テクノロジの次の重大局面の座にすわる者は絶対的に、拡張現実と仮想現実である、とする説が喧しい。そんな中で、目立つほど静かだったAppleだから、同社のAR/VRに関する一挙手一動にはみんなが注目する。
Financial Timesの報道によると、Appleはこのほど、AR/VRのスペシャリストをチームに招いた。その、3Dインタフェイスに関する著書すらあるDoug Bowman(彼は3D User Interfaces: Theory and Practiceの主席著者)は、バージニア工科大学のコンピュータサイエンスの教授で、Center for Human-Computer Interactionのディレクターだったが、休暇を取ったのちにクパチーノの巨大テクノロジ企業に加わる。大学の職員経歴ページによると、彼は2007-2008年に行われたIEEE Virtual Reality Conferenceの総合議長を務めた。
Bowmanは1999年からバージニア工科大学に在籍し、拡張現実と仮想現実に関するさまざまな記事を発表し、共著もした。それらは、 “Virtual Reality: How Much Immersion Is Enough?”、”3D User Interfaces: New Directions and Perspectives”、”The Effects of Visual Realism on Search Tasks in Mixed Reality Simulation”などだ。
FTの報道でとくにおもしろいのは、彼はMicrosoftがHoloLensの普及促進のために出している10万ドルの研究助成金を、最初にもらった人物であることだ。そのときの研究テーマは、“大規模な混成現実データの共同分析”だった。
彼の履歴書をざっと見ただけでも、AR/VRの研究で多数の華々しい成果をあげていることが分かる。AR/VR分野への、少なくとも関心ぐらいはすでに示しているAppleにとって、たしかにうってつけの人材だろう。履歴書の詳細注記によると、彼の研究関心は三次元ユーザインタフェイス、仮想環境、仮想現実、拡張現実、そして人とコンピューターの対話だ。
競合するGoogleやFacebook(Oculus)、Samsung、HTCなどと違ってAppleはまだ、仮想/拡張現実における本格的なハードウェアやソフトウェアの取り組みを公式に発表していない。しかし特許の出願や同社の360度ビデオなどを見るかぎり、同社がその実験をやってることは確実だ。AR/VRがAppleの次の事業、と決めつけるのは短絡的だが、今回のようなスペシャリストの招聘から将来何が生まれるのか、ぜひ注視していきたい。