国内では法律上はグレーゾーンだと指摘されるAirbnbだが、検索してみると、すでに国内でも数多くの代行業者がいることは分かる。日本のホスト数は8000件以上だと聞くし、僕の周囲ではサービスを利用した、よく使っているなんて話を聞くことも増えた。
そんなAirbnbやUberなどが代表格に挙げられるシェアリングエコノミー関連の新しいサービスにチャレンジしているのが、ペット版Airbnbとも言える「DogHuggy」だ。同社は5月20日にサービスを正式公開した。
ペットの飼い主とホストをマッチング
DogHuggyは、旅行や外出などでペット(主に犬)を預けたい飼い主と、現在、もしくはこれまでに犬を飼うなどして飼育経験のあるホストをマッチングするサービスだ。
サービスを利用するにはまず、飼い主が住んでいる地域の近所にいるホストを検索。条件等を確認して予約。あとは当日ペットを預けに行けばいい。決済もサイト上で行う。
料金はホストが設定できるが、想定単価は1泊あたり5000〜6000円程度。その30%をDogHuggyが手数料として徴収する。ホストは収益をNPO寄付することもできる。
2014年末から試験的にサービスを開始。現在のホストは首都圏を中心とした数十人。獣医やペット飼育経験者、さらにはペット関連の有資格者を中心に、面接などを行った上でホストとして認定しているという。ホストは1日数回ペットの写真を飼い主に送ることになっているため、状況の把握もできるという。また将来的には預けている最中のトラブルに対応するよう、保険の適用も検討中だそうだ。
ちなみにいわゆるペットシッターとしてホストが犬を預かるとなると、第一種動物取扱業の認可が必要になる。だが、DogHuggyでは動物取扱業の保管と貸出の免許を取得しており、まずDogHuggyが飼い主の犬を預かり(保管)、今度はDogHuggyがその犬をホストに預ける(貸出し)というかたちにすることで、法律上の課題をクリアしているという。
獣医を目指した高校生が起業
ペットの飼い主とペットシッターのマッチングサービスとしては、米国では「DogVacay」などが有名なのだそう。CrunchBaseにもあるが、同社は2014年11月に2500万ドルという大規模な資金調達を実施している(これまでの合計調達額は4700万ドル)。国内でも「inDog」など、サービスを準備しているスタートアップがあるようだ。矢野経済研究所の調査によると、国内のペット市場は2014年度で1兆4288億円。美容室や医療、保険、ホテルなどの各種サービスでは前年度比100.9%の7314億円となっている、大きな市場だ。
DogHuggy代表取締役の長塚翔吾氏は現在18歳。日本でも数少ない獣医学部のある麻布大学附属高等学校をこの春に卒業したばかり。もともとは獣医を目指していたそうだが、高校で動物保護について学んでいる中で、自らができることを模索した先にあったのがこのサービスでの起業だったのだという。
飼い主が長期で外出する際に利用するペットホテル。しかし狭いケージは犬にストレスを与え、価格も決して安くない。そんな環境に対して罪悪感を感じると答える飼い主もいたそうだが、他にソリューションがないというのが現状だ。
代々木公園などで実際にペットを散歩させていた飼い主などにも数多くヒアリングしたが同様の意見が出たという。そこで考えたのが、すでに適切な環境で犬を飼っているホストに犬を預けるという仕組みだった。
「目の前の困っている犬1匹を救うことも大事。だが、目先のことだけを考えるのではなく、飼い主にもっと動物保護とはどういうことか知ってもらって、人とペットの真の共存を実現していきたい」(長塚氏)
CAVからシードマネーを調達
DogHuggyは3月にサイバーエージェント・ベンチャーズ(CAV)のシード投資枠「Seed Generator Fund」からシードマネーを調達している。金額や出資比率は非公開。ただしシードの投資枠は3億円で、基本的には1社1000万円を上限にしているという話だから、数百万円というところだろう。
ちなみに、高校生だった長塚氏は、検索エンジン経由でCAVのシード投資について知り、その門戸を叩いたのだそうだ。そして親を説得した上、高校生だった2月に起業している。その後、東京大学獣医学科出身でサイバーエージェントの広告や開発を担当していた染谷洋平氏がCTOとして参画した(僕はこの染谷氏の経歴にも驚いたのだけれども)。
同社が目指すのは「動物後進国の日本を先進国にすること」。その第一歩となる目標は、DogHuggyのホスト500人までの拡大だという。