JALとVirginが出資するBoomが超音速旅客機開発計画の詳細を明かす

今のところテクノロジー業界の注目は自動走行車に集まっているが、別の分野のレースも激しさを増している。超音速旅客機の開発だ。高度1万mにおける音速は時速1027km程度だが、Boomが開発する旅客機は時速1230kmを目指している。

現在航空会社が運航させているジェット旅客機のスピードは時速650kmから800kmぐらいだ。燃料の消費は速度とともに急激に増えていくため、この速度に落ち着いている。つまり理由は主として経済的なものだ。

最近多くのスタートアップが超音速機計画を推進している。もっとも先進的なのは昨年誕生したアトランタのスタートアップであるHermeusだ。同社はニューヨーク、ロンドン間を90分で飛ぶ旅客機を計画中だ。先週、金額は不明だが、Khosla Venturesから資金を調達することに成功している。アドバイザーにはジェフ・ベゾス氏の宇宙企業、Blue Originの元プレジデントも加わっているという

Aerion SupersonicSpike Aerospaceのプランはもっと現実的で、12座席、時速1600km程度を目指している。これらは富豪や企業向け自家用機マーケットがターゲットだ。

しかし最も野心的でもっとも影響が大きい計画はBoomのものだろう。デンバーに本拠を置き、社員は150人のこのスタートアップは1億4100万ドルの出資を受けており、 これはマッハ2で飛行する55座席の旅客機の初期設計を開始するのに足る資金だ。画期的なのは料金が現在のビジネスクラス程度になるという点だ。Boomでは航空会社に多数の機体を販売することができれば、最終的にはエコノミークラス程度の料金に引き下げることができるとしている。

ニューヨークとロンドン、サンフランシスコと東京、シアトルと上海といった大部分が洋上の区間ならこれが可能になるかもしれない。実は超音速機の就航を妨げている大きな理由は超音速飛行にともなう衝撃波の存在だ。多くの国が人口密集地の上空を超音速で飛ぶことを禁じている。

今月16日に開催されたTechchCrunchのStrictlyVCイベントにBoomのファウンダー、CEOのブレイク・ショル(Blake Scholl)氏を招き、同社の超音速機開発計画についてインタビューすることができた。ショル氏は私の質問に詳しく答え てくれた。以下はインタビューの主要部分の要約だが、やり取りを直かに見たい読者のために記事末にビデオをエンベッドしておいた。

TC:ブレイク(・ショル)の経歴を振り返ると、元Amazonでその後モバイル支払システムのKima Labsを共同創業した。これはGrouponに買収され、Grouponに加わった。航空産業のバックグラウンドはないようだが、超音速機を開発する会社を創業しようと考えた理由は?

BS:実はKima Labs売却以前にさかのぼる話になる。(会社を売るか、売らないかは)常に難しい問題だ。私はGrouponのオファーを受けて売却した。スタートアップというのは常に困難な仕事だ。スタートアップの仕事に楽な部分などない。目を覚ましたときに、果たしてこんな苦労をする価値があるのだろうかと考える日が来る。

Grouponを去ったとき、自動車レンタルからヘルスケアまでありとあらゆるスタートアップのアイディアを抱えていた。しかしはるか昔から私自身が情熱を向けてきたのは飛行機だった。それならこの機会にフィージビリティだけでも調査すれば長年の固執をさっぱり忘れることができるのではないかと思ったわけだ。

TC:それがマッハ2で飛行する旅客機を開発するという具体的な計画に変わったのはどういう経緯?

BS:最初に調べたのは「なぜまだ実現していないのか?」だった。常識的だが不正確な説明がいろいろあった。巨大な資本が必要だ、規制が厳しい、長距離を飛べる旅客機を作っているのは世界で2社(ボーイング、エアバス)しかない、等々。つまり起業家などの入り込む余地はないというのだ。

そこで私は第一原理、つまり出発的に戻って考えてみた。コンコルドは50年も前、計算尺と風洞実験で設計された。では(テクノロジーが圧倒的な進歩を遂げた)今なぜできないのか?Wikipediaを調べただけでも最大のハードルは燃料コストだと判明した。超音速で飛ぶと莫大な燃料を消費する。誰もそんなコストを支払えない。利用者が少なければ飛行機も売れず、1機あたりの価格も高価になる。

しかし50年前の燃料消費率を30%改善すれば経済的に成立するとわかった。 その程度の改良なら不可能とは思えない。そこでさらに航空関係の教科書を呼んだり、教科を受講したりした。またできるかぎり大勢の業界の人間に会って私のアイディアに穴がないか尋ねてまわった。ディスカッションを重ねていくうちに皆が「これはうまく行くかもしれないな」と言い出した。そこでBoomを起業したというわけだ。

TC:Boomが計画している機体はどのくらいがレガシーでどのくらいが独自に開発したものなのか?

BS:コンコルドは50年前に設計されたと言ったが、われわれは文字通り先人の業績の上に立っている。しかし当時の機体は主としてアルミだったが今はカーボンファイバーの複合素材が利用できる。風洞しかなかったが、今はクラウド経由でスーパーコンピュータによる精密なシミュレーションが可能だ。50年前のジェットエンジンは騒音がひどく燃費も悪かった。これも圧倒的に改善されている。

エンジンや機体のメーカーといった大企業は1960年以後、航空機テクノロジーを着実に改善し続けてきた。しかし大手航空機メーカーはひたすら効率化を優先してきた。しかしスピードを優先すればまったく新しい機体が開発できるはずだ。要するに航空機テクノロジーというのは非常に保守的な分野だが、同時にデザインの根本的な方向転換も可能なのだ。

TC:エンジンは何基搭載?

