コーディングブートキャンプは事実の開示を…誇大宣伝や詐欺まがいから決別するために

hackathon

[筆者: Darrell Silver](Thinkfulの協同ファウンダーでCEO。)

コーディングブートキャンプはこのところ成長著しいが、しかしメインストリームになるためには、彼らが宣伝している結果が真実であることを、証明する必要がある。

コーディングブートキャンプは2012年に出現し、ソフトウェア開発のコースを提供して、卒業生にテクノロジーのキャリアを約束し始めた。そんなスクールを今では何億ドルものベンチャー資金が支え、2016年の生徒は約3万名に達すると予想され、総額5億ドル近い指導料をかき集めている。

多くのスクールが、100%近い卒業率と就職率を主張しているが、しかしその主張にはほとんど証拠がなく、スクールの経営実態も多くが開示されていない。入学志望者は、結果を数値で知ろうとする。大学のような数十年数世紀におよぶ評判の歴史がないスクールにとっては、それが唯一の評価の目安なのだ。

そこで今のところは、生徒たちの多くはアーリーアダプターで、初物食いのリスクを厭わない。しかしどんな製品でもそうだが、大きな市場で採用されるためには、透明性と信用と実証性が欠かせない。プログラミングの教育では、なおさらこのことが言える。なぜなら同じスキルを学ぶ費用が、Code Schoolの月額25ドルからブートキャンプの平均的指導料14000ドルまでと、幅がありすぎるからだ。

生徒にとって学び方の賢い決め方は、実際にどんな結果が得られるのかを知り、またピアグループの存在や、学習方法の時間的要件と約束を知ることが前提になる。でもこの業界はまだ、そのための情報を提供していない。

スクールの多くが、ある一人の卒業生がY Combinatorに行ったとか、ほんの数名がGoogleに雇用されたとか、そんな一度限りの成果をマーケティングに利用している。それらはメールのそそるタイトルにはなるが、生徒に正しい期待を持たせることはできない。そして結局、企業が消費者の信用を築いていく必要があるまさにそのときに、信用は食い荒らされている。

テクノロジー業界がブートキャンプを否定的に見るようになったのも、そのためだ。Zed Shawはブートキャンプの派手な誇大宣伝に対する調査を開始したし、ThinkfulのメンターBasel Faragは本誌TechCrunchに、“まともで生徒思いのブートキャンプも少なくはないが、それよりずっと多いのは、現代版の蝦蟇(がま)の油売りのような営業が、人生の窮地にあり、藁にもすがりたい平均的アメリカ人を食い物にしているスクールだ”、と書いた

Online education

業界は、自分が明言した約束を守れないブートキャンプにも注目し始めている(中にはホワイトハウスへの就職を約束するところもある!)。そんな、教育よりもマーケティングに力を入れすぎているブートキャンプが、この市場で操業しているすべての企業に迷惑をかけている。

一部のスクールは、透明性を真剣に考えるようになりつつある。Lighthouse Labs, HackReactor, それにTuring Schoolなどは、生徒の最終結果を公表している。数か月後には、General Assemblyなどもその仲間に加わるだろう。

透明性を求める外圧もある。Skills Fundのようなローン企業が今ではコーディングブートキャンプの生徒の約20%に融資をしているので、彼らは当然ながら(一定の制限はあるものの)良質な結果データを集めている。Skills Fundはブートキャンプたちに、共通的なスタンダードと教科カテゴリーを守らせて、良質な結果報告(匿名の)を得ようとしている。

政府のパイロット事業EQUIP(新しい奨学制度)にも、同様の外圧効果がある。また独立のブートキャンプレビューサイトCourse Reportは、生徒のレビューにその生徒の結果を付けるようにした。いずれは公的な標準化が避けられないと思われるが、しかし現状では、生徒の成功の定義すら流動的なほどに、急速にイノベーションしている市場なので、良質なデータの整備とその公表は、なかなか進んでいない。

dev bootcamp

また、スクールによって違いがあって当然、という部分もある。たとえば入学を認めるポリシーはスクールごとにまちまちだし、長期休暇を取った生徒を脱落と見なすか見なさないか、などの違いもある。

