AppleはiOS 12のパスワード・オートフィルでサードパーティーのパスワード・マネージャー・アプリをサポートすることがわかった。つまりAppleのモバイル・デバイスからパスワードが必要なサイトやサービスにアクセスする際、iCloudキーチェーンにパスワードが保存されていなくても簡単にログインできる。
これはマイナーなアップデートのように見えるかもしれないが、実は重要な意味がある。
現在、多くのユーザーが何十、ことによると何百ものパスワードが必要なアカウントを持っており、パスワード・マネージャー・アプリを使ってアクセスを管理している。
パスワード・マネージャーはログイン情報を安全に保管し、必要に応じてすぐに呼び出せるようにする。パスワードを使用するのがセキュリティー上必要であっても多数のパスワードを覚えているのは非常に困難だ。パスワード・マネージャーはパスワードを記憶するだけでなく、サービスにセキュリティー上の問題が起きた際に警告を発してくれる。たとえば家系調査のMyHeritageのアカウント情報が9200万件もリークしたような場合だ。また同じパスワードの使い回しや弱すぎるパスワードなどの問題も警告してくれる。
多くのユーザーがパスワード管理ソフトを利用しているものの、これまではAppleのモバイル・デバイスから使うのはかなり面倒だった。
まずパスワード・マネージャーのiOSアプリを起動し、所望のサービスを指定してパスワードを呼び出してコピーし、ログインしたいアプリに戻ってパスワード欄にペーストするという手順になる(1Passwordの場合は自動パスワード生成機能があり、何回かタップするだけでiOSのシェアシート機能を使ってコピー&ペーストをせずにアプリをログインできる)。
そういう方法があってもやはり手間を食う。 QuickTypeバーでいくつかキーをタップし後はオートフィルに任せるのに比べるとはるかに面倒だ。
今回Appleが発表した情報によれば、ユーザーはいちいちパスワード・マネージャーを立ち上げてパスワードを呼び出す必要がなく、パスワード・オートフィルl機能を用いてパスワード・マネージャーに記憶させたパスワードを入力することができる。これは単に快適で速いだけでなく、パスワード・マネージャー・アプリの普及にも大きな力となりそうだ。
1PasswordはWWDCでこのニュースを聞いたときに興奮して上のような歓迎のツイートをした。また新しいAPIを利用してApple IDのパスワードをオートフィルする動画を添付した。
上の1Passwordのデモでもわかるとおり、新APIを利用すれば、QuickTypeバーをタップするだけで1Passwordに保存されているログイン情報を入力できる。ログイン情報はバーでダッシュの後に示される。パスワード・マネージャーとiCloudキーチェーンに2種類のログイン情報が保存されている場合、QuickTypeバーに両方が表示されるのでユーザーが適切な方を選択できる。
この機能は昨年パスワード・オートフィルが発表されて以来 1Passwordが強く要望していたものだ。
AgileBitsでMacとiOS向け1Passwordの開発責任者を務めるMichael Feyは「iOS 11でAppleはSafariでブラウズした場合、iCloudキーチェーンにパスワードを保存できるようにした。このパスワードはアプリに関連づけることができ、呼び出して入力できるようになった。そこでわれわれはすぐにAppleに接触し、この機能を1Passwordでも使えるようにしてほしいと要望した」という。さらにAgileBitsではバグ・レポートを提出し、1Passwordに統合するプロトタイプを作った
その結果、「今年のWWDCでわれわれの要望が実現した」わけだ(Appleに対する要望は1Password、Dashlane、LastPassの共同によるもので、3社は同時に同様の要望書提出していたという)。
1Password始め、他のパスワード・マネージャーの開発チームも、この秋AppleがiOS 12を一般向けにリリースするときには、それぞれのプロダクトにオートフィルの能力を付加しているはずだ。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)