BS:両翼下に1基ずつ、胴体後部上面に1基、合計3基だ。

TC:エンジンのメーカーは?

BS:まだ決定していないが、ジェットエンジン・メーカー3社(GE、P&W、ロールスロイス)のうち2社と協力している。最終決定は入札となるだろう。

TC:Boomはまず3分の1のスケールモデルで試作を開始し、続いて実機の製作に移るというが、実機の55座席というサイズはどのようにして決定したのか?

BS:コンコルドの経験を考えてみよう。クールな機体を作るだけでは充分ではない。多くの人々が支払えるような金額で座席が販売できなければビジネスは成り立たない。座席数が増えれば料金を下げることができるから機体のサイズはビジネス面で重要となってくる。だが航空機ビジネスでいちばん重要なのは数字はロードファクターだ。これは全座席数に対する有償座席の比率だ。想定される金額に対して座席数が多すぎると空席が増え、ロードファクターが下がる。何百もの路線でビジネスクラス料金で満席にしてビジネスを成立させることができるのが55座席だとわれわれは考えている。

TC:コンコルドの室内は非常に狭く、乗客にはあまり居心地のいい空間ではなかったと聞く。居住性というのは他の要素にくらべて優先順位はさほど高くないかもしれないが、Boomではこの点はどうなのだろう?

BS::実は共同ファウンダーのガレージで一番最初に作ったモックアップはキャビンだった。超音速機でもキャビンの快適さの重要性は非常に高い。現在の旅客機のように7時間から9時間もかからないにしても、数時間は機内に座っていなければならない。居住性は重要だ。現在のビジネスクラスで標準的な広さの快適なシートが必要だろう。窓も大きくなければならないし、リラックスして必要なら仕事もできるスペースがいる。しかしせいぜい4時間程度のフライトであれば現在のビジネスクラスほどフラットに倒せるシートでなくてもよい。


TC:ジェットエンジンのメーカーはまだ決まっていないということだが、このプロジェクトは非常に野心的なものだ。エンジン・メーカー以外の提携というと(会社への投資家でもある)日本航空だろうか?

BS:航空機を開発、製造するのはハードルの高い事業だが、中でも投資家が注目するのが航空会社との関係だ。そのアエライン企業はまずエンジンをどうするのか知りたがる。逆にエンジン会社はエアラインとの関係を尋ねる。われわれ、投資家、エンジン・メーカー、航空会社というのは「ニワトリとタマゴ」の複雑な四角関係となる。チームのメンバーにわれわれはタマゴを割らないと仕事が始まらないオムレツ製造業なのだと冗談を言うことがある。【略】

エンジンなどのコンポネント・メーカーとの提携にせよ、エアラインとの提携にせよ、最初はかなりゆるい関係から始めざるを得ない。企画書、目論見書、仮発注といったあたりだ。そこから徐々に信頼関係を築いていくい現在のところ我々は(JALとVirginから)1機2億ドルで30機を仮受注(pre-sold)している。

TC:仮受注(pre-sold)の意味は?

BS:これは予約意向確認書(letter of intent)よりは一歩進んだ段階だが、ここではあまり詳しく内容を説明できない。簡単に言えば、来年われわれがプロトタイプの製造で一定の段階に達することができるかどうかで本発注かキャンセルかが決まる。この段階をクリアできれば、Boomの前途は非常に明るくなる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

JAL、xRを活用したバーチャル旅行体験「JAL xR Traveler」提供へ

日本航空は3月28日、xRを活用したバーチャルツアー体験「JAL xR Traveler」のトライアルを実施すると発表した。

JAL xR TravelerはSOOTHの持つxR技術を活用し、「旅を気軽に試着」できる「バーチャル旅行体験」を提供するというもの。

体験者はナビゲーターにエスコートされ、オススメの場所や過ごし方を、現地の空気感を感じながらバーチャルで旅することができる。また、体験者の脳波を分析し、体験者と相性の良い旅行先や旅行スタイルを提案する。

JALは「視覚や聴覚だけでなく、嗅覚(現地の匂いを再現)、触覚(送風装置や歩行器を活用)なども刺激し、より没入感のある体験を実現します」と説明している。

また、JALは同日、日経イノベーション・ラボの協力を得て、現地ツアーなどの旅の体験を購入できるスマート自動販売機「JAL体験自販機」を開発したと併せて発表している。

「JAL体験自販機」を使い、自販機のパネルに表示される好みの「現地体験」を選び、スマホで商品のQRコードを読み取ることで、その場でインターネットを通して体験を購入することができる。今回発売するのは、「JALPAKハワイ」が扱う現地オプショナルツアーだ。

これらの体験は「国内の各イベントに出展予定」であり、詳細は4月中旬にJALのホームページで公開予定だ。

「実際の旅行は結構なので、バーチャル体験だけお願いします!」と考えているのは僕だけだろうか。

JALが80億円規模のCVC設立、「世界中のヒト・モノ・コトの距離を縮める」

日本航空(JAL)は1月24日、約80億円規模のファンド「Japan Airlines Innovation Fund」を設立し、国内外のスタートアップへの投資を開始すると発表した。運用期間は10年間。案件発掘、投資実行、投資後の支援は米カリフォルニアを本拠地とするTransLink Capitalが行う。

JALは2018年2月に発表した中期経営計画において、注力分野としてフルサービスキャリアとしての航空事業の磨き上げ、新規事業の創出、イノベーション創出のための基盤づくりの3つを注力分野として挙げていた。そして、JALがその目標を達成するための手段の1つとして選んだのがスタートアップ投資だ。

CVCを通したスタートアップ投資により、JALは今後、物理的な人の移動を代替する新たな手段・体験の提供や、旅行などの生活シーンに新たな付加価値を提供することなどを通して事業領域を広げていくという。