しかし、長くとも2年以内には、各校が自分の定義によるデータと、それらの数字に至った方法論(何をどう計算したのか)を、公表すべきだ。そうすればスクールは公開の場で議論せざるをえなくなり、生徒は選択と決定をしやすくなるだろう。

2年前に、BPPE(Bureau for Private Postsecondary Education, カリフォルニア州私学高等教育監督局)が、同局の基準を満たしていないいくつかのブートキャンプを閉鎖しようとしたことがある。当時それは違法というより規則違反と見なされたが、それらは小さなスクールばかりで、数年後にそんな違反は起きなくなった。しかしブートキャンプに入学する生徒の数は、今や当時の10倍もいて、数百万人がプログラミングを学び、そこに何億ドルものVC資金が投じられている。

透明性がなければ、メインストリームの採用は遅々として進まないだろう。それどころか、今度また閉鎖命令があったりしたら、プログラミングスクールの未成熟な評判は再起不能の致命的なダメージを受けるだろう。スクールが今後も事実の報告に関して消極的な態度を維持すれば、お役所が面倒な規制を課さざるをえなくなる。それすらも、運が良ければの話だ。

生徒たちの信用をかち取ることが、長期的には、今の、高騰する奨学金ローンと、慢性的な不完全就業(非正規雇用など)という大きな経済的問題の解決に導くはずだ。それこそが、すべてのコーディングブートキャンプが共同して目指すべき道ではないか。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

コーディング・ブートキャンプFullstack Academyは卒業生が創ったスタートアップに投資する

fullstack_academy_2015

コーディング・ブートキャンプ(coding bootcamp, プログラミング猛特訓塾)が最近のアメリカで流行っている。そのひとつ、Fullstack Academyが今日(米国時間6/1)、卒業生が創った有望なスタートアップに投資をしていく、と発表した。

Fullstack AcademyのCEO David Yangによると、このニューヨークのスタートアップは自社の経営科目の一環として投資を行い、年に最大8社までの企業に、シード前ないしシード段階の資金提供をする。条件や額はその都度決める。

この投資を受ける資格としては、そのスタートアップの少なくとも一人の協同ファウンダーがFullstack Academyの13週間のJavaScript集中コースの終了者でなければならない。

Yangはこう語る: “これはうちの生徒たちに、あなたがたを信じていると伝える手段でもある。‘いつか会社を作りたい’という声をよく聞く。その「いつか」は「今」だ、と言いたい。せっかく、スキルを身につけたのだから”。

昨年の卒業生は300名だった。今年は450名を目標にしている。来月は、ニューヨークだけでなくシカゴにも進出する。それは今年初めの、The Starter Leagueの買収の結果だ。

すでに黒字なので、投資のためのファンドも、外部のパートナーに資金を仰ぐ必要はない、という。

同社の正社員は現在35名、卒業生たちが大手のテクノロジー企業に就職していることを、誇りとしている。とくに、GoogleとAmazonとFacebookが多い。でもVC的な要素が今回加わったことによって、大企業への就活を目指す若いデベロッパーだけでなく、起業家タイプも同社に関心を持つだろう。

Fullstack Academyは、同業者の中でもいちばん、入学基準が厳しいという。プログラムを完成させる能力のない人や、仕事に向かない人を、事前にふるい落とす、とYangは言う。

コーディング・ブートキャンプの格付けをやっているCourseReportによると、Fullstack Academyは37のレビューが5つ星だが、入学者数、終了率、就職率などは公開していない。一部のコーディング・ブートキャンプは、サードパーティの監査人にデータを開示している。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

コーディングブートキャンプが大学の(誰もが受講する)標準課程になる三つの理由

16029420669_5991f63908_k

[筆者: Drew Sing](エドテック(edtech,テクノロジー応用教育)分野のコンサルタント)

それは最初、それまでの大学教育に代わるもの(オルタナティブ)として始まった。それが今や、全国の大学の注目を集めている。

コーディングブートキャンプ(coding bootcamp, プログラミング特訓コース)は、終了者が企業ですぐに実践的な戦力になり(==job readiness, ジョブレディネス)、しかも比較的高給であることが関心を招(よ)んで、学生たちと中途転職者たちのトレンディな話題になっている。しかしコーディングブートキャンプに関心を示しているのは、これら就活者たちだけでなない。

