倒産したMaker Faireが新たにMake Communityとして復活

突然倒産したMaker Faire(メイカーフェア)ならびにMaker Media(メイカーメディア)は、2度めのチャンスを得つつある。ただしその規模は縮小される。残念ながら、彼らの主要なクラフティングフェスティバルであるMaker Faireは危機的な状況に晒されたままであり、再生された会社がどれくらい生き延びることができるのかもはっきりとはしていない。

TechCrunchが最初に報じたように、Maker Mediaは先月22人の従業員全員を突然解雇し、業務を停止した。創業者でCEOのデール・ドーハティ(Dale Dougherty)氏が私に語ったところによれば、彼はブランド、ドメイン、およびコンテンツを債権者たちから買い戻し、解雇された22人のスタッフのうち15人を、自身の資金で再雇用したとのことだ。来週、彼は「Make Community」という新しい名称のもとに会社の再ローンチを発表する予定である。

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同社はすでにMake Magazineの新刊に取り組んでおり、四半期ごとに出版することを望んでいる(これまでは年に6回だった)。またそのDIYプロジェクトガイドのオンラインアーカイブは引き続き利用可能となる。私は本を出版し続けたいと思っている。そして40カ国の、200カ所以上で開催される、科学芸術とワークショップで満たされたお祭りを開催するイベント主催者たちへ、Maker Faireという名称をライセンスする事業も継続する。しかし、ドーハティ氏は、同社が主催するベイエリアならびにニューヨークのフラッグシップであるMake Faireを、これ以上開催できる資金を持ち合わせていない。

Maker Faire Layoffs

「移行を完了し、Communityを立ち上げることに成功しました」とドーハティ氏は私に語った。しかし同時に、心もとない声で彼はこうも尋ねた「過去15年の間やってきたものよりも、良いモデルを案出できるでしょうか?その答が得られるかどうかはまだわからないのです」。印刷出版業はますます厳しくなってきている。メインイベントにおける企業スポンサーの減少と合わせて、Maker Mediaは生きながらえるために必要な資金を失ってしまった。

「6月3日に、私たちは基本的にビジネスを停止しました。そして、ご存知のように、銀行が私たちの口座を凍結したのです」とドーハティ氏は、彼の計画に対するフィードバックを得るためにオークランドで開催されたミーティングで発言している(ミーティング参加者のブライアン・ベンチョフ氏の記録より。以下同様)。上手い資金繰りの手段を求めて、彼は集まった少数の人びとにこう語りかけている「もしこれを私から受け継ぎたいという方がいらっしゃればうれしいのですが」。

Maker Faire

Maker Faireの様子(Maker Faire Instagramより)

現段階では、ドーハティ氏は復興資金を自身で調達している「目標はビジネスを元の速さに戻すこと、そして収益を上げて、雑誌を再開することです。私個人では資金を長期に渡って提供できません。なのでコミュニティのサポートが必要なのです」。

Dale 1

Maker Faireの創設者であり、Make CommunityのCEOであるデール・ドーハティ氏

直近の計画は、来週発表予定のMake.coにおける新しいメンバーシップモデルである。そこでは、ホビーストやクラフト愛好家たちが、月額または年間料金を支払ってMake Communityの支援者になることができる。ドーハティ氏は、2005年以来メイカーたちのコミュニティを繋ぎ合わせて来た組織を存続させるという意味を超えて、彼らが何を得ようとしているかについては慎重だった。彼が望んでいるのは、次号のMake Magazineを夏の終わりか秋の初めまでに出版することだ。既存の定期購読者はそれをメールで受け取ることになる。

同社はこれまでのようなベンチャーファームに支援された営利組織にするのか、それとも非営利組織もしくは協同組合として進むのかをまだ決めかねている段階である。「非営利組織に関して好きになれないことの1つは、資金の提供元のために最後は働くことになるということです。資金を手にするためには、提供元の演奏に合わせて踊ってみせる必要があるのです」と彼はミーティングで語った。

前回、彼はObvious Ventures、Raine Ventures、およびFloodgateから調達した1000万ドルのベンチャー資金を溶かしてしまった。このことはVCたちから、疑わしいビジネスモデルへのさらなる投資意欲を削ぐことになるかもしれない。しかし残された8万人のMake Magazineの定期購読者たち、100万人のYouTubeフォロワーたち、そして数百万人のMaker Faireイベント参加者たちの大多数を引きつけ伸ばすことができるならなら、おそらく同社は確実な足場を築くことができるだろう。

