告主にもたらすことができることにワクワクしています。そして、こうした新しい体験を実現し、さらにすばやく拡張できるように準備を整えています」。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)