大学もコーディングブートキャンプの成功に目をつけ、テクノロジー方面における、学生たちの効果的なスキルアップの方法として、その利用を検討し始めている。

今コーディングブートキャンプはとくに、Webデベロッパーになりたい人たちのための、教育の高速車線になっている。最初それは、今日のテクノロジー経済において、有能なWebデベロッパーの需要を満たすために作られたが、そういう一種のニッチ産業が今では、一般的全般的な高等教育の分野で増殖し、今や大学のコンペティタとも見なされている。コーディングブートキャンプは今では、プログラマーばかりでなく、データサイエンスやアナリティクスなど、そのほかの需要の多い技術分野の人材も、育てている。

Course Reportによると、2015年にはコーディングブートキャンプの市場が前年の2.4倍に成長し、推定卒業者数は16056名となった。対して2014年のコンピュータサイエンスの学部学生数は推定48700名だった。

学位を与えることを目的とする従来型の大学が、経済が求めるスキルの教育に特化したコーディングブートキャンプの価値を今や理解し始めているから、2016年の教育には大きな変化が訪れるだろう。

今大学は、コーディングブートキャンプに関して、主に次の三つのことをやっている:

ブートキャンプと大学のパートナーシップ

大学は今、コーディングブートキャンプ(の専業企業)とパートナーして学生たちに、これまでよりも多い技術教育を与えようとしている。

フロリダ州ボカラトンのリベラル・アーツ校Lynn Universityは、General Assemblyの大学が認めたコースの習得を、正規の履修証明(単位取得科目)に含めている。たとえばLynn Universityは、昨年9月に7000万ドルの資金を調達した技能ブートキャンプGeneral Assemblyの、16週のコースを終了した者に、一学期ぶんの履修証明を与えている。今現在はその制度を利用する最初の学生たちが、General Assemblyのコースを受講しているところだ。

雇用者が肯定的に認める大学とブートキャンプ的な教育訓練のセットが、一部の学生たちにアピールしている。

Lynn Universityの副理事長Gregg Coxはこう述べる: “学生たちが、労働市場が求めているスキルをすでに持っていることが重要だ。学生たちの全員が将来プログラマーになるわけではないが、今日の世界では、その技術を有することはどんなキャリア(職業的進路)にとっても有益である”。

Lynn Universityは、コーディングブートキャンプとパートナーした初めての大学ではない。昨年はミネソタ州セントポールのConcordia Universityが、コーディングブートキャンプThe Software Craftsmanship Guildとパートナーした。2013年には、合衆国の8つの都市でWeb開発とデータサイエンスをブートキャンプしているGalvanizeが、University of New Havenとパートナーしてデータサイエンスの修士課程を提供した。

大学が自力でコーディングブートキャンプをローンチしている

至近の3か月で、Northeastern, RutgersおよびUniversity of Central Floridaなどの大学が、ブートキャンプ屋さんとパートナーしないことを決定した。その代わりに彼らは、大学自身が作った独自のブートキャンプをローンチすることにした。

たとえばNortheasternのLevelプログラムは、学生たちにデータ分析の基礎を教える8週間のブートキャンプだ。今同大学は、この事業の第二期生をボストン校で教えており、最近はシアトル、シャーロット、シリコンバレーの3地区でもローンチした。

Level事業の創立ディレクターNick Ducoffによると、“Northeasternは全米のトップ50の大学の中で、初めてこのような没入的な学習事業を導入した。学生たちは、われわれのブートキャンプにはNortheasternの高い教育的クォリティがある、と感じて安心している”のだそうだ。

Rutgers Universityも昨年の10月に、独自のコーディングブートキャンプを発表した。それは今年の4月25日に開講する。University of Central Floridaは、3月の終わりに24週のコーディングブートキャンプをスタートする。

大学はブートキャンプとパートナーするのか、それとも独自の事業を開発するのか、あるいはブートキャンプではない別のやり方を見つけるのか?