「これが私たちがしていることを復活させるだけでなく、新しいレベルに引き上げるための真の機会であることを願っています」とドーハティ氏は私に語った。結局のところ、今日の新進気鋭の発明家やエンジニアの多くが、Make Magazineを読み、そのフェスティバルで紹介された大規模なアニマトロニクス作品に畏敬の念を抱きながら育ってきたのだ。

声を詰まらせながら、創業者はコミュニティミーティングで訴えた「シリコンバレーにはこれだけ大勢の億万長者たちがいるのに、Maker Faireを支援するのが私しかいないと思うと残念でなりません」。

Maker Faire lives

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(翻訳:sako)

Makeの親会社がスタッフ全員レイオフ、運営停止の悲劇

人気のDIY工作雑誌MAKEの発行元でテクノロジーとアートのカンファレンス、Maker Faireを主催してきたMaker Mediaの経済的問題が深刻化し、運営の停止を余儀なくされた。22人のスタッフは全員レイオフされ、事業はすべてストップした。TechCrunchが聞いていたMaker Mediaの困難な財政状態はファウンダーでCEOのデイル・ドハティ氏によって確認された。

創立以来15年にわたってMAKEはわかりやすいステップバイステップの解説で多彩なサイエンス工作を紹介することで大人にも子供にも根強い人気を得てきた。MAKEの読者を中心としてコミュニティーも発展した。2006年以降、Maker Faireは直営、ライセンスも含め40カ国で毎年200回以上が開催されてきた。会場には美しく不思議なインスタレーションが置かれて来場者のインスピレーションを誘っていた。

ドハティCEOはTechCrunchに対し「Maker Media Inc.は運営を停止した。22名の従業員は全員会社を去る。私はこの会社を15年前に創立したが、以来ビジネスは苦闘の連続だった。印刷媒体はもはや有力なビジネスではなかったが、それでもかろうじて運営を続けることができた。イベントの企業スポンサーの脱落が大きかった」と語った。実際、Microsoft、Autodeskは今年、Maker Faireのフラグシップイベントであるベイエリアでの開催のスポンサーに加わらなかった。

それでもドハティ氏はなんらかの形でMakerブランドを残そうと努力している。例えばMAKEのオンラインアーカイブを残し、サードパーティーにブランドをライセンスしたりできないかと方法を探っているという。これを可能にするため、Maker Mediaは通常の倒産手続きでなく、債務を債権者に一括譲渡する手続きによろうとしている。

ドハティ氏は「Makerコミュニティーが示したサポートに言い表せないほど感激している」と語った。現在、世界で進行中のMaker Faireイベントはそのまま続行されるという。ドハティ氏はOculusの共同ファウンダー、パーマー・ラッキーが出資の可能性に興味を示していると語った。またGoFundMeページもスタートしている。

これはヒドイ。友だちと私はMaker Mediaを助けたい。私はMaker Faireが大好きだ。文字通どおり創刊号からずっとMAKEの愛読者だった!―パーマー・ラッキー

CEOによれば、2016年のレイオフ以後、同社が直面してきた経済的苦難をスタッフはよく理解していたという。SF Chronicleによれば、この3月にはさらに8人がレイオフされた。未取得の有給休暇ぶんを含めて未払分給与は支払われたものの、退職金やこのような場合に通例の2週間ぶんの給与は支払われなかった。

ドハティ氏によれば「この会社はベンチャーキャピタルの投資を受けてスタートしたが、機会を十分に活かせなかった」という。MakerはObvious Ventures、Raine Ventures、Floodgateから1000万ドルの資金を調達したが、「投資家を十分満足させることができなかった。ミッションとしては強い支持を受けているが、ビジネスとして失敗だった。NPOの体制を取ったほうがよかったかもしれない。われわれのプロジェクトでいちばん成功したのは教育関係だった」とドハティ氏はいう。

Maker Mediaに対するコミュニティーの支持は以前として熱烈だ。ドハティ氏によれば、雨天だったにもかかわらず先週のビッグイベント「Bay Area Maker Faire」の入場者は目標を達成していた。MAKE誌には12万5000人の定期購読者があり、YouTubeチャンネルの登録者も100万人を超していた。しかし家賃や製作コストの高騰、またコンテンツが無料のオンラインDIYプロジェクトで直接収入源にならないことなどが経営を圧迫していた。

再生に向けての努力が今後どうなるか不明だが、Maker Mediaはある世代の人々とその家族にテクノロジーとアートのインスピレーションを与え続けてきたことは間違いない。【略】

「Maker Mediaは多くの人々の役に立つことができたと思うが、今日のビジネス環境では私は十分な成果を挙げられなかった」とドハティ氏は結論した。現在のところMaker Mediaは辺土で冷凍状態となっている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook