ストリーミングビデオをインタラクティブにするAdventrが約5.7億円のシード資金調達

創業者でCEOのDevo Harris(ディーボ・ハリス)氏がAdventrを思いついたのは、音楽業界の大物アーティストたちと仕事をしていたときだ。

「AdventrはKanye West(カニエ・ウェスト)やBritney Spears(ブリトニー・スピアーズ)やNas(ナズ)といったアーティストのコンテンツを作っているときに思いつきました。インタラクティブな要素を導入したミュージックビデオは人気を博し、視聴者を惹きつけるのは高価な映像や編集だけではないことが証明されました」とハリス氏はいう。

そこでハリス氏は、グラミー賞まで取ったメディアプロデューサーとしての地位を捨て、一介のアーリーステージスタートアップの創業者になった。現在、Adventrはインタラクティブなメディアを作成、閲覧、共有するためのドラッグ&ドロップSaaSツールで、ユーザーはタッチスクリーンやクリック、さらには自分の声を使ってビデオを操作できる。Adventrは、「SmartListen」という音声制御技術の特許を取得し、音声コマンドに基づいてメディアコンテンツを流れの途中で変更することができる。この技術は広告に応用可能で、視聴者が「緑のシャツを買って」などということができるようになるかもしれない。また、クリエイターがAdventrで映画を作る場合、ホラー映画の主役に「あの廊下を進むな」というように、観客から登場人物に指示を出すよう呼びかけることもできる。

その特許を取ったSmartListen機能はまだ未完成だが、Harris氏によると、2022年の初めには一部のパートナーが利用できるようになる。

「これはゲームチェンジャーであり、動画内のクリックを超えたコネクテッドメディアの可能性にクリエイターの心を開くことになるでしょう」とハリス氏はいう。

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立ち上げからわずか1年のAdventrは、2021年秋のTechCrunch Disrupt、Startup Battlefieldに登場し上位5社のファイナリストに残った。その後、同社はベータでプロダクトを磨き、ユーザーは8000社になっている。その中にはAsiaNet NewsやMSI Gaming、SK Interactive、そしてニューサウスウェールズ州政府もいる。これらの顧客はユーザーが動画と対話している際のアナリティクスを確認できるので、消費者についていろいろ知ることができる。

Disrupt後、AdventrはPaladin Capitalがリードするシード投資で500万ドル(約5億7000万円)を調達し、それにReinventure CapitalやIn/Visible Ventures、そしてアカデミー賞受賞者John Legend(ジョン・レジェンド)氏らが参加した。レジェンド氏はハリス氏の長年の協力者で、カレッジのルームメイトでもある。

「Disruptの直後から6桁ドルの収益が上がり、今でもオンラインでピッチビデオを見た人からインバウンドがきています」とハリス氏はいう。

Adventrは今回の資金をチームの構築に使っていきたいという。Disruptに出たときは5人の社員しかいなかった。最近同社はVimeoのゼネラルマネージャーだったPeter Gerard(ピーター・ジェラルド)氏をプロダクトのトップに招いた。Adventrはまもなくソーシャルメディア・プラットフォームとの統合を開始し、顧客がそれらのプラットフォーム上でインタラクティブビデオをネイティブに共有できるようにする予定だ。

画像クレジット:Adventr

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hiroshi Iwatani)

動画に話しかけることでユーザーがストーリー展開を変えるAdventrのボイスコントロール技術

誰にも経験がある。ホラー映画を見ていて、主人公がその不気味な家に入ってはいけないことを、あなたは知っている。画面に向かってどれだけ叫んでも、あなたは彼の運命を変えられない。でも、もしも画面の男に、その家に近づくなと言って、彼がそれを聞き入れたらどうなるだろう?

エンターテインメント系の起業家であるDev Harris(デブ・ハリス)氏の最新のベンチャーなら、それが可能かもしれない。彼はグラミー賞を獲得し、Kanye West(カニエ・ウェスト)やJohn Legend(ジョン・レジェンド)のようなアーティストと長年のビジネス仲間だ。

2020年8月にベータでローンチしたAdventrは、ユーザーフレンドリーなインターフェースで、誰もが画面上の要素をドラッグ&ドロップしながらインタラクティブな動画を作ることができる。すでに何千ものユーザーがインタラクティブなエクスペリエンスを作っており、その中には、宇宙をテーマとする子ども向けの教育モジュールや、Marc JacobsやLVMHのようなラグジュアリーファッションのプロモーションビデオもある。

20のスタートアップが競うTechCrunch Disrupt, Startup Battlefieldでは、創業者でCEOのハリス氏は、Adventrのきわめつけの機能を披露した。それは、ユーザーがビデオの進む方向を命令できる音声コントロールの特許機能だ。

具体的には、音声認識を利用して、ビデオの途中でコースを変更する技術に関する特許だ。また、他のデータベースやアプリケーションと連携して、リアルタイムに答えを調べたり、質問に答えたりすることができる。

「これは『音量を上げろ』といった簡単な命令ではなく、『その部屋に入るな』といったものです。テレビと話せるなら、携帯電話と話せるなら、なぜビデオと話せないのでしょうか?私たちの技術により、これらのビデオは視聴者のマイクを使って、その視聴者が望んでいることを理解し、リアルタイムに対応することができます。インターネットの大部分はビデオであるため、私たちはビデオが他のスマートデバイスのように機能することを可能にしています」とハリス氏はいう。

画像クレジット:Adventr

彼のチームは現在わずか5名だが、クリエイティブを重視するだけでなく、eコマースのエキサイティングなアプリケーションもありえると考えている。彼は、2002年の映画「Minority Report(マイノリティ・リポート)」を指して、主役の Tom Cruise(トム・クルーズ)がGAPの店頭でホログラムに遭遇し、パーソナライズされたショッピング体験について質問されるシーンを、例として挙げる。

Adventrのデモビデオでは音声コントロール技術が登場し、買い物客がTargetでパジャマを買う。そのとき視聴者は「グリーンのものを着てみて」とか「Lサイズを見つけなさい」などと声で命令し、買うべき品物を決める。そしてどのパジャマを買うか決めたらTargetのウェブサイトへ移り実際に購入するが、ハリス氏は、いずれその経験過程のすべてがAdventrネイティブで行われると期待している。

現在、Adventrのツールはサブスクリプションで利用できるが、月額29ドル(約3200円)のプロプランや99ドル(約1万900円)のビジネスプランに決める前に、フリープランで試してもいい。Adventrの用途はeコマースや教育やエンターテインメントに限定されているわけではないため、今後企業やアーティストからまざまなアプリケーションが生まれるだろう。

「Adventrは、TwilioとVimeoを組み合わせたような、ビデオベースのAPIだと考えてください。基本的に、ユーザーはフレーズやキーワードを入力することで、特定のビデオクリップを再生することができます」とハリス氏はいう。

Adventrは、100万ドル(約1億1000万円)のシードラウンドでスタートしましたが、さらなる資金調達についてはまだ発表していない。しかし、このスタートアップは、すでに自社製品を加入者に販売しており、早い段階で収入源を確保している。ハリス氏は具体的な財務状況を明らかにしなかったが、顧客獲得に費用をかけずに、Adventrの収益は2021年初頭から現在まで80倍に増加しているという。

画像クレジット:Adventr

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hiroshi Iwatani)