Whartonを卒業したEdward LandoとAbhi Rameshは、在学中に、学部学生とMBAの学生たちにはプログラミングのスキルを提供する必要がある、と痛感したため、自分たちの母校である大学のためにブートキャンプ的なコースを開発した。そのコーディングブートキャンプは、University of Pennsylvaniaの夏休みを利用して、従来の夏季インターンシップと等価なオルタナティブを提供する。今後学生たちはプログラマーになり、テクノロジーのキャリア獲得に必要なスキルを、さらに深く幅広く理解していくだろう。

このような、最近の大学のブートキャンプは、正規の履修証明を与えるものと、そうでないものとの違いがある点が興味深い。

しかし履修証明(単位付与)のあるなしに関わらず、雇用者が肯定的に認める(ブランドイメージの高い)大学とブートキャンプ的な教育訓練のセットが、一部の学生たちにアピールしている。コーディングブートキャンプによる教育を提供するために必要なリソースは大学にすでにあるが、学生たちに要求しているものの内容やレベルは大学によってまちまちだ。それら大学独自のブートキャンプは、コーディングブートキャンプ専業企業のHack ReactorDev BootcampBlocなどと競合することになるので、大学ごとの方針ややり方の違いを見定めることが今後は重要だ。

合衆国教育省からの支援

2015年10月14日にオバマ政権は、EQUIP(Educational Quality through Innovative Partnerships, 革新的なパートナーシップによる教育のクォリティの向上と確保)と名づけたパイロット事業を発表した。

大学がこの事業への参加を申し込み、EQUIPのパートナーシップを認められると、コーディングブートキャンプ(専門企業)やMOOC(Massively Open Online Course, CourseraUdacityなど)とのパートナーシップを助成され、また参加する学生への学費援助と履修証明が与えられる。この2つのレベルの支援は、これまでのコーディングブートキャンプ(専業企業と大学自身どちらも)が提供できなかったものだ。

このパイロット事業は、ブートキャンプ教育に大きな変革をもたらすかもしれない。これまでのブートキャンプ専業企業は、政府からの財政的援助や大学の正規の課程としての認可を、得られなかったのだ。援助があれば企業や大学が奨学金制度を設けたり、単なる課程終了証明だけでなく、より具体的な就活に結びつける事業展開も可能になる。

大学は2015年10月14日以、EQUIPに申し込めるが、認可された大学が今度は、いくつかの高等教育機関に対する、彼らに合った独自の教育訓練計画を提供していくこともできる。

まだEQUIP認定の大学や学校は発表されていないが、中学は申し込みの締め切りが2015年12月14日とされている。教育省が申し込みを審査するのに時間がかかるだろうから、発表は年内のいつか、となるのかもしれない。

大学がコーディングブートキャンプに関心を持ってくると、今度は各大学の教え方の違い、そして学生に現れる成果の違いが出てくるので、どうやればうまくいくか、という研究が重要になる。

大学はブートキャンプとパートナーするのか、それとも独自のブートキャンプ事業を開発するのか、あるいはもっと幅広いSTEM職業と技能を目指す学生たちのために、ブートキャンプではない別のやり方を見つけるのか?

独自方式にせよ、ブートキャンプ企業とのパートナーシップにせよ、まだやってる大学はそんなに多くないから、学生と大学の管理者の双方が、今やっている彼らをよく見て学ぶことが重要だ。

ブートキャンプの導入に、大学によってスピードの差が生じるのには、いくつかの原因がある。学部の積極性や認可の手続きなど。最初の手始めは、履修証明とは関係のない、気軽な形でやるのが良いかもしれない。大学は今でも高等教育の黄金律だが、学生たちの卒業後の進路をより安定的なものにするためには、今、優れたコーディングブートキャンプが実現/実証していることを、大学は真摯に受け止めるべきである。

もうすぐコーディングブートキャンプは、“出るべきか出らざるべきか?”の域を後にするだろう。大学がそれに積極的に関与していくことにより、未来の学生たちは、“どの大学のブートキャンプが自分の高等教育のニーズにいちばんフィットしているか”、と問うようになるだろう。言い換えるとブートキャンプと呼ばれる実学を学生が履修することは、どの大学でも標準の課程になると思われる。

※参考写真: DEV BOOTCAMP/FLICKER(CC 2.0のライセンスによる)

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa